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#PEOPLE | 12歳で起業した“中学生社長”が語る、一歩を踏み出せないビジネスパーソンへのメッセージとは?

#PEOPLE | 12歳で起業した“中学生社長”が語る、一歩を踏み出せないビジネスパーソンへのメッセージとは?

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今回の「#PEOPLE」で取り上げるのは、“中学生社長”こと加藤路瑛さん(2006年生)。小学校を卒業したばかりの中学1年時、弱冠12歳で母・咲都美さんの協力を得ながら、クラウドファンディングで100万円以上の資金を集め、昨年12月に株式会社クリスタルロードを設立。小中高生のための職業探究Webメディア「TANQ-JOB」の運営を手がけている。

大人のビジネスパーソンでも、起業や新しい事業に取り組むことに対して「ハードルが高い」と感じ、躊躇してしまう方が大半だろう。――しかし、加藤さんは若干12歳で自ら事業計画書を作り、周囲を説得しながら、起業を実現させた。「やらないで悔やむより、まずやってみる」という強い信念を持つ加藤さんが起業した理由、乗り越えてきた壁、大人のビジネスパーソンに向けたメッセージとは?春休み期間中に馬喰町にある仕事場にお邪魔し、話を聞いた。

▲株式会社クリスタルロード 取締役社長 加藤路瑛(かとうじえい)さん

2006年2月生まれ。12歳の時にクラウドファンディングで資金を集め、株式会社クリスタルロードを設立。現在、取締役社長として事業を牽引。主な事業内容は、小中高生のための職業探究ウェブメディア「TANQ-JOB」の運営。18歳以下専用クラウドファンディングも準備中。

スーツを着た大人への憧れと、モデルになった親子起業家。

――中学生での起業はとても珍しいと思いますが、なぜ起業をしようと思ったのですか?

路瑛さん : 「起業したいから起業した」というのが正直なところです。ただ、小さい頃から「働きたい」という想いはありました。漠然と、スーツを着た大人に対して憧れを抱いていたんです。父や母、電車で見かけるスーツを着た大人たちへの憧れですね。大人になったら、いろいろできることが増えるんだろうな、と。

僕は、幼い頃から母の職場によく行ってました。また、祖父が定年退職した後に、民宿を立ち上げた人で、そんな周囲の家族からも影響を受けたと思います。実は、親に「働きたい」と言ったこともあります。その時は、「働くのは大人になってからね、今はちゃんと勉強する時だよ」と言われましたね。

――なるほど。

路瑛さん : 小学生の頃はロボットをつくる人になるのが夢でした。小学校高学年になってからは、当時好きだったユーチューバーの影響もあって、理科の実験を実況するユーチューバーになりたいと思っていたんです。そこで、毒物劇物の資格を取りたいと思って勉強を始めていました。そんな時に母が買ってきてくれたのが、「ケミストリークエスト」というカードゲーム(※)です。

「ケミストリークエスト」は、米山維斗さんが小学生のときに考案したカードゲームなのですが、僕は中身以上に箱に書かれた、「小学生で起業したスーパー高校生社長考案」という点に目が釘付けになりました。小学生で起業するとは一体どういうことなのか、と(笑)。

よくよく調べてみて、米山さんは親子起業という方法で起業をしていることが分かりました。小学生でも親子起業という形であれば、会社を設立できるという事実を知り、「僕も起業したい!」と強く思ったんです。それが今から約10カ月前。僕が中学1年生になったばかりの6月のことです。

「ケミストリークエスト」……化学結合をテーマとしたカードゲーム。米山維斗さんが12歳の時に考案。国内のみならず海外でも反響を呼び、シリーズ累計12万部を突破している。

――「ケミストリークエスト」との衝撃的な出会いが、起業の直接的なきっかけとなったのですね。それ以前から起業に興味はあったのでしょうか?

