1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. スタートアップと地域パートナー45団体が事業共創の第一歩を踏み出す――『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』キックオフイベントに密着!
スタートアップと地域パートナー45団体が事業共創の第一歩を踏み出す――『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』キックオフイベントに密着!

スタートアップと地域パートナー45団体が事業共創の第一歩を踏み出す――『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』キックオフイベントに密着!

  • 13220
  • 13212
2人がチェック!

愛知県では、2018年に「Aichi-Startup戦略」が策定されている。同戦略に基づく施策として、2022年から実施されているのが、『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』だ。

同プログラムは、愛知県内の自治体、スタートアップ支援機関、商工会、商工会議所、金融機関等(=地域パートナー)が、地域課題解決に向けてスタートアップとともに主体的に取り組む事業共創プログラムとなっており、プログラムを通じて、スタートアップのサービス・プロダクトの地域実装を目指している。3回目の開催となる本年は、地域パートナーが昨年の25団体から倍増に近い45団体へと一気に増え、大いに盛り上がっている。

▲愛知県内の45団体が地域パートナーとして参加。地域ネットワークの提供、インタビュー協力、実証実験の協力などのサポートを行う。

『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』では、6月から7月にかけて愛知県地域が抱える課題(①ヘルスケア・ウェルビーイング、②農業・食、③まちづくり・観光、④ものづくり企業の活性化、⑤脱炭素・サスティナビリティ)を解決するビジネスアイデアを募集。――厳正な審査の結果、コネヒト、地元カンパニー、スカイディスク、TENTIAL、ファースト・オートメーションの5社を地域課題解決プロジェクトに採択した。

そこで本記事では、8月21日に開催された『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』キックオフイベントの様子を、スタートアップ5社のピッチを中心にお伝えする。

地域に根差した事業開発のプロジェクトチームアップ期間

イベントの冒頭、本プログラムの運営支援を行うeiiconの藤井越百氏から、本プログラムの主旨説明があった。プログラムの実施背景や目的、今後の流れなど全体像について、以下のような説明がなされた。

本プログラムは、大きくわけて「仮説構築・プロジェクト計画フェーズ」と「検証フェーズ」の2つのフェーズで進む。スタートアップからの応募・審査を経て、今回キックオフイベントが実施されたが、今後、約2か月間の「仮説構築・プロジェクト計画フェーズ」に移る。

「仮説構築・プロジェクト計画フェーズ」の目的は、地域に根ざしたビジネス創出に向けて、地域パートナーとのディスカッションを通してプラン策定をすることだ。ここに本プログラムのユニークさと実直さが表れている。

この時期は、参加スタートアップが提示したプロジェクト内容に関心を持った地域パートナーが、共に「地域課題解決の共創プロジェクト計画」を練る。スタートアップ1社に対して、1対1ではなく、1対Nで支援を行う支援体制を設けているが、特に今年は、「自治体」だけでなく「商工会・商工会議所」「金融機関」等、各地域パートナーがエリア単位でチームとなって、各プレイヤーでできることを掛け合わせ、面での手厚い支援が可能な体制となっている。今後共創したい、またはできるアクションについて検討をする。

この時期は、“計画を練る”ことも大きな目的だが、共に事業開発を行なうパートナーとしてのチームアップを行なう時期でもあるため、ディスカッションを重ねる中でお互いの考え方、価値観をすり合わせることも重要な要素である。その後、「プロジェクト計画発表」がなされ、プロジェクトの実施に進むかどうかの判断が下される。

後半の「検証フェーズ」では、「仮説構築・プロジェクト計画フェーズ」で策定した計画を実行し、実際にプロジェクトが推進されていく。

愛知県を盛り上げるために集まったスタートアップ5社のプロジェクトピッチ

『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』の主旨説明に続いて、事前審査を通過したスタートアップ5社が、各7分の持ち時間でピッチを行った。以下、登壇順に各社のピッチを紹介していく。

