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テクノロジーを起点とした共創プロジェクトが次々と誕生!相模原市主催のオープンイノベーションプログラム『Sagamihara Innovation Gate』、4つの共創チームが成果を発表!

テクノロジーを起点とした共創プロジェクトが次々と誕生!相模原市主催のオープンイノベーションプログラム『Sagamihara Innovation Gate』、4つの共創チームが成果を発表!

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昨年、市制施行70周年の節目を迎えた神奈川県相模原市。リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)建設や、製造業の集積、JAXA宇宙科学研究所の立地など、未来を切り拓くポテンシャルを持つエリアだ。そんな相模原市が昨年度より開始した『Sagamihara Innovation Gate』は、新規事業開発や課題解決に意欲的な相模原市内企業(ホスト企業)と、全国から募集したパートナー企業とが、オープンイノベーションを実践するプログラムである。

2期目を迎えた今年度は、ホスト企業とパートナー企業のマッチング後、BUSINESS BUILDという2日間のワークショップを経て、約5カ月間のインキュベーション期間で、技術的な実証や仮説検証のヒアリング調査を進めてきた。その成果発表会となるDEMODAYが、3月10日、杜のホールはしもと(神奈川県相模原市)で開催された。

DEMODAYに登壇したのは、ホスト企業とパートナー企業のメンバーで構成されたユニットチーム。満席となった客席を前に、堂々と成果を発表するとともに、プログラム期間中に完成した試作品を披露するチームもあった。TOMORUBAでは、イベントの様子を現地で取材。本記事では、DEMODAYで披露された成果を中心に、イベント全体の様子をダイジェストでお届けする。

【CO-CREATION PITCH】 4チームがテクノロジーを起点とした共創プロジェクトの成果を披露!

ここからは、以下の4チームが披露した共創プロジェクトの成果を紹介していく。

●カヤバ株式会社(ホスト企業) × 株式会社フツパー(パートナー企業)

●日本ゼトック株式会社(ホスト企業) × 株式会社フュージョンワークス(パートナー企業)

●東プレ株式会社(ホスト企業) × 株式会社エイゾス(パートナー企業)

●株式会社デュプロ(ホスト企業) × 株式会社kitafuku(パートナー企業)

●カヤバ株式会社(ホスト企業) × 株式会社フツパー(パートナー企業)

発表タイトル:工場・インフラ設備の故障予測の実現

両社が着目するテーマは、工場の保全部門における省人化だ。特に油圧機器は、他の設備には無い“油”の要素が関わるため、故障・動作異常の要因特定が難しい。そこで、保全担当者の匠の叡智をデジタル化する故障予知技術の実現に取り組んだ。

具体的には、油圧機器を得意分野とするカヤバの「油状態センシング技術」と、フツパーの持つ「振動センシング技術」を組み合わせて、油圧機器の予知保全システムを構築する。インキュベーション期間中は、カヤバの実験用設備において意図的に異常な状態を作り、油状態センサと振動センサが異常を検知するかどうかの実験を行った。その結果、それぞれの状況に応じた異常値を検知したという。また、予定外の作業ミスで発生した配管内の空気混入を、振動センサで捉えることもできたそうだ。

今後、油圧機器の状態とセンサ値の関係を蓄積し、異常検知の精度を高める。将来的には、油圧機器に限らず工場全体の設備を一元管理できる予知保全のプラットフォームを開発し、熟練した保全担当者だけでなく、経験の浅い工場作業員でも簡単に保全管理ができるような未来を目指したいと語った。

●日本ゼトック株式会社(ホスト企業) × 株式会社フュージョンワークス(パートナー企業)

発表タイトル:「身に着けるスキンケア」マーケット創出に向けた挑戦

日本ゼトックは、化粧品や歯磨き粉を製造するOEMメーカーだ。一方、フュージョンワークスは、アパレル製品のOEMメーカーで、更年期向けインナーウェアの販売も行っている。両社が着目したのは、40~50代の働き盛りの女性を悩ませる更年期の問題だ。特に、肌トラブルが多発している実態を受けて、新しいスキンケア習慣を提案するための商品開発に取り組んだ。

インキュベーション期間中、「着る化粧品」のコンセプト開発を進めた。「着る化粧品」とは、化粧品に使われるスキンケア成分を含む繊維を使い、着るだけで肌悩みを解決できる製品のこと。具体的には、ナイトキャップや枕カバー、粉吹き防止タイツなどを考案した。このコンセプトをもとに、展示会への出展や、約4,000人の女性へのWEBアンケートを実施。アンケートでは「購入を検討する」との回答が約6割に達し、「着る化粧品」の手応えを十分に確認できたという。

