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BAK2022の採択ベンチャー座談会!大企業との共創に挑戦する3社が、BAKを通して得たものとは

BAK2022の採択ベンチャー座談会!大企業との共創に挑戦する3社が、BAKを通して得たものとは

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神奈川県が主催するオープンイノベーションプログラム「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK・バク)」。この取り組みのなかで昨年度、ベンチャー企業と大企業等の連携プロジェクト創出の支援プログラムが実施された。

このプログラムは、「大企業提示テーマ型」と「ベンチャー発自由提案型」の2つのパターンに分かれている。前者は大企業が募集テーマを提示して共創パートナーを募集し、複数の提案のなかからパートナーを選んで、共創プロジェクトを進める形式。一方、後者はアイデア・技術を持つ神奈川県内のベンチャー企業が、BAKのコミュニティ内で共創パートナーを見つけ、アイデアの実現を目指す形式だ。

TOMORUBAでは、昨年度のプログラムに参加したベンチャー3社(※)に集まっていただき、座談会を開催。BAKを通じて取り組んだ共創プロジェクトの内容やプログラムから得られた成果、そして今後の展望について聞くとともに、BAKの参加メリットについても率直に語ってもらった。

※ベンチャー3社

・DATTARUJIN…2022年設立。社会課題解決型エンタテインメントの企画提案・制作・運営を手がける。

・フィルズ…2018年設立。マイボトルを使えるお店がスマートに探せるドリンク専用の事前決済アプリを提供。

・ユカイ工学…2007年設立。「ロボティクスで世の中をユカイにする」をテーマにネットとリアルを繋ぐプロダクトを開発。

ベンチャー3社は何をきっかけにBAKを知り、なぜ参加を決意したのか

――まず、BAKを知った経緯や参加しようと思った理由からお聞かせください。

DATTARUJIN・山本氏: DATTARUJINを起業する前、東京のベンチャーで働いていて、その会社で2021年度のBAKに参加しました。そこで、SHINみなとみらい(※)のメンバーや、神奈川県庁職員、事務局の皆さんと一緒にプロジェクトを進めたのですが、その人たちから刺激を受けて「自分も会社を興してみたい」という気持ちが芽生えました。それで2022年4月、実際に起業をしたのですが、創業の地は迷わず横浜を選びました。

東京でも同様のアクセラはたくさん開催されているのですが、とくにBAKは皆さん、それぞれの役割の垣根を超えて「やるぞ」と一丸になって取り組んでおられました。だから参加する私たちも楽しかったのです。一方でコロナ禍における事業への課題はあると感じていたので、その点を自分の会社で改善したいという想いもありました。そこで、観光とエンタメを組み合わせたソリューションで、「ベンチャー発自由提案型」に応募したのです。

※SHINみなとみらいは、神奈川県が運営するベンチャー企業の成長促進拠点。WeWorkオーシャンゲートみなとみらい内にある。(参考ページ) 

▲DATTARUJIN合同会社 CEO 山本晃 氏

フィルズ・飯田氏: 私は神奈川県出身であることから、横浜で事業を行いたいと考えて、現在は本社をみなとみらいのランドマークプラザに置き、横浜を拠点に事業を展開しています。

そうしたなかでBAKを知ったわけですが、BAKに参加する前、横浜市主催のアクセラレータープログラムに採択いただき、横浜の皆さんとすでに協業の機会を持っていました。そのプログラムのなかで京セラさんとご縁があり、みなとみらいで共創プロジェクトを開始。その取り組みを神奈川県全域に広げていきたいと考え、神奈川県主催のBAKにエントリーをすることにしました。

▲株式会社フィルズ CEO 飯田百合子 氏

ユカイ工学・鈴木氏: 当社はベンチャー企業ですから、自社だけでお客さまを見つけるのは大変です。より効率的に企業とお会いするため、以前からオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」に登録させていただいていて、そのなかでBAKを知りました。大企業の提示する募集テーマを見て、当社のプロダクトと親和性のありそうなテーマがあったので、応募をすることにしました。