●株式会社スカイディスク

プロジェクトタイトル「AIを活用し、中堅・中小製造業の生産計画をDXする」

株式会社スカイディスクは、2013年の創業以来、製造業向けのDX支援を実施してきた。現在、550件以上の支援実績を積み重ねてきた中から生まれた、AIを活用した生産計画DXサービス「最適ワークス」を提供している。これは、多品種製造に対応し、工場のキャパシティと製造の状況や見通しを可視化して改善できる、生産計画DXサービスだ。

▲株式会社スカイディスク 経営企画兼アライアンス 塚本 真歩 氏

具体的には、「部門間の情報共有を促したい」、「設備稼働率を改善したい」といった要望の他、働き方改革や人手不足への対応、さらにはカーボンニュートラルの推進など、製造業が抱える課題の実現をサポートする。

「最適ワークス」は、すでに中堅・中小企業を中心に100件以上の導入実績がある。その特徴は、「コストパフォーマンス」と「簡便な操作感」、そして「運用開始までのスピード」だ。SaaSとして提供することで導入コストが低く、中堅・中小企業も気軽に導入しやすい。また、IT人材でなくてもデータ設定や更新が可能な点、1.5ヶ月程度で運用開始できるスピード感も評価されている。

このように、スカイディスクは「最適ワークス」を武器にして、中堅・中小製造業の改善支援と持続的成長のサポートに取り組んでいるが、「DXに興味があるし、推進したいと思っているが、何から始めたらいいか、どこから情報収集をすればいいかわからない」といった声もよく聞くという。そこでDX意欲はある企業に対して、セミナーを起点にリーチして、PoCを行ってDX推進事例の構築に取り組みたいと考えている。

最後に、これまでの取り組みに限らず、様々な取り組みを検討していきたいといい、「地域製造業のDXリテラシーを高めたり、地場の製造業を盛り上げることで地域の活性化を図ったり、中小製造業の労働環境を改善することで産業の魅力度アップを目指しているパートナーさんとは、ぜひご一緒させていただきたい」とアピールし、ものづくり企業の課題解決に対する意欲を覗かせた。

●株式会社地元カンパニー

プロジェクトタイトル「カタログギフトの知見を生かしたミニチュアギフトで、新しいプレゼントのかたちを提案」

株式会社地元カンパニーからは、「あと配(はい)土産」というプロダクトが発表された。同社は長野県に本社があり、2012年の創業から「ご当地グルメのカタログギフト」をメイン事業としている。

同社によると、コロナ禍を経て、今もっとも賑わいを見せているのが「お土産市場」だという。コロナによる生活者の行動変容により、お中元やお歳暮といった従来型のフォーマルなギフトは減少の一途を辿っているが、その一方、仲の良い友人にあげるような、カジュアルかつパーソナルなギフト、つまりお土産の需要が非常に高まっているというのだ。

▲株式会社地元カンパニー 営業部 部長 山下 信静 氏

しかし、物流が発達した現代においては、どこにでも売られているようなものでは簡単に入手できるためありがたみが薄い。プレゼントの質が問われるようになっている。

そこで地元カンパニーが開発したのが、「あと配土産」だ。このプロダクトは、QRコード付きの「ミニチュア」や「チケット」を販売するもので、受け取った人が住所等の必要情報を入力すると、そこに旬の食品が配送される。この仕組みにより、従来お土産には適さないと思われた「かさばる」ものや、「冷凍・冷蔵が必要」なもの、「賞味期限が短い」ものを、気軽にプレゼントとして贈ることができる。

また、「あと配土産」には、消費者だけではなく、メーカー側にもメリットがある。「あと配土産」の仕組みでは、メーカーへのキャッシュインが先行するために資金繰りを改善させる効果がある。

同社では、長年のカタログギフトで培ってきたQRコードとミニチュアやチケット等の技術やノウハウを、先にあげた「かさばる」「冷凍・冷蔵」「短賞味期限」の理由から販売機会を逃していた多くの事業者の商品と組み合わせることで、全国に向けてのお土産需要を取り込もうとしている。その仕組みを通じて「サポートしている事業者のさらなる売り上げ拡大を支援していきたい」とピッチを結んだ。

