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医療、宇宙、量子コンピュータ――『大学発ベンチャー表彰2022』に選ばれた8社の事業と受賞理由とは?

医療、宇宙、量子コンピュータ――『大学発ベンチャー表彰2022』に選ばれた8社の事業と受賞理由とは?

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2022年5月に経済産業省が発表した「令和3年度大学発ベンチャー実態等調査」。同調査において存在が確認された大学発ベンチャーは3,306社となっており、2020年度で確認された2,905社から401社増加。企業数及び増加数ともに過去最高を記録している。

 

▲大学発ベンチャー数の推移(出典:経済産業省「大学発ベンチャー実態等調査」)


また一方で、「令和3年度大学発ベンチャー実態等調査」によれば、関東のみならず地方エリアにおいても多くの大学発ベンチャーが誕生。近畿では40社以上、中部や中国・四国、九州・沖縄といった地域でも約30社以上の大学発ベンチャーが立ち上がっている。


▲地域別大学発ベンチャー数の増減率(出典:経済産業省「大学発ベンチャー実態等調査」)

※関連記事:1年で401社増加し、地方での起業も活発に。最新調査から読み解く大学発ベンチャーの「現在地」

――このように、日本全国において大学発ベンチャー数が増加傾向にある中、2022年9月に「大学発ベンチャー表彰2022」の受賞者が発表された。イノベーションをもたらす担い手として期待されている大学発ベンチャーだが、「大学発ベンチャー表彰2022」でどのような企業が受賞したのか、本記事で詳しく紹介していく。

「大学発ベンチャー表彰2022」の受賞者とは?

JST(科学技術振興機構)とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が運営する「大学発ベンチャー表彰」は2014年度にスタートした制度。大学などの成果を活用して起業したベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーを表彰するとともに、特にその成長に寄与した大学や企業なども表彰している。これを通じ、大学などの研究開発成果を用いた起業と起業後の挑戦的な取り組みや、大学発ベンチャーへの支援などをより一層促進することを目的としている。

外部有識者からなる「大学発ベンチャー表彰2021」選考委員会による応募書類の審査および面接審査を経て、大学発ベンチャー8社とその支援大学・支援企業の受賞は以下の通りだ。


医療、宇宙、量子コンピュータなど、多岐にわたる分野で活躍するベンチャーが表彰されている。それでは次に、各賞の受賞理由などについて詳しく見ていきたい。

各賞を受賞した8社の事業概要と表彰理由

【文部科学大臣賞】

■受賞企業:Chordia Therapeutics株式会社 https://www.chordiatherapeutics.com/

■支援大学等:京都大学 大学院医学研究科

■事業内容:【日本発】【世界初】新しい抗がん剤を創生することにより次世代のがん医療の実現に貢献する

■会社概要:新しい抗がん剤の創生により次世代のがん医療の実現に貢献し、未だ治療方法が確立されていないがん患者に対して治療薬を届けるべく研究開発に取り組んでいる。 この過程において国内アカデミア、投資家、行政機関等との協力体制を築き、日本の創薬エコシステムの発展に貢献していくことも志している。 そして日本発の研究開発型の製薬会社として成長し、日本における新たな医薬品開発の拠点となることを目標としている。 2020年には小野薬品との大口ライセンス契約を結び、今年には40億円の調達を行うとともに、メディパルホールディングスとの業務提携を合意するなど事業を加速している。

■大学等による支援: MALT阻害剤の創生はアカデミアシーズを最大有効活用し、この世に無い医薬品の創生に取り組むものであった。 この成功を踏まえて京都大学においてChordiaとの共同研究講座「次世代腫瘍分子創薬講座」を設立し、産学連携をさらに推し進めている。

