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実証実験費用支援や、多種多様な実証フィールド提供――凸版印刷×パートナー企業×スタートアップによる「実証型OIプログラム」の魅力とは?

実証実験費用支援や、多種多様な実証フィールド提供――凸版印刷×パートナー企業×スタートアップによる「実証型OIプログラム」の魅力とは?

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2021年7月、凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)は、オープンイノベーションプログラム『co-necto(コネクト)2021』のエントリー受付を開始する(エントリー締切:8/25)。co-nectoは、同社の九州事業部が西日本エリアを舞台にスタートアップ企業との共創にのぞむプログラム。2017年度の第1回を皮切りに毎年開催を続け、今回のco-necto 2021が第5回目となる。

また、2020年度からはプログラムの内容を一新し、パートナー企業を交えた3者による実証実験をプログラムの中心に据えた。凸版印刷やパートナー企業が一部費用や実証フィールドなどを提供して実証実験を行う「実証型オープンイノベーションプログラム」をコンセプトとしている。

今回、TOMORUBAでは、co-nectoを運営する凸版印刷の九州事業部ビジネスイノベーション営業本部事業開発部から高博昭氏をお招きし、co-necto 2021の開催概要やプログラムの特徴、魅力などをお伺いするインタビュー取材を実施した。

さらに、記事後半では、同社と実証実験に取り組む西部ガスホールディングス株式会社(以下、西部ガス)の小玉恵三氏と、飲食系プラットフォーム「ごちめし」などを展開するスタートアップ企業・Gigi株式会社(以下、Gigi)の今井了介氏にもご登場いただき、凸版印刷との実証型共創について伺った。

――co-nectoが掲げる「実証型オープンイノベーション」とは、一体どのようなものなのか?今まさに共創を推進する3社の実証型共創について聞いた。

2020年度プログラムでは、5件の実証実験が継続中。さらに強力な体制で共創をサポートする実証型オープンイノベーションプログラム「co-necto 2021」


▲凸版印刷株式会社 九州事業部 ビジネスイノベーション営業本部 事業開発部 部長 高博昭氏

1999年凸版印刷株式会社入社、営業を経験し、2015年より販促開発部に移動、ビジネスイノベーションチームを立上げ、オープンイノベーションプログラムの運営を開始。2020年より事業開発部を設立、新事業創出、事業開発、新市場攻略などを担当している。

――co-nectoでは2020年度から「実証型オープンイノベーション」を掲げ、パートナー企業、スタートアップ企業を交えた3者の実証実験をプログラムの中心に据えました。まず、2020年度のプログラムの実績や成果について教えてください。

凸版印刷・高氏 : 2020年度のエントリー総数は過去最高の154社にのぼりました。コロナ禍にあって、多くのスタートアップ企業さんにご参画いただけたことは、大きな成果と言ってよいと思います。さらに、2020年度のプログラムはオンラインでの実施だったため、日本国内はもちろん台湾やアメリカ、韓国など海外からもエントリーをいただき、多彩な顔ぶれによる開催となりました。


また、スタートアップ企業と共創にのぞむパートナー企業には、鉄道、ガス、建設、金融、新聞、人材など幅広い業界から19社にご参画いただきました。いずれも九州、中四国、関西に強固な基盤を有する企業で、共創の推進に多大なご尽力をいただきました。

実証実験を中心に据えたプログラムは昨年度が初めてでしたが、スタートアップ企業からは概ねご好評をいただいています。実際に、現在も5件の実証実験を計画中・実施中であり、共創の持続性の観点でも一定の成果を残すことができました。

1社平均約200万円の実証実験費用支援や、多種多様な実証フィールドの提供が、「co-necto 2021」の特徴

――今年度のプログラムであるco-necto 2021の実施概要を教えてください。

凸版印刷・高氏 : 基本的には2020年度の内容と同様に、凸版印刷、パートナー企業、スタートアップ企業の3者で実証実験を行う「実証型オープンイノベーション」を実施します。昨年度のプログラムで一定の成果を残すことができましたので、今年度もその形を踏襲して、さらに価値の高い共創を実現したいと考えています。

