1. Tomorubaトップ
  2. ニュース
  3. 「岡崎市イノベーション創出HUB」設立へ!岡崎市×岡崎商工会議所の連携により、市内企業に広がる"共創"の機運
「岡崎市イノベーション創出HUB」設立へ!岡崎市×岡崎商工会議所の連携により、市内企業に広がる"共創"の機運

「岡崎市イノベーション創出HUB」設立へ!岡崎市×岡崎商工会議所の連携により、市内企業に広がる"共創"の機運

  • 14202
1人がチェック!

ものづくりのまち・岡崎市は、長年にわたり自動車産業を中心に発展してきた。しかし、近年では100年に一度の大変革期とも言われる自動車業界の変動により、地域経済にも新たな挑戦が求められている。

そうした市場環境に対し、岡崎市は「岡崎市共創イノベーション推進戦略」を策定し、実行に移している。同戦略は、市内企業が異業種やスタートアップ、行政や研究機関と連携し、新たな事業領域への進出を支援するというものだ。

今回TOMORUBAでは、同戦略の一環であり、2024年度で3期目を迎えた『おかざきものづくり OPEN INNOVATION PROGRAM』について、岡崎市と岡崎商工会議所の担当者にインタビューを実施。プログラムの成果や、市と商工会議所との連携による新たな展開、そして今後のビジョンについて話を聞いた。

――岡崎市における共創の最前線で、どのような変化が生まれ、これからどんな未来が描かれていくのか?その可能性を探る。

「100年に一度の変革期」――岡崎市のものづくり産業が今、直面する課題とは?

――まずは岡崎市の現状について聞かせてください。

岡崎市・大河内氏 : 岡崎市は、自動車産業を基盤とした「ものづくりのまち」として発展してきました。市内の製造品出荷額の約6割を自動車関連産業が占めており、地域経済や雇用を支える重要な柱となっています。しかし、近年では自動車産業を取り巻く環境が大きく変化しており、いわゆる「100年に一度の大変革期」に直面しているためこの変革の波に対応し、新たな事業領域への進出が求められているのが現状です。

従来の取引関係に依存した企業経営では、今後の成長や持続的な発展が難しくなってきています。そのため、岡崎市では市内企業が新たな市場へ進出しやすくするための施策として、企業同士の連携を促進する「岡崎市共創イノベーション推進戦略」を策定しました。それにより、異業種の企業やスタートアップ、さらには行政や研究機関と連携しながら新しい事業の創出を目指しています。

▲岡崎市役所 経済振興部 商工労政課 ものづくり支援係 主査 大河内拓己氏

――具体的に、どのような取り組みをしているのでしょうか?

岡崎市・大河内氏 : 共創の取り組みは、大きく「共創の機運醸成・風土作り」「共創機会の創出」「共創の具体化支援」の3つのステップに分けて考えています。

現在は特に「共創の機運醸成・風土作り」と「共創機会の創出」に重点を置いた施策を進めています。その代表的な取り組みの一つが、『おかざきものづくり OPEN INNOVATION PROGRAM』です。2022年度からスタートしたこのプログラムでは、地元企業2社を選定し、共創テーマの設定や自社の強み・課題の整理、新規事業の立ち上げを支援し企業が実際にオープンイノベーションを体験することで、その有効性を認識し、市内全体に共創の機運を広げる狙いがあります。

また、「岡崎ものづくり推進協議会」では、共創をテーマとしたフォーラムを開催し、企業間のネットワーク構築を促進してきました。さらに、市内企業が新規事業に挑戦しやすくするため、共創によって開発された新製品の試作品材料費を補助する支援制度も整えています。

3年目で見えた変化!岡崎市内の企業に広がるオープンイノベーションの波

▲岡崎市役所 経済振興部 商工労政課 ものづくり支援係 倉地亜実氏

――2024年度には、オープンイノベーションプログラムが3期目を迎えました。本取り組みを続けて感じる変化について聞かせてください。

岡崎市・倉地氏 : 着実に共創の機運が高まってきていると感じています。特に、3年前と比べると、市内企業のオープンイノベーションに対する意識が大きく変化しました。

たとえば初年度にセミナーやワークショップを開催した際は、参加者を集めるのに苦労しました。しかし、2024年度に実施したセミナーでは、事前アンケートの時点で「新規事業に取り組みたい」「共創に興味がある」といった、明確な意思を持つ企業の参加が増えています。

こうした変化は、継続的にプログラムを実施してきたからこそだと考えています。参加企業の方々が、実際に共創に取り組んだ経験を知人や取引先に共有したことで、これまで共創に関心がなかった企業にも、その存在が認知されるようになりました。

