「革新事業創造戦略」がバージョン2.0へと進化。愛知が目指す”イノベーションの未来”とは――共創の最前線を知る「AICHI INNOVATION CHALLENGE 2026」開催!この日限りの「スペシャルセッション」をレポート
世界トップクラスの自動車産業を抱え、圧倒的なものづくりの強みを持つ愛知県。スタートアップ支援にも精力的で、2024年には日本最大級のオープンイノベーション拠点「STATION Ai」が誕生、想定以上の事例が生まれるなど東海発のスタートアップ・エコシステムの構築が進んでいる。
そんな愛知では、6つのイノベーション推進事業を横断したイベント「AICHI INNOVATION CHALLENGE 2026」を、3月18日に中日ホール&カンファレンスで開催。2025年度における各事業の成果発表・セッション・展示・マッチングを複合的に組み合わせた内容だ。スタートアップ、大企業や中堅中小企業、自治体、金融機関など多様なプレーヤーが一堂に会し、愛知が目指すべき「イノベーションの未来」を真剣に語り合った。
――本記事では、愛知県・大村知事による挨拶から革新事業創造プラットフォーム『A-IDEA』の紹介、さらにこの日限りの2つのスペシャルセッションの模様をレポート。白熱したディスカッションの様子を余すことなく届けたい。
イノベーションは愛知の“成長エンジン”――大村秀章知事より挨拶
冒頭では、愛知県の大村秀章知事が登壇。集まった聴衆に対して、「愛知が日本の経済を牽引する成長エンジンであり続けるには、イノベーションが不可欠だ」と力強く呼びかけた。
愛知県では、スタートアップを起爆剤としたイノベーションの創出を目指す「Aichi-Startup戦略」を2018年10月に開始。その中核となるのが、現在、約680社のスタートアップが入居するオープンイノベーション拠点「STATION Ai」だ。
大村知事は、「STATION Aiは、開業から1年半でイベント開催が2,000本を超え、今年12月には、3回目となる国際的なカンファレンス『TechGALA Japan』の開催も決定している。本日は、多様なプログラムを用意しているので、積極的に交流を深め、さらなるイノベーションの創出につなげていただきたい」と期待を表した。
革新事業創造プラットフォーム「A-IDEA」が“バージョン2.0”へ進化
続いて、愛知県経済産業局顧問の柴山政明氏が登壇。愛知県が2022年から進めている「革新事業創造戦略」における、2026年度の取り組みを紹介した。革新事業創造戦略とは、民間提案を起点として、社会課題の解決と地域の活性化を図る官民連携プロジェクトの創出に向けた愛知県の取り組みの枠組みを指す。
柴山氏は、「先ほど知事が話した『Aichi-Startup戦略』と『革新事業創造戦略』を二本立てで動かしながら、イノベーションの創出を目指している。革新事業創造戦略に『愛知』の名称が付いていないのは意図的であり、愛知発のイノベーションを日本、そして世界に発信していきたいとの思いを込めている」と背景を伝えた。2026年度からは、同戦略を“バージョン2.0”に改定するという。
「バージョン1.0では、国際イノベーション都市への飛躍を進めてきた。社会課題の解決につながる革新的なビジネスアイデアの提案を受け付けるプラットフォーム『A-IDEA』を立ち上げ、STATION Ai内にA-IDEA事務局を設置。農業や環境イノベーション、ドローンやeVTOL(空飛ぶクルマ)、IGアリーナの開業など5つのイノベーションプロジェクトを実施してきた。
続くバージョン2.0では、提案を受けるにとどまらず、『事業化を支援する』新たな機能に進化させる。目指す姿は、社会課題を起点としたイノベーション創出の好循環だ。アイデアの卵を社会実装させるべく、スピーディーに支援の手を打っていく。具体的には、『A-IDEAコンシェルジュ』と呼ばれる支援の専門家を置き、ここで選ばれた卵を孵化(ふか)させていく。アイデアを社会実装につなげる支援プログラムを『愛知モデル』として構築したい」(柴山氏)
さらに、「社会課題とビジネスがどちらも成立する仕組みを作り、着実に社会が良くなるように進めたい」と柴山氏は締めくくった。
