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社会実装案件の創出を徹底的に追求!9回目を迎える三菱総研のアクセラが始動――スタートアップとの共創はどのように進んでいるのか

社会実装案件の創出を徹底的に追求!9回目を迎える三菱総研のアクセラが始動――スタートアップとの共創はどのように進んでいるのか

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三菱総合研究所(以下、MRI)が運営する『未来共創イニシアティブ(以下、ICF)』は、オープンイノベーションの発想に基づく共創活動を通じて社会課題解決を実現し、より大きなインパクトを創り出すことを目指すプラットフォームだ。

そんなICFの活動における中核プログラムの一つが、イノベーションとビジネスで社会課題を解決するアイデアを競う『ICF Business Acceleration Program(通称、BAP)』である。同プログラムは、有望なスタートアップの発掘・支援を通じて、MRIおよびICF会員との共創を促進し、社会課題解決を実現することを目的に実施されており、2023年で9回目の開催を迎える。

今回TOMORUBAでは、7月よりエントリー受付が開始される『ICF Business Acceleration Program 2023』のスタートにあたり、同プログラムの企画・運営を担当するMRI 未来共創本部の八巻氏、加藤氏にインタビューを実施し、昨年度までのプログラムの実績や共創事例、今年度からの変更点や注力ポイントについてお聞きした。

また、インタビュー後半では昨年度のファイナリストであるテイラーワークスの代表・難波氏、MRIの中村氏にご登場いただき、プログラムを通じた両社の具体的な共創内容やPoCの状況、今後の展望などについて詳しく伺った。

初のDEMO DAYの開催により、MRIの新たなイメージを伝えることができた

まずは『ICF Business Acceleration Program』の企画・運営を担当されているMRI未来共創本部の八巻氏、加藤氏の両名にインタビューを行い、昨年度のプログラムの実績や手応え、今年度のプログラムにおける変更点や意気込み、プログラムに参加するスタートアップが享受できるインセンティブなどについてお聞きした。

――昨年度の『ICF Business Acceleration Program(以下、BAP)』を終えての感触や実績、社内外からの反響などについてお聞かせください。

加藤氏 : BAPは昨年度で8回目の開催となりましたが、総応募件数は過去最多水準の147件となり、多くの皆様にご参加いただくことができました。一方で私たち運営側としては「成果創出」ということにこだわり続けたBAPだったと思います。「成果創出」とは、スタートアップの皆様と「社会インパクトの大きいビジネスを検討し、その事業化に向けて共に歩みを進める案件を、少しでも多く出すこと」だと考えていますが、その手段も、MRIやICF会員との共同研究や受託案件における共同提案、新事業・新市場創造など、あらゆる選択肢があると考えています。

BAPを通じた成果創出を実現するためには、社内外の「本気で動いてくれる人たち」を巻き込んでいく必要があったので、たとえば社内からはMRIとの協業や出資を想定し、VCP(価値創造プロセス)を統括する各分野の責任者にプログラムの審査に入ってもらうなど、様々な関係者に協力をお願いしました。

▲株式会社三菱総合研究所 未来共創本部 兼 イノベーション・サービス開発本部 健康ビジネスグループ 研究員 加藤美季 氏

八巻氏 : 以前のBAPは、どちらかといえばドメスティックな色合いが強かったのですが、昨年度に関しては16件の海外スタートアップから応募があり、プログラムにおける海外スタートアップとの共創の可能性も見えてきました。

――海外勢からの応募があったのはBAP2022が初めてだったのでしょうか?

加藤氏 : 実は以前から英語サイトを設けていたので少数の応募はありましたが、昨年度に関しては韓国のKOTRA(大韓貿易投資振興公社)さんと連携させていただいたことが大きな違いです。一国の政府機関と一緒になってスタートアップを募集するのは初めての試みだったので、今後も連携を強めていくなどして、引き続き海外のスタートアップにもアピールしていくつもりです。

――昨年度はBAP初となるフルオープン型のDEMO DAYを開催されましたが、こちらの成果・反響はいかがでしたか?

