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愛知県を舞台にした“広域共創”の成果とは。スタートアップが挑んだ19のプロジェクトを紐解く――『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2025』レポート<前編>

愛知県を舞台にした“広域共創”の成果とは。スタートアップが挑んだ19のプロジェクトを紐解く――『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2025』レポート<前編>

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去る3月18日、中日ホール&カンファレンス(名古屋市)にて、愛知県が主催する6つのイノベーション推進事業に関する合同DEMODAY「AICHI INNOVATION CHALLENGE 2026」が開催された。

このイベントでは、『A-IDEA』・『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2025』・『スタまち〜スタートアップと自治体で挑む、未来のまちづくり〜』・『TECH MEETS』・『愛知自動車サプライヤーBUSINESS CREATION 2025』・『AICHI NEXT UNICORN LEAGUE』の6つのプログラムから生まれた成果が発表された。

このうち、本レポートは『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2025』成果ピッチにフォーカスする。同プログラムはスタートアップ19社が複数地域と同時にプロジェクトを推進し、自治体や商工会議所、金融機関など過去最多となる62団体が地域パートナーとして参画。単一エリアでの実証にとどまらず、地域横断で事業化に挑んだ点が特徴だ。

レポートは<前編>・<後編>で構成し、合計19社のピッチを紹介する。――<前編>となる本記事は10社のスタートアップの取り組みにフォーカス。各社の成果事例を通じて、広域連携による共創が社会実装に接続し得るのか、その実像を読み解く。

【プロジェクト成果ピッチ】 スタートアップ10社が登壇――地域横断で進む共創を発表

愛知県内の地域パートナーと連携しながら進められた各プロジェクトの概要と、事業化に向けた進捗が報告された。10社によるピッチ内容を登壇順に紹介していく。

●ソーシャル・アイディー株式会社

【一般ユーザーのSNS投稿を公式メディアへ転載。自発的な地域応援文化を創出】

ソーシャル・アイディーは、市民や観光客のSNS投稿を活用し、タイムリーに地域の魅力を発信するサービスを展開している。現在、多くの観光協会の公式サイトが検索上位に表示される一方で、人手や予算の不足から情報更新が滞る課題を抱えている。同社は、一般ユーザーの投稿に対して個別に掲載許可を取得した上で公式サイトへ転載する仕組みを構築し、更新負担の軽減と情報鮮度の向上を両立させている。

本プログラムでは、「市民・観光客の自発的な応援投稿を創出する」ことを目的に実証実験を行った。一宮市の「#モーニングのまち一宮」や新城市の「#しんしろファン」など、複数のエリアと連携して地域ごとのオリジナルハッシュタグを作成。ハッシュタグが付いたSNS投稿を公式サイトに掲載する取り組みを進めた。この結果、「自分の投稿を使ってほしい」という自発的な応援文化が生まれつつあるという。同社は今後、愛知県全域で一般ユーザーの投稿を通じた地域応援の仕組みを広げていきたいと熱意を込めた。

●株式会社ONE TERASU

【視察を「地域を潤す資産」に変えるマッチングプラットフォーム『Shisaly』】

ONE TERASUは、地域で日常的に行われている「視察」を価値ある学びのコンテンツとして再定義し、新たな観光資源として活用するプラットフォーム「Shisaly(シサリー)」を運営している。現状の視察は自治体や企業の対応負担ばかりが大きく、利益を生まないケースが少なくない。同社はこの課題に対し、集客から予約、決済までをワンストップで完結させて視察を収益化し、「消費される労力」を「地域を潤す資産」へと転換する仕組みを提供している。

本プログラムでは、蒲郡市と新城市の2エリアで実証実験を実施した。日中の観光コンテンツ不足に悩む蒲郡エリアでは「サーキュラーシティ蒲郡」をテーマにSDGsや循環型経済を学ぶプランを造成し、新城エリアでは空き家対策や農業のブランディングを軸とした新たな視察コンテンツを開発。今後はこれらの取り組みを県内全域へ広げ、愛知県を「日本一の学びの聖地」へと進化させる構えだ。

●株式会社みやげる

【機会損失を防ぎ、手ぶら観光を実現するお土産配送サービス『みやげる』】

みやげるは、観光地での手ぶら観光と土産購買の促進を両立する配送サービスを提供する。観光客は「重い」「割れる」などの理由で購入を見送ることが多く、地域にとって機会損失となっている。同サービスは、店頭のQRコード決済で商品を自宅や空港へ配送できる仕組みで、手書き伝票の手間を省き、店舗側の負担も軽減する。

