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【連載/4コマ漫画コラム(70)】2021年の新規事業トレンド予測

【連載/4コマ漫画コラム(70)】2021年の新規事業トレンド予測

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超・遅ればせながらあけましておめでとうございます。今年の正月は例年とは全く違った感じでしたね。新年なので、今年の新規事業開発のトレンドの予測をしてみたいと思います(半分は予測、半分は期待かもしれませんが)。

今年の特徴は「長期視点の新規事業」と「今年実装する新規事業」の両極端な2領域が活性化することです。

環境を中心に長期視点の新規事業が

こちらも超・遅ればせながら、やっと日本も政府が具体的な環境目標を掲げました。各国に比較してあまりに遅過ぎたり、「ガソリン車廃止」という言い方でハイブリッド車(HV)の延命を図ろうという中途半端な考えが見え隠れするのは残念至極だけれど、「お上に従う、頼る」のが染みついている日本にとっては大きな転換点を迎えたと言っていいでしょう。

これまでも沢山の大企業やベンチャーが「環境関連の新規事業」にチャレンジしてきましたが、「環境」のための事業の特徴は「やたら時間がかかる」ということでした。そのため、「新規事業と言っても、数年くらい(5年±2年)で結果を出さないとな」というような感覚で新規事業を取り扱っている大企業はどうしても腰が引けがちでした。多くの大企業が、「中期経営計画」という名で作っている戦略は3年だし、「中期2期分」としても6年ということもありました。また、オーナー会社でないサラリーマン社長の場合は数年で代わることも多く、長期的な新規事業に腰を据えて取り組むのは中々難しいのが実情です。

一方、ベンチャーに投資を行うVC(Venture Capital)はファンドの運用期間(通常10年)で償還(儲けを投資元に返す)しなければならないので、ファンド設立後2〜5年以内に投資をしたとしても、期間終了までの数年以内にIPOやM&Aを迎えてくれるベンチャーでなければならないので、VCとしての投資対象から外れてしまう案件も多くありました。

ほんの数年前までは「本当に地球の温暖化は進んでいるのか、証拠はあるのか」というような「証拠が出そろわないと経済的に見合わないことには手を付けたくない」というのが透けて見える意見が結構大手を振ってあちこちで見られましたが、証拠が急に揃ったわけではなくても「これは本当にまずい、人類を挙げて取り組もう」という動きがメジャーになりました。「疑わしきは罰せず」ではなく、「疑わしいだけかもしれないけれど、今からやっておかないと完全に手遅れになる」ということが、やっと主流になり本気になりました。(トランプ大統領の退任でアメリカもやっと……ですが)

最近よく目にするESG投資(Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治))でも「環境」は重要項目として捉えられ、企業が持続していくためには必須の項目となりました。VCも長期運用/償還期間のファンドを持つところが増えていくでしょう(ファンド形成のためのお金も集めやすくなる)。

一企業、一ベンチャーだからこそ

急激に環境の重要性の認知度がアップした2021年こそ、これまで中々始められなかった「長期的な環境の新規事業」を提案し、資金・メンバーを獲得し、開始するチャンスです。

「でも、環境問題って、それこそ国を挙げて政策などで大きなインフラ投資の後押しをすることじゃないの?一企業が発奮して『今年はやるぞ!』と言ってチマチマ初めても仕方ないのでは……」と思っている方もいるかもしれません。

確かに環境問題はインフラを中心とする世界的規模での大きな取り組みが必須です。その大きな取り組みがどのようになるのかを想定して、その一部で存在感を出せる新規事業に取り組むことも、その領域においては重要です。ポイントは「いかに早く正確に大きな施策の情報を把握して、その中のどこで勝負するのかを決めて新規事業を起こすこと」でしょう。もちろん、これはこれで重要ですし必須です。

しかし、環境問題に影響を与えるもう一つのトレンドを忘れてはいけません。「中央集権型」から「分散型」への移行です。国や世界全体をカバーするインフラではなく、各地域特有の事情や強みを活かした「環境のための事業」が沢山起きてくるというトレンドです。大企業もベンチャーもそういう地域密着型の地に足が着いた新規事業を沢山起こしていくことになるでしょう(し、そう期待します)。

長期ターゲットの環境関連新規事業に取り組むことが当たり前になる時代なのに、全く他人ごとと考え聞く耳を持たないような経営者の会社で働いている方は……そんな会社はどちらにしろ消え去るので、早いうちに新たな人生を考え、ご自身の「環境」を変えちゃいましょう。

そして、「今年実装する」新規事業

長期の新規事業開発が活性化する一方で、今年は「超短期」の新規事業がどんどん芽吹いていくでしょう。

そうです。COVID-19(新型コロナ)の「せい」であり「おかげ」です。

新規事業の出発点は「誰がどんな状況でどんな課題を持っているのか」を明確にして、その「なんとかしてあげたい人・コト」をビジネスとして解決することです。COVID-19によって、多くの具体的な課題(Pain)が噴出しています。ワクチン開発は感染抑止という超明確な課題に背中を押され、人類の科学技術のレベルの高さを見せつけ、信じられないくらいの短期間で開発され接種が始まっています。同じように、自分達が培ってきた技術や知見をCOVID-19で生じた多くの課題のどれかにピンポイントでいいので解決策として作り上げるスゴイチャンスの年です。

アナタ、ロボット技術やってません? 

医療崩壊が大きく懸念されています。沢山の看護師さんが必要です。その業務を細かく分解していけば、シングルタスク系のロボットでカバーできることも沢山あるのではないでしょうか。看護師さんのお仕事全般をすべてカバーできるスーパー人型ロボットの必要はありません。

「ロボット大国」を謳いながら、東日本大震災時の原発事故ですぐに活躍できるロボットを大企業が中々提供できなかった歯がゆさを思い出します。

もちろん、ロボットの技術はあれこれ持っていても、現在のCOVID-19の課題を解決するためには、病院の業務が分からないとか、実際に使ってもらうためには国の認可が必要だとか、色々と壁はあるでしょう。新規事業の開発に壁は当たり前です。「今そこにある危機」を「今ここにある技術」でなんとかしてみようではありませんか。そのためには自社だけでは困難を乗り越えられません。違う知見や専門性を持った志を共有できる様々な企業や個人と協業していくのがキーとなります。

医療現場でのシングルタスクのロボットだけでなく、急激に広がったテレワークにおける様々な課題、お年寄りが感染リスクを避けるために孤独になってしまっている問題、地震などの震災がこの状況で起こった場合の避難所の課題……COVID-19のおかげで、アナタの会社、アナタ自身の技術を活かした「今できる解決法」が山ほどあるはずです。もちろん、既に様々な解決法の試行や新サービスの提供が始まっていますが、まだまだ空白領域があります。それにチャレンジする最良の年であることは間違いありません。

そして、このCOVID-19が落ち着いた後にも、それ以前とは違う「新たな当たり前」が沢山定着する世界が来て、その中で確固たる立ち位置を先導者として獲得する重要な機会です。

(*4コマ漫画の中の「low-hanging……」とは、元は「low-hanging fruit」のことで、目のまえにぶら下がっている果実の喩えであり「大きな努力をしなくても得られる成果(短期的な成果)」のことです。)

今年は新規事業開発担当の方々、また、新規事業をこれからやりたいと思っている方々にとって飛躍できる年です。大変な状況ではありますが、ま、笑顔で突破していきましょう!


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

▼これまでの4コマ漫画コラムがアーカイブされている特設ページも公開中!過去のコラムはこちらをご覧ください。

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