■受賞理由:新しい抗がん薬を開発する企業。パイプラインの一つであるスプライジング制御薬の開発が、新たな抗がん薬となり、世界を舞台に今後活躍することが期待される。 また、開発・事業化のプロが大学のシーズをパイプライン化していくことを強みとしており、産学官が一体となり大学の知を生かし創薬事業を展開することを目指している点も高く評価され、 今後の創薬業界の新しいロールモデルとしても期待される。

【経済産業大臣賞】

■受賞企業:bitBiome株式会社 https://www.bitbiome.co.jp/ 

■支援大学等:早稲田大学 理工学術院

■事業内容:独自技術で構築した膨大かつユニークな微生物ゲノムデータベースを活用した、バイオものづくり産業の革新

■会社概要:シングルセル技術を用いた微生物のゲノム解析を行っており、世界最大・最高解像度の微生物ゲノムデータベースを構築している。 当社が開発したゲノム解析技術bit-MAP®は、世界唯一の微生物を対象としたシングルセルゲノム解析技術であり、 微生物のゲノム情報をたった1つの細胞から高精度に解読することを可能としたものである。微生物に新たな目的物質を生産させるテクノロジー “バイオモノづくり”が昨今国の重点産業とされてきているが、その起点となるのは 微生物の設計図である”ゲノム(DNA)”であり、 bitBiomeは独自の解析技術によって膨大かつユニークな微生物ゲノムデータベースを構築し、これを基にバイオものづくり産業を飛躍的に発展させることに寄与していく。

■大学等による支援内容:早稲田大学 細川准教授が開発したゲノム解析技術に係る知財創出や共同研究により、事業化を促進した。 また、学内インキュベーション施設を活用した起業支援に加え、リサーチイノベーションセンター(121号館)の実験室を活用した事業加速を支援している。

■受賞理由:bitBiome社は、シングルセルゲノム解析により世界最大・最高解像度の微生物ゲノムデータベースを構築し、微生物遺伝子を活用した産業構造を刷新することを目指す企業である。 国の重点産業とされるバイオものづくり分野においての唯一無二のゲノムマイニングプラットフォームとして位置づけられており、今後の成長が期待される。

【科学技術振興機構理事長賞】

■受賞企業:KAICO株式会社 http://www.kaicoltd.jp/ 

■支援大学等:九州大学 大学院農学研究院

■支援企業:双日株式会社

■事業内容:世界にまだないタンパク質をカイコでつくる、難発現性タンパク質生産プラットフォーマー

■会社概要:昆虫のカイコで組換えタンパク質を開発・生産するプラットフォームを有する九州大学発ベンチャー。 試薬・診断薬・ワクチンの原料タンパク質の開発を行っており、ノロウイルスVLP(ウイルス用粒子)を完成させている。 独自に経口ワクチン(特許出願中)を開発し動物用、ヒト用への展開を目指している。2020年にはCOVID19のスパイクタンパク質を完成し試薬として販売、 現在は抗体測定サービスを提供している。

■大学等による支援内容:日下部研究室は、カイコバイオリソースによる組換えタンパク質生産システムをベンチャーのコア技術として導出。 創業から4年経過した現在も、KAICOアドバイザーとして開発案件に対して技術的なアドバイスを行い、事業成果に繋がった。

■企業による支援内容:双日は、KAICO社の豚用飼料添加物事業化を支援。当該事業の最初のターゲット市場であるベトナムの市場調査、 現地パートナー候補の選定からアプローチまでを積極的に実施し、現地での商流を構築中。2023年上市の実現に向け大きく貢献。

■受賞理由:KAICO社は蚕を利用した経口ワクチン開発などを手がける企業である。当社開発の技術・ノウハウと特許をうまく活用しながら展開している点が評価された。 また、事業の伸張により蚕のための桑畑を作ることになり、養蚕業復興という地方創生やカーボンクレジットの一つとなり、社会貢献度の高い企業へと成長している点も評価された。