●コネヒト株式会社

プロジェクトタイトル「350万人の“ママコミュニティ”の力で地域課題解決を図る」

3社目に発表したのは、コネヒト株式会社。「集声力(しゅうせいりょく)」をキーワードにプロダクトを紹介した。

創業12年目、東京に本社を構えるコネヒトは、「人の生活になくてはならないものを作る」をミッションに掲げて、ママ向けQ&Aアプリ・情報サイト「ママリ」の開発および運営、子育て包括支援事業(DX、EBPM等)、自治体および企業向け産休・育休の取得支援などを展開している。

▲コネヒト株式会社 ソーシャルコネクト部 髙橋 美紀 氏

同社いわく、「家計の悩み」、「不妊の悩み」、「育児の悩み」、「社会の悩み」の4つの要因がある。その中でコネヒトがフォーカスしているのは「育児の悩み」の解決だ。

同社が主軸サービスとしている子育て支援サービス「ママリ」は、全国350万人以上に利用されており、アプリ内検索、投稿数ともに記録的な数を誇っている。日々集まる、ママの生の声を社会課題の解決に活かせないかという考えから、同社では「ソーシャルコネクト部」を発足。企業向けのサービス展開のみならず、自治体向けのソリューション開発を始めた。

コネヒトの調査によると、自治体は住民の声をうまく集められておらず、また、住民の多くは「自治体に声を届ける手段がない」と感じているという。さらに、声が届かないと感じている住民は自治体サービスに不満を持っていることが多いという。

「逆にいえば、声を届ける手段があると感じる住民が増えれば、自治体のサービスに対して不安を感じる層が減る」と同社は述べる。「ママリ」が集める350万人のデータを分析することで、リアルタイムに住民の反応が把握できるようになる他、全国規模でのデータ比較や、課題・ニーズの深掘りもできる。さらには、ママの日常的な検索・投稿情報を分析できるというアプリ特性を活かして、虐待予防にもつなげられるという。

最後に同社は、「Q&Aアプリによって構築されたコミュニティを活かして、愛知県内における社会課題解決につながるような事業開発を進めていきたい」と結び、持っているプロダクトの有用性と可能性を示した。

●株式会社ファースト・オートメーション

プロジェクトタイトル『AI文書ナレッジシステム「SPESILL」で、製造業のデスクワークを簡単にする』

続いては、株式会社ファースト・オートメーションが登壇した。同社は愛知県名古屋市に本社を構えるスタートアップであり、AIによる専門文書作成サポートシステム「SPESILL」の開発・展開をメイン事業としている。

代表取締役とCTOが共に製造業出身であるというキャリアを活かし、製造業における社内ドキュメント作成まわりの課題実現に取り組んでいるという。

▲株式会社ファースト・オートメーション 代表取締役 伊藤 雅也 氏

製造業には、一度作るとやり直すことが難しいという特性がある。そこで、失敗を防止するための知識や技術継承が重要であり、重厚なドキュメントが常に必要とされている。しかし、一般的に、社内ドキュメントはフォーマットが確立されておらず、管理が煩雑で、探し出すことすら困難な場合が多いという。現場の設計者や技術者たちにとっては、ドキュメントの作成・管理の工程が多大なる負担となっている。

生成AIによって、その負担の解決を図るソリューションが、同社の「SPESILL」だ。「SPESILL」は、ナレッジ検索から文書出力までワンストップで実行できる他、手書き文字認識、WordやExcelなどのオフィスソフトとのデータ連携も可能で、図面などのデータも扱える。さらに、作業現場を撮影した動画から、作業の要領書やマニュアルを簡単に作成できるようにもなっている。

加えて、インターネットに接続しないオンプレミス環境でも利用可能なことから、機密性の高い情報を扱うにも適している。現在のところ、「SPESILL」は100人以上の製造業の企業に提供することがほとんどであるため、今回のプログラムの中では中小企業のニーズを検証したいという。

最後に、「ファースト・オートメーションは愛知県の企業なので、現地訪問ができる。現地の企業のもとに直接伺って、生の課題を見て、解決に向けての提案をしたい」と、地元企業らしいアピールで締めくくられた。

