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「大学発ベンチャー表彰2025」受賞結果が決定 DX・医療・宇宙など多彩な6社が選出

「大学発ベンチャー表彰2025」受賞結果が決定 DX・医療・宇宙など多彩な6社が選出

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科学技術振興機構(JST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、文部科学省、経済産業省は8月21日、「大学発ベンチャー表彰2025」の受賞結果を発表した。今年度は41件の応募から6社が選出され、医療DX、産業のデジタル化、宇宙開発など、大学発ベンチャーの成長領域を象徴する顔ぶれが揃った。

実態データに見る“量”のフェーズ:大学発ベンチャー、過去最高水準へ

経済産業省は、6月6日に「令和6年度大学発ベンチャー実態等調査」の結果を取りまとめた。2024年度の大学発ベンチャー数は5,074社に拡大。前年度の4,288社から786社増加し、設立および増加数ともに過去最高を記録した。特に地方や私立大学の台頭が著しい。関西大学は前年比5倍超(9社→47社)という圧倒的な増加率を誇り、沖縄科学技術大学院大学や神戸大学も急伸している。大学別では、東京大学(468社)が最多を維持し、京都大学(422社)、慶應義塾大学(377社)が追随。東京科学大学が初登場で8位にランクインしている。背景には、大学内エコシステム(VC、TLO、起業支援拠点等)の整備が進み、博士人材の経営参画など高度人材の起業が増加傾向にある点が挙げられる。

「大学発ベンチャー表彰」とは?

「大学発ベンチャー表彰」は、2014 年度より新たに開始した表彰制度だ。 大学などの研究開発成果を活用して起業したベンチャーのうち、今後の活躍が期待される優れた大学発ベンチャーを表彰するとともに、その成長に寄与した大学や企業なども表彰する。大学における研究開発成果を用いた起業および起業後の挑戦的な取り組みや、大学や企業から大学発ベンチャーへの支援の促進が目的だ。 また、2017 年度より、若手経営者のよりアーリーなステージの企業にフォーカス。経営者が40 歳未満かつ設立後 3 年以内の企業のうち、今後の大きな活躍が期待できる大学発ベンチャーを表彰する「アーリーエッジ賞」を設け、若手経営者の挑戦を支援している。

受賞企業一覧

【文部科学大臣賞:株式会社CROSS SYNC】

  • 企業名 / 代表者氏名

株式会社CROSS SYNC

代表取締役 髙木 俊介、代表取締役 中西 彰

  • 支援大学 / 支援企業

支援大学:横浜市立大学 附属病院集中治療部 部長・准教授 髙木 俊介

支援企業:株式会社日本政策投資銀行 イノベーション投資部 調査役 藤田 智行

  • 事業内容

AI管理アプリによる重症患者を中心とした遠隔ICUの提供

  • 会社概要

横浜市立大学発の医療Techベンチャー。代表・髙木の集中治療専門医としての経験を活かし、生体看視アプリ『iBsen DX』を開発。AIとIoTを駆使して重症患者の状態を遠隔可視化・予測し、“ICU Anywhere”を掲げ、集中治療室の外でもICUレベルの医療を提供することを目指す。

  • 受賞理由

横浜市立大学発の認定ベンチャーであり、重症患者の遠隔モニタリングを可能にする医療アプリケーションを開発している。生体データと画像解析を活用した独自の遠隔ICUは、医療現場の人手不足緩和に資する革新性と実用性を備えています。保険収載も実現し、今後他社との連携を通じた社会実装と拡大が進む可能性について高く評価された。

【経済産業大臣賞:燈(あかり)株式会社】

  • 企業名 / 代表者氏名

燈株式会社

代表取締役社長 野呂 侑希

  • 支援大学

東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 松尾・岩澤研究室 教授 松尾 豊

  • 事業内容

DX支援によるAI構築・導入およびAISaaSプロダクトの提供

  • 会社概要

東京大学松尾研究室発のAIスタートアップ。「日本を照らす燈となる」という使命のもと、建設・製造業等の基幹産業が直面する人手不足や生産性の課題解決に挑む。LLMや、図面・点群解析・シミュレーション等に独自AI技術を掛け合わせ、企業の個別課題に最適化したDXソリューションで業務の自動化・高度化を実現する。さらに、そこで得た知見を実用的な業界特化SaaSへと展開し、業界全体の生産性向上を牽引する。