加藤氏 : 社内外から、想定以上の嬉しい反響を頂きました。DEMODAYは、年末に開催する最終審査会後の共創活動をもっと活性化させたいという想いで企画をスタートしました。DEMODAYという共創成果発表会を最終審査会後に設けたことで、共創活動に取り組むファイナリストやMRIメンターにとって、ある種のマイルストンとなり、活動への熱量やスピード感向上に繋がったと思います。

八巻氏 : また、DEMODAYはBAP以外のMRIの取り組みを紹介する場にもしました。MRIといえば調査研究、受託事業という堅いイメージを持たれているとおもいますが、実はBAP以外でも、新規事業創出やスタートアップ連携の取り組みに力を入れていたんです。そうした取り組みもあえてDEMODAYで発表させていただくことで、MRI全体としての本気度をアピールしたいと考えました。結果的にはかなり評判が良く、社内外から「MRIがこんなことをしているとは思わなかった」「いい意味で裏切られた」といった声をいただくなど、DEMO DAYを通してMRIの新たなイメージを伝えることができたと考えています。

当日は、「BAPファイナリストとの共創発表」の他、MRIの事業本部が展開するスタートアップとの共創事例、キーノートスピーチ、エコシステムのキープレーヤーによるパネルディスカッション、ネットワーキングなど様々なコンテンツを実施しました。

その結果、「先ほど紹介されたケースに興味があるので話をしたい」「一緒にやりませんか?」といった感じで声を掛けてくださった方々との共創の輪も広がるなど、DEMO DAYが共創をスケールさせる場としても機能したと感じています。

▲株式会社三菱総合研究所 未来共創本部 兼 営業本部 コーポレートベンチャー連携推進グループ 主任研究員 八巻心太郎 氏

――DEMO DAYで発表された様々な共創の中で、とくに反響が大きかったもの、共創のステージが進んでいる事例などがあれば教えてください。

加藤氏 : MRIおよびICF会員とスタートアップの連携に関しては「共同研究パートナーの探索」「顧客提案パートナーの探索」「新事業パートナーの探索」「コンソーシアムパートナーの探索」という4つの領域に分類していますが、そのうちの一つである「共同研究パートナーの探索」の領域で、2022年ファイナリストの一社であるNew Ordinaryさんとの共創が進んでいます。

▲プログラムにおける共創パターンと事例

MRIでは人の行動起点でウェルビーイングを向上させるactfulness(アクトフルネス)構想を提唱していましたが、効果測定モデルがあるものの構想を具現化するソリューションがありませんでした。そんなときにBAPを通してNew Ordinaryさんと出会ったのです。

New Ordinaryさんはユーザーの趣味・嗜好・感情をAIで分析して目的地をレコメンドするソリューションをお持ちだったので、両社で共同研究契約を締結し、構想を具現化するようなアプリを作り出す共創を進めています。現状ではある鉄道事業者のフィールドを活用した実証実験を計画しており、人の行動によるウェルビーイング(幸せ)と経済合理性の関係性について検証していく方針です。

プログラムを通じた社会実装案件の創出を徹底的に追求していく

――7月より応募を開始するBAP2023に関してお聞きします。昨年度からの変更点、今年度からの新たな狙い、皆さんの意気込みなどについて教えてください。

加藤氏 : 昨年度から注力し続けているものの、成果創出という観点ではまだまだ発展途上と言わざるを得ません。9回目となる今回も、引き続き社会実装案件を創出することにこだわっていきたいと思います。

昨年度に初めてフルオープン型のDEMO DAYを開催したことで、社内外の多くの方々にBAPの活動を認知いただけました。私たちとしてはこのチャンスを活かして、もっと多くの社内メンバー、もっと多くのICF会員の皆様や社外のお客様を巻き込んでいきながら、プログラムを通じた社会実装案件の創出を徹底的に追求していくつもりです。