今後は、このコンセプトをさらに追求するとともに、製品化につなげていきたい考え。また、将来的には介護や医療分野へも進出し、「着る化粧品」を通じて新しいスキンケアの習慣を広げていきたいと展望を述べた。

●東プレ株式会社(ホスト企業) × 株式会社エイゾス(パートナー企業)

発表タイトル:次世代省エネ機器の実現に向けた新たな高性能送風技術の共同開発

東プレは、塑性加工技術を活かした自動車機器やファンなどの空調機器の開発を行う企業だ。一方、エイゾスは、AIを活用したサービスを展開する企業で、主力は『Multi-Sigma』というAI解析プラットフォームだという。今回のプログラムでは、これを使用して設計開発期間の大幅短縮を目指した。

東プレにおける従来のファン設計フローでは、基本設計、流体解析、構造解析、実測と進めていくが、この進め方では手戻りも多く、設計開発に1~2年の時間を要しているという。そこで今回、AIを活用して各工程のデータをつなぎ合わせ、最適なデザインを自動的に導き出すシステムの構築を目指した。

▲エイゾス・河尻氏(写真左)が手にしているのが、3Dプリンターで製造したファン

インキュベーション期間中、まずは基本設計と流体解析の2つの連鎖解析による設計を試した。システム上で実験データをAIに学習させ、それを活用して最適なデザインを探索。導き出された最適なデザインをもとに、3Dプリンターでファンを製造し、その実物を発表時に提示した。将来的には、依頼者がスマホを使って条件を入力すれば、最適な設計が自動生成され、迅速に製造される仕組みの構築を目指していく考えだ。

●株式会社デュプロ(ホスト企業) × 株式会社kitafuku(パートナー企業)

発表タイトル:印刷・パッケージ業界のサステナビリティに向けた共創

デュプロは、オフィス印刷機器やデジタル印刷機の製造・開発に取り組む企業だ。一方、kitafukuは、クラフトビール醸造過程で出るモルト粕を混ぜた再生紙「クラフトビールペーパー」を開発・販売している。今回は、印刷業界の市場縮小や脱プラの流れを受け、デザイン性と付加価値を両立するサステナブルパッケージを開発した。

インキュベーション期間中、紙梱包機の開発に取り組んだほか、デュプロの加飾技術を活用し、クラフトビールペーパーの高付加価値化に取り組んだ。試行錯誤を重ねた結果、立体的なデザイン表現に成功。試作品として名刺、名刺ケース、ノート、ギフトボックスを制作した。

インキュベーション期間中、1箱1,000円のギフトボックスが売れるなど、需要の兆しを確認できた。今後はプレミアムギフト市場をターゲットに海外展開も進め、5月の台湾で開催される展示会「InnoVEX 2025」に出展し、海外顧客の獲得を目指す。技術を磨き上げてきたデュプロと、環境活動を磨き上げてきたkitafukuとで、相模原発のサステナブル事業を育てていきたいとした。

【TALK SESSION】 昨年度のプログラムに参加したホスト企業2社が登壇「イノベーション活動、2年目の軌跡」

4チームによるピッチ後、昨年度のプログラムに参加したホスト企業2社の担当者が登壇し、2年目の活動やオープンイノベーションの可能性について語った。

<登壇者>

・大和製罐株式会社 エネルギーソリューション開発室 室長 有馬理仁 氏

・SWCC株式会社 技術開発本部 新領域開発センター 商品開発グループ 広長隆介 氏

・株式会社eiicon 岩根 隼人 氏(モデレーター)

大和製罐の有馬氏は、昨年度より自社の新規事業である「蓄電池評価試験」を発展させるため、共創パートナーのアプデエナジーとともに、効率的・経済的なマイクログリッドの事業化に取り組んでいる(※詳細記事)。

有馬氏は、1年前のプログラム終了時と現在を比べて、見えてきた世界観が変わったとし、2年目は社内から「事業の解像度を高めたり、いつどこにどう着地させるのかといった議論を求められるようになってきた」と説明。昨年度は構想を広げる時期だったが、今年度は実現に向けて具体化する段階に入り「期待される苦しさのようなものを感じ始めた」と語った。

▲大和製罐株式会社 エネルギーソリューション開発室 室長 有馬理仁 氏

SWCCの広長氏は、昨年度から共創パートナーのパワーウェーブとともに、「ワイヤレス給電技術」を活用した新規事業開発に取り組んでいる。昨年度は医療業界への導入を目指していたが、現在は業界を限定せず、住宅やオフィス、イベント会場など、幅広い場面での活用の可能性を探っていると話す。