▲ユカイ工学株式会社 取締役 COO 鈴木裕一郎 氏

【DATTARUJIN】 JTB・資生堂S/PARK・ソニーの協力のもと、多言語による音声観光ツアーをローンチ

――続いて、各社がBAKのプログラム内で実施した、共創プログラムの中身についてお伺いしたいです。どのような課題設定で、誰とどのような共創プロジェクトを進めているのか。また、現時点での成果についても教えてください。まずは、「ベンチャー発自由提案型」で参加されたDATTARUJINさんからお聞かせいただけますでしょうか。

DATTARUJIN・山本氏: もともとの課題設定においては、観光とエンタメの2つの軸がありました。観光業界に関して言えば、年間4兆円規模のインバウンド消費がコロナ禍の影響で消失。私が長く関わってきたエンタメ業界についても、ライブを開催できなくなり、大きな打撃を受けました。この2つの課題を解決できる方法はないかと考えたのが出発点です。観光とエンタメは非常に相性が良いので、組み合わせて何かできるのではないかと思ったのです。

他方、神奈川県や横浜は、イベント施設が非常に増えており、エンタメ業界では特に注目されているエリアです。成長の余地はまだまだあります。アフターコロナを見据えて、コンサート前後の時間で、横浜の街を散策してもらう体験を提供できるのではないかと思い、横浜の街を散策してもらって、横浜を楽しんでもらうという企画を考えました。

――本プロジェクトにおいては、資生堂S/PARK、ソニー(技術協力)、JTBの3者と共創されました。どのように仲間集めをされたのでしょうか。

DATTARUJIN・山本氏: BAKに採択される前の段階から、各社に提案を行っていました。担当者の皆さんと話をするなかで、課題感は共通していることが分かりました。「コロナ禍中の動き方」だけでなく、「コロナ禍後の動き方」も考えておられたのです。

そこで、「一緒にこれらの課題解決に取り組みませんか」と提案。この企画でBAKにも応募したいという意向を伝えました。私は何の実績もないベンチャーのひとり社長でしたが、県の公募に応募したいという形で挨拶に伺うと、皆さん快く話を聞いてくださいましたから、BAKが後ろ盾になったと感じています。

――昨年11月から今年の3月末にかけて、音声による観光ツアー「WALK AROUND MIRAI」の実証実験が行われました。具体的にどのようなコンテンツなのでしょうか。

DATTARUJIN・山本氏: 特定のスポットを訪れると、その場所の音声が聞けるソニーさんのアプリを活用し、街歩きの体験を設計しています。ツアーは神奈川県庁をスタート地点とし、横浜開港150年の歴史を辿りながらみなとみらいに向かい、みなとみらいに近づくにつれて、時間軸も未来へと進んでいきます。

ツアーのゴール地点はみなとみらいの資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)に設定。訪日外国人にもご案内できるよう多言語で提供しています。

▲「WALK AROUND MIRAI」は、みなとみらい発の新しい分散型観光ツアー。ソニーのSound AR™アプリ「Locatone™」内のツアーで特定のスポットを訪れると、位置情報に連動して音声や音楽が自動的に再生される。日・英・中・韓・ウクライナの5ヶ国語対応。(画像出典:プレスリリース

――その実証実験では、どのような成果がありましたか。

DATTARUJIN・山本氏: 期間中、JTBさんを通じて外国人のモニターを募っていただき、実際に体験してもらいました。得られた成果として、街歩きをしていただくと、飲み物の購入などの消費が生まれることが分かり、平均的な消費額は1500円から3000円程度ということが判明しました。

また、街歩きの過程で次のスポットに行きたいというモチベーションも生まれ、市内観光の滞在時間が延びる効果もありました。これらの2点から、街歩きをエンタメ化することで神奈川県の経済活動に貢献できる可能性があると考えています。

また、外国人モニターの方より「自分の知らない土地を母国語で案内してもらえると、心理的な安心感が得られる」というコメントをいただきました。BAKとしての実証実験は今年の3月末に終了しましたが、この事業は3年間継続することが決定しています。