【トークセッション①】 産・官・金の地域プレイヤーが語る「地域から始まる新規事業と産業変革」
「AICHI INNOVATION CHALLENGE 2026」では、この日限りの2つのスペシャルセッションも実施された。セッション①では、「愛知発のイノベーションは、次のフェーズへ ―戦略改定の背景とこれから―」をテーマに、以下のメンバーが登壇した。
<登壇者>
・株式会社LEO代表取締役 武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部教授 粟生 万琴氏
・地域と人と未来株式会社 代表取締役/株式会社MTG Ventures 代表パートナー 伊藤仁成氏
・株式会社リトルパーク 代表取締役 / 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任准教授 古里圭史氏
・株式会社eiicon 執行役員/東海支社長 伊藤達彰氏 ※モデレーター
●トークテーマ① 「なぜ愛知県は今、『社会実装』を重視する方針に舵を切ったのか」
最初のトークテーマは、「なぜ愛知県は今、『社会実装』を重視する方針に舵を切ったのか」。まず、愛知県革新事業創造戦略会議委員であり、2022年の戦略開始から同プロジェクトに携わる粟生氏がその背景を語った。
「アイデアの提案を通じて、課題を持つ人、アイデアを探している人、それらを解決できる人をマッチングさせるところから、今期は社会実装を推進する『伴走型』を強化していく。イノベーションには5年、10年単位の時間がかかるため、アントレプレナーシップ教育が浸透してきた愛知という土壌を活用し、寄ってたかって盛り上げていこうと。0→1から1→10、さらには10→100を生み出す愛知モデルを作ろうと考えている」(粟生氏)
この日の早朝に米国・テキサス州から帰国したばかりだという粟生氏は、「かつて田舎町と言われたテキサス州オースティンは、ハイテク企業を誘致してテックとものづくりを融合させた地域に変わっている」という成功事例を挙げ、「この場に来て、愛知も同様に機運を高められると確信した」と力強く話した。
▲粟生万琴氏
●トークテーマ② 「これまでの多様な支援事業を通じて見えてきた課題」
続くトークテーマは、「これまでの多様な支援事業を通じて見えてきた課題」。岐阜県の飛騨信用組合で電子地域通貨「さるぼぼコイン」を生み出し、「まちづくりプロデューサー」としても注目を集める古里氏は、「社会実装が根付かずに単発の挑戦で終わってしまっている」と考えを示した。
「愛知は、他県と比較して産官学金の座組のバランスがいい。恵まれた環境があるなかで、社会実装につながらないのは課題と言える。こうした課題は他の地域でも多く、補助金の終了と同時に実証も終わる、技術検証のみでエコノミクスが成立せず立ち消えるといった花火を打ち続けるような状況がある」(古里氏)
▲古里圭史氏
投資ファンドの運営やスタートアップエコシステムの構築を通じて、イノベーションの土壌作りに挑んでいる伊藤氏も、ここまでの粟生氏と古里氏の意見に賛同。「どこに行っても『愛知県はすごい』と言われる。ここまではアイデアを生み出し、実証を重ねて事例を積み上げてきた。これからは、社会実装して事業化して、スケールさせていくフェーズ。その課題を認識して、解決の方向に向かっている感覚がある」と前向きに伝えた。
▲伊藤仁成氏
こうした意見を受け、粟生氏は「みんなで寄ってたかって課題を乗り越えていこう」と会場に呼びかけた。
「愛知はディープテック系のスタートアップが多い。この領域で目指すのは大きな社会課題の解決であり、時間も資金も必要になる。何度も『死の谷』を乗り越えなければならない。ここで、スタートアップだけでなく事業会社も寄ってたかって乗り越える土壌を作ってほしい。シリコンアレーと呼ばれる米国の東海岸では、大学発のスタートアップを事業会社が合併・買収して事業化させる『東海岸型モデル』が主流だ。そんな事例が愛知から増えていくと、持続可能に社会実装できる土壌が作られるのではないかと期待している」(粟生氏)
●トークテーマ③ 「今回の戦略改定によって、何を変えようとしているのか」
