「サステナブル ファッション EXPO」に潜入!エコ推進・廃材利用など、欧州発の注目プロダクトとは?
2022年4月6日〜8日、東京ビックサイトで世界中から約360社が集った日本最大級のファッション展示会「FaW TOKYO (ファッション ワールド 東京)春」が開催された。
「ファッションDX」「サステナブル ファッション」「インポートファッション」「ジャパンファッション」「海外生地・素材」「ファッションOEM」の6つの専門展と、フェムケアやメタバースファッション等を含む「特設ゾーン」で構成された展示会だ。
世界の企業が取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第22弾では、「第2回 サステナブル ファッション EXPO」ゾーンに潜入。エコ推進や廃材利用など、欧州発の7ブランドの製品をピックアップして紹介したい。
スウェーデン発エコを推進するバッグ「Gaston Luga」
環境先進国のスウェーデンからは、環境に意識した製造理念を掲げる「Gaston Luga」が出展していた。2016年に誕生した同社では、自分たちの持つ環境への影響を理解するとともに、その影響を未然に防ぐ、ゼロにする、または与えてしまった影響を修復するための持続可能な活動を行っている。
動物の革の代わりに、すべての製品にヴィーガンレザーを使用。ヴィーガンレザーは厳密な定義はないが、植物の皮などを使ったもののほか、フェイクレザーを指すこともあるという。同社の場合、フェイクレザーが中心のようだが、2021年からはリンゴから作られたアップルレザーも活用。財布など、一部の製品にアップルレザーが利用されている。
パッケージにはFSC認証(森林認証制度)を取得している紙を使い、印刷には大豆から作られたインクを用いる徹底ぶり。
2019年からカーボンニュートラルを実施する一組織として、Carbon Footprint Ltdと提携。生産過程で排出された二酸化炭素量を埋め合わせるため、ケニアのグレートリフトバレーにある森林を復興させるプロジェクトに寄付を行い、支援している。
50万を超えるプロダクトを66の国と地域で売り上げており、日本でも精力的に展開しているようだ。北欧ならではのデザインセンス、サスティナブルな製法、ほとんどの製品が2万円以下と手を出しやすい価格帯で、日本でもさらなる成長が期待できそうなブランドだ。
スケートボードの廃材をアクセサリーに「Simone Frabboni」
会場内でユニークさが際立っていたのが、イタリア発のアクセサリーブランド「Simone Frabboni」。同社では、スケートボードの廃材を使った指輪などを展開している。同プロダクトを手掛けるのは、長年スケートボーダーだった木工職人だ。
原材料は、地元で採れた野生の木材のほか、スケートボードに使用されていた木材もリサイクルして使用している。市販の木材は使用せず、イタリアの庭師や農家からストックされている木材を購入。中には、3500年前の半化石状態の木材もあるのだとか。
スケートボードを加工していることから、リングのストライプ柄が一つひとつ異なっているそうだ。エコロジーな樹脂の研究もしており、植物由来のエコ樹脂やリサイクルされた工業材料も活用している。
さらに、国際的な森林再生NGOと連携し、ジュエリーの売上1個につき1ドルを寄付するプロジェクトにも参加。1ドルごとに1本の木を植えることができ、アフリカ、アジア、北アメリカ、南アメリカのさまざまなプロジェクトから消費者が選択できるという。
同社は、木工職人のSimone Frabboni氏と、彼のパートナーであるRoberta Borghesi氏のふたりで運営している小規模のブランドだ。日本展開においては、株式会社シーエム総研が代理店となっている。
100%天然木のハンドメイド腕時計「GreenTime」
イタリア発の「GreenTime」は、高級家具などの端材である天然樹木を使用し、ハンドメイドの腕時計を展開している。木のインパクトが強いためか、並んでいた展示の中でも目につきやすかった。
同社では、端材の利用に加えて、リサイクルのパッケージや梱包材を取り入れるなどして、CO2削減を目指しているそうだ。
文字盤だけに木材が使用された腕時計はあっても、ベルトにも木材を使用しているのは、めずらしいのではないだろうか。金属製のベルトと比較して軽いため、付けていて負担になりづらいメリットもあるかもしれない。
日本での展開としては、株式会社ケイ・ウェーブ・ネットが代理店となり、2018年から発売を開始。ショッピングセンター等でのポップアップストアやクラウドファンディングへの出展をしている。ただし、クラウドファンディングでは、大きくヒットしている様子は現状見られなかった。
ドイツ発ラグジュアリーファッションブランド「XUMU」
尖ったデザインで目を引いたのは、ドイツ・ベルリンを拠点とするラグジュアリーファッションブランドの「XUMU」。同社のホームページには、革新的でサステイナブル、かつ責任ある最新のテクノロジーを駆使し、大胆で快適なラグジュアリーファッションを生み出すブランドとの説明があった。
上記写真のダウンジャケットは、宇宙をイメージしてデザインされており、取外し可能なヘルメットがセットになっている。販売価格は690ユーロ(約93,000円)。
