MiDATAと東京大学、マッチングアプリの“人気集中”を緩和する新アルゴリズムを共同開発 マッチングアプリ「CoupLink」で実証
AI・データ分析コンサルティング事業を展開する株式会社MiDATAは、東京大学大学院経済学研究科附属 東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)との共同研究成果として、マッチングアプリにおける「人気の一極集中(混雑)」を緩和し、機会の公平性とマッチングの質を向上させる新たな推薦アルゴリズムを開発したと発表した。
本アルゴリズムは、MiDATAの株主である株式会社リンクバルが運営するマッチングアプリ「CoupLink(カップリンク)」へ試験導入され、大規模な実証実験を通じて有効性が確認された。研究成果をまとめた論文は、プレプリントサーバー「arXiv」およびUTMDのWebサイト上で公開されている。
マッチングアプリや求人サイト、フリーランス仲介サービスなどの「ツーサイドプラットフォーム」では、双方が互いに関心を持つことで初めてマッチングが成立する。その一方で、従来のレコメンドシステムでは「誰が誰に“いいね”を送りそうか」という片側視点の予測に偏りやすく、一部の人気ユーザーへ推薦やアプローチが集中する課題があった。
この“混雑”によって、人気ユーザー側では通知過多や対応負荷が発生し、結果としてコミュニケーション機会が失われる。一方、相性の良い候補者同士であっても、人気層の陰に埋もれて表示されにくくなるなど、マッチング機会の不平等が生じていた。
マッチング理論を応用した「ECDA」アルゴリズム
こうした課題に対し、UTMDが持つマーケットデザインやマッチング理論の知見と、MiDATAのAI実装技術を組み合わせ、新たなレコメンドアルゴリズム「ECDA(Exposure-Constrained Deferred Acceptance)」を開発した。
ECDAは、ノーベル経済学賞の対象にもなった「受入保留(Deferred Acceptance)」アルゴリズムをレコメンドシステムへ応用したもの。AIによるマッチング予測をもとに、特定ユーザーへの推薦露出に適切な上限を設けることで、“人気の偏り”をシステム的に緩和する仕組みとなっている。
さらに、相手が多数のユーザーと同時にマッチしている場合、その価値を割り引いて評価する「有効デート(Effective Date)」という独自指標も導入。単純なマッチ数ではなく、“実際に交流へつながる可能性”を重視した設計が特徴だ。
CoupLinkでの大規模実証で有効性を確認
今回の実証では、関東エリアのCoupLinkユーザーにECDAを適用し、関西・東海エリアでは従来アルゴリズムを継続利用。その差を「差の差分法(Difference in Differences)」で分析した。結果として、従来手法で推薦や“いいね”が極端に集中していた上位0.1%ユーザーへの偏りが改善されたという。
また、以下のような効果も確認された。
まず、実質的なコミュニケーションにつながるマッチング機会が向上した点だ。相手側の対応キャパシティを考慮した推薦が行われるため、「マッチしたが返信が続かない」といった状況が緩和された。
次に、公平な出会いの機会の創出である。推薦露出が分散されることで、これまで埋もれていたユーザーにもスポットライトが当たりやすくなり、良縁発見の可能性が広がった。
さらに、Botや営利目的業者などによる大量アプローチ対策としても機能するという。機械的にプロフィールや行動を最適化して露出を増やすユーザーに対しても、推薦回数を抑制する効果が確認された。
人材・フリーランス領域への展開も視野
MiDATAは今回の成果について、「ツーサイドプラットフォームにおける構造的課題に対し、大規模データを用いてマッチング理論の実用性を証明した事例」だとしている。
今後は、人材マッチングやフリーランス仲介など、同様に人気集中による機会損失が課題となる領域への展開を進める方針だ。
東京大学大学院経済学研究科講師でありUTMDプロジェクトマネージャーを務める野田 俊也氏は、「理論に基づいて仕組みを設計し、シミュレーションで検証し、実サービスへ実装したうえで、データに基づいて効果を確認する。この流れは制度設計研究の望ましいあり方を体現している」とコメントした。
また、MiDATA執行役員CTOの大川 幸男氏は、「マッチング数を増やそうとすると、一部の人気ユーザーへ集中してしまうという長年のジレンマに対し、数理モデルへ自然に混雑解消メカニズムを組み込めた。今後は人材領域など多様なプラットフォームへ展開し、社会課題解決へ貢献していきたい」と述べている。
マッチングアプリに限らず、推薦アルゴリズムが社会インフラ化するなか、“効率性”だけでなく“公平性”や“実質的な交流価値”まで含めて設計する動きが、今後さらに重要性を増しそうだ。
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(TOMORUBA編集部)