【連載/4コマ漫画コラム(78)】もう2年、たった2年、そして2022年
2022年は新規事業にとって
超遅ればせながら2022年あけましておめでとうございます。
新年になり、今年は新規事業にとってどんな年になるかを考えてみようと思います。
昨年の年初には「2021年の新規事業トレンド予測」と題して、「2021年度の新規事業の注目事業領域は、環境など時間がかかる『長期タイプ』の領域と、コロナによって生じた『目の前のチャンス』の領域があります」と書きました。読み返してみると、いいこと言っていました(^o^;)。
「新規事業の注目事業領域」そのものは昨年とはそれほど大きく変わらないので、今回は違う観点で話したいと思います。
まずはタイトルの解説から。なんとなくお分かりになる方も多いと思いますが。
「もう2年」は世界がコロナに襲われて「もう2年」も経ったということです。第X波が次から次に襲ってきて、中々出口が見えない状況が「もう2年」も続いています。
「たった2年」は、そのコロナ禍の「たった2年」でそれまで中々変わらなかったことが一気に変わったことを指します。「テレワークが一気に普及」「通勤電車の込み具合が大きく改善」「東京一極集中の緩和」などです。(『どうしても変わらなかったことが一気に変わった』の詳細はこちらにも書きました。)
それら「2」が沢山入っているのが「2022年」。(200年後がもっとすごいけど)
たった2年で世界は変わってしまいました。変わったというより、別の世界に突然ワープしてしまった感じさえします。
社内説得がしやすくなる
新規事業の開発や推進を行っているアナタにとっても、この「別の世界になった」というのは大きなファクターです。
新規事業担当者が多くのエネルギーを割かなければならない「社内の既存の古い文化や考え方を突破して説得する」ということが、もしかしたら随分とやりやすくなるのではないかと思っています。
新規事業担当者はいつも(少なくとも少し先の)未来を見ています。そのため、例えば「テレワークが当たり前の世界」を前提として、「働き方はこうなる(一時よく言われたノマドワーカーなど)」というような想定から、そのためのサービスや商品などを新規事業として起こそうとしていました。ところがコロナ前はその「新規事業担当者にとって当たり前の世界」が当たり前と感じられない「旧体質」の上司や役員の理解が得られず、大変苦労するのが「当たり前」でした。ところが「新世界」が突然やってきて、そういう旧体質の方々も否応なくその世界に放り込まれ、たった2年で「そりゃそうだな」と思うようになりました。
あまりに違う土台の上の人を説得する必要がなくなり、随分と進めやすくなる新規事業が今年は増えていくでしょう(と期待しています)。
また、抽象化レベルは少しアップしますが、「突然世界は変わるものだ」ということを全ての人が「当たり前の一つ」として捉えるようになったのも、今ままだ一般化していない「新規事業で想定する世界」を受け入れる素地になったとも言えるでしょう。
もっと未来の解像度を上げられる
また、新規事業を開発する人自身にとっても、「こういう世界がくるはずだ」という単なる想像から、「もうその世界の一歩目に踏み込んでいる」というリアルな経験は、「一歩目」の短期的な視点だけではなく、「新しくなった世界での当たり前」が継続し、次に、またその次に、どういう具体的な状況が生まれてきて、「誰がどんな状況でどんなPAINを持つか」という「中・長期」に向けた新規事業の方向性を解像度高く考えることができるようになります。(「一歩目」の短期的な「「誰がどんな状況でどんなPAIN」をコロナのおかげでリアルに得られやすくなる、ということはこちらにも書きました)
環境問題と移動制限で
また、この2年の間にコロナとは直接関係がないけれど、「環境問題」への意識と理解が急激に大きく・深くなりました。これも「環境関連事業を説得」するための大きなアドバンテージが以前よりは得られるようになったと思います。
また、コロナのせいで「移動すること」を思いっきり制限された世界になり、とても大変である一方、「移動しなくてもいいかも」と実感を持って思える項目も激増したと思います。移動はエネルギーを消費し、環境を悪化させます。環境問題の一つとしての「移動」に関わることを「新しい世界ではどうするか」と考える新規事業領域が益々リアルに検討できるようになるでしょう。
ニセモノの術中に気をつけて
この2年で世界は変わり、古い事業や企業文化を持続することだけに興味があった旧体質の人達の中でも、さすがに「何か新しいことをしなければ」と思う人の割合が増えているのは間違いありません。また、環境問題をベースとしてESG投資などの存在感が増し、旧来のビジネスのやり方では生き延びてはいけないことはさすがに感じています。
しかし、どこかで「まあ、嵐が過ぎ去れば」と無意識に思っている人も実は多いのではないでしょうか。世界は変わったのです。それをどうしても心底からは認めたくない。そういう人達は、トレンドや流行りのように、「SDGsだ!」「新規事業だ!」「DXだ!」と叫びますが、シンプルに言うと「ニセモノ」です。
本気で新規事業を行う人達にとって、この「ニセモノ」は結構やっかいです。ちゃんと見抜いて、表面的に使える部分は使って、でも本質は見失わないようにすることが重要です。
「ニセモノ」の術中にはまって、気が付いたら「自分の志」とは全く違うことになっていないように気を付けましょう。新しい世界になったのだけれども、古い世界も残ってしまっているので。
2022年がアナタにとって素晴らしい年になることを願って。
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。
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