続いてのトークテーマは、「今回の革新事業創造戦略の改定によって、何を変えようとしているのか」。粟生氏は、「社会とのタッチポイントの重要性」に言及。「長く事業を継続するには、素早くプロダクトを作り、お客さまに使ってもらうこと。それが社会実装であり、社会課題解決につながる。『この期間はドローン飛行可能』など、ぜひ街をあげて実装を進めてほしい」と話した。
古里氏も、この意見に大いに賛同。「実証の街から実装の街へ。人々の目に触れて、アイデアが具現化された時に、初めてソーシャルインパクトが生まれる。実証をカタチにしてエコノミクスとして成立させるのが目指すべきゴールである。地域のさまざまなプレイヤーを巻き込んで、リスクを取ってやるべきだ」と語った。
伊藤氏もこれに続く。「現代の成熟社会においては、デジタル完結型の事業では難しく、フィジカルに近いところで、それをより良くするソリューションを作ることになる。ここでの課題は、実装の難しさだ。関係者が増えて自治体のルール設計も求められる。この社会実装の仕組みが整い、かつ、それがスピーディーに進められるようになれば、強いスタートアップ、強いソリューションが集まってきて、社会にも溶け込んでいく」(伊藤氏)
▲伊藤達彰氏(モデレーター)
さらに粟生氏は、「革新的なアイデアが社会実装に移ると、県民や市民にも浸透し、『名古屋は常にドローンが飛んでいてすごい』などと、自ら自慢をするようになる。街を巻き込み、県民や市民の誇りになるところまで続ける必要があると思う」と加えた。
古里氏は、自身の取り組みである電子地域通貨「さるぼぼコイン」の事例に言及。「2017年から使われている同通貨は、月額のチャージ額が約5億円に達し、一定の地域のインフラになっている。PayPayのリリース以前から高齢者が当たり前に使っていて、地域でお金を回すことが重要であるという啓蒙になっているのかなと。そういう積み重ねが、結果として自治体を変えていくのだと思う」と語った。
そして、古里氏に続くカタチで、「愛知に期待するのは『ヘルスケア領域』だ」と粟生氏は強調。「世界はロンジェビティ(健康寿命を長く保つこと)に非常に強い関心を抱いている。そんななか、愛知はMCI(軽度認知障害)の実証データを持っている。県民が定期的に長寿チェックができるなど、夢のような世界かもしれないが、妄想を実現していくのが社会実装だ」と考えを述べた。
●トークテーマ④ 「今後、愛知県が担う役割と、民間・スタートアップからの期待」
最後のトークテーマは、「今後、愛知県が担う役割と、民間・スタートアップからの期待」。粟生氏は、「質実剛健の愛知は非常にすばらしく、良いものをどんどん生み出せる。一方で、イノベーション創出に唯一足りないのが『熱狂』。ぜひ愛知から『熱狂』と『狂気』を届けられるよう、みんなで寄ってたかってイノベーションの風土を醸成していこう」と再度、強く呼びかけた。
伊藤氏は、「当社では、中部発の地域課題解決型シードファンドを作り、今では中部電力や敷島製パンなど多くの事業会社が参画されている。各社がエコシステムに注目し、新規事業の構築に取り組まれている印象だ。不確実性が高い領域だが、当社のようなファンドや自治体、事業会社などが役割分担しながら共に盛り上げていきたい」と話す。
そして、古里氏は、自治体関係者に向けて2つのポイントを伝えた。「1点目は、自治体の課題を民間の力をうまく活用して解決するきっかけとして、どんどんイノベーション創出に参画してほしい。2点目は、自治体が製品・サービスを導入する側になるのではなく、自身が課題のオーナーとして、積極的にオープンイノベーションに取り組んでいただきたい。愛知のバージョン2.0を盛り上げる機運にしていこう」と語った。
【トークセッション②】 共創で動かす地域の未来 ― イノベーションの最前線から考える、次の10年の連携モデル ―
セッション②では、「共創で動かす地域の未来 ―イノベーションの最前線から考える、次の10年の連携モデル―」をテーマに、以下のメンバーが登壇した。
<登壇者>
・一橋大学名誉教授・県立広島大学院経営管理研究科長 米倉誠一郎氏
・株式会社ミダスキャピタル 専務取締役パートナー 大櫃 直人氏
・株式会社 eiicon 代表取締役社長 中村亜由子氏 ※モデレーター
●トークテーマ① 「この10年のオープンイノベーション共創の変遷」
