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凸版印刷×15社のパートナー企業で「実証フィールドと費用」を提供!――西日本エリアを舞台とした"実証型"OIプログラム「co-necto」

凸版印刷×15社のパートナー企業で「実証フィールドと費用」を提供!――西日本エリアを舞台とした"実証型"OIプログラム「co-necto」

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凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)は、スタートアップ企業との新事業共創を目指す公募型オープンイノベーションプログラム「co-necto(コネクト) 2020」のWebサイトをこの7月にオープン、参加企業の応募受付を開始した(募集締め切り8/16)。

co-nectoは、スタートアップ支援の充実で知られる福岡市を舞台として2017年から3回にわたり実施されてきた。初回は九州エリアの企業を対象に募集していたが、回を重ねるにつれて募集の対象エリアを広げており、4回目の開催となる本2020年度のプログラムでは、全国のスタートアップやベンチャー企業を対象とした募集となっている。

また今回は、これまでのアイデア重視のビジネスコンテスト型から、凸版印刷とパートナー企業、そして採択スタートアップが連携して実施するPoC(事業実証実験)を重視したプログラムへと内容をシフト。より、事業成果に直結しやすい実践的プログラムとなったことも特徴だ。

今回は、co-nectoを主催する凸版印刷の高博昭氏、およびパートナー企業として参画する株式会社西日本新聞社の清田慎弥氏、西日本鉄道株式会社の花田茂吉氏のお三方に同席いただき、同プログラムが目指すところや、応募企業へのメッセージについてオンライン取材を実施した。

【取材対象者】

▲凸版印刷株式会社 西日本事業本部 九州事業部ビジネスイノベーション営業本部 事業開発部 部長 高博昭氏

▲株式会社西日本新聞社 ビジネス開発局ビジネス開発部 兼 経営企画局新メディア戦略室 プロジェクトマネージャー 清田慎弥氏

▲西日本鉄道株式会社 事業創造本部新規事業推進部 課長 花田茂吉氏

実証フィールドも費用も提供する実践型プログラムの魅力

――まずは、なぜ凸版印刷さんがオープンイノベーションプログラム「co-necto」をはじめられたのか、その背景を教えてください。

凸版・高氏 : 印刷テクノロジーを中心とした私たちの既存事業の市場は中長期的にはシュリンクしていくことが見込まれており、かねてより新規事業や新サービスの開発は課題となっていました。

しかし、社内だけでは人材もノウハウも不足しており、スピードを持った新事業開発は簡単ではありません。そこで、本プログラムを通じて、オープンイノベーション/共創によりスピード感のある新規事業展開を図ると共に、新規事業に取り組む風土を社内に根付かせ、人材も育成したいという意図がありました。

――過去3回の開催と異なり、今回は、凸版さんと地場のパートナー企業さん、そしてスタートアップ企業が連携したPoC(事業実証試験)型のオープンイノベーションという趣旨が打ち出されていますが、その意図はどこにあるのでしょうか。

凸版・高氏 : 過去3回は主にビジネスコンテスト形式でやってきましたが、いいアイデアだと思っても、実際にマーケットにフィットさせ、ビジネスへの実装を検討する段階で、なかなか難しいと感じるケースが見られました。

そこで今回は、多くのパートナー企業に参加していただき、さまざまな事業フィールドを提供してスタートアップに活用してもらうことにしました。スタートアップの保有するサービス、テクノロジーとパートナー企業の保有するアセット課題をマッチングさせ、凸版印刷が取り組んできたビジネス開発、企業間連携、事業伴走などのノウハウを提供することで、よりマーケットに近い目線で、実践的な実証実験が可能となり、ビジネス実装を加速できればと考えています。

――採択された企業に対するPoC実施支援として、パートナー企業との連携による実証フィールドの提供以外に、PoC費用の3分の2までを主催者側で負担することも明記されています(1社あたり平均200万円の支援を想定)。このような費用負担まで明記されたプログラムは珍しいと思います。

