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埼玉発・15の共創プロジェクトが集結!渋沢MIXオープンイノベーションプログラム『Canvas』デモデイレポート【#4】――SHIN LOCAL、SAL、さかなとが取り組んだ共創事業とは

埼玉発・15の共創プロジェクトが集結!渋沢MIXオープンイノベーションプログラム『Canvas』デモデイレポート【#4】――SHIN LOCAL、SAL、さかなとが取り組んだ共創事業とは

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埼玉県が主催する「渋沢MIXオープンイノベーションプログラム 『Canvas』」の成果発表会が、2026年3月6日・7日の2日間にわたって開催された。同プログラムは、埼玉県内外の企業同士が業種の壁を越えて組み合わさり、企業・社会課題を解決する新たなビジネスを共創することを目的としており、今年度は15件の共創プロジェクトが誕生した。

TOMORUBAでは、今回のデモデイで発表された全15プロジェクトを、全5回の記事に分けて紹介する。本記事はその第4弾として、SHIN LOCAL×YOUSAL×JTBさかなと×アクト・ノードの3プロジェクトをピックアップ。――各チームがどのような背景から共創に取り組み、どのような価値創出を目指しているのか。デモデイで披露されたピッチの内容とともに、その取り組みをレポートする。

【株式会社SHIN LOCAL(ホスト企業) × 株式会社YOU(パートナー企業)】

発表タイトル 『埼玉県秩父地域で創る観光×教育の新体験市場~観光でも移住でもない第三の選択肢を創る~』

▲左:株式会社YOU 柳瀬氏、右:株式会社SHIN LOCAL 清水氏

埼玉県長瀞町を拠点に自然体験プログラムやオリジナルソープの販売などを展開するSHIN LOCALと、同県小川町でブランディングなどのコミュニケーション制作を手がけるYOUは、秩父地域の体験と教育を掛け合わせた新体験市場の創出を目指した。

両社は、都市生活者やインバウンドに向け、観光でも移住でもない新しい地域との関わり方を模索した。その中で着目したのが「荒川流域」だ。荒川は秩父市から東京都江東区まで全長173kmに及び、流域には1,000万人以上が暮らしている。しかし、現代では人と川との関わりは希薄化し、流域の魅力は十分に発掘・発信されていない。こうした課題を解決し、都市生活者に荒川流域への帰属意識を持たせることで、新しい可能性を引き出せると考えた。

これを受けスタートさせたのが「WITH ARAKAWA 荒川流域探求プロジェクト」だ。「川から広がるまだ見ぬ世界へ出かけよう」をコンセプトに、”遊ぶ、学ぶ、守る、備える”の4つをテーマに掲げた。プログラム期間中には、流域の水質調査やニーズアンケートを実施したほか、具体的な体験プログラムの開発を進めた。

その一つが、親子向けの秩父札所をめぐる体験である。モニターツアーには都内の親子が参加し、子どもの反応や興味の対象を検証した。また、インバウンドや都市部からの移住者をターゲットにした横瀬町の里宮神楽体験では、外国人モニターからフィードバックを得て内容をブラッシュアップした。これらのプログラムは既に予約受付が開始されており、順調な滑り出しを見せている。

▲成果発表会の展示ブースでは、荒川流域の写真パネルや地図を設置し、その魅力を発信した。

今後は、2028年に向けて体験型宿泊拠点「CONNECT WITH ARAKAWA」の開発を進め、滞在を通じて流域への帰属意識をさらに高める仕組みを構築する。あわせて、企業が参加して上流から下流まで川の魅力や危険性を学ぶリバークリーン活動も計画中だ。次世代の若手ガイドを中心に開発されたこれらのプログラムを中下流域にも広げ、流域住民のウェルビーイング向上や自然・文化の継承、ローカルガイドの育成を進めていく。

【株式会社SAL(ホスト企業) × 株式会社JTB(パートナー企業)】

発表タイトル 『埼玉発・未来のオリンピアン育成プロジェクト』

▲左:株式会社SAL 清水氏、右:株式会社JTB 芳澤氏

埼玉県内で小学生向けのスポーツ学童を運営するSALと、グローバルなネットワークを持つJTBは、スポーツと英語を掛け合わせ、子どもたちの新たなキャリア形成を支援するプロジェクトに取り組んだ。

日本のスポーツ環境ではプロへの道は狭き門であり、スポーツに打ち込むことが将来の進路選択の足かせになるケースも少なくない。そこで両社は、スポーツを武器にグローバルな舞台で活躍し、海外の大学進学や奨学金獲得など多様な進路を選択できる環境づくりを目指した。当初はオリンピアン育成を目標に掲げていたが、実証を進める中でプロ育成に限定せず、スポーツと英語を通じた豊かなキャリア設計へと方向性をシフトさせている。