路瑛さん : 「ケミストリークエスト」に出会うまでは、起業を考えたことは一度もありませんでした。勉強をして入った私立中学校では陸上部に入り、普通に中学校生活を送っていこうと考えていました。それが、「ケミストリークエスト」に出会うことで、大きく変わったんです。

起業するまでに乗り越えた、数多くの壁。

――思い立ったとはいえ、中学生での起業はハードルが高いと思います。具体的にどのようなアクションを経て起業に至ったのですか?

路瑛さん : 僕は、「やってみたいこと」があれば、すぐにやるタイプです。やってみて合わなかったら、すぐにやめる。まず行動して、後から考えるんです。そういう性格もあって、起業を思い立ってすぐに、両親と担任の先生に相談しました。両親は、たぶん僕が本気だとは思っていなくて、「やってみなよ」と軽い感じの反応でした。担任の先生からは、「事業計画書をつくって」と言われましたね。

担任の先生は事業計画を読んで応援してくれました。学年主任や教頭先生にも許可を取ってくれて、そして最終的に僕が校長先生に対して、マンツーマンで事業計画のプレゼンテーションを行うことになったんです。

校長先生のところへは、アポを取ってから行くようにと言われたのですが、当時はアポの取り方すら分かりませんでした。校長先生の連絡先も知らないので、アポなしで校長先生の部屋に行ったんです。とても緊張したのを覚えています。

タイミングよく校長先生がいらっしゃって、持参した事業計画書をもとに、僕がやりたいことや、目指している世界観について説明をしました。その結果、校長先生からも許可をもらうことができたんです。中学生の起業は、校内では前例がなく、僕が初めてでした。

――学校の許可を得た後、クラウドファンディングで資金を調達し、お母さまと親子起業という形で起業されましたね。クラウドファンディングをやってみての感想はいかがですか?

路瑛さん : 自分に対して、お金まで出して応援してくれる人がいることが分かりました。また、クラウドファンディングをするにあたって、たくさんの前準備をしたので、やったかいがあったという印象です。

何人もの社長さんに会って、僕がクラウドファンディングをすることを説明してまわりました。同時に、クラウドファンディングで掲載する内容についてもアドバイスをもらい、取り入れたいと思った助言は積極的に盛り込んでいきました。厳しい意見をいただくこともありましたが、そういった意見も参考にしながら、内容を修正し、クラウドファンディングに掲載する記事を完成させたんです。

▲たくさんの人に相談して完成させたクラウドファンディングの記事。46万円を目標に開始したが、目標額の250%、115万円でサクセスした。

――クラウドファンディングを行う中で、心が折れそうになる瞬間などはありましたか?たとえば、露出が増えることで、全然知らない人からの中傷が増えたりとか…。

路瑛さん : もちろん批判的なコメントはありましたが、僕はあまり気にしませんでしたね。逆に、母は気にしていて、「もうやめれば?」とよく言われました(笑)。批判の内容として多かったのは、「中学生らしいことをしろ」「経営を学んでからやれ」「親子起業って結局、親に頼っているんでしょ」「意識高い系のやること」などです。僕のSNSが炎上することもありました。顔も知らない同世代からの批判には、さすがに傷つくこともありましたね。

中学生起業家が描く、現在の固定観念を打ち破る世界観。

――数多くの壁を乗り越えて、昨年12月に会社設立に至ったわけですが、現在、クリスタルロードでは、どんなミッションを掲げて事業に取り組んでいるのですか?

路瑛さん : クリスタルロードが目指しているのは、子どもを理由に、「今」をあきらめなくていい世界をつくること。僕自身、「働きたい」と思っても、「大人になってからね」と言われ続けてきました。しかし、大人より発想力のある子どもはいます。実際、「ケミストリークエスト」は米山さんが小学生のときに発案したもの。そういう人が、世の中にはたくさんいると思うのです。

大人が「自分がこうだったから」という固定観念を理由に、子どもの可能性やチャンスを潰してしまうのは惜しいと思います。子どもが「今」、やりたいことを実現させられる世界をつくること――これが、クリスタルロードを通して実現したい目標です。

https://crystalroad.jp/vision/ より抜粋 )

――路瑛さんの描いている世界観を実現するために、現在、具体的にどのようなことに取り組んでいますか?