※白い綿はデザインではなく、リサイクルできる綿を使用しているというアピールのため
こちらのダウンジャケットは、写真では伝わりづらいかもしれないが、相当なモコモコ具合で、筆者が先日まで暮らしていた北国フィンランドでも、「さすがにここまでのモコモコは見かけないな」と感じたほど。寒さ対策などではなくデザイン重視で、存在感バツグン。
ジャケットの中綿はリサイクルできるものを使用しており、環境にも配慮したそうだ。欧州のセレブが着たことで話題になったそうで、会場で展示していたうち、数着の売却が決まっているとのことだった。
現在、オンラインストアで全世界向けに販売しているほか、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、日本、韓国、ロシア、トルコの一部のデパートで販売されている。
コルクを使ったシューズ。ポルトガル発「KayakStorm」
印象的な素材で目に止まったのが、2001年にポルトガルで誕生したシューズメーカーの「KayakStorm」。ポルトガル現地の担当者が、展示会のために来日したそうだ。靴のさまざまな部分に100%リサイクルされた材料が使われているとの説明を受けたが、同社のホームページでは、サステナビリティがうたわれているわけではなかった。
もっとも目立つ場所に陳列されていたのがコルク素材を使用した靴で、独特な風合いがある。担当者は「コルクはリサイクルではない」と話しており、「では、なぜコルクなのだろう」と調べたところ、実はポルトガルはコルクの生産量で世界一を誇り、全世界の生産量の50%以上を生産しているそうだ。
さらに調べていくと、コルクは遮音性、耐水性、断熱性にすぐれ、サスティナブルな一面もあった。というのも、コルクはコルク樫という木の皮から作られており、樹皮を剥がして採取する。そのため木を伐採せずに済み、樹皮を剥がしたコルク樫は約9年で自然再生する。
そのうえコルク樫の樹齢は約200年と長く、1本の木から約16回も樹皮が採取できる。また、樹皮を剥がしたコルク樫は、一般の木と比較して数倍の二酸化炭素を吸収するという。環境面でもメリットも多い素材だ。
日本でも、コルクを使用したバッグやフローリングなどが出てきており、サスティナブル素材として、徐々に注目を集めているようだ。「KayakStorm」の製品は、通販等で日本でも販売されているが、より日本展開に注力したいと話していた。
天然ウールを使った生分解するシューズ「TUMAR」
中央アジアのキルギスから出展していたのは、天然ウールを使ったシューズとスリッパを世界展開する「TUMAR」。1998年創業と歴史ある企業で、世界中で製品を販売しているが、日本展開はこれからで代理店を探しているそうだ。
同社では、天然ウール、クロームフリーレザー(重金属を一切使用せず、自然な方法でなめした環境に悪影響を与えない革)、樹木由来の天然ゴムを主な原材料とする。これらには生分解性があり、履き終えた靴を堆肥化することもできる。例えば、室内の観葉植物の土の中に細かく切ったウールを入れると、保水能力を高め、水の浸透を改善する効果があるそうだ。
▲靴底に天然ゴムを使ったスリッパ
生産過程でもエコロジーをモットーとし、生産過程で出た排水を地元の農場で再利用したり、残ったウール素材を断熱材として再利用したりしている。
製品はカラーバリエーションが豊富で、天然ウールならではのナチュラルな雰囲気を醸し出している。さらに、履き終えた後に「堆肥化できる」という点はユニークであり、アピールポイントになりえるかもしれない。
環境に配慮した紙と革でバッグを生産「Bull&Hunt」
2006年にドイツで生まれた「Bull&Hunt」。同ブランドでは、ファッション製品向けに育てられた牛ではなく、食品産業から調達した牛の革を使用している。食品副産物として出る牛の革だから、エコロジーであるという考え方だ。全製品を女性デザイナーが手掛けているのも特徴といえる。
今回、よりサスティナブルということで担当者が勧めていたのが、新作の紙で作られたバッグ。「テクソンヴォーグ」と呼ばれる新素材の紙で、革の代替品と言われるクラフト紙なのだとか。同素材はFSC認証を取得していて、環境への配慮もされている。
触ってみると、確かにしっかりと厚みのある紙で、多少重たいものを入れても問題なさそうだ。担当者の話では、水に濡らしても大丈夫で自宅で洗ってもOK。使えば使うほど風合いが生まれてくるとのことだった。
日本では、アップルフォレスト合同会社が代理店となり、2021年にマクアケでクラウドファンディングを実施。100名から約130万円の資金を集めた。今後、日本での一般販売を広げていくようだ。
編集後記
第2回となった「サステナブル ファッション EXPO」では、初日に情報番組の取材班が複数訪れていたそうで、環境に配慮した製品への期待が年々高まっているのかもしれない。廃棄物の多さが社会問題に発展しているファッション業界だが、紙や天然ウール、端材の木材など原材料の見直し、製造工程の工夫、役目を終えたアイテムの再利用まで配慮すれば、環境負荷を大きく減らせるはずだ。個人的には、2025年までのEUの衣類のリサイクル義務化、なかでもいち早く2023年に衣料廃棄物の分別が実施されるというフィンランドとフランスの動きが気になっている。
(取材・文・撮影:小林香織)