本プログラムでは、犬山市、半田市、豊川市の3エリアで実証を行った。半田市の半田赤レンガ建物では、重くて割れやすい要冷蔵の人気商品「カブトビール」を対象にシステムを導入した。結果として全国各地への配送実績が構築され、配送数は従来の約7倍に増加したという。現場のスタッフからも業務負担が軽減したと高い評価を得た。同社は今後、実証を通じて明らかになった日帰り客や車利用客へのアプローチ、サービス認知から利用までの動線作りなどの課題を改善し、地域の特産品消費をさらに促していきたいと展望を示した。

●株式会社Plaru

【データに基づく観光DXを推進するAI旅行計画アプリ『ぷらる』】

Plaruは、AI旅行計画アプリ「ぷらる」を通じて、地域の周遊促進と観光データの収集・分析を低コストで支援するサービスを展開している。多くの自治体が周遊促進やデータ活用に課題を抱える中、同アプリはデジタルマップでの情報発信や、個人の好み・時間に合わせた最適なルート提案機能を提供する。さらに、利用者の旅行計画から実際の訪問履歴に至る「思考と行動」のデータを収集し、詳細な観光分析を実現できる点が強みだ。

本プログラムでは、知多市や西尾市などと連携して実証を行った。知多市では観光パンフレットをデジタル化して掲載し、西尾市ではプレミアム付き観光券などの情報をアプリ内に集約した。これらの取り組みから得られたデータをもとに観光客の推定消費額などを可視化し、その分析の有用性から西尾市観光協会でのサービス導入が決定している。同社は現在、県内20以上のエリアと連携や導入検討を進めており、今後は愛知県にとどまらず広域での周遊促進とデータ活用を推進していく。

●株式会社Gab

【あらゆる廃棄物を高付加価値素材へ変換する新循環ソリューション『.Garbon』】

.Gabは、廃棄物を高付加価値な素材へと変換する資源循環ソリューション「.Garbon(ガーボン)」を提供している。従来、焼却や埋め立て処理されていた産業廃棄物などを独自の技術で「炭化」することで、廃棄物やCO2排出量を削減する仕組みだ。生成された炭化物は消臭・抗菌などの機能性に加え、廃棄物から生まれたという独自の物語性を持ち、人工皮革や建材、顔料、ノベルティなど多様な製品の素材として生まれ変わる。

本プログラムでは、「ゼロカーボンシティ宣言」を掲げる瀬戸市と連携した。同市の仲介のもと、廃棄物処理に課題を抱える地元企業や、炭素材を活用できる陶磁器メーカーなどと実証実験を開始。具体的には、地域の廃棄物を炭化し、炭化物パウダーを配合した陶器の試作などを進めている。同社は今後、地域の廃棄物を炭化して瀬戸市発の高付加価値商品として全国へ展開し、利益を地域へ還元するサーキュラーエコノミーの実装を目指す。

●ソリボーン株式会社

【建設業の多重下請けや職人不足を解消する地図検索アプリ『ギルド』】

ソリボーンは、建設業の職人不足や多重下請け構造の課題を解決するアプリ「ギルド」を展開している。建設現場では、工事延期によるスケジュールの空きや未収金リスク、信頼できる職人の確保などが課題となっている。同アプリは、空きスケジュールの見える化や、決済代行による最短15日の入金、AI分析を用いた独自評価スコアによる信頼性の担保を実現し、情報不足と不透明な取引構造の解消を図る。

本プログラムでは、尾張共創コンソーシアムや商工会と連携し、尾張エリアの建設会社や職人に約70件のヒアリングを実施した。現場のリアルな声を反映して機能を拡充した結果、期間中にユーザー数は600人増加し、現在は4,500人に達している。加えて、商工会議所をアプリ上の「職人ギルド拠点」としてマップに掲載し、次世代型の一人親方組合の構築に向けた協議も進めている。今後は、災害時にも地域の職人同士が迅速に連携できるネットワークの構築を目指し、愛知県から建設業の持続性向上につなげていく考えだ。

●株式会社アップカル

【行政と連携し、外国人材の雇用・定着を仕組み化する統合ソリューション】

アップカルは「外国人材雇用のアップデート」を掲げ、採用から定着、生産性向上までを一体で支援するソリューションを手がけている。足元では、円安の影響などにより採用は難化し、離職率の上昇や日本語力不足に起因する生産性低下が課題となっている。こうした状況を踏まえ、同社は中小企業単体では対応が難しい日本語教育や採用・育成の仕組み化を、行政の支援を受けながら地域単位で推進する体制の構築を目指している。

本プログラムでは当初、多言語AIの日報アプリの導入を提案したが、行政側の担当部署が分散しているなどの理由で苦戦を強いられた。しかし、大府市や小牧市などとの対話を通じ、「企業単体では難しいが、行政単位でできること」に焦点を当てて軌道修正。具体的には、地域単位での日本語教育・職業訓練校の開催や、海外と連携したオンライン地域型ジョブフェアの共催へと提案内容を絞り込んだ。

