【連載/4コマ漫画コラム(60)】 新入社員が「最速」で新規事業を立ち上げる方法
どんな会社人生を送りたい?
*今回は(主に)新入社員になられた方に向けて書きました。そのため特に冒頭はどうも入社式での社長の話みたいになってしまっていますがお許しください(^o^;))
新・社会人の皆さま、入社おめでとうございます。
と、言っても新型コロナウイルスの影響で入社式が無くなったり、みんなマスクで2m以上離されて座る入社式だったり、なかなか素直に「めでたいなあ」とは思えない状況だとは思います。
これからの長い社会人人生。何が起こるか分かりません。その最初にこういう状況になって、「会社に入れば安泰だ」なんていうはっきり言って間違った感覚を持たずにいられたのは却って良いことかもしれません。
みなさんはどんな会社人生を送りたいですか?
「平穏で粛々と業務をこなし、十分な給料がもらえればそれでいい」という方もいらっしゃるでしょうし、それはそれでいけないことではありません。
でも、中には「いやいや、平穏なんて結局は誰かの命令に従っているからこそ生まれるものなのじゃないか?私は自分で道を切り拓いていきたい。それが決して平穏なものでなくても」と思われている方もいらっしゃると思います。みんながみんなそんな自らイバラの道を選ぶことはないのですが、新しいことに挑戦して、殆ど失敗しても、「自分で選んだ道だ」と思うと乗り越えていけて、充実した会社生活を送ることができます。あ、これは私自身の実感でもあります。
会社の仕事以外の挑戦も色々あるけれど、せっかくの会社生活の中でも新しいことに挑戦するととてもワクワクする(そして大変な(笑))日々を送られます。だって、一日のうち8時間くらい働くということは、人生のその時期の時間の1/3とか(睡眠等を除くと半分以上?)を費やすのですから、「働くのは給料をもらうためだから時間を売るようなもの」という割り切りをするにはあまりにモッタイナイ。
会社で新しい仕事をする最右翼は「新規事業」を作ったり、携わったりすることです。
ぼんやりしているけど新規事業を
「でも会社に入ったばかりだよ。新入社員には新規事業なんて関係ないし、やりたくてもできないのじゃない?」と思われるかもしれません。それに、もし会社に入る前の学生時代から「こういう新規事業をやりたい!」という具体的な素晴らしいアイデアと強い想いを持っている方は、会社などには入らずに自ら会社を作って歩みだしているでしょう。
また、「まだ新規事業を立ち上げる力が足りないことは自覚しているので、まずは会社で社会や仕事の仕方を学び、それから独立して起業しよう」という考えを持っている方も増えています。有名コンサルティング会社に入社して数年で独立してNPOなどを起業する方の事例が沢山あります。
そういうレベルになくても、会社に入社してから「何か新しいことをやりたい。会社の中でいいから新規事業を提案したり関わったりしていきたい」と思われて、この春に入社した方が圧倒的に多いでしょう。ただ、まだ恐らく「何をやりたいか」という新規事業の具体的な案はできていない、なんとなくの方向性はあるけれどぼんやりしている、という方が多いのではないでしょうか。普通はそういう感じだと思います。
イントレプレナーになる一歩目
「会社の中で新しいことを生み出す人」をイントレプレナーと言います。「社内(In)起業家(Entrepreneur)」という造語です。企業の中にいながら、新規事業などを生み出す人のことを言います。
このタイプの方に共通する特徴の一つが「志をキープし続けている」ことです。志というとなんか気恥ずかしい響きがありますが、「世界をこんな風に変えたい」「こういう人をなんとかしてあげたい」など、長期的な方向性のことです。それをキープしながら、具体的な新規事業を興していく。ただ、残念なことに、多くの方は「志」は持って会社に入ってきたけれど、日々の仕事に塗 (まみ)れているうちに、その志が薄れてきて、上司からの命令をこなすだけの日々になってしまいます。
そうならずに、早めに新規事業を立ち上げるイントレプレナーになるためにはどういうやり方があるかをお伝えしましょう(タイトルの「最速」ほど早くはないかもしれませんが)。
と、言っても「これをやれば必ずそうなる」とか「これ以外の方法はない」というようなものではありません。あくまで一つの事例としてお話ししたいと思います。
[Step 1:はみ出し仕事をする]
上司から言われた仕事は当然こなし、言われていないことまで「ついつい」やってしまいましょう。「指示仕事をこなす」を越えて「はみ出し仕事までしてしまう」のです。
