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第一次産業からスポーツ・競馬まで、多様な課題を提示して事業創出に取り組む。高知県のオープンイノベーション戦略とは?

第一次産業からスポーツ・競馬まで、多様な課題を提示して事業創出に取り組む。高知県のオープンイノベーション戦略とは?

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オープンイノベーションを実践する地域の取り組みを紹介する企画「CLOSEUP OI」。今回は、水産業や農業といった第一次産業が盛んで、桂浜や高知城、四万十川などの観光名所でも知られる高知県を取り上げます。

高知県は黒潮が流れる太平洋に広く面しており、水産資源にも恵まれています。特に、カツオやマグロの漁業は有名で、県全体の水産業の約4割を占める伝統的な産業です。また、農業が盛んで、一次産業の就業者比率は全国有数。温暖な気候を利用した促成栽培により、ナス、ショウガ、ニラなどは全国でも高いシェアを誇っています。

以上のような特徴を持つ高知県では、一方で少子化の加速や若者の県外流出による経済規模の縮小といった課題を抱えています。こうした課題を解決するためにもオープンイノベーションや起業家の育成などに取り組んでいます。――それでは、高知県が推進する取り組みの詳細について紹介していきましょう。

地産・外商の強化に取り組む高知県

高知県では、「第2期高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略」を2020年3月に策定し、その目指す将来像「地産外商が進み、地域地域で若者が誇りと志を持って働ける高知県」を実現するため、産業振興計画による経済の活性化、少子化対策、中山間対策等の取り組みを進めています。さらに、2021年度版として、総合戦略のバージョンアップを図り、官民協働、市町村との連携協調のもと、取り組みを進めているところです。

以下の図は、2021年4月に公開された産業振興計画の全体像となります。


※出典:高知県「第2期高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略<令和3年度版>の全体像」

オープンイノベーションの文脈で注目すべきは、「地産の強化」。高知県版Society5.0の実現に向けた取り組みの一つとして、「オープンイノベーションプラットフォーム」の活用を進めることが明示されています。これにより、第一次産業をはじめとする様々な分野でデジタル技術を活用したイノベーションの創出や課題解決を促進。また、オープンイノベーションプラットフォームの取り組みなどを通じて、関連企業の誘致も目指しています。KPI(重要業績評価指標)として、以下のような目標が掲げられています。


※出典:高知県「第2期高知県まち・ひと・しごと創生総合戦略<令和3年度版>」

――では、高知県が推進するオープンイノベーションの施策は、具体的にどのようなものなのでしょうか。

第一次産業からスポーツ・競馬まで多様な課題を抽出

2020年6月に事業を開始したのが、「高知県オープンイノベーションプラットフォーム」です。高知県内の農林水産業や製造業、観光業など、あらゆる分野の課題を解決するために、県内外の複数の企業や団体が有するIoTやAIなどのデジタル技術やアイデアなどを組み合わせ、新たな製品やサービスの開発を行うプロジェクトの創出を促進することを目的としています。

現在、「高知県オープンイノベーションプラットフォーム」のWebサイト上に公開中されている課題の一例は以下の通り。水産業や農業、観光からスポーツや競馬まで、幅広い課題が掲げられています。また、各課題の詳細を紹介する説明会などのオンラインイベントも積極的に開催されています。

・【土木】中山間地域における生活用水管理手法の効率化

・【建設】壁面緑化システムのモニタリング手法の開発

・【観光】観光施設における水管理の効率化

・【水産業】淡水養殖場の状況把握・データ管理の効率化

・【観光】地方観光地における交通渋滞の解消

・【農業】中山間地域における水田の水管理の効率化

・【スポーツ】「監督・コーチへの俯瞰映像フィードバックによる指導力強化」

・【競馬】「競馬場における放馬の早期検知」 など

※参考ページ:「高知県オープンイノベーションプラットフォーム」課題募集一覧


一方で、起業や新事業展開、新商品開発などを促す仕組みとして、「こうちスタートアップパーク」「こうちネクストコラボプロジェクト」「土佐まるごとビジネスアカデミー」「産学官民連携センター(ココプラ)」など、多面的に展開している点も特徴的です。

水産業のデジタル化に取り組む「高知マリンイノベーション」

高知県では、「漁業就業者数は30年で1/3以下に減少」、「漁業就業者の高齢化が進行している」という課題から、水産業の生産、流通、販売の各段階においてデジタル化に取り組む「高知マリンイノベーション」を推進しています。

東京大学、早稲田大学、高知大学、高知工科大学、水産研究教育機構 開発調査センター、JAMSTEC、JAFIC、高知県漁業協同組合、高知県IoT推進ラボ研究会といった、大学や国の研究機関等の専門家が参画する「高知マリンイノベーション運営協議会」を設置。前述の「高知県オープンイノベーションプラットフォーム」を活用しながら、データのオープン化、漁船漁業のスマート化、養殖業のスマート化、高付加価値化といったプロジェクトに取り組んでいます。

高知大学医学部による共創拠点「MEDi」

高知県内のアカデミア領域でも、オープンイノベーションに取り組む事例が生まれています。それが、高知大学医学部による「オープンイノベーション拠点 MEDi (メディ)」の開設です。産学官の関係者が部局や所属機関の垣根を越えて、パートナーとして研究開発成果の検証・社会実装、イノベーションマインドの醸成などを実践することができる「地域共創の場」として2021年8月に新設。研究者やエンジニア、起業家、アーティストなどが入居し、イノベーション創出のためのエコシステムを生み出すことを構想しています。


※関連ページ:高知大学プレスリリース

【編集後記】県外企業との共創は課題解決の糸口になるか

都道府県の人口調査で45位となっている高知県。人口減少や高齢化という大きな課題を抱えている同県ですが、産業振興計画内の施策の一つにオープンイノベーションを取り込むことで、課題解決の糸口にしようとしています。2020年からは「高知県オープンイノベーションプラットフォーム」が始動し、第一次産業を中心とした多くの課題を開示して、県外企業との共創にも着手。今後、どのような成果が生まれてくるのか、注目していきたいと思います。

(TOMORUBA編集部)

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