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西日本の大手企業20社以上が参画!実証実験費用支援あり!――昨年度に生まれた観光課題解決を目指す共創事例から、凸版印刷の“実証型”オープンイノベーションプログラムの魅力を紐解く

西日本の大手企業20社以上が参画!実証実験費用支援あり!――昨年度に生まれた観光課題解決を目指す共創事例から、凸版印刷の“実証型”オープンイノベーションプログラムの魅力を紐解く

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凸版印刷株式会社 西日本事業本部が主催するオープンイノベーションプログラム『co-necto』(コネクト)が、今年度もエントリーの受付を開始している(7/31迄)。7回目を迎える同プログラムの最大の特徴は、共創で生み出した新サービスやプロダクトの実証・実装にフォーカスしていること。「凸版印刷」と「スタートアップ企業(提案企業)」、それに「パートナー企業(協力企業)」の3社の強みを結集して社会実装を目指す。パートナー企業には、金融・インフラ・メディア・ヘルスケア・建設など幅広い業種の企業が参画。強力なバックアップ体制が魅力だ。

前回の『co-necto 2022』では、計86社のスタートアップ企業から応募があり、現在3件の実証実験が進行中(検討中)だという。本記事では、そのうちの1つである「palan × 福岡地所 × 凸版印刷」の3社による共創プロジェクトを紹介する。『co-necto』を通じて出会いを果たした3社が、どのように共創プロジェクトを進め、どのようなサービス・プロダクトを実装しようとしているのか。また『co-necto』で共創に取り組むメリットとは何か。

インタビューには、凸版印刷で本プロジェクトを主導する塩田氏、昨年度の採択企業であるpalan 代表の齋藤氏、それに福岡を代表する総合ディベロッパーの福岡地所より池田氏、河村氏にお集まりいただき話を聞いた。

co-nectoで3社が繋がるーー「凸版印刷の企画・推進力」「福岡地所グループのアセット」「palanのARプラットフォーム」を結集

――今年、福岡市の商業施設周辺で、3社によるARを活用した実証実験が行われるそうですね。まず、今回の共創に至った背景からお聞かせください。

凸版印刷・塩田氏: 凸版印刷は以前からXRの領域で、商品パッケージを読み込むとARが表示されたり、文化財をARで再現したりする取り組みを行ってきました。こうした活動から、ARは様々な領域での活用が見込まれ、さらに普及が進むという手応えを感じていましたが、当社としての取り組みがまだ不十分な面もあったため、新たなARの活用方法を探していました。

そんなときに、『co-necto』を通じて出会ったのがpalan(パラン)さんです。同社の簡単にARコンテンツを制作できるプラットフォームを拝見し、このサービスを活用すれば、商業施設や観光地などの集客や回遊施策を簡単に実現できると期待しました。また同じタイミングで、福岡地所さんでもARを使ったサービスの検討されていました。そこで、「凸版印刷の企画力」「福岡地所グループのアセット」「palanさんのプラットフォーム」を活用して、新たなサービスを共創することにしたのです。

▲凸版印刷株式会社 九州事業部 DX推進部 塩田昂明氏

――福岡地所さんが『co-necto』に、パートナー企業として参画されている理由は?

福岡地所・池田氏: 私は現在、スタートアップ支援施設である「Fukuoka Growth Next(fgn)」に勤務していますが、凸版印刷さんもfgnのスポンサーとして参画していただいています。fgnでスタートアップの支援を進めていくにあたり、スタートアップと大手企業・中小企業を絡めた共創をうまく進めることが難しいと感じていた部分がありました。

双方に共創相手を紹介するだけでは進展しない場合が多く、とくにその傾向は地方のほうが顕著で、有望なスタートアップを紹介しても、組織内の課題などで成果が生まれないことが多々あったのです。

▲福岡地所株式会社 事業創造部 池田 貴信氏

――成果が生まれにくい理由について、どのようにお考えでしょうか?