●株式会社TENTIAL

プロジェクトタイトル『地域と「コンディショニング」を組み合わせて、健康で魅力的な愛知県を生み出す』

株式会社TENTIALは、「地域×コンディショニングによる観光推進プロジェクト」と銘打ったピッチを行った。同社の事業は、コンディショニングブランドTENTIALの運営だ。アスリートが日常的に体の調子を整える活動=「コンディショニング」に注目し、それを一般生活者にも取り入れることで、健康で前向きな社会と個々人のポテンシャル発揮の実現を目指している。

▲株式会社TENTIAL 公共政策部 市川 佑樹 氏

コンディショニングの中でも、同社では「睡眠」にフォーカスしているが、それを観光資源と組み合わせて、観光課題を解決するという点がユニークだ。

まず、愛知県内には、健康に関するイベントや、睡眠を促す地域食材、リフレッシュ効果のある場所などの観光資源が多く存在する。それらと、同社が持つコンディショニングのナレッジを組み合わせることで、「その地域でしか経験できない、観光を通して健康になれる新たな体験」が構築したいという。

同社の提案によって地域に提供される価値は「観光客誘致」と「健康増進」の2面がある。まず、TENTIALのナレッジやノウハウを通じて、地域の隠れた健康的な食材や、リフレッシュ効果のある場所などを見つけ出し、同社の製品やコンディショニングサポート技術を組み合わせて、新しい観光体験を生み出せれば、観光客増加と地域経済の活性化に直接結びつく。また、観光客の健康増進を図ることで、間接的ではあるが地域のまちづくりにも貢献するという。

発表の後半、TENTIALは地域パートナーとの連携においての考えを述べた。その中でも特に重要視していることが、地域情報のヒアリングだ。事前調査はしているが、やはり地域には、「地元でないとわからない魅力」がいくつも転がっている。そのギャップを埋めるため、地域パートナーには地元だから知っている魅力を語っていただいて、その上でコンディショニング体験の構築を行っていきたいという。

最後に同社は、「ヘルスツーリズムが流行しているが、我々はさらに一歩進んだところを見据えていきたい」と結び、プログラムに対する熱意を語った。

スタートアップ×地域パートナーによる「ディスカッションタイム」が共創の第一歩に

スタートアップ5社によるピッチが終わった後は、「ディスカッションタイム」となった。これは、本イベントに出席した自治体や商工会議所、スタートアップ支援機関などの地域パートナーが、ピッチを繰り広げたスタートアップの担当者と個別にディスカッションするというものだ。およそ1時間半にわたるディスカッションタイムで、スタートアップと地域パートナーからさまざまな意見やアイデアが交換され、共創への第一歩となる貴重な時間となった。

キックオフイベントの最後には、『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』を主催する愛知県の藤井智也氏が登壇。締めくくりの挨拶を述べ、キックオフイベントは盛況の中、幕を閉じた。

▲愛知県 経済産業局 革新事業創造部 スタートアップ推進課 戦略推進グループ 課長補佐 藤井 智也 氏

取材後記

愛知県でのイベントらしく製造業を意識したピッチが多いことが目に付いた。グローバルでの競争力低下が指摘されることもある日本の製造業だが、今回の発表があったようなスタートアップの力を採り入れれば、これからも製造業の底力をアップさせていくことが可能ではないかと感じられた。

3年目を迎えた『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』は、地域パートナーも参加企業数も順調に増加しておきており、過去の取り組みからも、すでに様々な成果が生まれている。回数を重ねて洗練されてきた同プログラムから、どんな事業が生まれていくのか注目したい。

●『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM2024』の詳細は以下をご覧ください。

https://aichi.eiicon.net/aichi-co-create2024/

(編集:眞田幸剛、文:椎原よしき、撮影:加藤武俊)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント2件

  • teijiro handa

    teijiro handa

    • ウェブディレクター
    0いいね
    チェックしました
  • 眞田 幸剛

    眞田 幸剛

    • eiicon company
    0いいね
    チェックしました