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【連載/4コマ漫画コラム(33)】異動してきた若手をイノベーション色に染めるには?

【連載/4コマ漫画コラム(33)】異動してきた若手をイノベーション色に染めるには?

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新人即時品質矯正プロセス

戦後、ものづくり・製造業で伸びてきた日本。その核となる強みが「品質管理」。そのプロセスは、モノ(製品)にだけでなく、社員の品質のバラツキをもなくことが当たり前の文化として定着しています。人事教育、日々の管理、上司からの指示、会社の常識(空気)の醸成……。

そのため、新入社員も入社時はまだ個性豊かで「バラついて」いたのにも関わらず、あっという間(1年とか2年とか)で「立派なサラリーマン」に品質が揃えられて(矯正されて)しまいます。

昔はそこまでプロセスが確立していなかったので、入社10年を越えてもある比率(10%とか)で「変なヤツ」がいたものですが、それは今や絶滅種(絶滅危惧種を越えて)になっています。

矯正・品質管理された社員は「しっかりQCDを守って既存事業をこなす」ための人材としては最高です。しかし、不確実性の塊のような「新規事業」や「イノベーション」のためには、この「品質管理されてしまった」若手をどうするかが大きな問題です。

STEP 1 : 人間に戻す

「新規事業」や「イノベーション」の部門に若手(入社2-3年目)が異動してきたときには、「既存事業」でしっかりと身にまとってしまった強力な「垢」をそぎ落とし、脱がさなければなりません(もちろん、「既存事業」にとっては「垢」ではなく「とても大事な戦闘スーツ」なのですが)。

その第一ステップは「自分って」ということに想いを馳せることです。

「なぜこの会社に入ったのか」「どういう人生を歩みたいと思っていたのか」……そういう「人として当たり前のこと」を考える余地があっという間になくなっていたことに気が付いてもらうことが大事です。誰も学生時代から「サラリーマンになって自分を捨てて時間を過ごすことが夢だ」なんて思っていません。実態は分からなくても「会社に入ったらこういうことをしたい」「こんな日々を過ごしたい」となんとなくは思っていたはずです。

それを引き出すために有効なのが「雑談」。既存事業では最重要項目の一つが「効率化」であるため、なかなか「自分を見つめる」なんていう悠長な時間は持てません。

アナタが部門の責任者であれば、是非、そういう「雑談会」の時間を定期的に持つようにしましょう。お題は「雑談の時間」でもいいのですが、なかなかそれだと「雑」は「悪」だと刷り込まれている人たちにはキツイので、私は「One Level Up Meeting(OLUM)」とか名付けて、「今の立場より上(部長とか社長とか)になったつもりで、会社の方向性を議論してみよう」とか「今の人類の問題をもっと上から考えてみよう」という(結局は)「雑談会」をやっていました。そうすると、囚われていた日々の自分から幽体離脱して「そうだ、昔は自分もそういう視点を持っていたなあ」と思い出すきっかけになります。

STEP 2 : 大丈夫だよーん

新規事業やイノベーションで重要なのが、「リスクを平気で取る」ことです。ただ、一度「既存事業として周りや上司に従っていさえすれば『安全』」と思ってしまった若手にとっては、新規事業などにチャレンジするのはとても大きなリスクに感じてしまい、足が縮こまってしまって動けません。

まずは、アナタ(新規事業の上司)自身が、リスクをとって走り回る姿を見せるのが大事です。「へー、そんなことしても大丈夫なんだ」「あんな類のことをやってきても部長くらいにはなれるんだな」と、よく言われるロールモデルとはちょっと違う「大丈夫なんだな事例」として、自分自身を見せることです。その時の一番のポイントは「いつも明るく楽しそうに」です。私は「リスク?なんで?別に悪いコトをしなければクビになったりしないよ」を口癖にしていました。

大体、「既存事業にいれば安全」と思っていること自体が大きな間違いです。既存事業にしがみついたままだと、(会社自体もそうですが)狭い世界でしか動かないので自分自身の足腰が知らず知らずのうちに衰えてしまい、大きな変化がやってきたときに対応できません。(長い人生、必ず「大きな変化」がやってきます。)「自ら道を拓く力」をつけ、ある意味「真の安全」を得るためには、会社での新規事業などのリスクを積極的に自ら取る方が絶対にお得なのです。

そういう話をあちこちで雑談気味に話しながら、実際にチャレンジする「場(=チャンス)」を与えましょう。後は本人次第です。そして、本人にあまり気が付かれないように、上司としてのセーフティネット(なんかあったら尻ぬぐいするとか、失敗よりも挑戦を評価する、とか)を準備・実行しましょう。

STEP 3 :『多産多離』を受け入れる覚悟

あれこれ新規事業やイノベーションの活動に挑み続けていれば、2-3年で着飾ってしまった「無難なサラリーマン服」ではなく、自らの肌が強くなり、感覚も磨かれ、筋力も付きます。

ただ、全員がそうなるわけではありません。もし社員全員が「新しいこと好き」や「リスク好き」になっちゃうと、会社の日々の事業がまともに回らなくなって潰れます。……が、大丈夫です。絶対に(と言い切りますが)、「多すぎる」という状況にはなりません。私の感覚的な数字だと、そういう「新しいこと好き」や「リスク好き」は5%くらいの人数が健全です。しかし現実は、殆どの大会社では5%には大きく届かない人数しかいないと思います。

そして、「新規事業」や「イノベーション」に目覚めると、会社を辞めて自分の人生を自らの足で歩きだす若手も多く出てきます。私も、沢山の部下や一緒に活動していた若手が会社を辞めました。(今もまだポツポツと辞める若手がいます)

周りの管理職から、「ほらみたことか」とか「部下が辞めるなんて最低の管理者だ」とか陰口をよく叩かれましたが、私は常にこう言っていました。

「新しいことをやるためによく言われる『多産多死』の考えがあるでしょ。沢山の失敗があって初めて何かが生まれる。これと近いことだけれど、新規に向いた社員も「多産多離」(「し」でなくて「り」)。結局は既存事業のメンタリティから変化できない若手もいれば、会社を飛び立っていく若手もいる。でもね、ほんの少しでも残れば、それが会社を変える力になる。100人作って、5人残れば5/100。御の字でしょ。「多産」せずに分母が「0」のままだと分子も0のままだからね。」

この「多産多離」を上司であるアナタが覚悟をしていないと、本気で新しい世界を創ることはできません。……なかなか理解されませんでしたが。ま、そういうもんです。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

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