また、このプログラムに参加して以降、マーケティング部門と密に連携するようになったことを紹介。以前は、技術開発が先行し、後から市場を探す形だったが、現在は開発段階から連携するようになり「視野が広がった」と振り返った。

▲SWCC株式会社 技術開発本部 新領域開発センター 商品開発グループ 広長隆介 氏

来場者に向けたメッセージを問われた大和製罐の有馬氏は、共創パートナーとの取り組みによって「我々の手が届かない領域、さらにはその先まで届く状況を作り出せた」と述べ、特に事業の多角化に挑戦したい企業に対して『Sagamihara Innovation Gate』の参加を勧めた。SWCCの広長氏も共創パートナーとの相互補完的な関係を築けたと語り、「さまざまな開発課題があると思うが、それらを解消する貴重な機会となる」と伝えて参加を促した。

【KEYNOTE SPEECH】 未来を切り開くためのオープンイノベーション ~イノベーションが生まれるまち “さがみはら”~

続いて、テック企業や大手事業会社で戦略責任者やエバンジェリストなどを務める常盤木氏が登壇し、相模原市でのイノベーション創出の可能性について語った。

国内外で活動する常盤木氏は、相模原の魅力を「天地人が揃った日本有数の地域」と表現。人口が70万人以上と多く、災害に強い地盤を持ち、リニア中央新幹線の中核拠点にも位置付けられるなど、さらなる成長が期待できると指摘した。

ただ、変革を進めるのは「人」でしかないと述べ、「相模原にはマーケット、製造力、人的資本、資金が揃っており、まさに天地人が整った場所。このビッグウェーブに乗り、地域の強みを活かして、日本の存続を支え、日本を輝かせるプレイヤーになってほしい」と熱く呼びかけた。

▲常盤木 龍治 氏(パラレルキャリアエバンジェリスト/岡野バルブ製造株式会社 取締役 DX推進本部長/株式会社EBILAB 取締役ファウンダー CTO CSO)

【講評・閉会の挨拶】 来年はさらにバージョンアップして、この取り組みを育てていく(奈良 副市長)

すべてのコンテンツが終了後、2人のメンター(常盤木龍治氏・村田宗一郎氏)がそれぞれの視点から講評を述べた。

常盤木氏は、今回の発表者たちが、会社指示による“やらされ感”ではなく、「自分の言葉で語っている姿に深く感動した」と発言。これだけの数の新規事業開発者が、同時並行で育っている地域は他に多くないと述べ、「プレイヤーが少ない日本において、皆さんがその先頭集団から脱落せずに進み続けてほしい」と、期待を込めて語った。

村田氏は、イベント開催日が月曜日にもかかわらず多くの人々が会場に足を運び、満席となったことを受けて、「改めて相模原という場所の強さを感じた」と語った。また、スタートアップ、事業会社、行政が交わることで新たなイノベーションが生まれると強調し、この後のネットワーキングが、相模原の未来や自社の方向性について前向きに議論できる場になることを期待していると伝えた。

▲村田 宗一郎 氏(株式会社eiicon 常務執行役員)

続いて奈良相模原副市長が登壇し、『Sagamihara Innovation Gate』と『相模原アクセラレーションプログラム』の合同DEMODAYを総括して閉会の挨拶を行った。奈良副市長は、この活動を来年度も継続することを発表するとともに、「去年よりも今年、今年よりも来年とさらにバージョンアップし、“この顔を見たことがある”“この事業者の名前、去年も聞いた”と思ってもらえるような取り組みにしていきたい」と力強く述べた。

▲奈良 浩之 氏(相模原市 副市長)

最後に、参加者全員が「来年も来るぞ」と声を合わせ、再会を約束。熱量の高いネットワーキングを経て、イベントは幕を閉じた。

取材後記

DEMODAYには会場を埋め尽くすほどの関係者が集まり、急遽増席するほどの盛況ぶりで、まだ2年目のプログラムにもかかわらず、その注目度の高さがうかがえた。また、技術を軸とした共創プロジェクトが多く、企業の研究開発拠点が立地する相模原ならではの強みが、プログラムにも活かされていると感じた。今回のイベント会場のある橋本駅周辺では、リニア中央新幹線の新駅建設により街の発展が加速しており、今後のビジネスチャンスが一層広がることが期待される。このプログラムは2025年度も継続される予定だ。常盤木氏が「天地人が揃った日本有数の地域」と評したこのエリアで、オープンイノベーションに挑戦してみてはどうだろうか。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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  • 石尾勝博

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  • 川村祥人

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