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西日本エリアの大企業も多数参加!実証実験費用支援あり!――昨年度共創事例から、凸版印刷の“実証型”オープンイノベーションプログラムの魅力を紐解く

西日本エリアの大企業も多数参加!実証実験費用支援あり!――昨年度共創事例から、凸版印刷の“実証型”オープンイノベーションプログラムの魅力を紐解く

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1900年の創業から120年以上にわたり、印刷事業を原点に事業拡張を続けてきた凸版印刷株式会社。事業活動を推進するなかで、マーケティング・IT・クリエイティブなど多方面での知識・ノウハウを蓄積してきたという。そうした凸版印刷のもつ経営資源と、スタートアップのもつアイデア・テクノロジーを融合させ、新事業を創出するオープンイノベーションプログラムが、『co-necto(コネクト)』だ。

2017年に始動した『co-necto』は今年度で6回目の開催となり、現在参加企業を募っている(エントリー締切:8/19(金))。本プログラムの特徴は、社会実装に焦点をあてた「実証型」であること。実証実験費用の支援も1社平均約200万円もあり、凸版印刷だけではなく、プログラムに参画する多様な業界の協力パートナーが、実証フィールドを提供する。また、凸版印刷の九州事業部がリードしていることから、「九州・中四国・関西エリア」での実証機会が豊富であることもポイントだ。


※説明会も開催:2022年7月22日(金)16:00~17:00 @オンライン

昨年度のプログラムでは、125社のスタートアップが応募し、現在4件の実証実験が進行中だという。TOMORUBA編集部では今回、『co-necto 2022』の始動に際し、凸版印刷にて昨年度本プログラムを担当した薄氏、および昨年度の採択企業であり「声紋分析」事業を展開する株式会社ライフスタイルマネジメント(LSM) 代表の柊木氏にインタビューを実施。本プログラムの特徴やプログラムから得られた成果を聞いた。

「声紋分析」の法人向け検証フィールドを求め、『co-necto 2021』に応募

――はじめに、共創の背景を教えてください。どういった理由から、共創に至ったのでしょうか。

凸版印刷・薄氏: 『co-necto』は新規事業創出を目的にはじめた共創プログラムですが、凸版印刷だけでは取り組みのスピードを上げられないとの考えから、スタートアップ企業、社外のパートナー企業と連携した実証型でプログラムを進めています。

こうした背景があるなか、LSMさんを採択させていただいた理由は、パートナー企業の皆さんがLSMさんの「声紋分析」に興味をお持ちだったからです。エネルギーやICTインフラ、それに人材関連など、バラエティに富んだ業種の皆さんが、LSMさんのプロダクトに関心を寄せられました。


▲凸版印刷株式会社 九州事業部 ビジネスイノベーション本部 DX推進部 ソリューション開発課 薄 俊介氏

――柊木さんが『co-necto』に応募しようと考えた理由は?

LSM・柊木氏: 当社の「声紋分析」は、たった6秒の発声から個性がわかるというプロダクトです。声紋を取得することで、その人の強みやモチベーション、ストレスの傾向などを可視化することができます。

プログラム参加前、このプロダクトを色々な企業に提案をしていましたが、ベンチャーということもありマーケティングが思うように進んでいませんでした。そうしたなか、本プログラムの存在を知り、凸版印刷さんのほか地場のパートナー企業さんが、たくさん参画されていたため応募を決めました。

当社は福岡市に拠点を置く会社なので、九州のほか中国・四国エリアの企業と一緒に取り組める点も、『co-necto』の魅力だと感じました。こういったオープンイノベーションプログラムは、東京のほうが多く、福岡や九州エリア内で開催されることは稀です。またとない機会だと思いましたね。


▲株式会社ライフスタイルマネジメント(LSM) 代表取締役社長 柊木 匠 氏

――本プログラムに参加する前、LSMさんではどのような事業課題をお持ちだったのですか。

LSM・柊木氏: TVなどのメディアに出る機会も多々あるのですが、「エンタメ領域」のプロダクトとして注目されがちでした。しかし私は「人材領域」でのストレス可視化や離職防止、モチベーションアップに活用していきたいと考えていました。「声紋分析が人材領域に適用できるのか」「どのようなアウトプットの形にすべきなのか」を、法人企業と一緒に取り組みながら検討したかったのです。

しかし、なかなかその段階にまで達しない状況。『co-necto』に参加することで、法人企業内で検証の機会を得られるのではないかと期待を持ちました。


▲2021年度の『co-necto』では、九州・中四国・関西のパートナー企業様20社が参画した。

凸版印刷社内の実証フィールドを提供――ストレスチェックに声紋分析を活用、「9割以上」が前向きな回答

――続いて共創の全体像についてお聞きしたいです。何を目的とした共創プロジェクトなのでしょうか。

凸版印刷・薄氏: 共創の目的は「声紋分析を使って、法人向けに新たな事業をつくっていけるか」を検証することです。とくに、さきほど柊木さんがおっしゃったように、「人事領域・健康領域に声紋分析を活用できるのか」を確認することに主軸を置きました。また、この事業を拡大していくにあたって、「どう外販するモデルをつくっていくのか」も念頭に置きながら、本プロジェクトを進めてきました。