福岡地所・池田氏: 地方企業1社では進めていくパワーが足りないのだろうなと感じています。やはり推進力のある企業と一緒に取り組む必要があると考えるようになりました。そんな矢先に凸版印刷さん主催の『co-necto』がはじまり、凸版印刷とスタートアップ、パートナー企業の3社で進めるアプローチに興味を持ちました。

これまでに聞いたことのない方法でしたので、当社としてもぜひ参加したいと考えました。ちょうど福岡地所でも新規事業創出を目的とする部署が立ち上がったタイミングでしたので、参画することに決めました。

▲今年度のパートナー企業。西日本エリアに拠点を置く地場の大手企業が多数参画している。

――palanさんは東京を拠点に活動するスタートアップですが、今回、西日本エリアをベースとする『co-necto』に応募された狙いがあれば教えてください。

palan・齋藤氏: 私たちはAR(拡張現実)の技術を開発しているスタートアップで、最終的に目の前の現実を豊かにすることをビジョンに掲げています。このビジョンを実現するには、東京だけに限らず、ありとあらゆる場所の現実を拡張させていく必要があります。しかし、本プログラム参画前は、東京のクライアントが大半で、私たちの技術を日本全国に届けることができずにいました。また、将来的にARの魅力を観光に活かしたいとの考えも持っていました。

そうしたなか『co-necto』のことを知り、パートナー企業の一覧を拝見したところ、商業施設などの開発実績をお持ちの福岡地所さんも参画されていることを知ったのです。福岡にある商業施設に私たちの技術を展開できるのではないか、観光事業にも取り組めるのではないかと期待を持ちました。そこで、九州への初進出を目指して応募することにしたのです。

▲株式会社palan 代表取締役 齋藤瑛史氏

キャナルシティ博多や櫛田神社周辺にARコミックを配置し、回遊性の向上へ

――続いて、3社共創による実証実験の具体的な中身についてお聞きしたいです。

凸版印刷・塩田氏: 福岡地所グループが運営しているキャナルシティ博多、およびその周辺施設にARコミックを設置し、人々の回遊を促す実証実験を行う予定です。具体的には、福岡市地下鉄「櫛田神社前駅」や人気の観光地である「櫛田神社」、「キャナルシティ博多」の移動経路上にARコミックを配置。ユーザーが道案内に従いながらARコミックを読み進めていくと、目的地に到着するというものです。メインターゲットである観光客に対して、道案内とARコミックによる楽しく便利な移動体験の提供を目指しています。

――本取り組みで解決したい課題は?

凸版印刷・塩田氏: 福岡はインバウンドのお客さまや国内の観光客が多く訪れる地域ですが、商業施設や有名な観光地には人が集まるものの、その周辺地域では消費が活発化していないことが課題感としてありました。一方で、これまでのAR施策を見ると、ARコンテンツは観光地などの「目的地」にだけ設置される傾向があります。

しかし、私たちは目的地と目的地の間の「移動」中にも、ARのポテンシャルは発揮できると思いました。移動経路にコンテンツを置くことで、周辺地域への回遊効果を高められると考えたのです。

――なるほど。共創プロジェクトを進めるなかで、苦労したポイントなどがあればお伺いしたいです。

凸版印刷・塩田氏: ARは観光と相性がよく有用だとは感じていましたが、具体的にどのような形だと効果的なサービスとして成り立つのかを決める段階では、議論が難航して苦労しました。

最終的にはARコミックに行き着いたわけですが、この選択に至るまでには紆余曲折があり、他社の事例などを調べながらディスカッションを重ね、今の形へと落とし込んだという流れです。他の案としてアートや一般人の描いた作品なども挙がっていましたが、「連続性」の観点からコミック・漫画がいいだろうという結論に至りました。

――河村さんからも苦労したポイントやその克服方法についてお聞きしたいです。

福岡地所・河村氏: 私の所属する部署は、新規事業を創出するというミッションを持っています。私個人としては、近い将来、ARやXRがまちづくりに大きな影響を与えるようになるだろうと信じており、ARに取り組む必要性を強く感じています。しかし、ARをマネタイズさせるための具体的な道筋を見出すことができず、これまで中々前に進めることができませんでした。

そうした状況に対して今回は、凸版印刷さんという大企業がプログラムを主催され、ARの確かな技術を持ち堅実に事業を推進されているpalanさんと一緒に取り組むことになり、大きく前進させることができました。この実証実験を、当社単独で取り組もうとしても無理でしたし、palanさんと2社共創でも難しかったと思います。福岡地所、palanさん、凸版印刷さんの3社が揃ってようやく、実現に漕ぎつけることができました。

▲福岡地所株式会社 事業創造部 河村 光展氏

――本プログラムの存在と、3社の座組があってはじめて、スタート地点に立てたということですね。先ほどARコンテンツの「マネタイズの難しさ」に言及されましたが、収益化で意識されていることはありますか。

