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医療・宇宙などの領域で独自技術を持つ7社が受賞!「大学発ベンチャー表彰2023」で選ばれた各社の事業と受賞理由とは?

医療・宇宙などの領域で独自技術を持つ7社が受賞!「大学発ベンチャー表彰2023」で選ばれた各社の事業と受賞理由とは?

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2023年5月、経済産業省は「令和4年度大学発ベンチャー実態等調査」を発表した。同調査において公開された大学発ベンチャーは3,782社となり、2021年度に確認された3,305社から477社増加。企業数、増加数ともに過去最高を記録している。

日本全国において大学発ベンチャー数が増加傾向にある中、2023年8月に「大学発ベンチャー表彰2023」の受賞者が発表された。イノベーションをもたらす担い手として期待されている大学発ベンチャーだが、「大学発ベンチャー表彰2023」でどのような企業が受賞したのか、本記事で詳しく紹介していく。

「大学発ベンチャー表彰2023」の受賞者とは?

JST(科学技術振興機構)とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が運営する「大学発ベンチャー表彰」は2014年度にスタートした制度。

大学などの成果を活用して起業したベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーを表彰するとともに、特にその成長に寄与した大学や企業なども表彰している。これを通じ、大学などの研究開発成果を用いた起業と起業後の挑戦的な取り組みや、大学発ベンチャーへの支援などをより一層促進することを目的としている。

外部有識者からなる「大学発ベンチャー表彰2023」選考委員会による応募書類の審査および面接審査を経て、受賞が決定した大学発ベンチャー7社とその支援大学・支援企業は以下の通りだ。

医療や宇宙といった分野で、独自技術を駆使するベンチャーが表彰されている。それでは次に、各賞の受賞理由などについて詳しく見ていきたい。

各賞を受賞した7社の事業概要と表彰理由

【文部科学大臣賞】

■受賞企業:株式会社セルージョン https://cellusion.jp/ 

■代表者氏名:羽藤 晋(代表取締役社長CEO)

■支援大学等:慶應義塾大学 医学部 眼科学教室 特任教授 榛村 重人 

■支援企業:株式会社ニコン・セル・イノベーション 代表取締役 中山 稔之

■事業内容:水疱性角膜症に対するiPS細胞を用いた角膜再生医療の研究開発

■会社概要:iPS細胞から角膜内皮代替細胞CLS001を効率的に作製する特許技術を基に、角膜移植におけるドナー不足等の供給制約の解消を目指し、国内およびグローバルでの企業治験に向け準備を進めている。更にペイシェント・セントリシティの考え方に立ち、現在の医学が抱えるアンメットメディカルニーズに最先端の細胞治療技術で応えていくため、後続パイプラインを拡張している。

■大学等による支援内容:大学との共同研究により最先端のアカデミアの知見、施設や人材等の活用。また、慶應義塾大学病院における医師主導臨床研究においてFirst in human の移植を実施し、研究開発を推進する上で重要なデータを得ることに繋がっている。

■企業による支援内容:株式会社ニコン・セル・イノベーションが持つ製法開発のノウハウを利用することにより、CLS001の製法開発が加速すると伴に、 細胞加工施設で製造された細胞を用いての各種非臨床試験に関するデータの整備が進み、臨床試験の準備が飛躍的に進んだ。

■受賞理由:セルージョン社はiPS細胞由来の⾓膜内⽪代替細胞を⽤いる水疱性角膜症の新たな治療法を開発している企業。治療法の確立に向けて開発推進体制が構築され、臨床研究を着実に進めている。従来法の課題を克服する可能性を秘めた製品・技術であり、当社の再生医療技術が受け入れられ、世界の角膜移植待機患者の希望となることが期待される点が高く評価された。

【経済産業大臣賞】

■受賞企業:エレファンテック株式会社 https://www.elephantech.co.jp/ 

■代表者氏名:清水 信哉(代表取締役社長兼CTO)

■支援大学等:東京大学大学院工学系研究科教授 川原 圭博

■事業内容:インクジェット印刷を用いた独自のアディティブ製法による低環境負荷電子回路基板の製造・販売

■会社概要:2014年に設立した東大発スタートアップ。電子部品業界で100年以上用いられてきた既存製法を置き換える金属インクジェット技術を活用した独自製法ピュアアディティブ®法を開発、量産に成功した。本製法は既存製法と比較してCO2排出量75%削減、水消費量95%削減を実現。「新しいものづくりの力で、持続可能な世界を作る」のミッションのもと環境に優しいものづくりの研究開発、社会実装を加速している。