路瑛さん : 現在、クリスタルロードが取り組んでいることは、主に小中高生のための職業探究Webメディア「TANQ-JOB」の運営です。子どもでも起業できることを知らない人は、世の中にたくさんいると思うので、そういう人たちに対して、まずは“伝えていく”ことに重心を置いています。

僕が編集長を務める「TANQ-JOB」では、主に以下のような内容を発信しています。

(1) 子ども起業家、親子起業家の紹介

(2) 起業以外で目標に向かって頑張っている子どもの紹介

(3) 大人の起業家、投資家、企業家の紹介

(4) (起業ややりたいことを優先できる)進学・勉強情報

(5) TANQ-JOBスタッフの活動報告

(6) 起業方法などの情報

(7) イベントや起業塾、ビジネスコンテストなどの情報

「TANQ-JOB」は、20名以上の小中高生ライターで運営しています。ライターの中には、カメラをやってみたい子や、映像に興味がある子たちもいます。小中高生が主体となってつくり上げているメディアなんです。ビジネスモデルとしては、スポンサー契約による広告収入を考えています。

また、今後、18歳以下専用のクラウドファンディングを立ち上げる予定です。既存のクラウドファンディングでは、小中学生の成功率はとても低いんです。その課題を解決できる仕組みをつくっていきたいですね。

――設立からおよそ3カ月にも関わらず動きが速いですね!学業と両立をしながらなので、大変な面もあると思いますが、どのように両立を?

路瑛さん : 今は春休みなので、1日中仕事をすることもできますが、普段は放課後に働いています。ですから、仕事場は学校の近くにあります。学校の帰りに寄っていける距離ですね。家で仕事をする場合は、だいたい夜の9時頃まで働いていることが多いです。

仕事の中身としては、メディアに掲載する記事の取材、執筆、講演会の準備やビジネスパートナーとの会合。最近は、新規事業である18歳以下専用のクラウドファンディングの立ち上げ準備にも、時間を使っていますね。

学校から社会へ。踏み出したことで見えてきた景色。

――実際、起業することで、見えてきた景色などがあれば教えてください。

路瑛さん : そうですね。学校には知らない人がたくさんいて、広いところだと思っていたのですが、起業をして社会に出てみると、学校が小さく見えました。社会へと一歩踏み出すことで、一気に視野が広がったように感じます。日本の中にいてもそうなのだから、世界に出れば、さらに視野が広がるのだろうな、とも感じています。

――最後に、eiicon labの読者である大人のビジネスパーソンに対して、メッセージをいただけますか?

路瑛さん : 僕は、昨年「起業をしたい」と思って、クリスタルロードを設立しました。やってみたいと思ったら、まずはやってみることが重要だと思います。起業を決意してから、まだ1年を経ていませんが、すでに多くのことを学びました。やらないで悔やむより、やって失敗したけれども、よかったなと思えたら、それでいい。やってみることが大切だと思います。

取材後記

子どもを取り巻く世界を変えたいとの志を胸に抱き、周囲の大人を説得。さらに、クラウドファンディングに挑み、100万円を超える資金調達に成功。こうして、事業を立ち上げた路瑛さん。弱冠12歳にして、それらを1年弱でやり遂げた彼の行動力には驚くばかりだ。同調圧力の強い子どもの世界ゆえの困難もたくさんあっただろうし、大人の固定観念を押し付けられることも多かったはずだ。そんな中でも、猛スピードで事業づくりを推し進める彼の行動力から、私たち大人が学ぶことは数多くあるのではないだろうか。

(構成:眞田幸剛、取材・文:林綾、撮影:齊木恵太)

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