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県内47団体が支援、愛知県全域でのスタートアップ・エコシステム形成を推進する『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』――2024年度参加10社の成果報告をレポート!

県内47団体が支援、愛知県全域でのスタートアップ・エコシステム形成を推進する『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』――2024年度参加10社の成果報告をレポート!

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3月19日、中日ホール&カンファレンス(名古屋市)で、愛知県が主催するイノベーション創出を目指した4事業の合同成果発表会『AICHI INNOVATION CHALLENGE』が開かれた。このイベントでは、『AICHI MATCHING 2024』『愛知自動車サプライヤーBUSINESS CREATION 2024』『TECH MEETS』『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』の4つのプログラムから生まれた成果が披露された。

イベント当日は、各プログラムの成果発表に加え、基調講演や登壇企業との面談ができるブース出展、合同交流会も実施され、スタートアップ・エコシステムの発展や地域連携、オープンイノベーションに関心を持つ多くの来場者で賑わった。

本記事では、そのうちの『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』の成果発表を紹介する。これは、愛知県内の自治体などが地域パートナーとなり、地域に根ざした事業に挑戦するスタートアップと共に事業共創を進めるものだ。今年度は10社のスタートアップが参加し、地域パートナーと事業創出や拡大に取り組んだ。

県内47団体が参画、愛知県全域でスタートアップ・エコシステムの形成を目指すプログラム

冒頭、プログラムの運営を担う株式会社eiiconの藤井越百氏が登壇し、『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』の概要について説明した。

このプログラムは、愛知県内の自治体やスタートアップ支援機関、商工会、商工会議所、金融機関など(=地域パートナー)が横のつながりを活かしながら、スタートアップと共に地域課題解決に取り組む事業共創プログラムだ。愛知県全域でスタートアップ・エコシステムを形成することを目指して実施されている。地域パートナー数は年々増加し、現在では47団体に達しているという。

▲愛知県内の47団体が地域パートナーとして参加。地域ネットワークの提供、インタビュー協力、実証実験の協力などのサポートを行う。

今年度の『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』には10社のスタートアップが参加し、地域パートナーの協力を得ながら地域課題解決に取り組んだ。藤井氏によると、プログラムを通じて143件のマッチングが成立し、38件のプロジェクトが組成された。実証実験の実施など何らかの成果を得られた件数は34件に上ったことも紹介された。

▲株式会社eiicon エコシステム形成支援統括マネージャー 藤井越百氏

【プロジェクト成果ピッチ】10社のスタートアップが登壇し、地域パートナーとの共創成果をプレゼン!

成果発表会では、10社のスタートアップが地域パートナーと進めた共創事業の内容と成果を発表した。各社のピッチを登壇順に紹介する。

●株式会社mBiRS

発表タイトル:スマホアプリでイノベーション!次世代インフラ管理のスタンダード

mBiRSは、技術系行政職員だった代表の森川氏が率いるスタートアップで、地下ライフラインのスマート管理を実現するアプリ『GeoMappAR』を開発している。このアプリは、地下に埋設された電力、ガス、水道、通信ケーブルなどのライフラインをペーパーレスで管理でき、現場確認や情報共有、閲覧・立会申請もスマートフォンで簡単に行える機能を備えている。

本プログラムでは、愛知県の3市(豊川市、岡崎市、日進市)で実証実験を実施。豊川市では下水整備課に試験導入し、高評価を得た。参加者からは、業務の効率化や負担軽減に対する大きな期待が寄せられているという。今後、データ基盤の強化を進め地下ライフライン管理における業界標準化を目指す。さらに他分野へと拡大する展望も示した。

●株式会社KANNON

発表タイトル:最短1分1行で実現するアクセシビリティ

KANNONが提供する『フェアナビ』は、ウェブページのアクセシビリティを簡単に高められるツールだ。このツールは、視力が低下した高齢者や障がい者に向けて、ウェブ情報を見やすくわかりやすく表示変更する機能を持つ。1行のコードを追加するだけなので、わずか5分程度で導入できる。また、年額10万円からという低コストで提供されている。