最初のテーマは、「この10年のオープンイノベーション共創の変遷」。まずは、自己紹介を含めながら、米倉氏と大櫃氏が、それぞれこの10年を振り返った。
冒頭、米倉氏は「この30年、僕たちは『イノベーション』という言葉で仕事をしてきたが、最近は使わないようにしている。その理由は、『イノベーションは手段であり、目的ではない』からだ。『うちはイノベーションに取り組んでいる』と言った途端に、思考停止になる怖さがあると思う。また、今の日本の最大の問題は、生産性が低く給料が安いこと。本当の問題は『物価高』ではなく、『生産性の低さ』だ」と指摘した。
▲米倉誠一郎氏
みずほ銀行で長年スタートアップの支援に尽力した後、PEファンドに転身した大櫃氏は、前職でイノベーション企業支援部を立ち上げるにあたり、日本のエコシステムの脆弱性に気づいたという。「日本からGoogleやHuaweiが生まれない理由は、ここにある」として、政府や大学などに働きかけ、エコシステムの重要性を繰り返し訴えてきた。それに加え、「一夜にしてゲームチェンジが起きる世の中で市場を取るには、従来の事業モデルでは立ち行かない。強い経営チームを作って最速で意思決定を行うスタートアップのような戦い方が必要だ」と見解を述べた。
▲大櫃直人氏
日本では、クローズドイノベーションの全盛期だった1990年代を経て、2003年に「オープンイノベーション」が提唱された。とはいえ、それ以前から共創事例はあり、ユニクロと東レが2003年に発売した機能性インナー「ヒートテック」は、1990年代後半から開発が始まっていた。その後、「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」を筆頭にIT・通信やインフラ事業者などがオープンイノベーションに乗り出した。
さらに、2015年からの直近10年では、金融業界や製造業も本格的にオープンイノベーションに着手。国の動きも活発化し、2015年にオープンイノベーション協議会(JOIC)が設立され、その後にはイノベーション促進税制が誕生した。2022年には、人材・ネットワーク、資金供給、オープンイノベーションの3本柱を軸にした「スタートアップ育成5か年計画」も策定された。そして、生成AIが台頭。現在、私たちは新たな産業革命の真っ只中にいる。
「この10年は、どうだったか」という問いに対し、米倉氏は「まだ十分とは言えないと思う。オープンイノベーションで『何を実現するのか』が最重要だ。ユニクロや東レは『オープンイノベーションをしよう』なんて言っていない。言葉は一度封印して、『何をやるか』を考えてほしい。一社一社が『日本のGDPを上げていこう』など、具体的に目標を掲げるべき」と切り込んだ。
続いて大櫃氏は、「この10年で、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)を作る、アクセラレーションプログラムを実施するなど『やった感』はあるが、残念ながら『PoC倒れ』の側面もある。模索し続けた結果、さまざまな課題が浮き彫りになり、これからの10年の指針が見えてきているのではないか」と考えを示した。
▲中村亜由子氏(モデレーター)
●トークテーマ② 「次の10年に向けた共創の展望」
続くトークテーマは、「次の10年に向けた共創の展望」。米倉氏は「本気でがんばらなきゃいけない。目的はハッキリしている」と見解を具体的に伝えた。
「我が国の財政構造は、厳しい状況にある。医療費と国債費で予算の約半分が失われ、インフラや教育費に使えるのは、わずか5%前後。次の10年に何をするかは、ここに全てのヒントがある。まず、医療制度を変え、医療費を削減しない限り、日本の財政はサステナブルにならない。インフラにおいては、スクラップアンドビルドの時代は終わり、閉館して再開発の目処が立たないビルが増えてくる。こうなると地方の公共施設が 統合しなければやっていけない。しかし、これがビジネスチャンスだ。こういった課題をどうにかするのが先決であり、次の10年は国内にものすごいチャンスが巡ってくると思う」(米倉氏)
