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今年度は大手企業16社が参画!神奈川県が主催するオープンイノベーション促進事業「BAK」――数々の共創を生み出してきた秘訣とは?

今年度は大手企業16社が参画!神奈川県が主催するオープンイノベーション促進事業「BAK」――数々の共創を生み出してきた秘訣とは?

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2019年から続く、神奈川県が推進するベンチャー支援に向けたオープンイノベーション促進事業「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK・バク)」。これまで数多くの「大手企業×ベンチャー企業」の出会いを生み出し、新たなプロジェクトを創出してきた。

BAKは参加者から満足度の高い事業だが、毎年参加者の声から課題点を抽出し、改善を繰り返している。その結果、数多くの共創プロジェクトが誕生。新規事業として社会実装されている事例も生まれている。さらに、BAKのエコシステムから急成長を遂げるベンチャー企業も出てきた。

そして、今年度も開催される「BAK2023」には、昨年度を大きく超える県内に拠点を持つ大手企業 16社が参画。多種多様な17の募集テーマを提示している。

そこで今回は、BAK発足当時からプロジェクトを牽引してきた神奈川県産業振興課の新産業振興グループの上野哲也氏と同グループの岩澤和輝氏に、神奈川県のベンチャー支援事業の全体像に加え、これまでのBAKの実績と今年度のBAKの詳細について話を伺った。

※【上画像】左から、神奈川県産業振興課でベンチャー支援を担当する、岩澤氏、上野氏、阿部氏

神奈川が取り組む起業家支援の数々

――BAKは、神奈川県が取り組むベンチャー支援の”かながわモデル”内の一事業だと伺っています。まずは神奈川県のベンチャー支援の取り組みについて、全体像を聞かせてください。

岩澤氏 : 神奈川県のベンチャー支援の取り組みは、以下図のように大きく「HATSU」と「SHIN」の2つがあります。前者は、起業前の方を対象にした取り組みで、鎌倉、小田原、厚木にある3つの起業家創出拠点で起業のサポートをしています。「チャレンジャー」という名称で起業志望者を募り、経験豊かなメンターが起業に向けて伴走支援する取り組みです。毎期10名ほどのチャレンジャーの皆さんは、参加から半年以内の起業を目標に、支援プログラム等に取り組んでいます。

また、大学生や若い方に起業への興味関心を高めてもらうため、県内の大学と連携して起業家教育も行っています。学生向けのビジネスアイデアコンテストも実施し、昨年度は中学1年生が知事賞を獲得して話題にもなりました。

――もう一つの「SHIN」はどのような取り組みなのでしょうか。

岩澤氏 : 「SHIN」は、ベンチャー企業を対象に、神奈川県が様々な形で支援する取り組みです。今回の本題である「BAK」は”成長”段階を担う事業ですが、”育成”段階を担う「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム」(通称・KSAP)という取り組みも行っており、毎年10社ほどのベンチャー企業を伴走支援しています。この他にも、ベンチャー企業の成長促進拠点「SHINみなとみらい」でも企業相互の交流を促進するなど、ベンチャー企業からの様々なニーズに幅広く応えています。

――「かながわベンチャー限定クラウドファンディング」(かなエール)という取り組みも行っていますよね。どのような取り組みか聞かせてください。

岩澤氏 : クラウドファンディングの取り組みは2020年度から、コロナ禍で影響を受けているベンチャー企業を支援し、また、新たな事業への挑戦を応援することで神奈川県を盛り上げるために始めました。資金調達を支援できる方法を色々考え、クラウドファンディングという形に行き着きました。

クラウドファンディングにもいくつか種類があり、私たちはそのうちの「購入型」と「株式投資型」のクラウドファンディングサービスを提供する民間企業と協定を締結し、クラウドファンディングを利用して資金を調達したいベンチャー企業を支援しています。

神奈川県の「かなエール」を活用いただくことで手数料が優遇されたり、神奈川県からの広報支援を受けられるというメリットがあります。例えば、現在、神奈川県のTwitterアカウントは約12万フォロワーいるのですが、このアカウントを活用して、クラウドファンディング募集の案内をしています。