  • 受賞理由

製造・建設・物流業に特化したDXプロダクトを展開しており、日本の現場業務や商習慣にマッチした柔軟な設計で、即戦力となるサービスを提供している。人手不足や業務の属人化といった構造的課題に対応し、業界全体の効率化と働き方改革に大きく貢献する現場密着型のプロダクト開発と実践的経営が高く評価された。

【科学技術振興機構(JST)理事長賞:株式会社アークエッジ・スペース】

  • 企業名/代表者氏名

株式会社アークエッジ・スペース

代表取締役CEO 福代 孝良

  • 支援大学

東京大学大学院工学系研究科 教授 中須賀 真一

  • 事業内容

超小型衛星の開発・運用と総合的なソリューションの提供

  • 会社概要

東京大学中須賀研究室発の宇宙スタートアップ。「衛星を通じて、人々により安全で豊かな未来」を実現することを目指す。地球観測、船舶向け衛星通信(衛星VDES)、光通信、低軌道衛星測位などに対応した超小型衛星コンステレーションの構築、月面活動に向けた衛星インフラの整備や、深宇宙探査を含む多様なミッションニーズに応える宇宙の開発・利用を推進。

  • 受賞理由

超小型衛星の設計・開発・運用を一気通貫で手掛ける東京大学発宇宙スタートアップであり、リモートセンシング、IoT通信、月面インフラ・深宇宙探査など、幅広い用途に対応可能な衛星を開発できる体制が評価され、今後、次世代衛星ネットワークの構築や途上国における通信サポートなど、グローバルに寄与する可能性が評価された。

【NEDO理事長賞:アイラト株式会社】

  • 企業名/代表者氏名

アイラト株式会社

代表取締役 角谷 倫之

  • 支援大学/支援企業

支援大学:東北大学 産学連携機構 スタートアップ事業化センター 特任准教授 宇佐見 晃

支援企業:地域と人と未来株式会社 代表パートナー 伊藤 仁成

  • 事業内容

IMRT(強度変調放射線治療)に対応したAI放射線治療計画ソフトウェアの開発。治療計画作成を支援し、医療従事者の負担軽減と治療の質向上を目指す。

  • 会社概要

東北大学発スタートアップ企業。IMRT(強度変調放射線治療)に対応したAI放射線治療計画ソフトウェアを開発し、「放射線治療ですべてのがん患者を救う」をミッションに掲げ、放射線治療の可能性を広げる。身体にメスを入れず、患者負担が少なく高い治療効果が得られる放射線治療の普及を進めるとともに、最先端治療の成績向上と医療スタッフの業務負担軽減にも貢献することを目指す。

  • 受賞理由

がんへの強度変調放射線治療(IMRT)における最適な放射線治療計画を生成する独自の放射線治療AI技術を開発。複数のがん種を対象にしており、多数の病院とも連携が行われている。同社の技術により、これまで医療スタッフの経験・技量によって質が左右されていた治療計画作成をAIがサポートすると共に、医療スタッフの過重労働削減に資する点等が評価された。

【日本ベンチャー学会会長賞:株式会社Jij】

  • 企業名/代表者氏名

株式会社 Jij

代表取締役CEO 山城 悠

  • 支援大学等

東京科学大学 イノベーションデザイン機構 機構長 辻本 将晴 

  • 事業内容

量子アニーリング向けソフトウェアの開発

  • 会社概要

大規模な計算を要する最適化計算事業に取り組むスタートアップ。量子・最適化技術を活用した次世代ソフトウェア開発プラットフォーム「JijZept」は、エネルギーの需給計画や製造業の生産計画といった複雑な計画業務に対応。日本を含む米・英・独・シンガポールなどで活用されており、独自のアルゴリズムと最新のソフトウェア技術を組み合わせることで、効率的かつ高精度な開発ソリューションを提供している。