募集のテーマは、【①コミュニケーション/②オートメーション化/③健康ライフサイエンス/④DX・データドリブン/⑤スマートシティ/⑥SDGs/⑦新しい生活様式】の7つです。


なかでも、③健康ライフサイエンス、④DX・データドリブン、⑥SDGs、⑦新しい生活様式の4つのテーマは、企業が取り組むべき社会課題の領域でもありますので、スタートアップ企業のアイデアに特別な期待を寄せています。

プログラムのエントリー資格は、「実証実験を行うことができるサービスやプロダクトを自社で保有していること」「凸版印刷、パートナー企業との協業が可能なこと」の2つです。つまり、自社でプロダクトを有していて、実証実験への意思があれば、規模や地域に関わらず、どの企業でもエントリーいただけます。

エントリー後は、1次・2次選考を経て、実証実験に向けた準備を実施。最終的に採択された企業に対しては、1社平均約200万円の費用や実証フィールドの提供、凸版印刷、パートナー企業と連名でのプレスリリース配信などのインセンティブをご用意し、実証実験の実施、検証、事業化に向けた取り組みを進めていきます。


2021年度は、下記の20社のパートナー企業の皆様に参画いただいております。

アストラゼネカ株式会社 / 株式会社MBSメディアホールディングス / MBTリンク株式会社 / 株式会社奥村組 / 九州朝日放送株式会社 / 九州旅客鉄道株式会社 / 株式会社QTnet / 西部ガスホールディングス株式会社 / 株式会社新出光 / 株式会社ダスキン / 株式会社中国新聞社 / 中国電力株式会社 / 株式会社 テレビ西日本 / 株式会社電通国際情報サービス / 株式会社 西日本新聞社 / 西日本鉄道株式会社 / 株式会社西日本フィナンシャルホールディングス / パーソルテンプスタッフ株式会社 / 阪急阪神不動産株式会社 / 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ

(五十音順)

実証費用や実証フィールドの提供といったインセンティブはもちろんですが、大手企業と連携することも、スタートアップ企業の皆様にとっては大きなメリットだと思います。自社のプロダクトの可能性を広げ、さらなるグロースを目指すスタートアップ企業にはぜひエントリーいただきたいです。

共創事例:凸版印刷、西部ガス、Gigiの3社による「健康経営」と「地域活性化」を両立するサービスの実証型共創とは?

現在、凸版印刷は、福岡に本社を構える都市ガス大手の西部ガス、フードテックサービスを提供するスタートアップ・Gigi(ジジ)との3社で「社内ポイントを使って地域の飲食店で食事ができるサービスの実証実験」を実施中だ。この実証実験では、凸版印刷、西部ガスの一部社員の健康活動(ウォーキング、階段の利用など)に対してポイントを付与し、ポイント数に応じて地域の飲食店の飲食チケットと交換できるというサービスを構築している。

サービスは、西部ガスの「地元飲食企業を支援したい」という想いから始まり、凸版印刷が展開する社内ポイントサービス「たまると」、Gigiが展開する社食チケットサービス「びずめし」を組み合わせ、「企業の健康経営の推進」と「地域の飲食店支援」の両立を狙いとしている。実証実験に至る経緯や現在の状況、今後の展望などについて3社に話を聞いた。


■西部ガスホールディングス株式会社 事業開発部 マネージャー 小玉恵三氏

2000年、西部ガスホールディングス株式会社に入社し、緊急保安、導管設計など技術部門を経験。2018年には、同社の新規事業開発を担当する事業開発部のマネージャーに就任。温浴施設「ヒナタの杜 小戸の湯どころ」の開業などを手がける。


■Gigi株式会社 代表取締役 今井了介氏

作曲家・音楽プロデューサーとして、安室奈美恵「HERO」、TEE/シェネル「Baby I Love You」など、数々のヒット曲の作詞・作曲・プロデュースを手がける。2018年には、Gigi株式会社を立ち上げ、料金を先払いして飲食店の食事をギフトにする「ごちめし」のサービスを開始。現在は、飲食店支援サービス「さきめし」、社食チケットサービス「びずめし」など、飲食に関する複数のITサービスを展開している。