同社は今後、行政が参加しやすいスキームで小さくスタートを切り、全国の自治体の手本となるようなモデルケースを地域と共に構築していくと決意を表明した。

●株式会社musbun

【興味と共感で学生と地元企業を繋ぐ新卒採用プラットフォーム『キャリシー』】

musbunは中小企業に学生が集まる好循環を生み出す新卒採用プラットフォーム「キャリシー」などを展開している。多くの中小企業が知名度不足により採用に苦戦する一方で、学生側も地元企業を知る機会が限られているという課題がある。そこで、大学1年生から参加できるお仕事体験アプリと、大学の授業に地元企業が登壇する実践型キャリア教育プログラムを掛け合わせ、デジタルとリアルの両面から自然な出会いを創出している。

本プログラムでは、知多市や蒲郡市など6エリアで実証を行った。知多市は現役大学生が地元企業30社に向けて就活のリアルを語る採用勉強会を開催し、インターン設計やアプリ導入につなげた。

蒲郡市は旅館「銀波荘」を会場に企業と学生が交流するイベントを実施し、インターンプログラムの設計などフェーズに合わせた伴走支援に結びつけている。同社は今後もこれらの取り組みを継続し、産官学連携によって地元企業に学生が自然と集まる循環システムを愛知県内に定着させていく方針だ。

●AIONA株式会社

【製造業の設計業務を自動化・高度化するAIエージェント】

AIONAは製造業の設計業務を自動化するAIエージェントを開発している。製造現場では熟練者の引退や人手不足で、ノウハウが継承されず不具合や開発遅延のリスクが高まっている。同社のAIレビューアーは、膨大な技術文書や図面をデータ化し、過去の報告書などをAIが集約して技術文書を自動生成する。さらに、専門知識を要するリスク分析などの複雑な設計プロセスを瞬時にドラフト作成し、属人化の解消と品質向上を実現する仕組みだ。

本プログラムでは、自治体の協力のもと、企業との面談7件やイベント登壇5件を実施した。その結果、中小のみならず中堅・大手企業でも設計業務のアナログ管理や属人化に強い課題感を抱いていることが浮き彫りとなった。

現在、刈谷エリアでのイベント登壇などを通じ、既に大手企業との2案件が進行中だという。同社は今後も自治体と連携して展示会などでの発信を強化し、自動車部品や工作機械メーカーなどの設計業務をアップデートして、日本のモノづくり産業全体の競争力向上に貢献していくと意欲を示した。

●株式会社SonicAI

【多品種小ロットの製造現場に特化したAI画像処理システム『SonicAI One』】

SonicAIは日本の製造業の大部分を占める「多品種小ロット」の製造現場に特化したAI画像処理システムを提供している。従来の検査装置は大量生産向けであり、大掛かりな自動搬送設備や、不良品データを用いた膨大なAI学習時間が必要だった。同社の「SonicAI One」は、大掛かりな設備や膨大な学習データを必要とせず、既存の作業台などに後付け導入が可能。正常品をわずか10秒ほど学習させるだけで、良品との差分から予期せぬ不良を瞬時に検出できる画期的なシステムだ。

本プログラムでは、県内のエリアパートナーと連携し、イベントへの登壇や60社以上の企業への個別訪問を実施した。これまで3カ月かけて不良品データを集めていた検査の自動化が、数十秒の正常品学習で完了することが証明された。加えて、外観検査にとどまらない複雑な文字認識(OCR)のニーズも発掘するなど、多くの収穫を得たという。同社は現在「STATION Ai」にも拠点を構えており、日本一のモノづくり王国である愛知県から、多品種小ロット製造業の課題解決を牽引していくと決意をにじませた。

取材後記

10社のピッチから、愛知県全域での共創の広がりが見えてきた。過去最多となる62団体の地域パートナーが参画する本プログラムの強みは、スタートアップが単一の自治体にとどまらず、複数エリアと同時に実証を進められる点にある。各社の発表でも、複数の市町村と連携しながらプロダクトを磨き上げ、社会実装へと着実に歩みを進める姿が印象的だった。また、観光、製造業、環境、建設業、外国人材雇用など、取り組む課題は多岐にわたるものの、どの企業も「愛知での実証を足がかりに全国へ展開する」という力強い視座を持っていた。地域課題の解決を起点としたビジネスモデルが、日本全体の課題を解き明かす先行事例として成長していく未来に大きな期待を抱かせた。

――続く、『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2025』成果ピッチレポートの<後編>では、スタートアップ9社のピッチと共創の成果を紹介する。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:佐々木智雅、齊木恵太)

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  • 眞田幸剛

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