▲3月10日に開催された「MRI DEMO DAY 2023」。MRI/ICFのスタートアップとの共創の取り組みを発信した。(画像出典:未来共創イニシアティブ Monthly NEWS 2023年3月号

八巻氏 : 「ICFのBAP」というベースは今回も変わりませんが、前回から少しずつではありますがMRI事業部との連携プロジェクトにも力を入れており、より詳細にMRIが求める内容をスタートアップの皆様にお伝えするようにしました

私たち運営側としては今後もこのような動きを推進していくことで、これまでにも増して積極的にMRI全社の巻き込みを図っていきたいと考えています。もっとも、「MRIの事業指針にフィットするような共創案件だけを集めていこう」という話ではありません。BAPは社会課題解決のための共創が大前提となります。そうでなければ他の事業会社が行うアクセラと変わらなくなってしまいますし、シンクタンクとしてアクセラを開催する意義が薄れてしまいますからね。

――スタートアップがBAPに参加するメリットやインセンティブについて教えてください。

加藤氏 : シンクタンクであるMRIがメンタリングに入ることで、その社会課題を解決した際のインパクトやビジネスの市場規模に関して、より正確な予測が立てられるというメリットがあります。

また、ビジネスモデルの構築支援に加え、ヘルスケアや公共などの特定業界、様々なテクノロジーに知見のあるメンター陣が揃っています。昨年度のファイナリスト企業も「ここまで技術的な部分を指摘されたアクセラは初めて」と驚かれていたので、メンター陣の質に関しては魅力的なインセンティブになると考えています。

――ICF会員とのネットワークもありますよね?

加藤氏 : それも大きいと思います。大企業や自治体、スタートアップなど約570法人のICF会員の方々とお会いいただける機会を提供していますし、参加いただいたスタートアップの皆さんもICFの会員になっていただくので、プログラムの終了後も様々なマッチングイベントやワークショップに参加いただけます。

このように一度入ってしまえばMRIやICF会員の皆さんとの継続的なお付き合いが続いていくので、スタートアップの皆さんにとっては素晴らしいネットワーキングのフィールドになると思います。

八巻氏 : ICF会員向けのミートアップイベントやビジネスアイディエーションプログラムもありますし、ICF会員専用サイト・SNSなどを活用してスタートアップのテクノロジーやビジネスに関する広報支援・発信支援も行っています。また、MRIの事業部門と一緒に官公庁案件に応募することも可能ですし、事業化した案件での協業なども実現しやすいと思います。

――実証実験の費用も支援いただけると伺っています。

加藤氏 : 私たちとしては事業化支援だけではなく、一緒にPoCを進めていくことも想定しているので、予算の一部は確保しています。昨年のファイナリスト企業なども含め、ご利用いただいている実績もあります。

――最後にBAP2023への応募を検討されている方々へのメッセージをお願いします。

加藤氏 : 社会課題解決のためには多様な人たちの知見や発想が必要になるので、国内・海外企業、国籍、性別などを問わず、様々な方々にご応募いただけると嬉しいです。

八巻氏 : 様々な立場や意見をお持ちの方にご応募いただくことで共創の多様性も広がると考えていますので、BAPの目指す方向性やICFの考え方に共感いただける方は、ぜひ積極的にご応募いただければと思います。

ICFをテストベッドとすることで「Tailor Works」のPoCを推進

続いてはBAP2023のファイナリストの一社であるテイラーワークスの難波氏、さらには同社との共創を進めているMRIの中村氏にインタビューを行い、プログラムへの参加経緯と採択経緯、両社の具体的な共創内容や現在進行中のPoC、今後の展望などについてお聞きした。

――最初に難波さんにお聞きします。BAP2022にエントリーされた理由・背景について教えてください。

難波氏 : 当社はコミュニティのプラットフォーム事業を展開しており、以前は地方自治体や地域金融機関向けにコミュニティのモデルを提供していました。ただ、その一方で今後の事業スケールを考えた際に、事業会社なども含めたスピード感のある方々と共に新しいアウトプットを出したいとも考えており、Webサイトなどで色々と調べていた際にBAPの存在を知ったのです。