【新エネルギー・産業技術総合開発機構理事長賞】

■受賞企業:株式会社ElevationSpace https://elevation-space.com/ 

■支援大学等:東北大学 工学研究科

■事業内容:宇宙ステーションに代わる小型・無人宇宙環境利用プラットフォーム開発

■会社概要:株式会社ElevationSpaceは、誰もが宇宙で生活できる世界を創り、人の未来を豊かにすることを目指している東北大学発の宇宙スタートアップである。 吉田・桒原研究室でこれまで開発してきた数多くの小型人工衛星の知見を活かし、人工衛星内で実験や製造等を行うことのできる小型宇宙利用・回収プラットフォーム ELS-Rを開発している。

■大学等による支援内容:東北大学工学研究科桒原研究室よりスピンアウトした企業であり、桒原研究室を含む共同研究契約を5件東北大学と締結し、 技術実証用の人工衛星の開発に共同で取り組んでいる。

■受賞理由:ハードルが高い宇宙利用の分野において、誰もが気軽に宇宙利用出来る世界の実現に向けチャレンジしているベンチャー企業である。 当社が担う宇宙実験プラットフォームの提供は、食料、創薬、材料等、あらゆる産業分野にとって重要である。宇宙利用、その普及を加速させる可能性のあるベンチャー企業である点が評価された。

【日本ベンチャー学会会長賞】

■受賞企業:株式会社ニューロシューティカルズ https://www.nci-md.com/ 

■支援大学等:国立循環器病研究センター 循環動態制御部

■事業内容:心臓疾患である心不全治療として経静脈的迷走神経刺激カテーテルシステムの開発を実施しています。

■会社概要:メインプロダクトの開発に加え、医療分野におけるデバイスジェネレーターとして製品開発やアプリケーション開発、重要なコンポーネントの開発を主眼に、 医療分野における「価値の創造」に注力。研究機関、大学の技術シーズ、臨床現場からニーズなどから、より効率的に診断や治療を行えるもの、 そして患者のQOLを高めるものを中心にプロジェクト化し製品リリースを実施している。

■大学等による支援内容:国立循環器病研究センターの朔啓太先生にはPOCも含めユーザビリティ確認や非臨床試験のサポート。 また九州大学ARO次世代医療センターの戸高浩司氏による治験プロトコルの作成などでアドバイス。

■受賞理由:迷走神経を刺激するデバイスを開発しているが、デバイス開発のみでなく、 収益面では受託等をバランス良く取り入れることで会社の成長に必要な優れた収益・成長モデルを構築している点が評価された。

【アーリーエッジ賞】

■受賞企業:LQUOM株式会社 https://lquom.com/ 

■支援大学等:横浜国立大学 工学研究院

■支援企業:株式会社オキサイド

■事業内容:量子インターネットに繋がる長距離量子通信機器・システムの開発・製品化

■会社概要:長距離量子通信(Long Distance Quantum Communication)の社会実装目指す横浜国立大学発スタートアップ。量子通信は、量子コンピュータでも解読不可能な安全な量子暗号通信や、 量子コンピュータ同士を連結し計算能力を増強させる分散量子計算といった、量子時代の社会インフラとして必須の技術である。LQUOMは光源・波長変換・周波数安定化・量子メモリといった コア技術を基にそれらのシステム化に取り組んでいる。

■大学等による支援内容:LQUOM技術の基は横浜国立大学堀切研究室の光及び物質量子系の基礎研究ならびにJST START事業の成果をシーズ技術としてスピンオフ起業した。 現在も横浜国立大学と共同研究契約を結び、研究開発インフラの提供など全面的にバックアップ。

■企業による支援内容:オキサイドはNIMS発ベンチャー第1号、2021年東証マザーズ上場後は国内のDeep Tech分野のアカデミア発ベンチャー支援に注力している。 LQUOMの技術力と将来性をご評価いただき資本業務提携(特に世界最高峰の光学単結晶・デバイスの開発)などのサポート。

