【連載/4コマ漫画コラム(10)】新しい組織の作り方② :新しいことに挑戦する風土に大事な評価
当たり前の評価法では挑戦する風土は作れない
新規事業やオープンイノベーションを加速するために、組織ができました。めでたし、めでたし……の訳がありません。組織はあくまで「場」。ちなみに「場」という漢字は左の「土」と右の「日が昇る」という象形文字の組み合わせでできたもので「地面から日が昇る様子」だということ。新規事業で「新しい日(世界)を生み出す」のにぴったりですね。
「土」に加えて「風(空気)」も大事です。つまり、「風土」を作っていかなければなりません。「風土」は一朝一夕には形成されないし、あれこれ様々な「しかけ」も必要です。ポイントになるのは「不確実なことに」「(本当は辛くても)楽しく」チャレンジしていけるようにしていくことです。
今回はその中で「評価」についてお話ししましょう。「評価」って言葉はなんだか嫌な響きですよね。「評価」には「人事評価」や「自己評価」、また組織内外の「評判」などもあります。
既存の安定している事業では「事業の評価」も「メンバー個人の評価」も、基本的には「計画した通りにできたかどうか」で行われます。その当たり前に見える「評価の考え方」が染みついています。それをそのまま「新しいことにチャレンジする部門」に持ってくると(もしくは意識しないままに引きずってしまうと)、はっきり言って、絶対に成功しません。「新規なこととは不確実なことである」ということをベースに「評価方法」も組み立てなければなりません。
まず「計画」そのものが「不確実」であることを認識する必要があります。「計画さえ守って達成できれば、エライ」ではないのです。そういう「評価法」の代表例が「目標管理制度」です。「目標と計画を有言し、実行したら評価は〇」というものです。既存事業ではそれでいいかもしれませんし、「有言実行」そのものは、新規なことでもとても大事なことなのですが、実は中身がだいぶ違います。
評価者も大変な「真の有言実行」
ここで4コマ漫画にも書いた「真の有言実行」について説明しましょう。(説明するような漫画は漫画としてダメという気もしますが……)まず、「有言・不言」と「実行・不実行」の2X2の4象限を作ってみましょう。
1.「不言」「不実行」:全く意味はありませんね(^o^)。
2.「不言」「実行」:古来の美しい日本の精神文化です。でも、これは「喋らないので、周りの人にも分からない」ということになり、チームとして「他の人を巻き込む」ことができません。
3.「有言」「不実行」:一見、無責任な感じがして、ダメなことのように思えますが、次の4で述べるようなことを考えなければなりません。
4.「有言」「実行」:元々四字熟語としてあった「不言実行」をもじって近年よく使われるようになったものです。会社の「目標管理制度」もこの「有言実行」に基づいています。ところが、「制度」というのは何でも必ず疲弊するので、いつの間にか「できることだけを言う(有言)」ということになってしまい、チャレンジをしない風土が定着したり、評価する側も「実行したかどうかを評価する」ことだけになり、完全に思考停止状態になっているのをよく見かけます。
私が会社員で管理職をやっているときに、この「目標管理」とか「有言実行」という言葉と、それによって引き起こされるひどい状況にとても腹が立つことが多かったのですが、長らく「有言実行」という言葉への違和感の理由が明確になっていませんでした。会社をやめる寸前になって、「そうか、実は『実行したか』でなくて『達成したか』で評価しているのに、それを『有言実行』って呼んでいるからおかしいんだ!」と気が付いたのです。
[こうなっちゃっている『ニセの有言実行』]
「達成したかどうか」で考えているから「できそうなことを言う」ようになってしまうのです。「実行したかどうか」は「やったかどうか」です。だから「有言」して「実行」しても「達成」することもあれば「達成しない」こともあるのが当たり前なのです。
[これが『真の有言実行』-①]
【もしくは、これが『真の有言実行』-②】
「新規事業を立ち上げたり」「オープンイノベーションを加速したり」という「新しいこと」には「やってみる(実行する)」ことが何よりも大事です。その結果、「達成しない」ことが多発するのが当たり前です。その時に、「やって分かったことをどう生かし」て、「次に何をやってみるかを明らかにしていくこと」が重要であり、その繰り返しなのです。
そのため、評価者も単に「達成したかどうかを〇×をつける」では済みません。「次にどうするか」を考えさせ、評価者自身も知恵と経験を総動員して一緒に考えなければなりません。そう、大変です。難しいのです。それが「新しいこと」にチャレンジする醍醐味でもあります。
夢と志も有言し続けよう
そして、もっと長期的な(日々の常識から見てしまうと)できそうもない「夢」や「志」も常に「有言」して、周りに仲間を作っていくこともとっても大事です。「何を夢みたいなことを言っているんだ」と陰口を叩かれるようになれば、アナタも立派な「新しいことへの挑戦者」です。そして、「あの部門の奴らはいいよな、夢みたいなことばかり楽しそうに言って……」と言われるようになれば、その部門もホンモノです。
私もかなり偉い人から面と向かって「いつも楽しそうに遊んでいていいよな」と嫌味を言われることもありましたが、「はい!楽しく真剣に遊んで(実行して)います!」と返していました。がんばろうね!
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。