▲神奈川県 産業労働局 産業部 産業振興課 新産業振興グループ 岩澤和輝 氏

ベンチャーや大手企業の生の声から改善を繰り返し、進化するBAK

――ここからはBAKについても聞かせてください。まずは、これまでの取り組みの総括を聞かせてもらえますか。

上野氏 : 2年前の2021年度は、コロナ禍で生じた課題解決を図るため、県内8つの大手企業と一緒にベンチャー企業を募集して(=BAK NEW NORMAL PROJECT)、共創プロジェクトを生み出しました。しかし、応募を検討したいベンチャー企業から見たときには、必ずしも自社の製品・サービスにマッチするテーマがあるとは限らないという課題がありました。

そこで2022年度の取り組みでは、県内の大企業が提示したテーマに対して、全国のベンチャー企業から応募できる「大企業提示テーマ型」に加えて、大企業だけではなくベンチャー企業からも提案を募る「ベンチャー発自由提案型」の2軸で進めるようにしました。

▲神奈川県 産業労働局 産業部 産業振興課 新産業振興グループ 副主幹 上野哲也 氏

――よりマッチングの自由度を高めたのですね。

上野氏 : そうですね。マッチングの仕方を改善したことに加え、プロジェクトがスタートしてからの支援も見直しました。プロジェクトごとに伴走メンターに入っていただく他、必要に応じて専門分野のメンターがサポートすることで、最後までプロジェクトを完遂できるようにしました。その結果、2022年度は「大企業提示型」で生まれた6つのプロジェクト全てで年度内にプロトタイプの開発と実証実験が行えるまでになり、より良い取り組みへと成長できたと思います。

なかには年度を超えて、今もなお継続しているプロジェクトもあります。必要に応じて、県だけでなく国の補助金などを取得してよりプロジェクトを発展させています。

▲「大企業提示型」から生み出された6つの共創プロジェクト

――「ベンチャー発自由提案型」の取り組みの成果はいかがだったのでしょうか?

上野氏 : 審査員からの評価にもありましたが、とてもレベルの高い提案が多く集まりました。斬新な発想に基づくプロジェクトを提案し、大企業ともうまく連携して取り組んでいたという印象があります。既にパートナーを見つけて応募してくださるケースもある一方で、パートナーを見つけるために取り組みに応募したケースもあり、事務局が連携相手とのマッチングをサポートして開発実証まで進めるケースもありました。単に支援金を出すだけでなく、マッチングからプロジェクト進行、PRなど幅広い面で支援できたと思います。

▲「ベンチャー発自由提案型」から生み出された6つの共創プロジェクト

参加する大企業が大幅増。より魅力的になった「BAK2023」

――2022年も大きな進化を遂げたBAKですが、2023年に改善した点はあるのでしょうか。

上野氏 : 大きな枠組みは昨年までのモデルを踏襲していますが、改善した点もいくつかあります。その一例が、大企業が参加するハードルを下げたこと。昨年までは、本プログラムに参加した時点で、支援金や伴走支援を受け、ある程度プロジェクトを形にすることが前提でした。

しかし、パートナーが見つからないうちから、そこまでの成果をあげるのは容易ではありません。そのため、2023年度からはパートナーが見つかった時点で外部審査を受け、支援金や伴走支援を受けるステップに進めるようにしました。「パートナーが見つかったら本格的にプロジェクトを走らせよう」と気軽に参加できるようにしたことで、参加する大企業の数が昨年の6社から16社17テーマと大きくボリュームアップしました。

▲BAK 2023における「大企業提示テーマ型」選定16社と各社の募集テーマ(※会社名五十音順)

――昨年に比べて、参加する大企業が大幅に増えましたね。参加のハードルを下げたこと以外に理由があれば教えてください。

上野氏 : プログラムの認知度が高まったのも理由の一つだと思います。2019年に取り組みを始めてから4年が経ちますが、その間に県内の名だたる企業の皆様にご参加いただきました。成果発表会にも多くの企業が足を運んでいただき、その姿を見て「うちもやってみようかな」というお声を頂けるようになったのが、参加企業の増加に影響していると思います。

――BAK 2023における「大企業提示テーマ型」は17の募集テーマがあります。傾向などはみられますか?