■受賞理由:量子コンピュータの発展により従来の暗号技術では解読されるリスクは周知の事実である。当社は量子インターネット分野において、 安心・安全な量子インターネット環境の実現のために量子通信技術の開発、社会実装を目指している。量子インターネットの分野においてキープレイヤーとなる可能性を秘めていることに加え、 国産の量子通信システムが実現した際の社会性・公共性の高さから、一層の成長が期待される。

【大学発ベンチャー表彰特別賞】

■受賞企業:株式会社アイ・ブレインサイエンス https://www.ai-brainscience.co.jp/ 

■支援大学等:大阪大学 医学系研究科

■支援企業:フューチャー株式会社

■事業内容:視線データを利用した認知機能評価法の医療機器開発、一般向け認知機能評価アプリ「MIRUDAKE」販売

■会社概要:アイトラッキング式認知機能評価法(ETCA)の社会実装を目的として2019年に設立。ETCAはタブレットのカメラシステムで収集した視線データをもとに、 短時間で認知機能を定量化できるため、認知症の早期発見に役立つことが期待できる。医療機器プログラム、一般向けアプリとしてETCAの実用化を進め、 認知症早期発見の実現を目指す。2022年4月には大塚製薬と販売独占契約を締結し、事業を加速している。

■大学等による支援内容:武田朱公准教授により開発された基盤シーズであるアイトラッキング式認知機能評価法の提供、ならびに当該技術にかかる臨床的・医学的知見の提供や、臨床評価など当社事業の推進に大きく寄与。

■企業による支援内容:製品開発方針に対する技術的見解の提供やプログラム開発、視点データの解析手法の提案などをもって事業の推進に寄与。 また、当社の医療機器プログラム開発において、医療機器製造業者を担っている。

■受賞理由:アイトラッキング式認知機能評価法は、簡便であり、今後増加する予備軍を含む認知症の早期診断への貢献が期待される。 早期診断による予防・悪化の抑制は患者のQOLの観点、また社会的側面からますます重要になっている。 当社の開発アプリは想定される利用シーンが多いこと、海外含む市場性もあると考えられる点が評価された。

【大学発ベンチャー表彰特別賞】

■受賞企業:株式会社PURMX Therapeutics https://www.purmx.com/ 

■支援大学等:広島大学 大学院医系科学研究科

■支援企業:株式会社スリー・ディー・マトリックス

■事業内容:天然型マイクロRNAを用いた難治性疾患を対象とする新薬の研究開発

■会社概要:細胞に老化を誘導できるマイクロRNAを用いて、がん細胞に老化のスイッチを入れる新規抗がん剤コンセプトの研究開発を行っている。 広い抗腫瘍スペクトラムと強力な抗がん作用を有するmiR-3140-3pと核酸保護材・A6Kと混合する抗がん剤(開発コード:MIRX002)は、 第一号のパイプラインとして現在、広島大学で悪性胸膜中皮腫に対する医師主導治験のPhaseⅠ試験(単回及び反復投与)を実施中。2024年頃にグローバルPhase IIを予定。

■大学等による支援内容:広島大学の田原栄俊教授が、細胞老化に関わる老化関連マイクロRNAを機能的RNAスクリーニングにより同定するプラットフォームを構築した。 それらの中で、広い抗腫瘍効果を示す強力なマイクロRNAを複数同定し、miR-3140-3pを同定した。

■企業による支援内容:核酸を保護する界面活性剤ペプチドA6Kを、独占的に研究開発してきた企業である。 このA6Kのライセンス供与を受け、弊社のリードパイプラインの有効成分miR-3140に適用し、臨床応用することが可能となった。

■受賞理由:がん細胞に「老化のスイッチ」を入れるという新しいコンセプトの核酸医薬品を開発している。 既に医師主導治験も開始している点、年々注目が高まっている核酸医薬(がんの老化を促すマイクロRNAに着目)の実現に期待する。

(TOMORUBA編集部)

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  • 川島大倫

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