その後、BAPについて調べれば調べるほど、自分たちと同じような世界観を目指していることがわかりました。たとえばMRIさんは「共領域」という言葉を発信されています。

簡単に言ってしまうと「共創」とか「コ・クリエーション」という言葉に置き換えられると思いますが、これらの考え方は当社が掲げていたコラボレーションの領域に対する考え方と非常に近しいものだったので「ここまで考え方が近いなら応募するべきだ」という話になったのです。

▲株式会社テイラーワークス 代表取締役CEO 難波弘匡氏

――MRIさんがBAPを通して提唱しているビジョンに共感されたということでしょうか。

難波氏 : そうですね。まさに私自身もMRIさんが発信している「共領域」の中にいたんだなと実感するところがありました。MRIさんは大手シンクタンク、私たちはスタートアップという違いはありますが、社会的な産業活性の領域でアウトプットを出そうとしている点では共通点が非常に多いと感じたのです。

――それでは中村さんにお聞きします。BAPを通じてテイラーワークスさんと共創しようと考えた理由、採択の背景などについて教えていただけますか?

中村氏 : VCPは分野毎に責任者が分かれているのですが、レジリエンス分野のVCPマネージャーである関根秀真が「テイラーワークスのソリューションは災害発生時の共助コミュニティとして活用できる可能性がある」と見立てたことが採択の決め手の1つになりました。

その背景に、関根が三菱総合研究所の50周年記念研究において「3Xと共領域」というコミュニティの将来像に関するコンセプトを提唱していたこと、テイラーワークスはMRIが掲げるコミュニティの将来像を実現できるソリューションの1つであることを早期から見出していたことも大きいと思います。そのような経緯もありましたので、採択後のメンタリングに関しては関根自身も参加して一緒に共創を進めていきました。

▲株式会社三菱総合研究所 営業本部 コーポレートベンチャー連携推進グループ 主任 中村京春氏

――2022年の秋口頃から共創をスタートされたと思いますが、どのようなステップを経ながら進んでいったのでしょうか?

中村氏 : 2022年10〜12月にかけてはミーティングを重ねながらお互いの理念や目的を丁寧に確認し合いました。結果として目指すべき将来像の一致を確認し、メンタリング終盤ではテイラーワークスさんとPoCを行いたいと考えるようになりました。

そこで導入の候補先となったのがICFです。ICFは「社会課題をビジネスで解決する」をテーマとしたオープンイノベーションコミュニティであり、共創プラットフォームを標榜するテイラーワークスさんにとって最適なテストベッドだと考えました。

2023年1月からはPoCの設計に入っていき、2023年3月以降は実際にICFの会員の皆さんにツールとしての「Tailor Works」を活用いただきながら効果を検証するフェーズに入っています。2023年6月時点では130名程度の会員の方々に使っていただいており、2023年7月までPoCを続けていく予定です。

――3月からPoCをスタートされたとのことですが、現時点で見えてきた成果があれば教えてください。

中村氏 : ICFの活動は様々な社会課題の特定を行うような上流工程から、課題のボトルネック・ペインポイントに着目して事業を創っていく下流工程まで、社会課題解決の実装を目指した共創プロセスを一気通貫して実施しています。

このプロセスの中で、テイラーワークスさんは比較的プロセスの前半の方に強みがあることがわかりました。社会課題の勉強会やカジュアルなアイディエーションにおいて、同じような興味関心を持つ人をコミュニティ内外で探索したり、勉強会の案内を告知したり、議論結果を共有できる専用機能もあります。また、勉強会の企画をMRIと一緒に考えて、勉強会後はタスクを割り振りしてメンバーのコミュニケーションを促すような工夫も一緒にさせていただきました。

一方、共創プロセスの後半部分にあたりますが、ある程度ビジネスアイデアが見えてきた段階まで到達したプロジェクトを前進させるトライはなかなかうまく行きませんでした。

これは振り返ってみると、そもそも事業を創るためには事業を推進していく想いを持った人材がいることを前提として、スキルを補完し合いかつ信頼できる人間同士でチーム組成ができ、そこまでのプロセスとは比較にならないほど時間をかけて仮説検証を行う必要が出てくるからだと思います。