国の財政視点で考えを述べた米倉氏に対し、大櫃氏は、民間企業の視点でこう回答した。「これまでのオープンイノベーションは、自社の技術の補完やアイデア出しに力点が置かれていたと思うが、それではダメだと気づくようになってきた。だとすると、1社では解決できないことを複数で解決することが重要になる。企業だけでなく、政府や大学も加わり、複合的に解決策を生み出していく時代に移ると考えている」(大櫃氏)
では、緩やかに衰退が進み、少子高齢化が避けられないここからの10年は、何が「肝」になってくるのか。この問いに対し、「絞り込まない。自分のあり方を自分で定義しないことが大事になってくる」と大櫃氏。さらに、10年未満の業歴で時価総額が1,000億円を超えた「GENDA(ジェンダ)」と「事業承継機構」の事例に言及した。アミューズメント事業を営むジェンダは、M&Aによる「連続的な非連続な成長」を戦略の柱としている。また、事業承継機構は、「事業承継プラットフォーム®」という仕組みを導入して事業承継問題の解決を目指す。
「いずれも、日本の強みである中小企業をうまくロールアップしているのが共通点だ。課題のある中小企業に、ITや経営の高度化を導入して蘇らせた。こうした事業承継も、新たな価値を創造していくスタートアップの一種だ。このように自社を勝手に定義しないことが重要になると考える」(大櫃氏)
続けて、米倉氏は「少子高齢化」というキーワードに対して「2つの重要な問題」をあげた。「1つ目は、その言説に惑わされないこと。世の中では『人手不足』が叫ばれているが、短時間だけ働きたい人や高齢者も含めれば、優秀な労働力がある。負のシナリオを描く前に、『この優秀な労働力をいかに再編するのか』が大きな柱となるはずだ。2つ目は、世界にはとんでもないマーケットが眠っているということ。インドネシアは約2億8千万人、インドは約14億5千万人。日本だけ見ていると暗くなるが、とはいえ国内でもやりようはある。さらに世界に視野を広げれば、チャンスはいくらでもある」(米倉氏)
重ねて、「シリコンバレーにはすばらしいエコシステムがあるのだから、日本人もそれを使ったほうがいい。この居心地のいい愛知から出て世界で戦う気持ちを持てば、まだまだ市場は大きく、悲観する必要はないと思う」と聴衆に呼びかけた。
この米倉氏の見解に対し、大櫃氏も「本当にそうだ」と深い共感を表した。「今がグローバル化のラストチャンスだと思っている。世界に目を向け、オープンイノベーションで新しいものを生み出していけば、勝機はある。愛知の温かいエコシステムも大事だが、もっと巨大なエコシステムがあるのだから、そこに行ってほしい」と鼓舞した。
●トークテーマ③ 「今、何をすべきか」
最後のトークテーマは、「今、何をすべきか」。米倉氏は、「日本の賃金を上げなきゃいけない。そんななかで、どうやって労働力を確保していくのか。これが今やるべきことだ。それに対し、労働者側のリスキリングも重要だ。例えば、中高年もAIを積極的に学ぶなどして、日本の労働力不足に備えていく。耳に心地いい『オープンイノベーションをやろう』と言うのではなく、『目的』が何より大事だ」と一貫したメッセージを届けた。
大櫃氏は、「価値の源泉が変わってきているのだと思う。それを踏まえて日本の勝ち筋を考えると、ものづくりや品質管理、おもてなしなどがキーワードになる。この領域で、ソフトとハード、大企業と中小企業とスタートアップ、あるいは官公庁など、さまざまな組み合わせで化学反応を起こすことが重要だ。そういう意味では、愛知は全てそろっている」と、改めて愛知の可能性の大きさに触れた。
最後に米倉氏は「今の日本のスピード感では、海外にやられてしまう。愛知には100%を作り切る確かなものづくりの力があるが、『ある時は90%で出してみて、マーケットの判断に委ねよう』というスピード感が混ざると、すごいパワーを発揮するはずだ」とメッセージを寄せた。
取材後記
2つのセッションでは、熱気に包まれた会場が、登壇者の熱でよりヒートアップ。イノベーション創出の土壌作りや愛知のオープンイノベーション事業に尽力してきた登壇者による本質を突いた指摘や激励の言葉は、多くの聴衆の琴線に触れたはずだ。また、オープンイノベーション創出における「愛知の本気度」を実感する場面も多かった。この4月からバージョン2.0に飛躍していく愛知の「革新事業創造戦略」にも期待が高まる。
(編集:眞田幸剛、文:小林香織、撮影:佐々木智雅・齊木恵太)