■大学等による支援内容:東京大学川原圭博教授らのインクジェット印刷による回路形成に関する研究成果を活用して創業。創業時には同氏が技術アドバイザーに就任し支援を実施。

■受賞理由:エレファンテック社は金属インクジェット印刷による新たなプリント回路基板の製造⽅法を確立し、既に量産体制を実現して社会実装を着実に進めている点が評価された。また環境負荷の少ない同社の技術は社会的な問題に対して持続可能な解決策を提供できる可能性を秘めており、今後の更なる成長、活躍が期待される点が高く評価された。

【科学技術振興機構理事長賞】

■受賞企業:コウソミル株式会社 https://cosomil.com/ 

■代表者氏名:鏡味 優(代表取締役)

■支援大学等:東京大学大学院薬学系研究科 助教 小松 徹

■支援企業:ANRI株式会社 プリンシパル 宮﨑 勇典

■事業内容:酵素活性の1分子計測リキッドバイオプシー技術による疾患早期診断と医薬品開発支援

■会社概要:コウソミル株式会社は、東京大学大学院薬学系研究科の小松徹助教による酵素活性の蛍光検出技術及び理化学研究所の渡邉力也主任研究員による1分子計測技術を組み合わせた、体液中の酵素の活性を1分子レベルの超高感度で網羅的に解析できる「1分子計測リキッドバイオプシー」技術を用いて、疾患の早期診断薬の開発及びバイオマーカー探索による医薬品開発支援を行う。最初のパイプラインとして膵臓がんの早期診断薬を開発中。

■大学等による支援内容:小松助教が本技術の核となる高水溶性蛍光性酵素基質や複数色基質での酵素活性の精密計測法を着想し、当時大学院生の坂本CTOを指導し本技術の開発/事業化を支援した。また東京大学より特許の使用許諾・インキュベーション施設への入居等の支援を得ている。

■企業による支援内容:坂本CTOが大学院生時代に本技術での起業を検討時、ANRI宮﨑博士に実用化プロセスや事業プランを明確化いただき起業に至った。またJST STARTの事業プロモーターとしての関与以来、出資の他、事業への助言、先輩起業家/専門家紹介等の支援を実施。

■受賞理由:コウソミル社は血液中の酵素活性を1分子のレベルで解析することで、がんの早期発見を可能にする診断法を開発している。がんの早期発見は患者の生存率、予後の改善に直結する重要課題であり、診断薬として利用出来るバイオマーカーの探索に志高く挑戦している点が評価された。

【新エネルギー・産業技術総合開発機構理事長賞】

■受賞企業:つばめBHB株式会社 https://tsubame-bhb.co.jp/ 

■代表者氏名:中村 公治(代表取締役CEO)

■支援大学等:東京工業大学国際先駆研究機構 元素戦略MDX研究センター 栄誉教授 細野 秀雄

■事業内容:アンモニア合成触媒の開発、小規模分散型アンモニア生産システムの販売

■会社概要:東京工業大学の細野栄誉教授が開発したエレクトライド技術を商業化するために、2017年に教授陣・民間企業・投資ファンドの出資により設立。「独創的な技術を活用することで環境・食糧問題にかかる人類課題を解決し、持続可能な社会を実現する」をビジョンに掲げ、その実現を目指す。2022年に初号機を受注し起業目的は達成し、ビジョン実現に向けグローバルでの事業展開を進めている。

■大学等による支援内容:共同研究の実施や生み出された成果の活用、また特許の共同出願や知的財産のライセンス付与を通じた事業成果への寄与。

■企業による支援内容:NEDOのグリーンイノベーション基金「燃料アンモニアサプライチェーンの構築」における触媒開発、科学技術振興機構「未来社会創造事業」における共同研究や、ラオスの国余剰水力発電を活用した現地肥料生産の基礎調査等。

■受賞理由:つばめBHB社は、エレクトライド系触媒を用いた小規模プラントでのオンサイトアンモニア生産の実用化を目指す企業。味の素社との連携にも特色があり、海外での社会実装を進めている。アンモニアはCO2フリー燃料や水素キャリアとしての用途拡大も見込まれ、今後大きな成長が期待できる点が評価された。

