【連載/4コマ漫画コラム(11)】新規ビジネスの見極め方 ① :身も蓋もないけど大事なこと
■「新規ビジネスを見極める」のは
イノベーションを起こし、新たな事業を創るぞ!って気合いは入るけど、いつも不安。「大きな事業になるのか?」「利益はでるのか?」「やる価値はあるのか?」……。できれば、できるだけ早いうちに挑戦しようとしている「新しいビジネス」を「見極めたい」ですよね。そこで、今回のお題は「新しいビジネスの見極め方」です!
……が、冒頭で身も蓋もないことを言わないといけません。『間違いなく見極める方法なんてない』のです(すいません)。なので、今回の話は、これで終わります……。シーン……。あ、そうそう「間違いなく」は無理でも「ちょっとはマシ」にできる可能性はあります。
■「幽体離脱」が「見極め」の極意
新しいことに挑戦するためには「猪突猛進」でなければなりません。「これが正しいに決まっている!」という思い込みを源泉にしてわき目も振らずに目標に向かって誰がなんと言おうと突っ走る力が必要です。
しかし、時々、その「イノシシ」から幽体離脱して「これでいいのかな?他にいい方向や手があるのではないかな?」と冷静に自分たちがやっていることを見つめてみることも重要です。「幽体離脱」して、自分たちがやっていることとは違う「他のところ」に目を向けるのです。それは「横の広がり」と「縦の広がり」を見たり考えたりすることです。
「横」とは自分がやっている事業領域と違う領域のことです。「一見、全く関係ない事業と思われていたものが、それを取り込まないとうまくいかない」とか(例:部品販売事業をやっていたが、メンテナンスサービスもやらないといけない)、「実は日本からではなく、アフリカから発売を始めた方がいい」とかです。「縦」は「時間」。将来、何が起こりそうかを考えることです。世の中はどんどん変わります。事業が成長するか頓挫するかに大きな影響を与えます。
超能力者で言う「千里眼」が「横」、「予知能力」が「時間」で、その両方が「目利き」に必要です。しかし、それらは「超能力」であり、「完全にできる」ことはありえないのです。でも人類には「他の人が考えたことや経験したこと」を学ぶという能力があります。これはすごいコトですよね。それを活用して、「超能力」のような「目利き力」に近いことを少しだけですが身に付けることができます。
それは、本を読んだり、映画を見たり、他の人の話を聞いたりすることです。それも「今、自分がやっていること(仕事)」以外のことに触れ続けることです。残念ながらサラリーマンは30才くらいになると「最近、本を読んでないなあ」という人達が出てきて、40才くらいで「本を読み続けている人(少数)」と「読んでいない人」にパカっと分かれてしまいます。映画もそうですし、社外の人と話すのも減りがちです。この「本を読み続け」「映画を見続け」「色々な人と話をし続ける」かどうかで、40代後半になると、人間としての幽体離脱能力に大きな差が出ます。
映画を観る時、予告編を観ますよね。そして、興味を持って、また次の映画を観てしまう。本もそうです。小説などに出てきた人物に興味を持って、その人物が登場する歴史本などに手を伸ばす。つまり「読み続け、見続ける『癖』」が大事なのです。そして、仕事と関係ない人と話をするのがとても大事です。話そのものに触発されることもあれば、会話で出てきた事柄に興味を持って、知らなかった領域の本や映画に手を出すようになります。
ただ気を付けてほしいのは「そのまま」を振り回すのは最悪です。「XXの本に書いてあったから」「YYさんが言っていたから」と、「そのまま」を経典のように覚えて思考停止で信じるのは最悪です。自らのモノになっていないので、現実の世界で「思わぬこと」が起こった時に対応できません。また、みんなに知られていることだけで想定して事業を推進していくと、いわゆるレッド・オーシャンに浸かってしまいます。
だから、漫画に描いたように、「(本や映画や会話を)どんどん食べ続けて」「自分で栄養素まで分解・消化して」「自分なりのものの見方『水晶玉(子)』を持つ」ようにしましょう。そして猪突猛進をしながらも、時折、幽体離脱するのです。「時折」であることも大事です。幽体離脱ばかりしていると、単に『外野からケチだけつける嫌なヤツ』になってしまうので気をつけて。
■シリコンバレーでも重要視している「事業成功要因」
そして、水晶玉子で「見抜く」もう一つ大事なことがあります。シリコンバレーのベンチャーキャピタルがベンチャーに投資するときに最重要視する項目について、ジョークであり半分本気で言われていることがあります。(以下、VCはベテランのベンチャーキャピタル、Aは一般の人)
VC「ベンチャーへの投資での判断で一番重要なのは、なんだか分かるか?」
A「えーと、テクノロジーかな?ビジネスモデルかな?・・・」
VC「『人(people)』だよ。経営陣やチームのメンバーだよ」
A「なるほど」
VC「では、2番目、3番目、4番目に重要な項目はなんだか分かるか?」
A「うーん・・・」
VC「答えは2番目以降も『人』『人』『人』だよ!」
そう、当たり前かもしれませんが、事業が成功するかどうかは、それをやる「人」が一番重要なのです(事業そのものがどんなものか、とかいうことよりも)。「目利き」に必要なのが「人を見抜く力」。これも完璧なものを持つことはまず不可能ですけれど。そして「人」を見抜く力は「経験」しかありません。それも「失敗(だまされるとか)」も含めた経験です。
……とか、偉そうに書いてきましたが、私も「目利き力」が十分でないために失敗した事例をあれこれ思い出しながら書いています。ま、まだまだ水晶玉子生成・研磨中ですからね。
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。