テイラーワークスはコミュニティのソリューションですので、事業化へ向けた仮説検証をどう進めるべきかというHowの示唆出しではなく、誰と進めれば上手くいきそうかというWhoを引き合わせる部分に軸足を置いていることが実証をベースに見えてきました。HowとWhoは車の両輪ですので、MRIとテイラーワークスで知見を出し合うことで、残りのPoC期間も試行錯誤してみようと思います。

▲コミュニティ運営に必要な各種機能が充実している「Tailor Works」。(画像出典:Tailor Works プロダクトサイト

――難波さんにお聞きします。「Tailor Works」をICF会員の皆さんに使ってもらうことで事業スケールなどの可能性が広がっているという実感はありますか?

難波氏 : 先ほど申し上げたように、これまでの当社は地方自治体や地域金融機関のようなローカルな組織にソリューションを提供してきましたが、組織がローカルになればなるほど、自分たちの目の前の産業や生活の課題解決が中心になってしまいがちです。

一方でICF会員の皆さんは社会課題の解決を目指して集まられていることもあり、そもそもの目指している世界観や価値観、視座の高さが違います。当社は「もっと多くの人に自分のソーシャルキャピタルを広げてもらいたい」という思いから創業していますし、現在であれば起業家の育成や、ソーシャルビジネスを起こしやすい環境のモデル構築を目指しているので、今回のようにMRIさんやICF会員の皆さんとご一緒させていただくことで、今まで以上に自分たちが目指すゴールに近づきやすくなっていると感じています。

――今後、両社が共創を通して見据えている展開について教えてください。

難波氏 : ICF会員の皆さんだけでなく、MRIさん本体とも事業シナジーを生み出せる可能性が広がったなと感じています。コミュニティマネジメントに特化したツール、あるいはコミュニティのマネジメントから生まれてきた議題・課題に対するコンサルティングなどはMRIさんが得意とする領域ですが、一方、当社はもっと下流の泥臭い部分を得意としています。

人と人のコミュニケーションを束ねたり、利害を束ねたり、考え方も性格もわからない人たちと一緒に「同じ釜の飯を食えるか」というテストケースを作っているわけですからね。そのような両社の強みを活かすことで、様々な事業アイデアやテーマが生まれてくる土壌を一緒に作っていけそうだと考えています。

中村氏 : 私も同意見です。MRIが有する企画構想力、分野別の専門性、そして合意形成のノウハウと、テイラーワークスが持っているコミュニティにおけるファシリテート能力やコミュニケーションノウハウを上手くミックスすることで高付加価値な提案ができると思います。

今まではPoCとしてICFの中で「Tailor Works」を活用してきましたが、今回の共創を通してお互いの強みや補い合える弱みもわかってきたので、今後は共同で新しいサービスを生み出すことにトライしていきたいです。

BAPの最大の特徴はICFというコミュニティーがベースにあること

――中村さんはテイラーワークスと共創するにあたって工夫されていたポイント、意識されていたことなどはありますか?

中村氏 : PoCや共創事業の検討を行うにあたり、「Tailor Works」のことを私から社内メンバーに説明すると返ってくる答えは決まって「SlackやTeamsと何が違うの?」でした。コミュニケーションツールではなくコミュニティ運営のソリューションであることを理解していただくことの難しさは毎度ぶつかる壁です。

そのため私としては、コミュニティ運営に必要な様々な機能が盛り込まれておりコミュニケーションはその一部であること、また人の集合体であるコミュニティを動かすにあたりコミュニティ運営のプロ(カスタマーサクセスコンサルタント)が伴走支援してくれることなどを丁寧に伝えていくことを意識しています。

「Tailor Works」への理解が深まれば、MRIが従来実施してきた受託プロジェクトとも相性が良く、様々なケースで共創できる可能性が考えられるようになります。そのため、社内の各所で「Tailor Works」のファンを増やす活動を地道に続けていくことが重要で、そのような意味では3月のDEMO DAYは社内での注目度も高く、良いPRの場になったと思います。

――それでは改めて難波さんにお聞きします。スタートアップから見たBAPの魅力やメリットはどんなところにあるとお考えでしょうか?

