【連載/4コマ漫画コラム(31)】『2018年 オープンイノベーション領域』天気予報
穴埋めオープンイノベーションから
2018年になってもう一ヵ月も経ってしまいましたが、まだ一ヵ月なので、2018年に「どういう領域がオープンイノベーションで盛り上がりそうか」というお話しをしようと思います。
「領域や分野」というと、当たり前のように「IoT /ロボット/AI/農業/医療」などの言葉が浮かびますが、それはそれで当然なので、ちょっと違う切り口から私の予想(と期待?)をご紹介しましょう。
これまでのオープンイノベーションの主流は(残念ながら)「穴埋め型」でした。自分たちの会社がある事業を立ち上げたり強化したりするために「足りないところ」を補填してくれる相手(企業やベンチャーや大学)と組む。これはこれでとても大事なことですし、「自前主義」に比べると大きなチャレンジにつながり時間も短縮できます。
ただ、「穴埋め型」では「現時点でぴったりと合う相手」を無理やりにでも探そうとしてしまいがちです。
2018年は「長期や大きな絵を一緒に描き、短期で各々の会社の新規ビジネスを起こす」(新規創造型)というオープンイノベーションがいよいよ本格化する年になります(なると期待しています)。(関連記事はこちら)
その①「人類の課題」
「長期や大きな絵」の代表的な領域としては、「人類の課題解決」と「大きなサービス」が考えられます。
「人類の課題解決」に関しては、昨今急速に注目を浴びてきたSDGs(Sustainable Development Goals) に掲げられている領域や課題があります。
「ある長期課題」をSDGsなどを参考にして決めて、それを解決するために色々な会社やベンチャーやNPOや大学と一緒になったプロジェクトを起こしたり、そういうプロジェクトに主体的に参加したりする。
または、課題は絞らずに「地域」や「対象とする人々」を決めて、そこに存在する様々な課題を広く様々な団体で一緒に取り組むことなどが考えられます。
「地域」や「対象とする人々」を決めてやる方法の方が「尖っていて」面白い活動になりそうな気もします。例えば、難民キャンプを対象として、様々な課題を様々な団体で一緒に解決していくことで、新たなイノベーションの芽を生むこともできるでしょう。そこから生まれる技術やサービスを、それぞれの会社が「リバースイノベーション」として、のちに先進国や自分の事業領域で活かす、というようなことが起こると期待されます。
この「人類や社会の課題解決のためのオープンイノベーション」は、活動開始当初ではどうしても「結局何が生み出されるか」が分からないので、会社の中では「CSR」や「CSV」のお化粧を施して位置づけするのが現実的だとは思います。でも、心の中では「イノベーションを起こすため!」「それによって未来の(みんなにとって素晴らしい)事業を興すぞ!」という熱い気持ちはしっかりと秘めておきましょう。
SDGsを起点としてオープンイノベーションを起こすためのプラットフォームサービスや、公的な活動は既に始まっています。ネットで調べれば色々出てきます。しかし、まだまだこれからですので、遅いということはありませんし、単に「なんかブームになりそうだから参加しておこうか」ではなく、自ら考えて、自ら仕掛けていく気概を持ちましょう。
その②「大きなサービス」
もう一つが「大きなサービス」です。
単に自社が単独で(多少パートナーに役割分担をさせながら)行うサービスではなく、沢山の企業が参加して「サービスとしての価値」を磨く「大きなサービス」を方向として掲げて、オープンイノベーションとして活動し、かつ、各々の会社の事業をその「大きなサービス」の一部として行う、という感じのことです。
例えば、近年の新たな潮流としてのキーワードの「シェア」がありますが、今はまだ「領域として絞られているシェアサービス」が主です。UberやAirbnbなどがその代表例です。それに対して、もっと様々な「シェア」を行うプラットフォームを作り、そこに自社の強みで参画していく、というようなイメージです。規模が小さな活動は色々と始まっています。これも自ら「こういうシェアサービスがあるといいな」ということから始め、それに必要な様々な「ハード・ソフト・人手によるサービス」を色々な会社やNPOなどと組みながら作り上げていく。一番チャレンジングな点は、「誰がそれを中心になって引っ張っていくのか」ということでしょうが、そのこと自体も「シェア」ができるやり方・文化の開発が行われていくことでしょう。
今年は、こういう新たなオープンイノベーションの元年になるでしょう。それらに挑めば、それがあなたとあなたの会社の転機になることは間違いありません(以上、転機予報でした)
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。