凸版・高氏 : 私たちはオープンイノベーションをすること自体が目的ではなく、あくまで事業化が目的です。そこで、採択企業さんの持つ技術やサービスなどの市場性、事業実現性を正確に把握するため、PoCにおいて一定の費用をかけたテストマーケティング等が必要であると考えています。そこに必要な費用を一定負担させていただくことで、スタートアップ企業の積極的な参加が増えればと思っています。

福岡市というビジネスが生まれやすい魅力的な環境

――第1回のco-nectoは福岡で開催されました(今年はオンラインで実施)。また、本日お越しいただいている西日本新聞さんや西日本鉄道さんなど、九州エリア・関西エリアの地場企業を中心とした15社(※)がパートナーとして参加なさっています。全国のスタートアップ企業が福岡エリアのパートナー企業と組んだり、福岡でPoCを実施したりすることはどのようなメリットがあるとお考えでしょうか。

凸版・高氏 : まず、福岡市は国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」として、スタートアップやIT企業の誘致、税制優遇や各種手続の簡素化、Fukuoka Growth Nextなどのインキュベーション施設運営等々、先駆的な取り組みを積極的に進めている街だという背景があります。

街全体で、産官学が連携しながら、新しいビジネスやテクノロジーを生み出そうとする文化風土が強く、オープンイノベーションにかかわるキーパーソンやスタートアップ企業のコア人材の交流が盛んなので、良い刺激を受けやすい環境があります。

本日お越しいただいた西日本新聞・清田さんや西日本鉄道・花田さんとも、以前からさまざまな場で交流させていただき、所属企業は違いますが、多くのビジネスヒントをいただいております。

西日本新聞・清田氏 : やはり東京や大阪に比べると、企業も生活者もコンパクトに凝集している街なので、企業同士の横の連携が密ですし、生活者との距離も近いということが福岡の特徴です。その意味で、たとえば東京のスタートアップであっても、地方中核都市で地域と一体となりながら社会実装を目指す実験をしたいのなら良い環境だと思います。

西日本鉄道・花田氏 : お二人に加えて、福岡ならではの地域特性として、インバウンド需要や海外連携が盛んなことが挙げられます。いまの足元はともかく、中長期的にアフターコロナ時代のビジネスを見据えたときには、ひとつの魅力となっているのではないでしょうか。

※パートナー企業 15社(2020年7月時点)

●九州……西日本鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社、西部ガス株式会社、株式会社新出光、株式会社ふくおかフィナンシャルグループ、株式会社西日本フィナンシャルホールディングス、株式会社西日本新聞社、パーソルテンプスタッフ株式会社、株式会社ニチリウ永瀬

●関西……株式会社奥村組、株式会社電通国際情報サービス、MBTリンク株式会社、株式会社村田製作所

●中四国……株式会社中国新聞社

●台湾……SYSTEX CORPORATION

▲本インタビューは、福岡と東京を繋ぎオンラインで実施した。

地方中核都市ならではの創業エコシステムを担う多彩なパートナー企業に、充実したリソース提供

――西日本新聞社様は、どのような背景や意図で、今回のプログラムへ参加なさったのでしょうか。

西日本新聞・清田氏 : 私たちの「西日本新聞」は、創刊から143年にわたってこの地で読み継がれてきました。地域に定着し、確固とした顧客基盤を持っており、現状の総発行部数は593,354部です(西日本新聞 朝刊)。

「西日本新聞 メディアデータ」より抜粋

しかし逆にいうと、紙の新聞のビジネスモデルや顧客基盤が確立しているからこそ、人材リソースの配分や技術開発など、多くの事業がその延長線上で進められることが多く、DXへの取り組みは遅れがちになっています。WEBでのニュース配信、電子版の提供など取り組んでいるデジタルサービスもありますが、これからはビジネスモデル自体を変革し、経営にもプラスのインパクトを与えることが必要だと感じています。

