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共創が加速する相模原市に多様なプレイヤーが集結!――『Sagamihara Innovation Gate BUSINESS BUILD』で描かれた4つの共創ビジネスとは

共創が加速する相模原市に多様なプレイヤーが集結!――『Sagamihara Innovation Gate BUSINESS BUILD』で描かれた4つの共創ビジネスとは

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リニア中央新幹線の開業に伴い、首都圏と東海地方を結ぶ「日本中央回廊」の重要拠点へと大きく転換する相模原市。こうしたまちの成長と連動して、イノベーション創出の基盤づくりを推進するため、今年11月には『リニア駅周辺まちづくりイノベーション戦略』を策定した。多様なプレイヤーとの共創を通じ、「イノベーションの生まれるまち」の実現を目指す。

こうしたイノベーション戦略実現の一環で開催されているのが、伴走型オープンイノベーションプログラム『Sagamihara Innovation Gate BUSINESS BUILD』だ。3期目となる2025年度は、相模原市と関連の深い企業4社(アマノ株式会社、カヤバ株式会社、大和製罐株式会社、東急建設株式会社)が自社の技術やサービスを活用して解決につなげる新規事業アイデアを募集(※)。応募企業の中から選ばれたパートナー企業4社が、去る11月19日、相模原市内の会場に集まり、共創ビジネスの骨子づくりに挑んだ。

本記事では、市内企業とパートナー企業が共創ビジネスの構想を描いたワークショップの模様をレポートする。プログラムを通じて誕生した4つの共創チームは、お互いの強みを活かして、どのような共創ビジネスを生み出すのか。新たな事業が生まれるプロセスを追う。

※参考記事:相模原市を舞台にしたオープンイノベーションプログラム、3期目が始動!――市内ホスト企業(大和製罐・アマノ・カヤバ・東急建設)に実現したい未来像を聞く(前編後編

作戦会議から『怒涛のメンタリング』、そして全体共有会へ――共創ビジネスの軸を固める1日

相模原市内の会場には、今年度の『Sagamihara Innovation Gate BUSINESS BUILD』に参加する計8社の担当者が集まった。今回のワークショップ(BUSINESS BUILD)のテーマは、両社の強みを生かし、共創ビジネスとして社会実装を目指せるプランへと磨き上げること。そのプロセスを支えるため、事業開発経験を持つ起業家やVCらがメンターとなり、伴走した。

当日の流れは大きく3つに分かれる。まずはメンタリングに向けた作戦会議で論点を整理する。続くメンタリングタイムでは、以下4名のメンターが各チームのビジネスアイデアに助言や視点を提供し、それをもとに共創ビジネスへとブラッシュアップ。最後に全体共有会と質疑・フィードバックの時間を設け、すぐにでも動き出せる土台を固める。

▲メンターは、新規事業開発やその支援において豊富な経験を持つ4名が務めた。

▲メンタリングタイムに向けて、共創チームは作戦会議を行った。模造紙にアイデアを書き出しながら、互いの考えを少しずつ広げていく。

▲『怒涛のメンタリングタイム』と名付けられた時間では、4名のメンターが各チームを回り、ビジネスアイデアに対して多彩な意見やアドバイスを提供。

▲最後に参加者ら全員の前で、この時点までに固まった共創ビジネスプランを発表。メンターに加え、他の参加企業からも質問が飛び交い、多様な視点が入り混じる全体共有会となった。

――ここからは、新たに生まれた4つの共創チームの発表内容を、順に紹介していく。

【アマノ×スピーシーズ】 『移動するロボットと表現するロボットのコラボによる人と人のつながりを創出』

<ホスト企業>アマノ株式会社

<募集テーマ>“安心・快適”と“見える安全”を実現する次世代ロボットの共同開発

<採択企業>スピーシーズ株式会社

最初に発表したのは、業務用AI清掃ロボットを展開中のアマノ株式会社と、ヒト型コミュニケーションロボットを企画・開発するスピーシーズ株式会社の共創チーム。アマノ・星野氏は、「ロボットで温かい世界を実現する」を最終目標に掲げたという。背景には、レストランの注文や配膳など、多くの場面でロボット活用が進む一方、「そっけなさ」を感じる場面が増えている課題感がある。そこで、「ロボットやデジタルと触れ合いながらも、より温かみを感じられる世界にしたい」と話す。