開発を進めるのは、世界最大級のスポーツ専門教育機関であるIMGアカデミーなどへのサマーキャンプと、単発の経験で終わらせずそれらを線でつなぐ継続的な英語プログラムだ。プログラム期間中にはSALがIMGアカデミーの視察を実施した。同施設は単なる競技施設ではなく、大学進学のプラットフォームとして機能しており、スポーツを通じたキャリア形成に最適な環境であることを確認した。

こうした本場の環境を肌で感じる1週間のサマーキャンプをフックとし、渡航前後で実践的なコミュニケーション能力を養うスポーツ特化型英語プログラムを構築する。ターゲットは、帰国後に継続して学ぶ時間が確保でき、海外のボーディングスクール入学要件を満たす準備期間として最適な10歳(小学4年生)に設定した。

参加者の発掘にも独自のアプローチを取り入れる。スポーツ成績が優秀な子どもには世界基準の英語を教える一方、国内在住で英語が堪能な子どもには、動作解析などのICTを活用したスポーツテストキャラバンを実施して競技適性を見出す。

収益モデルとしては、継続的な学習を支える英語スクールの月額課金に加え、企業の協賛による奨学金制度を想定している。子どもたちの成長と挑戦を支援するストーリーは、企業の社会貢献活動としても賛同を得やすいと見込んでいる。今後は国内でのプロトタイプ版サマーキャンプの実施やスポーツ英語教室の準備を進め、スポーツと英語を両立する新たな教育市場の開拓に挑む。

【株式会社さかなと(ホスト企業) × 株式会社アクト・ノード(パートナー企業)】

発表タイトル 『IoT×アクアポニックス×陸上養殖~持続可能な陸上養殖で地域創生~』

▲左:株式会社さかなと 鎌田氏、右:株式会社アクト・ノード 百津氏

温泉施設などを運営する企業グループの新規事業として設立され、埼玉県神川町で陸上養殖事業を展開する「さかなと」と、一次産業のDX化を推進するアクト・ノードは、IoTとアクアポニックスを掛け合わせた持続可能な陸上養殖システムの構築を推進した。

海なし県の埼玉でサバの陸上養殖からスタートしたさかなとは、閉鎖循環式システムでの海水魚飼育の難易度の高さに直面していた。サバは水質変化に敏感で飼育が困難になるなど、ビジネスとしての安定化や収益化までに時間を要する点、さらに異業種参入ゆえの専門知識やノウハウ不足が課題となっていた。このため、農業や畜産、水産養殖の生産活動をデジタル技術で支援するアクト・ノードをパートナーに迎え、持続可能な事業モデルの構築を目指した。

両社はまず、対象とする魚種をサバからサーモンへ見直した。それに加え、魚の排泄物を微生物が分解して植物の栄養とし、浄化された水が再び水槽へ戻る循環型システムであるアクアポニックスを導入した。これにより、出荷までに長期間を要する魚だけでなく、40日から60日程度で収穫可能な野菜の生産を組み合わせることで、短期的な収益サイクルの確立を図っている。

この複雑な循環システムを支えるのが、アクト・ノードが提供する生産管理アプリだ。水温や溶存酸素などの環境データに加え、給餌や設備の稼働状況を24時間体制で記録し、AIカメラを用いた生育状態の把握も行っている。蓄積されたデータをグラフ化して因果関係を可視化することで、経験の浅いスタッフでも異常の早期発見や原因究明が可能となった。AIが監視役を担い、不測の事態を未然に防ぐ仕組みは、異業種からの参入企業にとって大きな助けとなっている。

今後は、2月に開設したアクアポニックス施設での生産を軌道に乗せ、今春からの野菜出荷を目指す。2026年冬には、グループ会社が運営する温浴施設などの飲食エリアで、生産したサーモンと野菜を使った埼玉産の寿司を提供する計画だ。強みである自社の出口戦略を活かしながら、将来的には再生可能エネルギーの活用や資源循環を体験できる施設を展開し、陸上養殖を中心とした新たな産業の輪を広げていく展望を語った。

取材後記

多岐にわたるテーマから既存の常識を覆すような3つのプロジェクトが登場した。観光でも移住でもない荒川流域への帰属意識という新たな関わり方を提案するSHIN LOCALとYOU。プロを目指すだけではないスポーツと英語の掛け合わせで、子どもたちのグローバルな進路を切り開くSALとJTB。海なし県の埼玉からIoTを活用して持続可能なお寿司の未来を守るさかなととアクト・ノード。いずれも単なる課題解決にとどまらず、社会に全く新しい選択肢を提示する野心的な取り組みだ。異業種の知見が交わり、埼玉からどのような革新的なビジネスが社会実装されていくのか、今後の展開からますます目が離せない。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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渋沢MIXオープンイノベーションプログラム「Canvas」

渋沢MIXオープンイノベーションプログラム「Canvas」は、埼玉県内企業の成長を支援するため、 県内企業と全国の企業をマッチングし、新規事業創出や企業の課題解決に向けた伴走支援を行うプログラムです。 プログラムを通じて、持続的にイノベーションが創出される共創のエコシステム構築を目指します。