動物目撃情報システム「クマップ」、秋田市で実証実験開始 “5秒で命を守る”獣害対策DXの実用性を検証
秋田県発のスタートアップである株式会社BearBellは、グロースエクスパートナーズ株式会社との技術連携協定に基づき、動物目撃情報共有システム「クマップ」の実証実験を2026年6月1日から30日まで秋田市で実施する。
実証には地域住民や国際教養大学関係者、行政関係者など約50名が参加。クマやイノシシ、シカ、サルなどの野生動物に関する目撃情報をリアルタイムで共有し、被害防止や住民の行動変容にどのような効果をもたらすかを検証する。
近年、全国各地でクマをはじめとする野生動物の市街地出没が相次ぎ、農作物被害だけでなく人身被害も深刻化している。こうした課題に対し、デジタル技術を活用した新たな解決策として期待されているのが「クマップ」だ。
行政通知を大幅に上回る、5秒通知を実証
今回の実証実験で最大の検証項目となるのが、目撃情報の通知速度である。
クマップは、ユーザーによる目撃情報の投稿から5秒以内に周辺利用者へ通知を届ける設計となっている。実証では実際の運用環境下で通知到達時間を計測し、この性能が維持されるかを確認する。
従来、自治体による野生動物出没情報の発信は数時間から数日を要するケースも少なくない。クマップは情報伝達のタイムラグを大幅に短縮することで、遭遇リスクの低減や迅速な避難行動につなげることを目指している。
行政データと市民投稿を統合する情報基盤
クマップの特徴は、複数の情報源を統合する仕組みにある。第一の柱は、全国約1,700自治体が公開するオープンデータを自動収集する「トップダウン型」の情報収集。第二の柱は、市民がスマートフォンから投稿する目撃情報をAIが信頼度評価する「ボトムアップ型」の情報収集である。
さらに将来的には、防犯カメラやサーモグラフィと画像認識AIを連携させた「オートメーション型」の検知も構想している。
今回の実証では、自治体データと市民投稿の2つのチャネルを対象に、実環境での連携性能や運用上の有効性を検証する。
自治体ごとに分散して管理されてきた獣害情報を一元化し、地域全体で共有可能な情報基盤を構築することが狙いだ。
被害防止につながる行動変容も測定
実証では技術面だけでなく、利用者の行動変容にも焦点を当てる。
参加者が通知を受け取った際に危険区域を回避する行動を取るか、また生活圏や活動圏における被害が軽減されるかを調査する。アンケートやヒアリング、被害報告などを組み合わせながら、サービスの社会的効果を定量・定性的に評価する予定だ。
あわせて、実際の利用環境下でアプリや管理画面、APIの安定性を検証し、本格展開に向けた品質向上も図る。
上場IT企業の技術力を活用し全国展開へ
本プロジェクトには、東証グロース市場上場企業であるグロースエクスパートナーズが技術パートナーとして参画する。
同社は画像認識APIとカメラシステムの連携基盤構築に加え、住民や自治体担当者が直感的に利用できるUI/UX設計を担当する。社会実装に向けては高度な技術だけでなく、誰でも使いやすいサービス設計が不可欠であり、その役割を担う形だ。
また、同社取締役CMOの鎌田悟氏はBearBellの顧問も務めており、開発段階から両社は緊密な協業体制を構築してきた。
秋田発のスタートアップが挑む獣害対策DX
BearBellは、国際教養大学4年生である服部悠大氏が創業したスタートアップだ。自身が人生で6回クマに遭遇し、そのうち2回は生命の危険を感じた経験から、「命に関わる情報が必要な時に届かない」という課題意識を持ったことが創業の原点となっている。
農林水産省によると、野生鳥獣による農作物被害額は全国で年間約200億円に上る。こうした社会課題に対し、BearBellは「安全から共生へ」をビジョンに掲げ、データとAIを活用した新たな獣害対策の仕組みづくりを進めている。
今回の秋田市での実証は、その第一歩となる取り組みだ。スタートアップの機動力と上場企業の実装力を掛け合わせた本プロジェクトが、鳥獣害対策DXの新たなモデルケースとなるか注目される。
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(TOMORUBA編集部)