ニュース以外で言えば、今回のコロナによる自粛で、新聞社の収益源である各種イベントが軒並み中止、延期という事態になっています。コロナ前のような状況に戻ることが考えにくい今、これまでリアルイベントとしておこなってきた事業をオンラインで再構築することも求められています。

また、少し別軸ですが、デジタル化によって顧客との直接的な接点、コミュニケーションが増えていくことを想定して、顧客に合わせたサービス設計、新しい価値の提供にも力を入れていきたいと考えています。

――同じ質問ですが、西日本鉄道さんが今回のプログラムにパートナー企業として参加した背景や意図を教えてください。

西日本鉄道・花田氏 : まずコロナ渦の影響による公共交通機関・オフィスなど西鉄グループの事業変革の必要性の高さが高まっていることもありますし、西鉄グループではもともと、「西鉄Co+Lab(コラボ)」というオープンイノベーションプログラムを実施してきました。「BUS STOP 3.0」をテーマにした昨年のプログラムでは、4社のパートナー企業と、私たちの「スマートバス停」を使ってもらい沿線の暮らしをアップデートするための協業に取り組んでいます。今回参加したのは、そういった取り組みをさらに広げていきたいということがあります。

さらに、さまざまなスタートアップの技術やサービスに接する中で、うちにはマッチしないものでも、凸版印刷さんや西日本新聞さんならピックアップできるものがあるかもしれないといったことを、この三者でもよく話していたんです。

その中で「じゃあ、みんなで連携して、地域の創業エコシステムみたいなものが作れるといいね」という話にもなりました。今回のプログラムはその一環という面もあると思いますので、ぜひ協力させてもらいたいと考えました。

▲液晶パネルなどを活用し、時刻表やバス臨時案内を遠隔配信する「スマートバス停」。西鉄グループの西鉄エム・テックと安川電機の関連会社であるYE DIGITAL社が共同開発した。

――「西鉄Co+Lab」はeiiconの記事でも以前、ご紹介させてもらいました(西鉄Co+Lab「BUS STOP3.0」の全貌とは?。「スマートバス停」もユニークなものですが、それ以外に、西鉄さんが今回のプログラムに参加するスタートアップ企業に提供できるアセット、あるいは、強みにはどのようなものがあるでしょうか。

西日本鉄道・花田氏 : まず、私たちの鉄道・バスは、毎日100万人以上のお客さまにご乗車いただいており、駅ビル、ショッピングセンター、ホテルなどの生活関連施設は、乗客以外にも多くのお客さまにご利用いただいております。駅、車両、店舗、ホテルなど、リアルな顧客接点の場となるアセットを数多く持つことが、なによりの強みだと思います。

また、全国の交通系ICカードのエリアで利用できるカード「nimoca」を発行しており、そこでの顧客接点もあります。さらに、福岡で110万ダウンロードされている「にしてつバスナビ」というアプリも運用しており、リアルだけでなくデジタルの顧客接点も持っています。ちなみに、このアプリ自体も福岡のベンチャー企業が開発したものを公式化する共創によって生まれたものです。

――西日本新聞さんは、アセットや強みという点では、いかがでしょうか?

西日本新聞・清田氏 : 先ほども少し触れましたが、140年以上にわたり報道機関として培った読者基盤とその読者へ確実にリーチできる発信力、地域でのネットワークです。その延長だと思いますが、スタートアップの方々と話していると、創業まもない会社では築きづらい社会性、公共性の高さ、それによる信頼感を評価されていると感じます。西日本新聞社が関わることにより、九州で事業展開するうえで説得力、お墨付きが付加されるようなことだと認識しています。

新聞社ならではのアセットで言えば、過去も含めた膨大な記事や写真などのコンテンツ資産もあります。これらに新しい技術、アイデアを掛け合わせることでこれまでにないコンテンツ価値を創り出せると、面白いユーザー体験を提供できるのではないでしょうか。

