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【連載/4コマ漫画コラム(4)】「育てる」のじゃなく「育って」「巣立って」

【連載/4コマ漫画コラム(4)】「育てる」のじゃなく「育って」「巣立って」

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■上から目線じゃ育たない

最初にはっきり言っておきますが、そんなに簡単に「新規事業」や「イノベーション」を創れる会社にはなれません。応急措置のように短期間に無理やりいくつかの新規事業を起こしたり、イノベーションの組織を作ったりすることはできるかもしれませんが、長続きせずに気が付くと自然消滅してしまいます。 「人」が育っていない限りはダメです。 「じゃ、育てればいいのね」ということで、「管理職」と名がつく人は「管理」をして部下を育てようとしてしまいます。

 ●しっかりと目的や計画を策定させて管理して、育てる 

●経験が浅いので、指導をして育てる などなど。 

全て「上から目線」で「育ててやる」という気合にばかり溢れています。そうやって「育ててやって」も出来上がるのは「上司に従順な指示待ちの社員」です。 

ちょっと考えれば分かるはずですが、「新規事業」や「イノベーション」というのは、その管理職の世代の方々にはできなかったことへのチャレンジによってしか生まれないので、「指導」することはできないし、やってはいけないのです。 「いや、私はそんな狭い『育て方』はしていない。まずは、『失敗』が人間を成長させるから、『失敗しろ』といつも鼓舞している」という方にも時々出会いますが、それもほぼ同じ。

「担当になったこの新規事業の部署はどうせ失敗するな・・・でも、ま、いいか、『失敗しろ』って言われているし」と「失敗しろ命令」に従順になって「この新規事業担当から早く外れないかな。部署がつぶれれば自動的に外れるから、ちょっとの我慢か」ということにもなりかねません。 大事なのは「自分事」として挑戦することです。そうすれば「育つ」。「育てる」のではないのです。 では、どうすればいいのでしょうか。  

■真の「応援者」になろう

若い人が自ら「これをやりたい」「これをやることが会社にとっても大事なはずだ」という想いが湧いてきたときに、まだ本人が多少迷っていても、「いいね!ちょっとやってみよう。応援するから!」と言って背中を押す「応援者」になりましょう。 経験を積んできたあなたから見ると「そんなのうまく行くはずがないな」と思っていても。あなたの「経験」を越えるところまで若手が行ってしまって、何かを見つけて思いもしない何かに発展するかもしれない、という漠然とした期待で応援しましょう。 

そして大事なのが「応援」の内容。よく、「応援するよ」と言いながら、「でも予算もないし、人もつけられないけどね」と実質的な部分は全くサポートせずにエールだけ送る人たちがいます。これはダメです。少額でもいいので、なんとか予算を調達したり、必要なメンバー・サポーターを充てるために上司との交渉のサポートをしたりしましょう。 あなたの立場によってできることは限られてくるかもしれませんが、立場・権限を越えた「応援」ができるかどうかも、あなたにとってのイノベーションです。 

そうやって、まだまだ生煮えの「若い人たちの想い」を一見バカみたいに「いいね!がんばれ~!」って応援していると、同じくらいの立場や年齢の人たちから「何を甘いコト言っているんだ」「忙しいウチの仕事に支障をきたすじゃないか」とかの批判や苦情があちこちから沸き上がります。無視してもいいものが大半ですが、大事な人にはイヤでも仲間になってもらうまでしつこく話をして説得しましょう。それが「応援者」の重要な役割の一つでもあります。 

私も(株)リコーの新規事業開発センターの副所長をやっている時には、様々な案件を他部署の若い人達が相談しにきていたので、「瀬川、お前『たかれている』ぞ」とか言われていましたが、「いいじゃん、『たかられている』と『たよられている』は一文字しか違わないし」と応えていました。 

「そうは言っても、失敗したらその若い人の人生にとって大きなダメージになるのじゃないか」と心配されるかもしれませんが、「自ら」チャレンジしていけば、決して「あー、やらなければよかった」とはなりません。他人のせいにできるような状況だと後悔することになります。それ以上に、大企業の中での小さなチャレンジの失敗なんて、実はなんのダメージにもなりません。本人も会社も平気です。ちょっと擦り傷ができるくらいです。多少、本人は短期的な出世が遅れるとかはあるかもしれませんが、チャレンジし続ける人は結局社内でもそのうち重宝されるようになり力を持つようになります。悪いコト(法律に抵触したり、人間としてやってはいけないこと)さえしなければ、いいのです。 もちろん、応援者としては「失敗」の場合に、彼らの次の場も一緒に考えてあげることも重要なセーフティネットです。  

■「出る杭」の若い人は「もっと出る杭に」と言う応援者を探そう

一方、若い人はどうやって応援者を探せばいいのでしょうか。 想いがあるエネルギッシュな若い人の中には、直属の上司などに日々否定的なことばかりを言われて、ほぼ、メゲかけていることも多いです。残念ながら、会社の中でそこそこの立場にいながらも応援者として若い人たちをサポートする人はそれほど多くありません。でも、必ずどこかにいるものです。同期などから情報を収集し、そういう応援者になりそうな人を見つけて、直接コンタクトしてみましょう。「俺にそんな話を持ってくるな!」とか「部門長を通してから来い」なんていう人はニセモノですから、「ははーん、そうかあ、ニセモノかあ」と心の中で思ってサッサと次を探せばいいのです。そしていい応援者を見つけて、エールを受けながら、自分で進んでいきましょう。 

大事なのは「自分事」として「新規事業」や「イノベーション」に挑戦すること。そうすれば、「え?失敗?あ、そうですね、確かにあのプロジェクトはうまくいかなかったけど、そのおかげで次の道が見えてきて、今、頑張ってます。楽しみにしていてね」となります。 行ってらっしゃ~い!!  


【まとめ:イノベーション人材の育て方】

●「育てる」ことはできないと自覚していますか?若手が自分で「育つ」しかない 

●褒めて、バカみたいに応援するのが役割 

●応援は、言うだけでなく、予算/人の手当や、交渉のサポートもイノベーティブに 

●失敗なんて会社にも本人にも擦り傷レベル 

●若い人は諦めずに応援者を探し続けよう。きっといる(ニセモノにひっかかないように)  


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

 32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

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