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欧米の“出会い”に新トレンド、一方マッチングアプリ大手はアジアへ焦点 “スワイプ疲れ”を“打開する各社の戦略

欧米の“出会い”に新トレンド、一方マッチングアプリ大手はアジアへ焦点 “スワイプ疲れ”を“打開する各社の戦略

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アプリマーケティング企業Adjustによれば、世界のマッチングアプリにおけるインストール数とセッション数は、2024〜25年のいずれも減少。特に、2025年は成長の鈍化が顕著となった。そんななか、欧米では友人が代理でプレゼンするイベント「Date My Mate」が新トレンドになりつつある。一方、マッチングアプリ大手各社は、伸びが期待されるアジア市場の展開を加速させている。

世界のスタートアップが取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第75弾は、「出会いの新潮流」に着目。イギリスのスタートアップが仕掛ける新トレンドに加え、マッチングアプリ大手各社のアジア戦略を紹介する。

サムネイル写真提供:Nice

友人が“代理プレゼン” イギリスで大反響の「Date My Mate」

欧米では、マッチングアプリによる“スワイプ疲れ”が拡大している。米データ調査会社センサー・タワーによれば、マッチングアプリ大手のマッチ・グループが運営するTinder(ティンダー)では、2025年前期アクティブユーザー数が、前年同期比10%減の5100万人に。

2014年に米国で創業し、2021年に米ナスダック市場に上場したマッチングアプリBumble(バンブル)も同様の傾向で、同時期のアクティブユーザー数が5%減少した。

そんななか、パブを舞台にしたイベント「Date My Mate」が出会いの新トレンドになっている。パブで出会って声をかけるという“昔ながらのスタイル”だが、従来と異なるのは、友人が代理でプレゼンテーションを行うこと。恋人を求める当事者の代わりに、友人がスライド資料を使って魅力をアピールするのだ。

▲本人の代わりにプレゼンする友人の様子(Nice提供)

バレンタインデーに合わせて開催された同イベントは、告知動画が100万回以上再生され、150枚のチケットは48時間以内に完売。その人気はとどまらず、3月に開催された第2回のチケットは、わずか5分で完売した。同イベントは、大手メディアのロイターや日本のニュースサイト「FNNプライムオンライン」でも取り上げられた。

主催者は、2019年にイギリス・ロンドンで創業した「Nice(ナイス)」だ。ワイン選びの悩みから人々を解放することを目指す同社では、柔軟性に欠けるワインのパッケージや分かりにくいラベルが課題であると指摘。現代のライフスタイルに取り入れやすい、洗練されたデザインに機能的なパッケージ(缶、ボックス、ボトル、樽など)で、自社製品を展開している。

▲ナイスは、現代のライフスタイルに合うワインを提供する(Nice提供)

「アルコール」を扱う同社が、なぜ出会いイベントを企画したのか。広報担当者は、こう話した。

「私たちは、“Niceを通じて人々をつなぐ”ことを重視しており、Date My Mateを通じてパブにリアルな出会いを復活させる絶好の機会だと考えました。参加者は当社のワインを楽しみ、新しい人々と出会い、楽しくて充実した夜を過ごしています」(Nice 広報担当者)

ロンドンにとどまらず、エリアの拡大を見込む

Date My Mateは国際的なメディアからも注目を集め、NiceではSNSのフォロワーが数千人増加。有名人から「友人を紹介したい」という連絡も届いたという。話題は他国にも広がり、オーストリアや米国でも同様のイベントが広がっているそうだ。

Niceが主催したイベントは大いに盛り上がり、参加者はイベント後にボウリングを楽しんだほか、「3回目のデートに発展した」という報告も受けたそうだ。なぜ、これほどの人気を獲得したのか。

▲パブで開催されたイベントは、終始活気に満ちていたという(Nice提供)

「Date My Mateは、社会のニーズを的確に捉えています。人々はデートアプリの不自然な仕組みにうんざりしており、“スワイプ疲れ”が起きています。そのため、本物の活気あふれる人間同士の交流を渇望しているのです。

パワーポイント形式のプレゼンが機能するのは、自己アピールに伴う“気まずさ”を取り除いてくれるためです。自分自身を売り込むのは気が引けるものですが、親友に代わりにやってもらうのは信じられないほど楽しいものです。昔ながらのデートスタイルへの回帰ですが、親友が最高の『盛り上げ役』として活躍してくれます」(Nice 広報担当者)