福岡地所・河村氏: 実際に使えるツールにすることを強く意識しました。様々なAR企画を検討してきましたが、どうしてもイベント的な要素が強くなってしまい、ARイベントへの参加料やAR空間上での広告料を得るようなビジネスモデルに着地しがちでした。

また、ARの展開先が当社グループの商業施設内に限定されてしまうため、ビジネス的にどうやって拡大させていくか難しさを感じていました。しかし今回は、観光という切り口で広がりを生めそうですし、そこから収益化も検討できるのではないかと考えています。

――齋藤さんから見た、この共創プロジェクトの難しかったポイントは?

palan・齋藤氏: 2点あります。1点目が「共創の難しさ」です。事業会社さんと私たちのような技術を中心とした会社の共創では、私たちのように技術を持つ側はどのように実現するかに目が行きがちです。一方で事業会社さんは自社の課題感を持っておられます。この課題感と技術をどのように結びつけるのかという点において、双方が専門としているわけではないので、難しいと感じることがよくあります。それに対して今回は、凸版印刷の塩田さんが間に入って、プロジェクトをマネジメントしてくださいました。その推進力があったからこそ、納得のいくゴールにまで辿り着けたのだと思います。

2点目は「物理的な難しさ」。本実証実験では、VPS(Visual Positioning System)という技術を使っています。そのため実際の空間をスキャンする必要があったのですが、現地に赴いて弊社のメンバー2名で2日間かけてスキャンをし続けるという作業を行いました。このように、ARコンテンツを開発・納品して終わりというものではなく、現地で調整をするという大変さもありました。

https://youtu.be/fh6RznkS8EU

▲VPS(ビジュアルポジショニングシステム)は、GPSと画像認識の技術を応用し、位置合わせを行うことのできる技術

「プロジェクトマネジメント」や「費用面でのサポート」が心強い支援に

――続いて、3社で取り組んだからこそスケールできた点、お互いに補いあえた点についてお聞かせください。

凸版印刷・塩田氏: ARに関しては、当社でも以前から取り組んできましたが、技術的な部分でコアとなる画期的な強みを持っているかと言われれば、正直なところ持っていませんでした。そうした状況のなかで、palanさんのようなARプラットフォームを持つ企業に参画いただき、ARのコア技術の部分が補えたと思っています。

また、palanさんと当社だけでは、エンドユーザーに試してもらうためのフィールドを持っていません。福岡地所さんに参加いただいたことで、円滑に実証実験まで持っていくことができました。加えて福岡地所さんより、想定ではなく具体的なニーズをたくさん教えていただきました。この点も同じプロジェクトメンバーとして進める共創という形だからこそだと思います。

――池田さん・河村さんはいかがですか。

福岡地所・池田氏: 先ほどの話と重なりますが、塩田さんにプロジェクト全体を適切にマネジメントしていただき助かっています。毎週進捗を確認していただいたり、福岡市の実証実験フルサポート事業への提案に向けて道筋を明確にしていただいたり。本当に感謝しています。

福岡地所・河村氏: palanさんの最大の強みであるWebAR技術も素晴らしいです。アプリをダウンロードすることなくWeb上でARを楽しんでもらえるので、ユーザーにご利用いただく際のハードルが各段に下がります。それに齋藤さんの人柄も、堅実でしっかりとされていて、安心感を持って一緒に取り組むことができています。

――齋藤さんからもお願いします。

palan・齋藤氏: 私個人として嬉しかったことは、河村さんがARの可能性に対して非常に熱い思いを持っておられたこと。他社に提案にいく場合だと「ARは何か」という点と「ARには可能性がある」という前提を強く伝えたうえで、私たちのWebAR技術を紹介します。何段階かでシナリオを用意する必要があるのですが、河村さんの場合は当初より、ARの知識と熱い想いを持たれていたので、非常に進めやすかったです。

――実証実験費用のサポートもあったとか。

palan・齋藤氏: はい。こうした共創プログラムに関しては、自分たちとしてもクライアントワーク、つまり案件ではないという意識を持ってはいますが、どうしても工数がかかるものなので、それが積み重なってきたときに、完全に自分たちの持ち出しだと、やむなく盛り込みたい機能を省くことも増えてきます。プロジェクトの優先度も変わってくるかもしれません。そういう意味では、心強い支援だったと思います。