――まず、3社が今回の共創に至る経緯についてお聞かせください。

西部ガス・小玉氏 : 私が所属する事業開発部は、いわゆる新規事業開発をミッションとする部署で、これまでもスタートアップ企業との共創に取り組んできました。ただ、もともと西部ガスが「地域貢献」を経営理念に掲げていることもあり、新規事業を開発するにしても地域の皆様に役立つビジネスでなくてはならないという意識がありました。特に、ガス会社としては、ガスの卸先である地域の飲食店のコロナ禍における窮状は見過ごせません。

そうしたなかで凸版印刷さんと議論を重ね、「地域の飲食店を社食にする」というアイデアが生まれました。その後、凸版印刷さんからGigiさんをご紹介いただくのですが、Gigiさんが展開する「びずめし」は、今回の共創にまさにうってつけのサービスだと確信しました。

Gigi・今井氏 : Gigiは、福岡の豊かな食文化や暮らしを支え、盛り上げたいという想いから創業しました。「びずめし」も、企業が地域の飲食店を社食として利用することで、企業の福利厚生の充実、地域の飲食店支援、地域コミュニティの活性化という「三方よし」を目指したプラットフォームで、西部ガスさんのアイデアとは非常に近しい部分があったと思います。凸版印刷さんから共創のお話をいただいた際にも、ぜひご一緒したいとお返事しました。


西部ガス・小玉氏 : 一方で、西部ガスでは2019年ごろから、社員の健康を促進し、組織への帰属意識を醸成する健康経営の取り組みを進めていました。そこで「健康経営」と「地域の飲食店支援」の2つの要素を組み合わせたサービスを開発できないかと考え、今回の実証実験のアイデアに至りました。

Gigi・今井氏 : 健康経営というフレーズには、私自身、非常に響くものがありました。企業が福利厚生として社員の健康を促し、社員が健康になり、尚かつ地域の飲食店も支援することができれば、それも一つの「三方よし」の形であり、Gigiが目指す世界観ともマッチします。

また、健康経営に取り組む企業がどのようなニーズを抱えているのかも知ることができますし、今回の実証実験は非常によい機会を与えていただいたと思っています。

――現在、実施されている実証実験の概要についてお聞かせください。

西部ガス・小玉氏 : 今回、3社で実施しているのは「社内ポイントを使って地域の飲食店で食事ができるサービスの実証実験」です。具体的には、凸版印刷さんと西部ガスの社員が、所定の健康活動を実行することで社内ポイントを貯め、一定のポイント数で地域の飲食店の飲食チケットと交換できるサービスを実証しています。

健康活動には5種類を設定していて、その一つが階段の利用です。社内の階段の踊り場にQRコードを貼り、社員が階段を利用して移動する際にスマホでQRコードを読み込むことで、社内ポイントが付与される仕組みです(下画像参照)。その他にも、健康を意識したメニューの提供を行う社食の利用でもポイントを付与しております。この社内ポイントの仕組みには、凸版印刷さんが展開する「たまると」が活用されています。


凸版印刷・高氏 : 「たまると」は、社員の健康増進やコミュニケーション促進を目的に開発されたサービスです。2020年の秋頃から、凸版印刷の社内で実証を行い、2021年6月には企業向けの福利厚生サービスとして提供を開始しています。

今回の実証実験では、「たまると」の仕組みに「びずめし」が提供する飲食チケットというインセンティブを組み込むことで、より健康行動の促進効果を高められるのではないかと期待しています。


▲実証実験におけるサービスのイメージ図

――現在までの実証実験の手応えはいかがでしょうか。

西部ガス・小玉氏 : まだ具体的な効果は計測できていませんが、PoCに参加した社員の健康意識の高まりは感じています。これまで西部ガスでは健康診断結果などを閲覧できる社内アプリがあったのですが、今回の実証実験を開始してから、社員の健康意識が高まり、既存のアプリへの閲覧頻度も上がってきており、相乗効果が生まれてきたと思います。