【日本ベンチャー学会会長賞】

■受賞企業:株式会社Pale Blue https://pale-blue.co.jp/jpn/ 

■代表者氏名:浅川 純(代表取締役)

■支援大学等:東京大学大学院新領域創成科学研究科 基盤科学研究系 先端エネルギー工学専攻・准教授 小泉 宏之

■事業内容:「水」を推進剤とした、小型衛星用推進機の開発

■会社概要:2020年に創業した東京大学発の宇宙ベンチャー企業。安全無毒である「水」を推進剤とした持続可能な小型衛星用推進機の技術革新および社会実装に取り組んでいる。⼩型衛星実⽤化の課題となっている推進機に技術革新を起こすことで、宇宙産業のコアとなるモビリティを創成し、人類の可能性を拡げ続けるべく、事業を加速している。

■大学等による支援内容:起業の母体となった東京大学 小泉研究室との間で水推進機の研究開発に関する共同研究を実施。また水プラズマ式推進機に関し、東京大学が特許を持つ技術を活用。

■受賞理由:Pale Blue社は次世代の「水」を推進剤として用いた小型衛星向け推進機で持続可能な宇宙開発を目指している。研究機関を中心とした外部機関との連携を通じた確実なアプローチで製品開発を進めていること、またエンジニアを中心とした強固なチーム体制を早い段階から構築できていることが評価された。

【アーリーエッジ賞】

■受賞企業:株式会社FerroptoCure https://ferroptocure.com/

■代表者氏名:大槻 雄士(代表取締役CEO)

■支援大学等:慶應義塾大学 医学部 名誉教授 佐谷 秀行

■事業内容:世界初のフェロトーシス創薬の実現

■会社概要:株式会社FerroptoCureは、がんや神経変性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)など様々な疾患において、その発生や悪化に関わるとされているフェロトーシスに注目した創薬に取り組んでいる。特に、最新の研究によりフェロトーシスの制御が、がんの発生・進展・転移に強く関与することが知られていることから、この制御メカニズムを破綻させる抗がん剤を生み出すことにより、がん患者に新しい治療法を届けることを目指している。

■大学等による支援内容:慶應義塾大学医学部遺伝子制御研究部門よりスピンアウトした企業である。大学の持つ知見の活用等を通じ、フェロトーシス創薬の開発を加速している。

■受賞理由:FerroptoCure社は、酸化ストレスによる細胞死フェロトーシスの誘導を利用した世界初の抗がん剤開発を目指す慶應義塾大学発の企業。独自メカニズムを用いた「難治性がん」にも効果のある抗がん剤の開発を、既存薬のドラッグリポジショニングにより高い安全性を確保しつつ、迅速な承認を目指している。また人間以外にも動物のがんの治療薬も用途発明で開発を進める点などがユニークであり、今後注目の企業として評価された。

【大学発ベンチャー表彰特別賞】

■受賞企業:ジェリクル株式会社 https://gellycle.com/ 

■代表者氏名:増井 公祐(代表取締役CEO)

■支援大学等:東京大学 工学部化学生命工学科 教授 酒井 崇匡

■事業内容:テトラゲルを利用した医薬品・医療機器(Gel Medicine)の研究開発等

■会社概要:「ゲルで医療に革新を」をコンセプトに掲げ、ゲルの物性制御に関する革新的技術を開発し、多様な医療製品を提供するプラットフォーム型ビジネスを展開している。ゲルは単純そうに見えて、まだ物理法則が解明されていない素材であるが、その物理法則の大部分を解明し、ゲルを医療分野でも安全に利用できる素材にしている。複数の大学や企業と連携し、止血材や癒着防止材、神経再生材など、様々な医療製品の共同開発を実施。

■大学等による支援内容:東京大学工学部の酒井崇匡教授の15年以上のゲルに関する研究成果を当社の事業のコア技術としている。また医工連携を重視しており、東京大学病院の各診療科の医師と協力し、ゲルを用いた実践的な医療製品の研究開発を実施。

■受賞理由:ジェリクル社はハイドロゲルを医療製品に応用している企業。これまで医療における活用が難しいとされていたゲル素材であるが、当社は生体適合性が極めて高く、物性を制御できる独自のゲルを用いることで、医療への活用を目指している。これまで困難とされていた課題に対して共同研究パートナーとともに着実に製品の実用化へ繋げている点が評価された。

(TOMORUBA編集部)

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