――「声紋分析」を法人向けに展開することで、どういう社会課題の解決を図っていきたいのですか。

LSM・柊木氏: 以前、企業の人事部門で働いていたのですが、色々な経験をするなかで、企業は「人」だと考えるようになりました。人のモチベーションを向上させることが重要なのですが、一方でミスマッチがとても多い。人の個性・強みを活かせる仕事や部署への配置ができていないのです。部下のモチベーションを高める方法が分からないという上司もいます。

こうした課題感から、自己理解と相互理解を進化させる方法として「声紋分析」に至りました。現在、仕事が原因でうつになり、休業・離職を余儀なくされる方がたくさんおられます。コロナ禍によるテレワークが、さらに深刻化させているとも。こうした働く人たちが抱える課題を解決していくことを目指しています。

――現在、どのような取り組みが進行中なのですか。

凸版印刷・薄氏: 今年の3月頃、凸版印刷の社内で実証実験を行いました。具体的には、入社1年目・2年目の従業員約30名を対象に、ストレスチェックを受けるタイミングで声紋分析を行いました。分析結果を社内診療所の保健師に共有し、診療所での面談の際に、声紋から得られた個人の特徴や傾向を活用してもらいました。

――社内でのストレスチェックに活用してみて、結果はどうだったのでしょうか。

凸版印刷・薄氏: 面談後、被験者にアンケートをとったのですが、9割以上の方が「非常に気づきがあった」「自分の捉えている特徴に合致するものがあった」といった前向きな回答。また、診療所の保健師からも、「可視化された個人の特徴を把握したうえで話をすることができたので、これまでの形式的なストレスチェック面談よりも、さらに一歩踏み込んで悩みを聞くことができた」などの前向きなコメントを得ることができました。

――柊木さんは、この結果をどう捉えておられますか。

LSM・柊木氏: コロナ禍の影響でテレワークがメインになっていますが、「テレワークによるストレス度をいかに測るか」に興味を持っていました。また、スマートフォンで声を入力してもらい、送付いただくのですが、「結果をどのように返していくのか」についても試行錯誤中でしたし、「被験者や保健師が声紋分析に対してどういう反応を示すのか」も気になっていました。今回の実証実験を通じて、これらの疑問点に対して回答を得られたことは、非常によかったと感じています。

協力パートナー企業とも連携に向けて模索中

――『co-necto』の協力パートナー企業とも、実証や実装に向けた議論が進んでいるのですか。

凸版印刷・薄氏: 社名は伏せさせて頂きますが、現在、パートナー企業様とも実証に向けた議論を進めています。声紋分析は、個人の特徴やストレス具合を可視化できる仕組みになっているので、パートナー企業様の持つ人材リソースに有効に活用できる可能性があるからです。

――この取り組みを進めるなかで、苦労したポイントなどはありますか。

凸版印刷・薄氏: 声というものが個人情報にあたるので、凸版印刷社内の実証においても、外部に漏洩しないよう非常に気を遣いました。実は、パートナー企業との議論においても、一番大きなボトルネックになっているのが、個人情報の取り扱いなんです。

ですから、これから事業化を進めていくにあたり、個人情報の取り扱い方やフロー、声の取得にあたっての合意の取り方、システムのセキュリティに関しては、引き続き課題として残るだろうと思っています。

――柊木さんはいかがですか。

LSM・柊木氏: 薄さんのおっしゃるように、個人情報を扱うことになるため、サーバーやID・パスワードの持ち方など、しっかりと考えていく必要があると思っています。それ以外のところで苦労していることとしては、ユーザーとなる多様な企業さんに対して、どういう値を返していくのかという点。「A社はこの値が必要だけど、B社はいらない」というものが出てくると思うんです。どのような設計にしておくと最適なのか。それを決めるのが難しいですね。

パートナー企業の紹介や実証フィールドの提供はもちろん、開発視点も含めて事業創出に必要なことを、全面的にサポート

――『co-necto』に参加することで得られたメリットには、どのようなものがありますか。

LSM・柊木氏: よかったことのひとつは、実証フィールドを提供いただき検証が行えたことで、システム開発の方向性が見えたこと。プログラム参加前のシステムは、一般的な形でしかありませんでした。しかし『co-necto』を通じて、法人向けのHR領域・ヘルスケア領域でどのように活用ができるのか、理解を深めることができました。

実際、凸版印刷様の社員約30名の方に試していただき、被験者や診療所の方に意見を聞けたことは、当社にとって非常に大きな前進だったと感じています。事業開発にも一緒に取り組んでいただけるとのことで、「おもしろいプロダクトができる」と確信を持っています。

――なるほど。

LSM・柊木氏: また、当社はベンチャーなので、リソースが限られています。開発・営業・解析と、私ひとりで何役もこなしています。もう手がまわらない状況ですが、凸版印刷さんが補ってくれる。

たとえば、その道の権威である大学教授を紹介していただいたり、現在システム開発の検討を進めているのですが、凸版印刷さんのコネクションのなかから開発ベンダーさんを紹介していただきました。このように一緒に取り組んでもらえることで、本当に色々な可能性が広がっていると実感しています。それに大企業は信頼があるので、とても心強いですね。