また、スタートアップとの協業ですが、米国・サンディエゴにチョークデジタル社という、GPSを使ったジオターゲティング広告のエンジンを開発している会社に出資した事例があります。このエンジンを活用して、私たちのグループ企業である西日本新聞メディアラボ社が「LocAD(ロカド)」というスマートフォン特化型広告配信サービスを日本国内に提供しています。

域外の会社がいきなりサービスを持ち込んでも受け入れられづらいけれど、地域のことをよく理解している新聞社が形にすることで売りやすい、地域に則したサービスとして提供できたケースと言えます。結果として、このサービスは他の地方新聞社に代理店として販売してもらっています。

このような、全国にある地域新聞社との横連携のネットワークも、アセットのひとつとして挙げられるかもしれません。

▲西日本新聞メディアラボ「LocAD」Webサイトより

――凸版印刷さんはいかがでしょうか?

凸版・高氏 : 私たちは B to B のビジネス領域を主体とした企業であり、あらゆる領域のお客様の事業課題を解決することに長年取り組んでまいりました。そのため、いわゆる事業伴走が、コアスキルとして社内に共有されています。

co-nectoを含めて新規事業系の開発企画は、5年くらい前から取り組みはじめて、現在では事業開発部に10名以上のスペシャリストが揃い、スタートアップへの支援や伴走の体制も充実してきました。

募集テーマは「コミュニケーション」「オートメーション化」「健康ライフサイエンス」「DX・データドリブン」「スマートシティー」「SDGs」「新しい生活様式」。東京をはじめ、日本全国のスタートアップと共創したい

――それでは最後に、今回のco-nectoで、どんな企業との出会いを期待しているのかを教えてください。また、応募企業へのメッセージもお願いします。

西日本新聞・清田氏 : 従来の新聞ビジネスの商流は読者との間に新聞販売店が存在していて、販売店が読者との接点を担っていました。そういう意味では、私たちのビジネスは、B to Bの側面が大きかったのです。

それを、今後はデジタルの世界で、読者、生活者にダイレクトに届けるB to Cのモデルへと転換していく必要があります。新しいサービス・コンテンツ開発という課題に、共にチャレンジしていただけるスタートアップとの出会いを期待しています。

西日本鉄道・花田氏 : 私たちは交通インフラ企業として「地域と共に歩み発展する」を経営理念に掲げています。ウィズコロナ時代に新しい生活様式が求められる中で、地域住民の暮らしをアップデートできるような新しいビジネスに、スタートアップの皆さんと一緒に取り組んでいければと思います。

凸版・高氏 : 過去3回のco-nectoでは、九州エリア、西日本エリアからの応募が中心でしたが、今回はぜひ東京や、その他日本の各地からもたくさんの応募があることを願っています。

大都市圏にはない、地方中核都市ならではの、地域住民、地場企業と密に連携したPoCと、その先の事業化に少しでも関心のあるスタートアップの皆さんはぜひご参加頂ければと考えています。

取材後記

福岡の「ビジネスが生まれやすい環境」については、過去にeiiconでも記事になっている(ビジネスが生まれやすい環境、福岡市の国家戦略特区とは?)。行政が主導してスタートアップを育てていく環境を作り、その環境が多くの起業家を呼び寄せ、多くの事業や協業が生まれることで、さらに刺激的な環境に変わっていく、そんな好循環による活気に満ちているのが、現在の福岡だという。

今回お集まりいただいたお三方にも見られるように、スタートアップ界隈のキーパーソンが、カジュアルに連携しながら新しい起業文化を生んでいる。そんな濃密な起業文化の一端に触れながらPoCを実施し、事業共創ができることも今回のco-nectoの魅力だといえそうだ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:椎原よしき)

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  • 田上 知美

    田上 知美

    • 株式会社eiicon
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  • 平賀 良

    平賀 良

    • GoMA株式会社
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  • 倉内佳郎

    倉内佳郎

    • 中日新聞 広告局ビジネス開発部
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    参戦しようかな…(9.9割冗談ですよ、西日本新聞さん)
  • Take Otsuka

    Take Otsuka

    • ソニー株式会社
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