【連載/4コマ漫画コラム(73)】中小企業×中小企業の共創実践法
このコラムが掲載されているサイトTOMORUBAの姉妹サイトであるAUBAの登録件数は19,000社を超え、オープンイノベーションの一環としての他社との共創が当たり前の時代になってきました。
これまでは主流は「大企業✕中小企業」でしたが、「中小企業✕中小企業」の共創も増えてきました。(参考:4年半前に本連載が始まるきっかけをつくってくれた中村さんの記事)
私は大企業(リコー)の出身です。中小企業に勤めたことはありませんが、中小企業のとてもエネルギッシュな方々との知り合いも多く、その方々の軽やかな共創の活動を見ていて「中小企業×中小企業の共創」のポイントなどを今回はお話しします。
中小企業の方が共創に向いている
新規事業を創るための「大企業と大企業」、「大企業と中小企業」の良い共創事例も沢山生まれてきていますが、本来、「中小企業同士の共創」の方がうまくいきやすいはずだ、と思っています。「大企業」が抱えやすい問題を乗り越えやすいからです。
それは、中小企業の方が、
1. 売上や利益の想定が巨大でなくても挑戦できる。
2. 社内のリソースや自社の強みを把握しやすい
3. 社内調整が少なくて済むので、早い
4. 長期的に挑戦できる(その理由は後述)
……だからです。
これらの強みを中小企業が活かせるのは、社長自身が新規事業の先頭に立てるからです。大企業の社長では中々できません。
そのため、本コラムでは、中小企業の社長の方へのメッセージのつもりで、以下書き綴ります。
本気度も熟成していく
「新規事業を興すぞ!」という社長自身の「本気度」と、それを実現するための「自らの活動」が重要です。大企業でよくあるトップが流行りに乗って「イノベーションだ!」「新規事業だ!」「SDGsだ!」なんて口先だけで言っているのをマネても意味はありません。
中小企業の社長が本気で新規事業を行いたい、と思う理由は恐らく次の二つでしょう。
① 現業の先行きが危ない
② (跡取りとして若くして社長になったが、これまでの事業だけでなく) 自分が新たな事業を立ち上げたい。
しかし、社長になった当初から既にその本気度が十分なレベルにまである方はそれほどいないかもしれません。
自分に向かって「本気になれ!本気になれ!」と念仏を唱えていても仕方ありません。
そのため、日々、「世の中の大きな流れを直視する(目を閉ざさない)」ことと、「自分の心を見つめる(何がワクワクするか)」を考え続けることです。
大きな流れと自分の心を直視する
「世の中の大きな流れ」によって、自社の既存事業がどのように影響を受けるのか、考えたくないかもしれませんが、技術の進化や社会の変化などを広くとらえて、ちょっと偏執的(パラノイア)に恐れを抱くのは社長の大きな役目です。
一概には言えませんが、(主に同族経営の)中小企業の方が社長に若くしてなり、社長の任期が長いために長期的な視点を持ちやすく、かつ必要です。多くの大企業のサラリーマン社長であれば数年という短い任期のことだけを考えればいいので、本気で会社の長期の成り行きに想いを馳せ、正しく恐れを抱くのは中小企業の社長の方でしょう。
「自分の心を見つめる」というのは、この会社がどういう会社になれば、自分がワクワクするか、自分に問い続ける、ということです。
事業規模?世界市場?どういう人の役に立ちたい?どんな経営をしたい?……などです(個人的なオススメは後者の2つですが)。
そして、具体的な新規事業案が出てきた時も常に「ワクワクするか」を確認し続けることです。「ワクワクするか?ときめくか?」は新規事業の選定でもとても大事です。近藤 麻理恵(こんまり)さんの「ときめき片付け法」と同じです。「そんな自分勝手なことでいいの?」と思われるかもしれませんが、(社長任期が長いからこそ)「長期に渡って挑戦し続ける」ために、自分を大事にするのがとても重要なポイントです。
「誰のどんな課題?」を発掘できる共創相手を
新規事業のポイントは「誰のどんな大きな課題」に対して「どんな魅力ある解決法」を提供できるか、ということです。シンプルだけど「これ!」と確信を持てるレベルにまで中々行きつけないのが通常です。
大企業の下請けなどを長年続けてきた中小企業では、どうしても「誰=これまでの発注元」の領域以外が考えにくいということが起こりがちです。それはそれで「新しい技術」で「これまでの発注元が驚くような性能・価格」という新規事業につながりますが、せっかくの「自分の新規事業」なので、新たに「この人たちのこの問題を解決したい!」という自分がワクワクする課題に出会うことが肝要です。