▲「人々をつなぐことで、自社のユーザー獲得につなげたい」という(Nice提供)

Niceでは、引き続き人々をつなぎ、自社のユーザー獲得につなげていくため、ロンドンでのDate My Mateの毎週開催を目標としている。さらに、この形式をイギリスの他の主要都市にも展開するための準備を進めているという。「いつかDate My Mateで出会ったカップルの結婚式にワインを提供することになれば、それは私たちの仕事が成功した証でしょう」と広報担当者は語った。

大手マッチングアプリが「アジア」に注力するワケ

冒頭で触れたとおり、世界のマッチングアプリにおけるインストール数とセッション数は、減少傾向にある。Forbes HealthとOne Pollの共同調査では、アメリカ人のほぼ半数(45%)がデート相手を見つけた場所として「マッチングアプリ」と回答しているものの、以下グラフを見ると、“スワイプ疲れ”によるアプリ離れが静かに進んでいるようだ。

▲世界のマッチングアプリにおけるインストール数とセッション数は、減少傾向にある

一方、アジアでは異なる動きが見られる。マッチングアプリの2025年ダウンロード数(Appleデバイスのダウンロード数のみ)を国別に見ると、世界トップ5にインド、中国、インドネシアのアジア3国がランクイン。特にインドは、2億500万件と圧倒的に多かった(クーリエ・ジャポン参照)。

ドイツの統計データ会社・スタティスタによれば、インドにおけるオンラインのマッチングサービス利用者数は2023年に1億人強となり、27年には1億4,300万人に増加すると見込まれている。従来のお見合い結婚の数が減るなか、マッチングアプリが急成長しているのだという。

▲マッチングアプリの国別市場規模は、米国が1位、日本が2位だった(出典:調査会社Sensor Towersのブログ

マッチングアプリの国別市場規模(2022年5月〜25年4月、App IQカテゴリー:Dating)では、米国が70億ドル以上で圧倒的にトップだが、2位は16億ドルの日本だった。一方、マッチングアプリの1日あたりの使用時間で見ると、日本が「約16分/日」でトップに(調査会社Sensor Towersのブログ参照)。「スワイプ」による気軽なやり取りが主流の欧米に対し、アジアでは情報豊富なプロフィールや長期的な関係を優先する傾向もある。

マッチ・グループは、「富裕層向けマッチング」をインドで開始

続いて、マッチングアプリ大手各社のアジア戦略を紹介する。世界最大手のマッチ・グループでは、富裕層をターゲットにした“完全審査制”のマッチングアプリ「The League(ザ・リーグ)」を2025年11月、インドのムンバイとデリーで開始した。

ザ・リーグは、「審査済みのプロフィール」、「厳選されたマッチング」、そして「有料会員制モデル」を組み合わせ、高水準の出会いをもたらすことを強みとする。応募は、職場の公式メールアドレス、またはLinkedInアカウントからに限られ、既存会員からの推薦が必要となる。

▲ザ・リーグは、富裕層をターゲットにした“完全審査制”のサービスだ(出典:App Store ザ・リーグのサイト)

1日に表示される候補者はごく少数(3〜5件が目安)。それに加え、審査済みの会員で構成されるコミュニティに参加すると、対面でのイベントやデート体験も提供される。

2014年に誕生したザ・リーグは、米国の女性起業家・Amanda Bradford(アマンダ・ブラッドフォード)氏によって創業された。北米や欧州、オセアニアなどに地域を拡大した後、2022年にマッチ・グループに買収された。

長期的な関係を求めるキャリア志向の層にとって、タイパのいいサービスとして受け入れられている一方で、学歴、職業、収入を優先することで「階級格差を助長している」という批判もある。

“女性主導”の「バンブル」も成長市場のインドに注目

女性起業家のホイットニー・ウォルフ・ハード氏により、2014年に米国で創業されたバンブルも、インドでの展開に本腰を入れている。同国の月間ユーザー数は約410万人で、バンブルの全トラフィックの15.7%にあたるという(ノルウェー企業のSwipeStatsの統計参照)。

バンブルは、「女性主導」のアプローチで支持を獲得。スワイプによる操作は従来のマッチングアプリ同様だが、異性とのマッチングでは、最初のメッセージを送れるのは「女性」のみとなる。デートの相手探しがメインだが、友人を探せる「BFFモード」も搭載する。

▲「女性主導」のアプローチを特徴とする「バンブル」(出典:App Store バンブルのサイト)