――凸版印刷さんが開発ベンダーの紹介もされたのですね。どのような基準で選定されたのですか。

凸版印刷・薄氏: 一般的なアプリケーション開発とは少し毛色が違うプロジェクトになるので、柔軟に対応をしてもらえそうなベンダーさんにお願いしました。当社と長年のつきあいがある開発会社で、フットワークの軽いベンダーさんです。チームメンバーのように試行錯誤を一緒にしていただける方を選定しています。

――『co-necto』ならではの魅力があれば、お聞きしたいです。

LSM・柊木氏: 共創プログラムへの参加は初めてですが、今、さまざまな種類の共創プログラムがありますよね。たとえば、1対1で行うオープンイノベーションもあれば、ビジネスコンテストのような形で賞金をもらって終わりのものもあります。

一方で『co-necto』の場合、複数の協力パートナー企業が周りにいらっしゃるので、そういった企業の皆さんとも一緒に取り組むことが可能です。協力パートナーの皆さんも、よく知られている大企業ばかり。凸版印刷さんだけでも十分ですが、協力パートナー企業が加わることで、魅力度が2倍・3倍に増しているという気がします。

――薄さんは柊木さんと共創を進めてみて、どのようなご感想をお持ちですか。

凸版印刷・薄氏: 実証実験を進めるなかで、越えないといけないハードルや留意しなければならないポイントがいくつかありましたが、柊木さんには柔軟かつスピード感を持って対応していただけました。

何度も打合せをお願いする場面もありましたが、とても真摯に対応していただけましたね。そういった姿勢で取り組んでいただけたからこそ、この共創プロジェクトが円滑に進んでいると思っています。


外販も視野にサービス開発を検討。凸版印刷の持つ全国規模のネットワークを活用してゆくゆくは全国・世界へも

――今後の展開はどうお考えですか。

凸版印刷・薄氏: 今後の展開としては、凸版印刷が持つ健康系アプリとの連携や他社のアプリケーションに載せられるようにする検討を進めていきたいと思っています。また、どういう企業に提案していくべきか、市場調査も開始していく予定です。

――社外へと売り込んでいくことも検討中なのですね。

凸版印刷・薄氏: はい。社内・社外問わず、様々なアプリケーションと声紋分析を掛けあわせることで、新しいものを生み出すことに主眼を置いています。

きちんとサービス提供できるプロダクトが完成すれば、社外のパートナー企業と共創もできるようになるでしょう。凸版印刷の持つ全国規模のネットワークを活用して、九州エリア内に限らず、全国の幅広い業種のお客さまに拡販していける可能性もあります。

LSM・柊木氏: 当社にも数多くの問い合わせが来ているので、興味を持っていただけた企業に対して一緒に売り込んでいきたいです。まずは、HR領域の汎用的なプロダクトをひとつ完成させ、その後、各企業の要望に応じてカスタマイズしていくような流れをイメージしています。

ですから、外販も含めて積極的に進めていきたいですね。加えて、声紋分析は言語を問わないため、国内にとどまらずグローバルにも展開していきたいです。

――最後に本プログラムへの参加を検討中の人たちに向けて、メッセージをお願いします。

LSM・柊木氏: 共創パートナーとしての凸版印刷さんは、信頼感という意味で群を抜いています。多方面にリソースをお持ちの凸版印刷さんと一緒に取り組めば、事業の可能性を大幅に広げられるはずです。ですから、ぜひ応募してみることをお勧めします。

凸版印刷・薄氏: 私たちがボールを止めてしまわないよう、スピード感を持って進めるようにしています。また、サービス開発やサービス提供に関するノウハウなど、私たちのほうが持っているものもあります。共創パートナーの皆さんとは、お互いの強みを出しあえるような関係を築いていければと思っているので、少しでも興味をお持ちいただけましたら、ぜひご応募ください。

取材後記

「声紋分析」がエンタメの一種として捉えられ、理想とする人材領域に事業を進めることが難しかったと語る柊木氏。だが『co-necto』への参加をきっかけに、法人向けサービス開発に向けた道筋を描くことができたと話す。本プログラムのビジネスサイド・テクニカルサイド両面におけるサポートが、果たした役割は大きいのではないだろうか。

6回目の開催となる『co-necto 2022』は、エントリーの受付を開始した。今回は、幅広く11種類の募集テーマが提示され、「カーボンニュートラル」「行政DX」「メタバース」「スマート農畜水産業」など昨今注目を集めている領域も多い。自社のサービス・プロダクトと合致するテーマがあるはずなので、ぜひ『co-necto 2022』募集ページを確認し、応募を検討してほしい。なお、エントリー締切は、8/19(金)となる。

▼説明会も開催▼

開催日時:2022年7月22日(金)16:00~17:00 @オンライン

※参加申し込みはコチラ:(URL)https://forms.gle/nkpdxcTveif4TBbw9


(編集:眞田幸剛、取材・文:林和歌子)

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  • 清古貴史

    清古貴史

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  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

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