そのためには、共創相手も、同じような技術ベースの会社だけではなく、社会課題を解決するサービスなどに取り組んでいる中小企業(例:介護事業、環境保全事業、教育事業等)と組むのがいいでしょう。
じっくりウロウロして、見えてくればハイスピードで
もちろん、最初から長期に渡って組む相手と出会えることは中々ありません。
時間がかかって一見非効率に思えるかもしれませんが、「ウロウロ」するしかないのです。
それも、社長のアナタ自身が。
今はコロナの影響で人と出会えるチャンスが少なくなってしまっていますが、色々な団体(中小企業XX会、XX研究会、XX異業種交流会)などに顔をだして、ちょっとでも心に引っかかる人がいれば、寄って行って、対話をする。リアルの会合が減った今では、オンラインで出会った人に、直接に連絡を入れ、オンラインで話をすることなども必要でしょう(講演を聞くだけでは「出会い」になりません)。
そして、数人くらいの「この人、面白いな」と思える仲間で、「発想・情報交流」の会を定期的に催す。そういう会・仲間はいくつかあった方がいいでしょう。その場で「この領域のこういう課題に詳しい人に話を聞いてみよう」となれば、その人を探し出し、講演や議論の場を持ちましょう。
「対話」をするためには、一方的な「情報収集」では成り立ちません。「自らの発信」「相手の話に対してのその場でのやりとり」などがとても大事です。それらの発信・やりとりの「力」と「分かりやすい魅力ある内容」は、そういう場で繰り返し「対話」をすることでしか磨かれません。
これまでの発注元へは必要なかった「自社の強みや可能性」をどう説明するのか等も様々な人との対話で研ぎ澄まされて行きます。
「誰のどんな課題に対するどんな新規事業」というアイデアの原石に至るまでは、「ウロウロ」をベースとするので、「時間がかかる」のは仕方ありません。長期視点に立てる中小企業の社長だからこそできることです。また、この時間そのものが、社長のアナタのレベルもアップするのです。
そして、一旦「この新規事業に挑戦してみよう」ということになれば、そこからは中小企業ならではのスピードで一気に走り出しましょう。
そして、その事業に必要な共創相手を追加してきましょう。AUBAも大きな力になるでしょうね(私は回し者ではありませんが)。
アナタ自身がやる。でもメンターは必要。
「そうは言っても、社長である自分の能力だけでは……」と思われるかもしれません。ウロウロ活動や、新規事業の初期の立ち上げなどは、あくまで社長であるアナタ自身がやることが立ち上げステージ以降の「スピード」と「持続性(&やめる決断)」を得ることにつながります。
主体はアナタです。丸投げ(担当部下に任せたり、外部コンサルに任せたり)はダメです。しかし、「よいメンター(相談相手)」はいた方がいい。伴走してくれて、人を紹介してくれて、課題を整理してくれて、自分がやる気になる背中を押してくれるメンターです。社長という立場だからこそ、外部に信頼を置けるメンターを持つのはとても重要です。
ウロウロステージの最中に、そういう人に出会うこともあるでしょう。また、その活動で知り合った人が紹介してくれることもあるでしょう。参加している勉強会を主催している団体にそういうサービスをしてくれる方もいるでしょう。(AUBAを運営しているeiiconでもハンズオンコンサルティングを提供してくれます(^o^;))
社長が陣頭指揮を取るのはある意味当たり前ですが、単に指揮ではなく、自らの志を大っぴらにした「陣頭志気」で自ら活動する「Playing 社長」であることが大事ですし、中小企業の社長だからできることです。
ちなみに、「中小企業」という日本語には、どこかで「中小という今のサイズ・業態に留まっている」というイメージがあるのも事実です。そのため、「ベンチャー」という言葉を使う人もいます。実は「ベンチャー」は和製英語らしく、海外では「Start-up」と言うのが通常ですが、「よ~し、自分が社長として新規事業を興すぞ~!」という個人の熱意を持って新たに挑戦をするという意味で、「ベンチャー」というのはいい言葉ですね。語源はAdventure(冒険)ですし。
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。
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