次のステップとしては、横浜市内のステークホルダーをさらに増やしていくことを考えています。実際、4月には日産自動車さんが加わりました。また、インバウンドは回復基調ですが、中国からの旅行者はまだ戻っていません。そのため言語の多様化を進め、さらに幅広い受け皿を用意していくことを考えています。

【フィルズ】 京セラ・三菱地所・慶応大学とともに、マイボトルを軸としたサーキュラーエコノミーを構築

――フィルズさんも「ベンチャー発自由提案型」で参加され、京セラ、三菱地所、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科の3者とともに、セラミックボトルとアプリを使った新たな脱炭素プラットフォームの実証実験を行われました。そこに至るまでの背景をお聞きしたいです。

フィルズ・飯田氏: 私たちはコロナ禍が始まる少し前の2018年に会社を立ち上げました。当時はラグビーワールドカップが日本でも盛り上がり、脱プラスチックが大きなトピックとなっていた時期。「脱プラスチックの流れは確実に訪れるだろう」と考え、2019年6月に「フィルズ®」の前身となるアプリをリリースしました。

マイボトルを持ち歩くことでプラスチックの使用を減らせることは、SDGsの普及により広く知られていますが、実際にマイボトルを持ち歩いている人はまだ多くありません。その新しいコンセプトを、アプリに載せて広げていくことが、当初の目標のひとつでした。その後、横浜市主催のアクセラレータープログラムを通じて、横浜で京セラさんとのご縁がはじまりました。

京セラさんはセラミックの加工技術を活用して開発した、味の変わりにくいボトルを自社製品として展開されており、その認知をさらに広げたいという思いがあり、そこで、そのボトルをオプションのひとつとして活用しながら、店舗や消費者も巻き込んだサーキュラーエコノミーを構築することで考えが合致。単なるマイボトル運動ではなく、幅広い参加者が関わる新しい経済圏を築くことを目指して、この共創をスタートさせたのです。

▲「フィルズ®」は飲料専用のWebアプリ・プラットフォームで、飲料の「中身だけ」を購入できるサービス。カフェなどの店舗では、「マイボトル専用限定ドリンク」として提供し、利用者は事前にWebアプリで購入した飲料を店頭で簡単に受け取ることができる。(画像出典:プレスリリース

――フィルズさんは、BAKをどのように活用されたのでしょうか。

フィルズ・飯田氏: BAKの支援金を活用して、マイボトルを使うことでどの程度のCO2を削減できるのかを、可視化するためのシステム構築を行いました。また、京セラオフィスもみなとみらいにあったので、頻繁に情報交換やアイデア出しを実施。その議論のなかで「みなとみらい地域に絞って活動を展開する」といったアイデアも出てきました。さらに、事業の進め方やサービスの広げ方について、eiiconのメンターから様々な形で支援を受けました。

――三菱地所や慶應大学とも協力して活動を進めているそうですが、この2社とはBAKを通じて出会われたのですか。

フィルズ・飯田氏: はい。2社の信頼を得るうえで、神奈川県の事業を開始するという点が大きな要素になったと感じています。街中で協力店舗を広げていく際にも「この活動は、本当に地域に貢献する事業になるのか」という質問をいただくこともありましたが、自信を持って返答することができました。私たちは大学も含めて、地域の皆さんとネットワークを広げ、実証実験を形にすることができましたが、BAKに参加していたからこそ、説明が非常にスムーズに進められたと思います。

――3月にみなとみらいで、「ボトルtoオフィス」というイベントを開催されました。その成果やネクストステップは?