――参加企業による口コミ効果もあるんですね。

岡崎市・倉地氏 : そうですね。また、「他社が新しい取り組みを始めているなら、うちも何かやらないといけないのではないか」という意識が生まれ、セミナーやフォーラムに参加する企業が増えたことも実感しています。

さらに、2024年12月に開催した「第7回ものづくり岡崎フォーラム」では、市内企業の共創パートナーとなり得る製造業向けDXのスタートアップを招き、初めてピッチイベントを実施しました。これは従来のフォーラムにはなかった試みであり、実施前は「市内企業に受け入れてもらえるのか」という不安もありました。

しかし、終了後のアンケートを見ると、「こういう企業を初めて知った」「非常に興味がある」といった前向きな意見が多く寄せられ、共創の機運が確実に高まっていることを再確認しています。

――これまでのプログラムで印象に残っている事例があれば教えてください。

岡崎市・倉地氏 : 特に印象に残っているのは、金属のメッキ処理を手がけている「葵巧研有限会社」(2023年度プログラム参画企業)です。初めてのオープンイノベーションの取り組みにもかかわらず、積極的に多くの企業にコンタクトをとっていました。共創したい企業に自ら直接足を運び、新たなビジネスの可能性を切り開こうとしていました。

また、搬送コンベアや洗浄機の設計・製造・メンテナンスを手がける「有限会社渡瀬工業」(2022年度プログラム参画企業)の事例も印象に残っています。当初はドローン関連の事業を進めたいと考えていましたが、当時の状況では実現が難しく、最終的にプログラム期間中に共創プロジェクトとして形にすることはできませんでした。

しかし、その後も企業自らが共創に向けた活動を続け、岡崎市の補助金制度を活用し、新たな共創パートナーと試作品を開発したのです。プログラム期間内での成果にはつながらなかったものの、学んだことを活かして自走し、新しい製品を生み出していった姿勢が非常に印象的でした。

商工会議所との共創で進化!4,100社のネットワークが持つ可能性

――2024年度のプログラムから岡崎商工会議所と共催していますね。その目的と成果について聞かせてください。

岡崎市・大河内氏 : 商工会議所との共催により、より多くの企業に向けて発信でき、本市の共創を後押しする取り組みについて知ってもらう機会を創出することができました。また、この共催をきっかけに、これまで以上に市と商工会議所との連携が深まり、共創事業について話し合う機会が増えたことも大きな成果の一つです。

商工会議所の大きな強みは、市内企業を直接訪問し、現場の声を把握している点にあります。そのため、行政が推進する施策が企業の実態と乖離しないよう、商工会議所からのフィードバックを得ることで、より現場に即した支援策を展開できるようになりました。

さらに、2024年度からは商工会議所とともに、市内企業とスタートアップのマッチング機会を創出しました。これにより、岡崎市内の企業が、県の枠組みの中で新たなビジネスチャンスを得る場を提供できたことも、商工会議所との連携の成果の一つです。

――商工会議所としては、市とプログラムを共催していかがでしたか。

岡崎商工会議所・杉本氏 : 事前に明確な役割分担を決めたわけではありませんが、お互いの持つネットワークやリソースを活用することで、より効果的な支援ができたのではないかと思います。

岡崎商工会議所には現在4,100社を超える会員企業があり、各企業への訪問巡回を通して現場でどのような課題があるのか、どのような支援が求められているのか把握できるのが強みです。これらの情報を行政側にフィードバックすることで、岡崎市が進める「岡崎市イノベーション創出HUB」の構築や、共創支援施策の立案にも具体的な提言ができるようになりました。

また、企業に対して共創の意義や重要性を伝えることで、今後の事業展開の中で共創の機会を活用してもらえるような流れを作れたと感じています。これからも商工会議所と岡崎市が連携し、市内企業がより多くのビジネスチャンスを得られるような共創環境を整えていきたいと考えています。

▲岡崎商工会議所 産業振興部 産業振興第一課 杉本幹和氏

――松岡さんからも、プログラムを共催した感想も聞かせてください。

岡崎商工会議所・松岡氏 : これまで岡崎市と商工会議所は「岡崎ものづくり推進協議会」を通じて、地域の製造業支援に取り組んできました。その中で、企業が今後の成長を見据えて自社の変革を進める必要性が高まってきたことを感じています。

2024年度には、商工会議所も「中小企業の変革促進」を重点事業として掲げ、岡崎市が推進してきたオープンイノベーションプログラムと連携する形で共創支援を強化しました。今回の共催を通じて、単なる情報提供にとどまらず、企業が実際に新たな取り組みへ踏み出せるような後押しができたのではないかと考えています。

今後もこの流れを加速させ、企業が新しいビジネスチャンスを得られる共創の環境をさらに強化していきたいですね。2024年度の市との連携は、その基盤を築く意味で非常に濃い1年になったと感じています。

▲岡崎商工会議所 産業振興部 産業振興第一課 課長 松岡文氏

「岡崎市イノベーション創出HUB」設立へ!共創を加速させる新たな取り組みとは?

