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【BAK成果発表会レポート#1】大企業×ベンチャーによる17チームが事業化を目指す――BAK成果発表会レポート第1弾「脱炭素・環境・インフラ保全」

【BAK成果発表会レポート#1】大企業×ベンチャーによる17チームが事業化を目指す――BAK成果発表会レポート第1弾「脱炭素・環境・インフラ保全」

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神奈川県は、大企業とベンチャー企業が持つリソースや技術、アイデアを結びつけ、双方の強みを活かした新規事業やサービス、プロダクトの創出を目指す「ビジネスアクセラレーターかながわ(BAK)」を積極的に進めている。

2019年11月のスタートから約4年半で75件の共創プロジェクトを生み出すなど、確実に成果を上げている注目の活動だ。また、BAKが運営するコミュニティ「BAK協議会」の参加企業数は、まもなく1,000社に達する勢いを見せ、さらなる拡大を続けている。

そのBAKが提供するプログラムの一つが、支援金と伴走支援を通じて共創プロジェクトの成長をサポートする「BAK INCUBATION PROGRAM」。約5カ月間、週1回の定例ミーティングを行いながら、ビジネスプランや実証事業の計画策定、プロジェクト進行管理、事業化へのマイルストーン設計などを支援する。このプログラムの2024年度の成果発表会が、2月27日と28日の2日間にわたって開催された。

会場は、京セラ株式会社の研究開発拠点「みなとみらいリサーチセンター」。登壇者や関係者が集まり、発表に耳を傾けるとともに、発表後のネットワーキングで活発に意見交換が行われた。

TOMORUBAは、「KANAGAWA INNOVATION DAYS Meetup Fes 2025」内で開催されたBAKの成果発表会を現地で取材。本記事では、2024年度のプログラムから誕生した17の共創プロジェクトを3回に分けて紹介する。第一弾では、「脱炭素・環境・インフラ保全」をテーマに取り組んだ5つのプロジェクトに焦点を当てる。

482件の応募の中から選ばれた17の共創チームが、プログラムから得た成果を発表

この成果発表会では、482件の応募の中から選ばれた17の共創プロジェクトチームが登壇。各チームは9分間のピッチと、その後の9分間のQ&Aセッションで、着目した課題やプログラム期間中の活動内容、成果を発表した。なお、コメンテーターは、2日間それぞれ新規事業やオープンイノベーションに深い知見を持つ以下の有識者が務めた。

▲伊藤羊一氏(武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長/Musashino Valley 代表/LINEヤフーアカデミア 学長/Voicy パーソナリティ)

▲杉原 美智子氏(フォーアイディールジャパン株式会社 代表取締役社長) ※オンラインで参加

▲青木 志保子氏(Wholeness Lab 代表) ※オンラインで参加

▲上野 哲也氏(神奈川県 産業労働局 産業部 産業振興課 新産業振興グループ グループリーダー)

▲中村 亜由子 氏(株式会社eiicon 代表取締役社長)

【AC Biode × ボッシュ】 混合廃プラ・廃油のケミカルリサイクルで、CO2排出量を大幅削減

■発表タイトル『廃棄プラスチックや有機廃棄物の低温分解と生成成分の有効活用による新たな資源循環モデルの確立』

両社が取り組んだのは、廃棄物分野のCO2排出量削減だ。廃棄物分野におけるCO2排出量は膨大で、その多くが焼却によるもの。すでに様々な対策が講じられているが、AC Biodeは廃棄物のケミカルリサイクルを通じて、CO2削減を図ろうとしている。

同社のケミカルリサイクルの特徴は、独自の触媒と水を用いて200℃という低温環境で廃棄物を分解し、水素やメタンなどを生成できること。ケミカルリサイクルでは貴金属や有機溶媒を使用することが多いが、そういったものを一切使用しないため環境負荷も低い。同社の技術を使えば、難しいとされる混合廃プラ(異素材の混じった廃棄物)の分解も可能だという。

プログラム期間中に実施した実験では、ボッシュの協力のもと事務所から出る容器包装(混合廃プラ)とエンジンオイルの分解に取り組んだ。その結果、メタンの生成が確認された。メタンは発電や熱に利用できる。廃棄物を直接燃やすよりもCO2排出量を減らせるそうだ。

今後は、水素を取り出せる素材での再実験を検討している。ボッシュ社内のベンチャー育成プログラムなどを活用し、新たな資源循環モデルの実現を目指すという。

【エーエスピー × 森永乳業】 ピュアスター水の噴霧で、農作物の出荷前ロスを抑制

■発表タイトル『活用できる農産物を増やす保管技術の革新~カビの抑制により収益改善・CO2排出低減・品質向上~』

農作物のフードロス削減に取り組むエーエスピーと森永乳業は、森永乳業の持つピュアスター水を用いて、出荷前の農作物廃棄量の削減に取り組んだ。農林水産省の野菜出荷量データをもとにASPでリサーチしたデータで試算すると、出荷前の隠れフードロスは約220万tにものぼり、野菜出荷量1102万tの約20%にもなるという。特に保管期間が長いサツマイモは腐敗のリスクが高く、最大40%が廃棄されるケースもあり、損失が発生している。