本プログラムでは、愛知県の日進市と小牧市と連携し、市のホームページに『フェアナビ』を導入。現在、地域住民の反応を調査中で、情報へのアクセスのしやすさや視認性、自治体イメージへの影響などをデータ収集している。KANNONの山下氏は、「今、ウェブアクセシビリティの導入率は1%以下」だと指摘し、これを改善することで、住みやすい環境を整備していきたいと語った。

●株式会社SAGOJO

発表タイトル:“旅人人材”の活用による人手不足解消&地域ブランディングプロジェクト

SAGOJOは、旅と仕事のマッチングサイト『SAGOJO』を運営している。旅行や地域貢献に関心の高い旅人人材と、人手不足に悩む全国の依頼主をつなぐプラットフォームで、現在2万8000人の旅好きの人材が登録しているという。マッチング成立率はほぼ100%と、非常に高いことが強みだ。

本プログラムでは、愛知県の春日井市と新城市の2市で、このサービスを使った取り組みを実施した。春日井市では、全国一の出荷量を誇るサボテンを活用した地域ブランディングを推進。実際に3名の旅人人材が現地を訪問し、サボテンファンが集まるコミュニティ形成などを計画している。新城市では、駅周辺エリアに旅人参加型の新しい宿を開業し、地域ブランディングを展開する構想を描いている。SAGOJOの新氏は、こうした取り組みを通じて担い手不足の解消や関係人口の拡大を目指す考えを示した。

●匠技研工業株式会社

発表タイトル:製造業 見積DX実現に向けた連携モデル

匠技研工業は、製造業を対象に図面管理から見積作成までを支援する『匠フォース』を提供している。定価が存在しない部品加工では見積という業務が存在するが、見積は図面を読み取り、過去案件を参照し、材料費や加工費を算出する複雑な業務で、多くの企業で属人化や非効率が課題となっている。こうした課題を解決できるのが『匠フォース』で、過去図面検索や案件管理、見積作成機能を備えている。

本プログラムでは、愛知県内で課題認知を進める取り組みを実施。愛知県刈谷、蒲郡、豊橋、岡崎エリアで開催されるセミナーやピッチイベント、フェアなどへの登壇や、県内企業への訪問を通じて、積極的に発信を行った。同社は「ものづくり現場の努力が正当に報われる世界」を実現したいと力を込めた。

●株式会社GEMBA(RainTechよりサービス移管)

発表タイトル:現場巡回DXでモノづくり企業の現場改善を高速化

GEMBAは、大手自動車部品メーカーの生産技術部門での経験を持つ藤井氏らが立ち上げたスタートアップで、製造現場のDXに取り組んでいる。現場DXの最初の一歩として注力しているのが現場巡回のDXだ。現状では、紙の帳票管理やエクセル転記といった非効率な作業が多くデジタル化も遅れている。これらをスマホやタブレットで管理できるようにしたのが同社の『デジパト』だ。工場レイアウト図上で改善状況を可視化し、データを蓄積して製造現場の技術伝承や業務の質向上などにも活用できる。

本プログラムでは、愛知県の刈谷市の協力を得て、市内の自動車部品メーカーへのヒアリングや仕様の壁打ち、テスト運用を進めている。今後は他の地域とも連携し、製造業のDXを前進させていきたいと語った。

●コネヒト株式会社

発表タイトル:子育て支援コミュニティアプリ「ママリ」を活用した、児童虐待ハイリスク潜在層検知サービス

コネヒトは、登録者数350万人を超える子育て支援コミュニティアプリ『ママリ』を提供している。このアプリは、全国のママたちがオンラインでつながれるQ&A機能が特徴だ。今回のプログラムでは、アプリに集まる生の声を活用し、虐待を予防する取り組みを試みた。具体的には、Q&Aの書き込みから虐待に関連するキーワードを検知し、書き込んだユーザーにポップアップで専門相談窓口を案内する仕組みだ。

プログラム期間中、愛知県内での連携には至らなかったが、福島県との実証実験を開始した。匿名で相談できる点、早期にリスクを予測し予防できる可能性、自治体職員の負担が少ない点が評価された。引き続き、社会課題解決に向けた実証実験やサービス開発を進めていく考えだ。