フィルズ・飯田氏: 大きな成果は、ユーザーのニーズや店舗のニーズを把握することができたことです。脱プラスチックや消費行動に関するリアルな声を多く集めることができました。次のステップとして、大学やディベロッパーと協力し、この活動を地域全体へ拡大していく予定です。具体的には、マイボトルの利用可能な場所を、みなとみらいから山下公園へと広げていきます。

そのためには、マイボトルを使える店舗の開拓が必要ですが、山下公園内に飲食店を出店している企業に協力いただき、山下公園でのテストマーケティングを実施することになりました。こうした活動を通じて、マイボトルを使ったサスティナビリティの定量化を皆さんと一緒に進め、発信していきたいと考えています。

▲みなとみらいのオフィスエリアで実施したイベント「ボトルtoオフィス」の様子。ボトルを直接手にとってもらい、その場でサブスクサービスをスタートできるイベントを実施した。

【ユカイ工学】 マクニカとともに、介護施設でセンサーとロボットを使った実験を実施

――ユカイ工学さんは「大企業提示テーマ型」で参加され、マクニカさんと共創に取り組まれています。このテーマに応募した背景からお伺いしたいです。

ユカイ工学・鈴木氏: マクニカさんの提示テーマは、同社の技術と何かを掛け合わせて、新たなサービスをつくりたいというものでした。その技術のひとつとして挙がっていたのが空気質です。センサーを使ってCO2濃度やにおいなどを可視化する同社のソリューションと、何かを組み合わせて共創事業を生み出したいとのことでした。

一方で私たちユカイ工学は、コミュニケーションロボット「BOCCO emo」を開発しています。見守りという領域では、センサーを使うことが多いのですが、センサーで取得した情報を周りにいる人たちにフィードバックする仕組みがないと考えていました。このロボットを使えば、家やオフィスで周りの人たちにフィードバックを与えられます。コミュニケーションを取ることができるので、組み合わせとしてはよいのではないかと思い、「センサー×ロボットで何かソリューションをつくりませんか」とご提案をしたのです。

▲鈴木氏の手前に置かれているロボットが、「BOCCO emo」だ。

――今年の3月から4月にかけて、神奈川県内の介護施設で実証実験が行われました。そこに至った経緯は?

ユカイ工学・鈴木氏: マクニカさんも私たちもテクノロジー寄りの会社ですから、「どのような業界や企業がソリューションの対象になりうるのか」を決めるまでに、かなり議論をしました。そのときに、選択肢として挙がったのが商業施設や塾などです。

それらの場所も含めて幅広く検討を重ね、最終的に絞り込んでいくなかで、「まずはこのロボットの可愛いデザインが強みとなる業界にしよう」という話に。すでに私たちのほうで、このロボットをご高齢者の自宅に展開している実績もあったため、その点も踏まえて今回は介護施設に決定しました。介護業界は人手不足ですし、ニーズがありそうだという考えもありましたね。

――実証の場となる介護施設は、どのように見つけられたのですか。

ユカイ工学・鈴木氏: まさにそこが、今回のBAKでもっとも助かった点です。私たちは東京のベンチャーですから、神奈川県にはネットワークがありません。ですからBAKの事務局の方に「こういう条件の介護施設を探している」と相談をして、候補をリストアップしていただき、最終的に10社程度の介護施設にインタビューを行いました。その結果、藤沢と横浜にある2つの介護施設で実証を行えることになりました。

――どのような実証をされたのですか。

ユカイ工学・鈴木氏: 介護施設に導入をするので、高齢の入居者の方のメリットと、施設を運営するスタッフのメリットの両方が必要です。とくに今回はスタッフのメリットを強く検証したいと考えていました。施設スタッフの話から、ご高齢の方がお部屋にいらっしゃるときに、「今から食堂でごはんですよ」や「お薬の時間ですよ」とお声がけをされていて、そこに時間がかかっていることが分かったので、それをロボットに代替するアイデアを実証することにしました。

また、空気質センサを活用し、お部屋の二酸化炭素濃度や温度などを可視化し、入居者への遠隔での状況把握に役立てようと考えました。

▲両者はセンサーとロボットで介護施設の課題解決に挑戦。(画像出典:プレスリリース

――実際に介護施設に設置してみて、どのような成果がありましたか。

ユカイ工学・鈴木氏: 想定していた成果は得られなかったのですが、今回の実証をやってみたからこそ、分かったこともありました。私たちは当初、自立的に生活できる方がそれなりにいて、スタッフのかわりにロボットが声がけをすることで、自立的に動いていただけると思っていたんです。