  • 受賞理由

量子技術と数理モデルに基づく最適化手法を組み合わせたソフトウェア「JijZept™」を開発し、複雑な最適化課題に対応し、ユーザー自身が素早く試行錯誤を繰り返しながら最適解を導ける環境を提供している。産業界の多様なニーズに応え、企業の持続的成長と社会価値の創出を支えることに加えて、社会実装に向けた高度な専門性と実践に向け、研究者出身の経営陣が技術とビジネスを一体で推進する特色ある経営体制が評価された。

【特別賞:株式会社Logomix】

  • 企業名/代表者氏名

株式会社 Logomix

代表取締役CEO 石倉 大樹

  • 支援大学等/支援企業

支援大学:東京科学大学 生命理工学院  准教授 相澤 康則

支援企業:StartX  People Operations Senior Manager Amanda Dawson

  • 事業内容

ゲノム大規模改変技術による新機能細胞の創出

  • 会社概要

東京科学大学発のスタートアップで、ヒト幹細胞をはじめとする多様な生物種の細胞機能を効率よく設計・改変する細胞エンジニアリング企業。大規模かつ自在なゲノム改変を可能にする技術に、研究開発を加速するAIなどを組み合わせた「Geno-Writing™」という大規模ゲノム構築技術プラットフォームを開発。創薬やバイオエコノミー分野への応用を通じて、“産業の基盤”となることを目指す。

  • 受賞理由

独自の大規模ゲノム構築技術プラットフォーム「Geno-Writing」を提供する東京科学大発スタートアップであり、従来のゲノム編集技術では不可能なレベルで大規模かつ自在なゲノムデザイン・構築により、工業的に有用な細胞を創製している。創薬とバイオものづくりという二つの主要分野で事業を展開し、社会へ大きなインパクトを与えるポテンシャルを有する点と、グローバル市場参入を見据えた経営体制が評価された。

※ 「アーリーエッジ賞」は今年は該当なし。

今年度の特徴と注目点

今年の「大学発ベンチャー表彰2025」の受賞企業ラインナップからは、日本の産業構造の変化を象徴するいくつかの潮流が浮かび上がる。

まず、医療DXの本格化だ。CROSS SYNCとアイラトの両社が取り組むのは、AIを用いて医療現場の診断や治療プロセスを支援するソリューション。高齢化や医療人材不足といった課題を背景に、こうした臨床現場に直結するAI活用は、今後も成長の中心分野となることが示唆される。次に、現場産業のデジタル化である。燈が挑む製造・建設・物流領域の効率化は、人手不足が深刻化する日本社会において避けて通れないテーマだ。いわゆる「現場の生産性革命」を担う技術は、産業の持続可能性を左右する中核的な役割を果たしていく。さらに、新産業創出の萌芽も今回の受賞から見て取れる。アークエッジ・スペースが切り開く宇宙産業、Jijが推進する量子技術による最適化、そしてLogomixが挑む合成生物学――いずれも次世代の基幹産業となり得る分野であり、世界的な技術競争の中で日本発のプレイヤーが存在感を高められる領域だ。

これらの動向は、大学発ベンチャーが単に研究成果の事業化にとどまらず、社会課題の解決や新市場の創出に直結する存在へと進化していることを物語っている。受賞企業の多くはすでに事業化フェーズに入っており、NEDOをはじめとした支援事業の後押しを受けながら拡大を図っている。特に、医療・製造・宇宙といった国策的にも重要な分野におけるスタートアップの台頭は、投資家や大企業にとってもアライアンス・投資の機会となる。「大学発ベンチャー表彰2025」は単なる表彰にとどまらず、日本の産業構造の変革を加速させる“次の有望株”を見極める場としての機能を一層強めている。受賞企業各社の今後の資金調達動向や事業提携事例にも注目して追っていきたい。

※詳細は、以下のPDFにて確認可能です。

関連リンク:共同発表:「大学発ベンチャー表彰2025」受賞者の決定について

受賞者|大学発ベンチャー表彰|科学技術振興機構

(TOMORUBA編集部) 

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