●株式会社地元カンパニー

発表タイトル:新たなお土産流通モデルの構築

地元カンパニーは、全国のご当地産品の流通に注力するIT企業で、カタログギフトなどを展開している。同社は、既存のビジネスで得た知見を活かし、新たに『あと配土産』というサービスを開発した。『あと配土産』のフローは、まず商品を模したミニギフトを実店舗で販売し、購入者がそれをプレゼントする。受け取った相手は、ミニギフトに記載されたQRコードから住所を登録し、商品を直送してもらう仕組みだ。

本プログラムでは、一宮エリアにある和菓子屋と蒲郡エリアにある魚市場の2カ所で試験導入に取り組んだ。和菓子屋では賞味期限が当日中のわらび餅が、魚市場では名物の伊勢海老が『あと配土産』に採用され、効果検証に向けて準備を進めている。この新たな流通モデルで、ご当地産品を全国各地に届ける仕組みを構築していきたいと呼びかけた。

●株式会社スカイディスク

発表タイトル:最適ワークスで実現する地域DX推進

スカイディスクは製造業のDX支援を行う企業で、これまでに550件以上のプロジェクトを手掛けてきた。主力製品の『最適ワークス』は生産計画を可視化し、AIが最適な生産順序を提案するツールで、特に少量多品種の生産管理に強みを持つ。ノーコードで導入できるためシステムエンジニアがいない企業でも扱いやすい。月額課金モデルで提供されているため導入がしやすく、すでに150社以上に使われている。

本プログラムでは、愛知県内の自治体や商工会議所、金融機関の協力のもと、23社の企業と商談の機会を得た。そのうち1社が有償でのPoC、2社で本格導入が決まったという。引き続き『最適ワークス』を通じて、企業の業績改善を支援していきたいと語った。

●株式会社TENTIAL

発表タイトル:地域 × コンディショニングによる観光推進プロジェクト

TENTIALは、科学的根拠に基づいたコンディショニング製品を提供する企業だ。代表的なプロダクト『BAKUNE』は、着るだけで血行を促進し、疲労回復することで健康的な毎日を支える機能性パジャマとして展開されている。今回、同社は地域とコンディショニングを組み合わせた観光推進プロジェクトに取り組んだ。

具体的には、愛知県新城市と蒲郡市の協力のもと地元企業と連携し、モニターイベントを実施。新城市では「森林と温泉」、蒲郡市では「新たな自分に出会うひととき」をテーマに、適度な運動や呼吸法、快適な睡眠環境、ワークショップを取り入れた1泊2日の体験を提供した。参加者からは「地域を再び訪れたい」「コンディショニングを意識するきっかけになった」といった声が寄せられた。今後は、さらに内容をブラッシュアップして、より良い体験を構築していきたいと力を込めた。

●株式会社ファースト・オートメーション

発表タイトル:生成AIで中小企業を活性化

ファースト・オートメーションは、製造業のデスクワークを簡単にするAIアシスタント『SPESILL』を提供している。手元にあるデータをアップロードするだけで、AIの知識源が完成する。これを使えば、新しい文章の作成支援や、作成した文章の評価、ナレッジ検索などが可能になる。

本プロジェクトでは、愛知県内9エリア20団体の協力のもと、54社の地元企業とマッチング。そのうち16社でPoCを実施するに至った。PoCの内容は様々だが、例えば、生成AIを使って作業動画から作業手順書を作成したり、作業動画から作業者のスキル分析を実施したり、2D図面から3DCADを生成したりなどだ。これらの取り組みから得られたフィードバックをもとに同社製品の改善をするとともに、生成AI研修事業の本格始動も進めていくという。

取材後記

『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM 2024』では、地域パートナーによる手厚い支援が参加スタートアップの成果に大きく寄与していることが明らかになった。今年度参加の10社は、地域課題の解決を目指して着実に事業を前進させたようだ。中には短期間で非常に多くの実証実験を実施した企業もあり、プログラムが効果的に活用された様子が伝わってきた。活力あるスタートアップと地域の連携は、愛知県全体の経済を活性化させる原動力となるだろう。今後の成長に一層の期待がかかる。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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