難波氏 : BAPは他のアクセラとは明確に違うポイントがあります。BAPはICFというコミュニティの中にアクセラレーションプログラムの概念を持ち込んでいるので、そもそものベースにコミュニティがあるんです。

DEMO DAYに関しても一般のアクセラレーションプログラムは単発のイベントとして集客するので物珍しさで人が集まってくるだけなのに対し、BAPのDEMO DAYに来るのは基本的にICF会員の人たちです。常日頃から社会共創や社会活性に関して高い意識を持っている方々ばかりが集まるという点においては、他のアクセラレーションプログラムのイベントや展示会とは一線を画していますし、登壇者と観客の間の価値観の一致度合いに雲泥の差があると感じました。

――難波さんはどのようなスタートアップにBAPのエントリーを勧めたいと思いますか?

難波氏 : 私の感覚ですが、多くのスタートアップは「アクセラ疲れ」を感じているような気がします。スタートアップにとってアクセラレーションプログラムは「採択されれば100、採択されなければ0」という世界であり、その繰り返しに疲れてしまっている会社が少なくありません。ただしBAPに限っては、採択までの過程でも案件の発注があったりするなど、他のアクセラレーションプログラムでは望めないような気づきを得られる機会が多かった印象があります。

また、審査に関しても普通にパートナー戦略上の話をしている感じで進んでいったので、「審査されている」というイメージがありませんでした。だからこそ0か100かで判断される一般のアクセラレーションプログラムに疲れてしまった皆さんには、「BAPはプログラムのプロセスや質感が全然違いますよ」とお伝えしたいです。

自分たちのビジネスを半歩ずらしではなく階層ごと変えてみたいとか、事業の形態ごと変えてみたいとか、そのようなことを模索されている方々は、ぜひBAPを活用してほしいですね。きっとこれまでのアクセラレーションプログラムとは違う気づきが得られると思うので。

――中村さんはどのようなスタートアップにエントリーしてもらいたいと考えていますか?

中村氏 : MRIは「あるべき未来はこうではないか?」といった研究提言を活発に行っていることもあり、大きな構想を描いて、そこからバックキャストして今取り組むべきことを考えることが得意な会社です。

そのため、基本的に短期間での急成長を目指すスタートアップの方々に対して、少し違う視点からビジネスを見つめ直していただけるような機会をご提供できると思います。その中で新しい発見があれば、弊社と一緒になって新しいビジネスを作っていくチャンスもご提供できると考えています。

また、メンター陣に関してもスタートアップの皆さんのご希望に応じてアサインしていく方針ですので、ぜひ遠慮なくご相談いただければと思います。

難波氏 : 普通のアクセラレーションプログラムではスタートアップの希望に合わせてメンターをアレンジすることはほとんどないですからね。このような柔軟性もBAPの特徴であり、スタートアップにとっての大きなメリットになると思います。

取材後記

MRI未来共創本部の加藤氏が「社会実装案件を創出することにこだわる」と語っていたように、今回で9回目を迎えたBAPからは社会課題解決を起点とする多くのビジネスの誕生が期待できそうだ。

また、スタートアップにとってはアクセラレーションプログラムの期間中だけではなく、プログラム終了後もICFの会員となることでMRIとつながり続け、ネットワーキングや新規ビジネス創出の機会を継続的に享受することが可能だ。このようなインセンティブも他のアクセラレーションプログラムにはないBAPならではの魅力と言えるだろう。

7月からエントリーが始まるBAP2023、さらにはICFおよびMRIが展開するシンクタンクならではのスタートアップ連携の動向に、今後も注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己、撮影:齊木恵太)

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