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【連載/4コマ漫画コラム(27)】オープンでイノベーションを生んだ小さな事例① ~イノベーションには程遠いけど~

【連載/4コマ漫画コラム(27)】オープンでイノベーションを生んだ小さな事例① ~イノベーションには程遠いけど~

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まずは言い訳から「イノベーションって」

言い訳のような漫画を描いてしまいましたが、今回・次回のお題は「オープンでイノベーションを生んだ小さな事例」です。「オープンイノベーション」と言わずに「オープンでイノベーションを」という辺りにも私の「書きにくさ」を感じてくだされば幸いです。

イノベーションは、単に「革新的な価値があるモノを思いついて作り上げる」だけではなく、重要なのは「それが世の中に広がる」という「普及」が起こって初めてイノベーションです。

「瀬川さんがイノベーションを起こした事例を書いてください」って言われて、困ったのはこの点です。「イノベーションにつなげるぞ!」と思ってやってきたのは確かですが、私がやってきたのは、「最初の一歩」ばかり。いわゆる「種まき」と「芽を育てる」の段階です。つまり、「普及」までは行けていない。そんな私には「イノベーションを起こした事例」を偉そうに語る資格はない、と思うのです。

「成功事例」じゃなくて

完全に「普及」と言えるところまで行った案件はないにしても、ある程度事業としての広がりを見せることにも携わりましたが、漫画にも書いたように、「事業が大きくなって行き『成功』に近づく」と、(本当に)沢山の人が「あれは俺が始めた」「あれは俺がやった」と言い出します。もちろん、嘘をついているのではなくて、「『普及』に向けて大きくなっていくと、沢山の人が関わる」からです。

一方、新しいことには失敗が付きものです。せっかく始めたプロジェクトが最初の段階で止まってしまうこともしばしば。そういう場合は、関わっている人数も少ないままですので、いつまでも「あの失敗したプロジェクトはお前がやった」と後ろ指をさされ続けます。まあ、沢山やると全然気にならなくなって、むしろ「話のネタ」に昇華されてしまいますけれどね。

そこで、「事例」といっても「成功事例」ではなくて、「おかげでちょっとは前に進んだ」という「オープンでイノベーションを生み出そうとした小さなお話」を、ポイントと共にいくつか紹介したいと思います。(「言い訳」終わり!)

【事例1】あの東京モーターショーに

つい最近も開催された「東京モーターショー」。車業界の一大イベントですね。このモーターショーに、私が勤めていた会社(事務機器の会社)がブースを持ってイベントに参加したことがあります。事務機器メーカーが場違いなモーターショーに出品したのです。それも「かっこいいコンセプトカー」もなく、「キレイなコンパニオンのお姉さん」もなく。

そのころ、社内の若手育成を目的とした「新規事業の提案と実施」の「部門横断の委員会」を私は委員長としてやっていました。

その中の一つのテーマが、社内で細々とやってきていた「子供が描いた絵の形や色から特徴量を抽出して、他の子が描いた絵と競ったりするゲーム」で、これを事業化しようということでした。事務機器メーカーですので、得意の「画像処理技術」を活かしたものでした。モーターショーに出したのは「子供が手書きで描いた車の絵がスクリーン上に現れて、コースで競争して順位が決まる」というもので、それまでも似たようなゲームを色々な地域のイベントなどで実験はしていましたが、まだ事業と呼べる状態にはなっていませんでした。

そこで、若手メンバーが提案してきたのが、「東京モーターショーに出展したい!」。「モーターショーに出展すると、どういう事業につながるのか」なんて詳細なプランは全くなく。「車のゲームだから、車関係の人が集まるモーターショーに出せば、何かが起こるかもしれない」というだけでした。

大変→嬉しい→思わぬ→大変→やったね!

さすがの私も「ウチの会社がモーターショーに(お金を出して)出展かあ……」とちょっとだけ悩みましたが、予算をつけて、出展しました。モーターショー用にデザインされた特別な機材も作りました。

当日は子供で溢れかえりました。けっこう広めの机を子供たちが囲んで一心不乱に車(と言えないものも含め)を描いては、スキャンをしてくれるスタッフのところに走って持ってきます。スクリーン上では子供が描いた4台の車がコース上で競争します。自分の車が一位になると、子供は跳びはねて大喜び。私も見ていてとても楽しくなりました。

「で、どうしてウチがモーターショーに出しているの?」と半分嫌味の声も社内からは聞こえてきましたが、テレビに取り上げられたりもして、問題なくイベントは終了しました。

後日  。ある超大手の車メーカーから話があり「東京モーターショーで拝見した。ウチの全国の販売店でやりたい。販売店に来て下さるお客様にゆっくり車を見てもらうために、来店中に子供が夢中になれるイベントをしたいと思う」ということでした。なるほど。お父さんがゆっくり車を見る時間を作るためにこのゲームは魅力的なんだ、と納得しました。それも「車」関係のゲームだから車の販売店で開催することはなんの違和感もない。

そういう市場があるということは、社内だけの議論では出てきません。

それから、サービス開始のための開発や準備をして(いやー、これも大変でした。担当組織が正式にあるわけでもないのに、とても前向きに協力してくれるメンバーが沢山現れました。今も感謝しています)、1年以上も全国の販売店でイベントを開催しました。

(学び)知らない業界で「晒す」

この事例からは、「ゲーム」や「車」という、まったく土地勘がない業界では、とにかくまずは「いい場(この例ではモーターショー)」で「晒してオープンにする」と、次の道が見つかる(かもしれない)ということを改めて学びました。

「書きにくい」とかいいながら、実例を書き出すと色々思い出してついつい長くなって、事例を一つ紹介したところで今回の文字数は使い果たしてしまいました(^o^;)。

次回も違う事例を紹介しますので、お付き合いください。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

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