また、今回の実証実験は社員間のコミュニケーション促進にも寄与しています。実際に「今、ポイントどれくらい?」や「どうやったらそんなにポイント獲得できるの?」といった会話を社内で耳にする機会も多く、社員間のコミュニケーションの量は間違いなく増加しています。

――3社による共創の今後の展望を教えてください。

西部ガス・小玉氏 : まずは、今回の実証実験でどのくらいの効果が得られるのかを検証します。社員が飲食チケットというポイントを付与されることで本当に健康増進に向けた行動変容を起こすのか、また、このサービスが地域の飲食店さまの送客支援につながるのか、といった点をしっかり見極めるつもりです。

さらに、それが有効であると実証された際には、このサービスのスキームを様々な地域に発信したいですね。  西部ガスは、地元のエネルギーインフラ企業として、これまでに関係を築いた多くの企業さまとのネットワークを活かして、ゆくゆくは、このサービスを、健康経営と飲食支援の2つを軸に地域を活性化するプラットフォームにしたいですね。

凸版印刷・高氏 : 経済的な効果の検証はもちろんですが、私は今回の実証実験を通じて、よりサービスを磨き上げたいです。利便性の向上や利用できる飲食店の追加など、社員たちから多くの要望を吸い上げ、それを反映していくなかで、よりよいサービスを構築する循環を作り上げたいですね。

そうしたなかで、小玉さんがおっしゃるようにサービスを他地域に展開し、企業と地域が一体となって地域を活性化する「福岡モデル」のような形で発信していければ理想的だと思っています。

――最後に、Gigiの今井さんにお伺いします。凸版印刷や西部ガスと共創する魅力について教えてください。

Gigi・今井氏 : あらゆるスタートアップ企業にとって、「信用度」や「信頼度」は、サービスをスケールするうえで大きな障壁になります。実際に、Gigiも「びずめし」などのサービスを展開するなかで、いかに飲食店の信頼を勝ち取るかに苦心してきました。

ただ、今回、凸版印刷さんや西部ガスさんとの実証実験の機会をいただき、この共創でしっかり成果を残すことが、Gigiの信用度や信頼度の向上につながると実感しています。そうした点は、凸版印刷さんや西部ガスさんと共創する大きな魅力です。

一方で、着眼点の面白さや切り口、スピード感や独自性は、スタートアップ企業ならではの強みだと思いますので、信頼を緻密に積み重ねながらも、誰もやっていない新規性を求めるのも重要だと思います。Gigiもまだまだ道半ばの企業であり、偉そうなことが言える立場ではありませんが、co-necto 2021にエントリーを検討されているスタートアップ企業の皆様には、「新規性」と「信頼の積み重ね」の両方を意識しながらプログラムにのぞむことをおすすめします。

取材後記

co-nectoの大きな特徴は、プログラムを主催する凸版印刷だけでなく、多種多様な業界の大手企業がパートナー企業として参画し、3者で共創を進めることだ。

つまり、一般的なアクセラレータープログラムやオープンイノベーションプログラムに比べて、co-nectoには多様な可能性が秘められている。今回、取材した凸版印刷、西部ガス、Gigiの3社は、それぞれのアセットを組み合わせて新たなサービスを生み出そうとしている。co-nectoでは、そうした「組み合わせ」が様々な形で可能となるのだ。これはエントリーを検討しているスタートアップ企業にとっては大きな魅力と言っていいだろう。

尚、co-nectoへのエントリーは、西日本エリアに拠点を持つ企業に限られない。西日本エリアを舞台にサービスの可能性を実証し、グロースの急加速を実現したいならば、ぜひエントリーをお勧めしたい。(プログラム説明会開催: 7/28(予定)、エントリー締切:8/25(予定))

(編集:眞田幸剛、取材・文:島袋龍太)


https://auba.eiicon.net/projects/993

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