▲『co-necto』では実証実験にかかる費用の一部を支援。支給額の目安として、1社平均約200万円の費用を支援している。

デジタルを用いたまちづくりを促進、九州を「XRの聖地」へ

――本プロジェクトの今後の展望については、どのようにお考えですか。

凸版印刷・塩田氏: 今回の実証実験については、ARの領域でまだ取り組まれていない内容ですから、大きな反響が期待できるのではないかと思っています。また今後の展望に関しては、8月の実証実験はキャナルシティ博多周辺施設に限定して実施するので小規模ですが、将来的には交通関連の事業者さんなどとも連携し、より大規模かつ広範囲で回遊を促せる観光サービスを目指していきたいです。

福岡地所・河村氏: ARやXRの領域の取り組みは、九州はもちろん東京においても、まだ進んでいません。九州が東京を飛び越して「XRの聖地」になれればと思っています。それがアジア全体における、九州の重要なポジショニングにもつながることになると思います。ARやXRが浸透した世界が到来すれば、デジタル技術を用いて、個人がデジタルコンテンツをまちに配置するなどして、まちを楽しむ人たちがまちづくりに参加しやすくなる。ともに楽しいまちを創造することができるような未来がくると信じています。

こうした未来への第一歩として、まずは何か実績を残すことが重要です。今回の実証実験は次につなげることができると思うので、まずは実績をつくって将来的なまちづくりへと波及できればと考えています。

palan・齋藤氏: 現在、観光業界は人手不足が深刻で、観光業に関わる人材が不足しているにも関わらず、インバウンドを含めて観光客数は増え続けているという課題に直面しています。この現状に対し「AR技術でどう貢献できるのか」を検証していきたいと考えています。今回の成果や課題を踏まえ、全国のインバウンド観光、さらには河村さんが言及されたまちづくりへも展開し、ARの可能性を広げていきたいですね。

先日Appleが、新しいデバイス「Vision Pro」を発表しました。AR領域は5年後10年後、確実に今のスマートフォンのようにスタンダードになります。私たちはその先駆的な存在として、時代を切り開いていきたいと思います。

――改めて『co-necto』に参加するメリットを、palanさんと福岡地所さんより一言ずついただければと思います。

palan・齋藤氏: 私たちのようなスタートアップは、技術やアイデアを持っていても、それを事業会社の悩みと紐づけ、魅力的な提案や事業へと昇華させることが難しいと感じることが多いです。そこを凸版印刷さんにつないでもらえる点が、本プログラムの魅力でしょう。

また共創の場合、短期的な成果に目がいきがちですが「中長期的にやっていきましょう」と言っていただきました。ですから、目の前の実績づくりのためではなく、中長期的にビジネスを拡大したいと考える企業やスタートアップにもお勧めできるプログラムだと思います。

福岡地所・河村氏: 今回はXRに焦点をあてて取り組みましたが、本プログラムは対象とするフィールドが広いため、さまざまな可能性を感じながら参加しています。新規事業を生み出そうとする場合、色々なところに可能性を見出して、そこから話を引っ張ってきて具体化させなければなりません。『co-necto』はその土壌を用意してくださいますので、とてもありがたいプログラムです。それに、プロジェクトが行き詰りそうなときでも、凸版印刷さんの”突破力”で突破してもらえます(笑)

――最後に塩田さんからも『co-necto』への参加を検討する企業の担当者に向けて、メッセージをお願いします。

凸版印刷・塩田氏: 本プログラムは「実証ありき」で進める点が、他のプログラムと異なるポイントだと思っています。また、プロジェクト管理も含めて当社がサポートするので、アイデアを形にしたいとお考えの企業にとっては、有益なフィールドになるのではないでしょうか。加えて『co-necto』は、幅広い業種の企業とネットワークを築いています。パートナー企業やクライアント企業を探す場面においても、展開の幅を期待していただけると思います。

取材後記

福岡市内にARコミックを配置し、観光客の回遊性を高めようとする今回の共創。コミックや漫画という日本ならではのカルチャーが、デジタル技術を使ってリアルな街に重ねられるという非常にユニークな挑戦だ。『co-necto』から生まれた共創が、福岡の街にどう変化を与えていくのか。本実証実験の結果にも注視していきたい。なお、今年度のプログラムでは、カーボンニュートラルや行政DXなど合計11もの募集テーマが用意されている。自社で取り組む領域と近いテーマも見つけられるはずだ。ぜひ応募を検討してみてほしい。

※『co-necto』の詳細はコチラよりご確認ください。

(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子)

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