上野氏 : サステナブル、特に脱炭素をテーマにしたプロジェクトが多いように感じます。今回は「脱炭素枠」を設けて、通常500万円の支援金であるところ、この枠には750万円を用意しました。小田急SCディベロップメントさんや日産自動車さんなど、神奈川を代表する企業が「脱炭素」に関連するテーマを掲げています。

また、個社の課題だけでなく地域の活性化や社会課題にフォーカスしたテーマを掲げる企業も多いように感じます。たとえば鉄道会社はまちづくりに密接に関係していますし、かまぼこで有名な鈴廣蒲鉾本店さんも小田原エリアを活性化するという気持ちを強く持っています。行政としても、地元の企業がそのような想いを持っていることを大変うれしく思っています。

また、以前参加していた企業が再び参加するケースも見られて嬉しいですね。たとえば京浜急行電鉄さんは2020年に参加していただきましたし、富士フイルムビジネスイノベーショさんも2021年に参加して、今年再びテーマの提示に参加してもらいました。毎年参加しなければいけないものではないので、新規企業はもちろん、過去に参加した企業が再度参加しやすいプログラムにしていきたいと思っています。

――「ベンチャー発自由提案型」にも改善点はありますか?

上野氏 : より多くのベンチャー企業を支援したいという想いから、参加できるベンチャー企業の条件も緩和しています。昨年までは県内に本社があることが条件だったのですが、今年からは県内に営業拠点や開発拠点がある会社も参加できるようにしました。

「BAKでの出会いを活かして成長してほしい」――プログラムに込めた想い

――どのようなベンチャー企業に応募してもらいたいか聞かせてください。

上野氏 : まだサービスやプロダクトの仮説検証中の企業というよりは、しっかりとサービスやプロダクトができあがっていて、市場も見つけられている企業に参加してもらいたいと思っています。例えば、「1つ目の市場は見つけたけど別の市場に展開したい」、「パートナーと共に、サービスの新しい活用法を見出したい」というベンチャー企業に活用してもらいたいですね。

――これまで参加したベンチャー企業の成功事例などはありますか?

上野氏 : 代表的な事例は、日本酒の一合缶を展開しているAgnaviさんです。出会った時はシードフェーズだったものの、ものすごいスピードで成長していき、支援金がなくてもクックパッドさんや小田急電鉄さん、京王電鉄さんと組みながら市場を開拓していきました。私たちの想定以上にBAKをフル活用していただいたと思いますし、うまく成長に貢献できたと実感しています。

――最後に、今後のBAKの展開についても聞かせてください。

上野氏 : まずはBAKの中で、新しいプロジェクトが生まれ、形になっていってほしいと思います。また、BAKでの出会いが、様々な取り組みに発展してもらえれば嬉しいですね。

たとえば最近は、BAKに参加した大企業同士で情報をシェアしたり、課題点を話し合う動きも見られます。ベンチャー企業側でも自主的に集まって勉強会を開いているという話も聞いています。BAKでは様々なサポートを用意していますが、私たちが目指しているのはあくまで出会いの場なので、出会いを活かして自発的に様々な取り組みが生まれると嬉しいです。

取材後記

インタビュー中、「BAKの取り組みは他の自治体からも注目されていて、視察に来られるケースも多々ある」と岩澤氏が語っていた。このことからも分かるように、オープンイノベーションやエコシステム形成において、神奈川県が培ってきたナレッジやノウハウは豊富だ。事実、大企業とベンチャー企業による共創プロジェクトが事業化にも結びついている。2019年から進化を続けるBAKの輪は、さらに広がりを見せている。今年度のBAKからはどのような新しい事業が生まれていくのだろうか?――引き続き、注目していきたい。

※「BAK2023」は、<大企業提示テーマ型>(早期締切:2023年6月30日)と<ベンチャー発自由提案型>(応募締切:2023年7月28日)の2つの方法で募集を行っています。詳細は以下リンクをご覧ください。

https://bak.eiicon.net/incubationprogram2023

(編集・取材:眞田幸剛、文:鈴木光平、撮影:齊木恵太)

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BAK 2023

ビジネスアクセラレーターかながわ、通称BAK(バク)。神奈川県内の大企業とベンチャー企業によるオープンイノベーションを促進のためのプログラム「BAK 2023」が始動。2023年5月30日より、ベンチャー企業が大企業と連携して取り組むプロジェクト提案の募集を開始しました。