しかし実際は、スタッフのサポートが必要なのは要介護度があがっておられる方が非常に多く、ロボットが声をかけたからといっても、何かできるわけではなかった。加えて、ご高齢者はロボットのような新しいものに対して、心理的なハードルが高いという課題も見えてきました。実証期間中にスタッフの方と「もう少し要介護レベルが低く、ITリテラシーの高い人の方が使われやすいのではないか」という話もしました。

――ターゲットの解像度が高まってきた形ですね。今後の展開として、何か予定されていることはありますか。

ユカイ工学・鈴木氏: 入居者の昔の記憶を蓄積しておいて、その方の好みをロボットを通じて引き出すような使い方ができるのでは、という議論をしています。

というのも、介護度が上がってくると、その方が何を伝えたいのか、どう思っているのかが、段々と表現するのが難しくなってくるそうで、スタッフもそれを汲み取るのが、非常に大変だと話しておられました。ですから、ご高齢者がうまく会話ができる間にロボットと話をし、それを蓄積しておく。そうすると、将来、コミュニケーションが難しくなった際に役立てられるのではないかと考えています。

【3社による座談会】 BAKに参加したことで、自社のビジネスにどんな効果があったのか

――改めて、2022年度のBAKに参加された皆さまから、BAKに参加して良かった点を挙げていただければと思います。

DATTARUJIN・山本氏: 一番良かった点は、広報面の支援です。BAKに採択された時点で、神奈川県とeiiconからリリースを出してもらえましたし、有名メディアにも取り上げていただけました。このようなパブリシティ効果は、BAKに採択されたからこそだと言えます。ベンチャー単独だと、特定のプレスリリース配信サービスを使う程度にとどまっていたでしょう。BAKを通じて当社の活動を広報できたことは、本当にありがたいことでした。

――広報面での支援があったことで、御社のビジネスにどのような効果がありましたか。

DATTARUJIN・山本氏: メディアを通じて知っていただいた神奈川県外のスポーツクラブから、「試合前後の時間にサポーターに提供できる、何らかのサービスはないか」とお問い合わせをいただきました。地方のスポーツクラブは現在、共通した課題を抱えているので、スポーツの分野でもこのサービスを活用できる可能性を感じましたね。

ユカイ工学・鈴木氏: 当社も広報支援に近い形で、BAKの取り組みの一環として「CareTEX」(※)という展示会に出展しました。その後、Webのセミナーも開催。展示会では数百件ものリードが獲得できましたし、Webセミナーでも100件近いお申し込みをいただきました。本当にBAKを使い倒しましたね。

※「CareTEX」は介護業界に特化した展示会。介護用品や高齢者施設向けサービスが集まる。

――広報以外の観点では、いかがでしょうか。

フィルズ・飯田氏: 私たちフィルズは、みなとみらいを主要なターゲットエリアに位置づけています。このエリアは様々な企業が集積していますし、居住者や観光客も多いのが特徴で、このエリア内にBAKの事務局があり、何でも相談できる環境が整っていることは、非常に良かった点でした。

また、大企業とのつながりが想像以上に深いと思います。神奈川県の紹介で訪問すると、どの企業にも迅速に対応していただけるなど、各企業とのつながりを強く感じましたね。

DATTARUJIN・山本氏: 飯田さんがおっしゃる通りで、自社名だけを伝えても「どちらさまですか」という雰囲気になります。自分が逆の立場に立っても、そう思うでしょう。

しかしBAKに参加していると、取り組んでいるプロジェクトの経緯を説明しやすいですし、相手の印象もまったく違うものになります。それに、私たちのプロジェクトは3年間、継続することが決定しています。立ち上がったばかりのベンチャーが3年先までのロードマップを描くことは難しいですが、実現できたのはBAKの支援があってこそです。