――今後のビジョンについて聞かせてください。

岡崎市・倉地氏 : 今後の展望として、「岡崎市イノベーション創出HUB」の設立を目指していきます。「岡崎市イノベーション創出ハブ」は、市内の企業が共創を進めやすい環境を整えるのが目的です。

これまでの共創の取り組みを通じて分かったことは、「共創が必ずしもすべて成功するわけではない」という現実です。しかし、新規事業を成功させるには、多くのチャレンジができ、多様なパートナーと出会う機会が欠かせません。そのため、「岡崎市イノベーション創出HUB」を通じて、市内企業がより多くの機会を得られるような仕組みを構築したいと考えています。

愛知県のスタートアップ支援拠点「STATION Ai」のパートナー拠点化も視野に入れており、県の支援策とも連携しながら、岡崎市の共創推進をさらに強化していく予定です。今後も、岡崎市として共創の取り組みを全力で推進し、市内企業が新たな事業領域に進出できる環境を整えていきます。

――商工会議所としてはいかがですか。

岡崎商工会議所・松岡氏 : 2025年度も引き続き、会員企業を全力でサポートすることが、商工会議所の基本方針です。ただし、商工会議所内だけで企業支援を完結させることはできません。そのため、より広い視点での共創が必要だと考えています。

共創を進めることで、新しい関係性が生まれ、企業だけでなく商工会議所自体も変化し、学びを得る機会になっていると感じます。これまで以上に、岡崎市や金融機関、大学、スタートアップなど、さまざまな関係者との連携を深めながら、共創の仕組みを一緒に作り上げていきたいですね。

――最後に、岡崎市の今後の展望・方針を聞かせてください。

岡崎市・水上氏 : 今年1年間、共創に関わる仕事を進める中で改めて感じたのは、企業同士が直接会って話をする機会をいかに作るかが非常に重要だということ。

これは、企業だけでなく、課題を持つ行政も同様で、異なる立場の人々が対話することで、新たな発想や解決策が生まれる可能性が広がると実感しました。2025年度以降は、こうした「自由にコミュニケーションを取れる場」をさらに増やし、より多くの企業や関係者がつながる機会を創出したいと考えており、直近8月には「第9回ものづくり岡崎フェア2025 ENJOY ものづくり!ENJOYイノベーション!」と題した、岡崎市内の企業が募る展示会イベントを岡崎ものづくり推進協議会が主催となり開催します。ぜひご来場ください。

共創の成功には、まず人と人が出会い、互いの考えを共有し、協力し合う土壌を育てることが欠かせません。そのために、岡崎市と商工会議所などが連携しながら、より多くの企業が気軽に交流できる場を設けていきたいと思います。今後も、企業が積極的に新しいつながりを持ち、共創の可能性を広げられるような環境を整えていければと考えています。

▲岡崎市 経済振興部商工労政課 課長 水上順司 氏

編集後記

岡崎市が推進する「共創イノベーション推進戦略」は、地域のものづくり企業が新たな成長機会を掴むための実践的な取り組みとして着実に根付いてきている。2024年度からは商工会議所との連携が強化され、企業支援の幅がさらに広がった。共創の成功は、一朝一夕で実現するものではない。しかし、今回の取り組みからは、少しずつ市内企業の意識が変わり、新たなチャレンジが生まれつつあることが感じられた。今後、岡崎市が目指す「イノベーション創出HUB」の設立が、この流れをさらに加速させるだろう。共創の力で、岡崎市のものづくり企業がどのような未来を切り拓いていくのか。引き続き、その動向に注目していきたい。

<関連記事>

●2022年度プログラムインタビュー:100年に一度の大変革期を迎えた自動車産業――岡崎市の自動車関連企業2社が挑む共創プログラム始動

●2023年度プログラムインタビュー:岡崎市内の中小製造業がオープンイノベーションで、次なる事業の柱を打ち立てる!「おかざきものづくり OPEN INNOVATION PROGRAM」の魅力

(編集:眞田幸剛、文:鈴木光平、撮影:加藤武俊)

新規事業創出・オープンイノベーションを実践するならAUBA(アウバ)

AUBA

eiicon companyの保有する日本最大級のオープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」では、オープンイノベーション支援のプロフェッショナルが最適なプランをご提案します。

チェックする場合はログインしてください

コメント1件

  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

    • eiicon company
    0いいね
    チェックしました