上司の立場になったことを想像すると分かりますが、上司だって、部下にやってもらう仕事の全てを詳細に指示することなんて不可能です。悪い言い方をすると「言われてもいない一見いらないことまでやってしまう」のがオススメです。その中に上司も気が付かない「あ、なるほど、こういうこともやるといいな」というのが紛れてきて、上司に「自発性があるヤツだなあ」「創意工夫が得意なやつだなあ」という印象を持たせることができます。この印象が会社で新規事業に携わるチャンスを掴む大事な一歩です。
私自身のことを振り返ってみると、例えば新しい研究棟が出来たときに、その紹介ビデオを作ることになって、単にプロの映像会社の方をアテンドすればいいという仕事だったのですが、自分でシナリオと絵コンテを書いて(元々映画作りとか好きだったので)、映像会社の方に渡したりしました。嫌がられましたけど。
[Step2 :『若手XX』という活動に巻き込まれる]
まともな会社であれば、経営陣は「会社を変えていきたい。変えないと生き残れない」と思っています。そのきっかけを作ってくれるのは間違いなく若手であり、そのためにあれこれ『若手XX』という活動が色々な会社で行われています。そういう活動の情報(今は社内ネットワークの情報サイトなどに載っている)を見つけて、自ら飛び込んでいきましょう。
その効果は大きく分けて2つ。一つは直属の上司以外のエライ方の目に留まること、もう一つは「新しいことがやりたい」という熱意を持った仲間と出会えることです。
『若手XX』というタイトルはついていなくても、若い人の感性を大事にしたいプロジェクトに積極的に参加するのもいいでしょう。例えば、「会社設立XX周年記念プロジェクト」とかで「30年後の会社を考える」みたいなものは最適です。
[Step3 : 匂うおじさん・おばさんを見つけて頼る]
いくら熱意ややる気があっても、新入社員だけで活動を正式組織化したり、会社のリソース(予算や技術や時間やノウハウ)を使うのは困難です。そのために必要なのが「サポートしてくれる(エライ)おじさん・おばさん」です。
ところが、新入社員のみなさんから見ると、どのおじさん・おばさんもちょっと怖いかもしれません。「これをやりたいのですが!」とお願いできる雰囲気ではない人ばかりに見えてしまうものです。そこで「なんとなく匂う」という感覚が必要となります。
「この人は普段は『しっかり担当業務をこなせ』としか言わないけれど、どうも一皮剥くと『そうだよな、そういう大きな志って大事だよな。お前らの言っている新規事業アイデアはまだまだだけど、サポートするよ』というような人間に『変身』しそうだな」という匂いを感じて、直球やら変化球を投げ続けるのです。
できれば、若い仲間数人が一緒になって諦めずにやっていると、その匂い(直観)が現実に化ける時がやってきます(100%じゃないけれど、私の経験から言って結構な確率です)。
実はこのパターンはそうやって若手に頼られて(たかられて?)いるうちに自分自身の人生を見つめなおし新たな道(若手と一緒に新しいことに挑戦する)に踏み出せるという意味で、「おじさん・おばさん」にとってもとても貴重な変化です。大器晩成ならぬイントレプレナー晩成のために。
長いようで短く、短いようで長い人生
こんな感じでやったとしても通常は入社3年目くらいまでは新規事業に関わることは難しいかもしれません。私の知り合いの中には、特に「2」の「会社が若手に任せて新しいことをやらせようとしているタイミング」に当たって、入社すぐに自らの新規事業を立ち上げた人も複数いますが、多くはありません。
逆に、英語ができてグローバルな社会課題を解決したいという志を持っているのに、国内営業に回され、ベトベトの古いタイプの営業のおじさんたちに囲まれて「最低でも3年はここにいないといけないぞ」と言われ続ける状況に耐えられずに会社を辞めてしまった人もいました。
人生は長いようで短いし、逆に短いようで長い。急ぎすぎてイライラするのはやめた方がいいな、と思います。イライラするくらいだったら、自分と仲間だけでワクワクすることを検討して手掛ける方が絶対いい。そして、諦めて「日々の当たり前」に溶け込み自分を失うことだけにはなって欲しくない。
いつものコラムの1.5倍以上の長さになってしまいました。冒頭に書いたように社長や校長の話みたいな感じになってしまったのが原因でしょうね。(社長や校長の話は長いものです)
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。
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