フィルズ・飯田氏: BAKのメンターの皆さんが、事業内容にまで踏み込んでアドバイスをしてくださったり、進め方を提案してくださったりしたことも印象的でした。外部からの新しい目線で、時に厳しく時に優しく、私たちだけでは気が回らなかった点を提案いただいたことは、BAKならではの価値だったと思います。アイデア出しも含めて、私たちに寄り添ってもらえている感覚がありました。

ユカイ工学・鈴木氏: 私もそれは感じましたね。eiiconのメンターさんの距離感は良かったです。ふわっとしたボールの時は、それを着地させるための提案をしていただきましたし、タスク管理もしっかりしていただきました。任せるところは任せてもらい、心地良い距離感でサポートしてもらえたと思います。

――BAKの広報支援や幅広いネットワークに裏づけられた営業支援、多様な人と企業が集積する「みなとみらい」という立地、それにプロジェクトの管理などの観点で、魅力的なプログラムだったということですね。最後に、今年度のプログラムに応募を検討している人たちに向けて、一言メッセージをお願いします。

ユカイ工学・鈴木氏: BAKは私たちのような技術ベンチャーにもおすすめのプログラムです。技術ベンチャーの場合、プロダクトや技術の適用先がどこかを検証することが課題となる場合が多いと思います。BAKは広く深く検証するためのサポートを受けられます。BAK以外でも神奈川県のロボット導入支援補助金を紹介してもらえるなど、BAKの協議会に参加していれば継続的に関わることができます。ぜひチャレンジしてみてはどうでしょうか。

フィルズ・飯田氏: 私たちはソーシャルベンチャーで、環境に良い取り組みを社会に実装し、経済性に結びつけることを目標にしています。今回、地域の人たちへの活動拡大において、神奈川県という枠組みを示してもらえたことは、私たちの事業に非常に役立ちました。ですから、社会課題をビジネスにしたい人には、ぜひこのフィールドにご参加いただきたいと思います。

また、神奈川県を拠点とする大企業の担当者と、膝を突き合わせて意見を交わす機会もあります。そこから得た情報を活用できる点でも、BAKは意欲あるベンチャーにとって実りのある場になるでしょう。

DATTARUJIN・山本氏: 自分のやりたいことや解決したい課題が明確ならば、私のように「ベンチャー発自由提案型」でチャレンジして、パートナーを探せばよいと思います。

一方で、価値や効果が定かではないけれど、よいプロダクトを持っているという場合は、まずそれを知ってもらわなければならないので、「大企業提示テーマ型」で提案してみるといいのかもしれません。その際は、相手の立場に立って提案・活動をしていくと、よい共創になるのではないでしょうか。

取材後記

昨年度のBAKの成果をベンチャーの視点から語っていただいた今回の取材からは、多角的な支援がベンチャーの成長を助けていることが伝わってきた。プログラムは1年度で終了するが、BAK協議会に参加している限り、継続的に情報提供などの支援を受けることができるようだ。取材の中で「BAKを使い倒した」という表現があったが、BAKは共創によるビジネスの創出と拡大をサポートすることが目的。であれば、それを志すすべての人が、遠慮なくBAKを使い倒せばいいのではないだろうか。今年度もさらにバージョンアップした形で同様のプログラムが開催される。ぜひ参加を検討してほしい。

※「BAK2023」は、<大企業提示テーマ型>(早期締切:2023年6月30日)と<ベンチャー発自由提案型>(応募締切:2023年7月28日)の2つの方法で募集を行っています。詳細は以下リンクをご覧ください。

https://bak.eiicon.net/incubationprogram2023

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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シリーズ

BAK 2023

ビジネスアクセラレーターかながわ、通称BAK(バク)。神奈川県内の大企業とベンチャー企業によるオープンイノベーションを促進のためのプログラム「BAK 2023」が始動。2023年5月30日より、ベンチャー企業が大企業と連携して取り組むプロジェクト提案の募集を開始しました。