そこで今回、出荷前のサツマイモにピュアスター水を噴霧し、カビを抑制する実験を行った。ピュアスター水とは、殺菌効果が高く水道水感覚で手軽に使える次亜塩素酸水で、食品添加物であり、有機加工食品へも使用できることが特徴だ。プログラム期間中、ラボで小規模な実験により、サツマイモにおけるカビの発生抑制効果を確認した後、神奈川県が運営する「さがみロボット産業特区プレ実証フィールド」で量産機開発に向けた性能試験を行っている。

現在は、サツマイモのほかレモンでもカビ抑制効果を検証中だ。

ビジネスモデルについては、ピュアスターと噴霧装置の販売による収益化を想定している。ターゲットは農業法人や就労継続支援事業所など。2025年に事業を立ち上げ、2026年には農産加工領域に事業拡張を目指すという。

【EpicAI × 日揮グローバル】 生成AIと3Dプリント技術で、テキストや図面からスペアパーツ作成に成功

■発表タイトル『プラント長寿命化に向けたパーツ3Dモデル生成AI プロジェクト』

EpicAIと日揮グローバルは、プラント設備の老朽化に対応するため、生成AIと3Dプリンターを活用してスペアパーツを簡単に製造する新たな事業の構築に取り組んだ。

プラントでは通常、数年に一度、計画的に設備を停止し、大規模なメンテナンスが行われる。その際、故障したパーツを交換するためにスペアパーツを調達する。従来の調達方法には、大量のパーツを倉庫に保管する方法と、故障後にメーカーや町工場へ発注する方法があるが、コストや納期の面で課題があった。

そこで、EpicAIの生成AI技術と日揮グローバルの3Dプリント技術を活用し、テキストや図面などから3Dモデルを自動生成して、必要なときに必要な分だけ3Dプリンターでスペアパーツを造形する「デジタルインベントリ」の構築を目指して活動を開始した。

プログラム期間中は、シンプルなパーツの3Dモデル生成を中心に検証を行い、実際に歯車や六角ナットなどシンプルな形状のものが生成可能であることが確認できた。

今後は、より複雑な形状への対応を進めるとともに、石油精製プラントや発電所などのメンテナンス領域に導入を進めていく計画。将来的には、スペアパーツなどの既存部品だけではなく、新規部品にも活用を広げていく考えも示した。

【Nobest × サンエー】 太陽光発電をIoTシステムで遠隔監視し、事故・盗難の早期発見へ

■発表タイトル『次世代のための太陽光発電』

Nobestは、主に太陽光設備向けの自動設備管理ソリューションを提供している企業で、サンエーは太陽光発電の導入から設計、施工、アフターケアまでを一貫して手がける企業だ。今回は両社で、太陽光発電を取り巻く様々な問題の中で、特に「事故・盗難」と「大量廃棄」に焦点を当てて取り組んだ。

「事故・盗難」問題に対しては、NobestのIoT技術を活用し、太陽光設備を遠隔から一斉に自動監視するシステムの構築に取り組んだ。また、異常発生時に原因をAIで自動判定して、通知する仕組みの構築を目指した。このシステムにより、原因究明の手間削減や異常時の即時全体共有、ダウンタイムの長期化にともなう損失を防げる。プログラム期間中、2カ所の太陽光発電設備にNobestのIoTシステムを設置。現在はデータを収集しているところだという。

また、太陽光設備の「大量廃棄」問題に対しては、リサイクル・リユースに関する調査を実施。廃棄物処理業者からは「安定的に供給されない」「分析作業に手間がかかる」といった懸念の声が寄せられた。また、リユース業者からも「入ってくる量に対して売り先が少ない」という声があがり、こうした声をもとにアイデアを練っているところだという。今後も引き続き、両社で太陽光発電に関する課題に取り組んでいきたいとした。

【メンテル × 富士工業】 空調効率の向上で、電力使用を抑えて環境負荷を低減

■発表タイトル『空調効率を高めて光熱費削減と快適性向上を両立するサービス開発』

昨今の気候変動により空調使用量が増加し、電力使用に伴う経営負荷や環境負荷が高まっている。特に、富士工業が空調設備を提供するコンビニ業界では、2030年までに46%のCO2削減を目標としており、店舗の省エネ化が重要な課題となっている。そこで、店舗の省エネと快適な空間提供を目指し、両社は共創に取り組んだ。

メンテルは、建築設備に特化したIT企業で、屋内環境(温湿度など)や電力使用量をダッシュボードで可視化するプロダクトを提供している。また、既存設備の運転を最適化し、節電を実現する技術も持っている。今回、メンテルのIT技術と富士工業の改善機器(ファンなど)を組み合わせ、空調機器を最適に制御するサービスの開発を目指した。

プログラム期間中、富士工業の保有施設2部屋で比較実験を実施。「空調24度固定」の基準室と、「空調制御+ファン」の実証室で、温度のムラと電力削減量を比較した。その結果、同じ室温目標で運転した場合でも、実証室の方が温度ムラを50%解消し、電力使用量は10%削減できることが分かった。今後は、基礎技術検証の課題を解決しながら、実際の環境での実証も進めていく予定だという。

* * * *

次回の第2弾記事では、「子ども・食」をテーマにした共創プロジェクトを紹介する。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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  • 後藤悟志

    後藤悟志

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  • 眞田幸剛

    眞田幸剛

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