同社のインド展開では、例えば、PUMAと協業したスポーツを切り口にした施策を実施。2024年11月11日のシングルズデーや2025・26年のバレンタインデー前後の週末に、若年層の独身者限定のランニングイベントを開催し、好評を得ているそうだ。

2025年9月には、バンブルで出会った4組の実話を映画化したキャンペーン「For The Love of Love」を実施。同社のCMOは、「同キャンペーンは、現代のデートにおいて人々が最も大切にしていること――つまり、自分を見てもらえていると感じること、安心感、そして心からの希望――を称えるものです。それは、真のつながりの美しさを浮き彫りにし、最も純粋な形の愛は、常に大切にすべきものであることを私たちに思い出させてくれます」と語っている。より健全で有意義な関係をもたらすサービスであると強調し、ブランドの価値を高めるのが狙いだ。

“位置情報”を有効活用したフランス発「ハプン」の独自戦略

2014年にフランスで創業した「happn(ハプン)」は、2025年の累計ユーザー数が1億7,500万人に達した。西ヨーロッパ、南米(アルゼンチンとブラジル)、トルコ、インドで特に人気が高く、インドでは4,100万人のユーザーがいる。

同サービスは、「すれ違い」による自然な出会いをコンセプトにしている。最先端のクラウドベースの位置情報技術を活用し、日常の生活ですれ違った(同じ場所を通過した)ユーザーのプロフィールがタイムラインに表示される。さらに、お気に入りのレストランやデートスポットなどを通じて「Crush」(気になる人)を見つけることもできる。地域密着型の出会いを促進するのが、ハプンならではの特徴だ。

▲ハプンは、“位置情報”を活用して交流を深める(出典:ハプンの公式ブログ)

ハプンは、2016年にインドで展開を開始。現地の有力者から投資を受け、強固な足場を築きつつ、絶大な人気を誇るボリウッド俳優をブランドアンバサダーとして起用し、知名度を一気に引き上げた。

2024年9月には、お気に入りの場所(レストラン、クラブ、カフェ、バー、公園など)をプロフィールに追加し、お互いが好む場所を起点に出会う「CrushPoints」機能をインド全土に拡大。2025年7月には、ユーザーの好きな場所や位置情報を元に、パーソナライズされた「デートの場所」をAIが提案する新機能「Perfect Date」も導入した。アプリ上でのチャットからオフラインの出会いへの移行を後押しする狙いだ。

米発「コーヒー・ミーツ・ベーグル 」は“有意義な関係”構築に注力

2012年に米国で誕生した「Coffee Meets Bagel(コーヒー・ミーツ・ベーグル )」は、シンガポールでの“有意義な関係”の構築に注力する。「真剣な交際」をうたう同サービスは、無数のスワイプではなく、毎日正午に厳選された少数のマッチング候補が通知される仕組み。内面重視の設計で、プロフィールを充実させる仕掛けも多い。

▲アンチ・スワイプを押し出す「コーヒー・ミーツ・ベーグル 」(出典:App Store コーヒー・ミーツ・ベーグルのサイト)

2025年6月には、シンガポール国内のユーザーに対し、政府発行の公的身分証明書「Singpass(シングパス)」認証の利用を開始した。増加するオンライン詐欺や既婚者が独身を装う問題を撲滅するのが目的で、同社にとって世界初の試みだ。同機能では、国内在住者の識別番号、生年月日、婚姻状況、性別の情報を取得して認証を行うという。同機能は、バンブルでもシンガポールユーザーに対して導入されている。

2026年2月には、芸術や文化に触れるデートを促進する新施策として、SG Culture Passとの1年間の提携を発表。ユーザーが美術館や博物館、没入体験イベントやホラーなど特定施設のデートをする際、優先入場や割引などの特典を受けられる。

アジア各国において、各社は「長期的な関係構築」と「スワイプ疲れの回避」を精力的に進めている。

編集後記

日本でも、「婚活疲れ」といった言葉を聞くことが増えた。その多くは、マッチングアプリによるストレスと言えるのかもしれない。そんななか、欧米で「Date My Mate」のような対面回帰が進むのはうなづける。一方で、日本を含むアジア各国で同様の取り組みが受け入れられるかというと課題がありそうだ。同イベントを紹介したFNNプライムオンラインのyoutube動画には、「友人がいない」「日本人には向かない」といったコメントも。マッチングアプリが万能ではないとしても、引き続き、各社はアジアでの展開を拡大させていくのではないか。

(取材・文:小林香織) 

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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