このビジョンの実現に向け、第一弾として業務用ロボットとコミュニケーションロボットの親和性を確認するため、ショッピングセンターで両社のロボットによるパフォーマンスを検討する。見学者の反応を観察し、次の展開につなげる考えだ。スピーシーズ・春日氏は、その先を見据えた構想にも言及。業務用ロボットに、人と会話できる機能を搭載し、その効果を検証していきたいという。病院や学校、各種施設など多様な場所で実験を重ねることで、次の段階の方向性を明確にしていきたいと語った。

<質疑応答>

発表後、参加者やメンターから質問が寄せられた。参加者からは、ロボット導入によって人の仕事が奪われるのではないかという懸念が示された。これに対し星野氏は、清掃業界では特に人手不足が深刻で、現状は仕事を奪う状況にないと説明。さらに、「人間の同僚のような存在として、清掃員へのフレンドリーさも発揮しながら、人間と共に歩んでいけるロボットを目指したい」とした。春日氏は、孤独を抱える高齢者支援など、人手不足で対応しきれない領域をロボットで補いたいとの考えを示した。

メンターの村田氏は「事業の観点が重要なので、どうビジネスにしていくのか、議論を深めてほしい」とアドバイスした。

▲村田 宗一郎 氏(株式会社eiicon 常務執行役員CHRO)

【東急建設×テックシンカー】 『眠れる環境価値を掘り起こし、差別化と収益化を図る 〜AIで、クレジット創出に必要な評価・算定・申請プロセスを一気通貫でサポート〜』

<ホスト企業>東急建設株式会社

<募集テーマ>環境価値と技術革新で拓く、次世代建材の挑戦

<採択企業>株式会社テックシンカー

続いては、渋谷再開発など東急線沿線を中心にまちづくりを進める東急建設株式会社と、脱炭素化のデジタルソリューションを提供する株式会社テックシンカーの発表だ。このチームは、東急建設が開発する環境配慮型地盤改良材にJ-クレジット(カーボン・クレジット)を付与し、その価値を高めてデベロッパーや自治体へ提案する構想を描く。

まずは、クレジットの創出方法を確立し、クレジット収益による費用削減効果を確認する。加えて、テックシンカーのAIエージェント開発力を活かした業務効率化にも取り組む考えだ。将来的には、地盤改良材だけでなく、コンクリートなど他建材へのクレジット付与にも取り組む方針。

東急建設・香月氏は「クレジットを付与した建材を使う先駆者を目指したい」と述べ、「クレジット付与建材を使う価値を感じられる社会にしていきたい」と展望を語った。テックシンカー・洪氏も、アップサイクルやサーキュラーエコノミーは関心の高い領域だとしたうえで、「同じ仕組みを他業界・他地域にも広げ、環境に優しい素材や廃材を普及させ、社会全体の脱炭素化につなげたい」と述べた。

<質疑応答>

新規性を問われた質疑では、香月氏が「環境配慮型の建材は他社も手がけているが、カーボン・クレジットを付与した例はまだ少ない」と説明。洪氏も「建材に関わるカーボン・クレジットの方法論は、国内ではまだ確立されていない」と述べ、先駆者となれる可能性を示唆した。

メンターの曽田氏は、環境配慮型建材は高コストゆえに選ばれにくい現状を指摘。「環境配慮であることを可視化し、別の価値を示すことが重要」とコメントした。

▲曽田 将弘 氏(株式会社eiicon 地域イノベーション推進部 1グループ マネージャー)

【大和製罐 × はせがわ】 『「いつまでも、一緒に『美味しい』を。」〜同じ食卓でやさしさが満ちる。はせがわからの、新ブランド田ノ実ギフト。~』

<ホスト企業>大和製罐株式会社

<募集テーマ>“子どもも大人も、高齢者も”すべての人にやさしい食卓の実現へ

<採択企業>株式会社はせがわ

次に登壇したのは、飲料・食品容器の製造・販売を手がけ、近年は嚥下に配慮した食品も展開する大和製罐株式会社と、仏壇・仏具のほか相続手続きや高齢者の見守りサポートにも力を入れる株式会社はせがわの共創チームだ。このチームは、大和製罐の食品開発技術とはせがわの高齢者接点を組み合わせ、高齢者と子や孫世代をつなぎ、高齢者本人も家族も「幸せな老後だった」と振り返られるようなゴールを描く。その手段として、大和製罐・大原氏は「高齢者とその下の世代が、一緒に食卓を囲むようなシーンを作りたい」と語る。

まずは、はせがわが展開する終活セミナーにおいて、米寿のお祝いの場などで年齢問わず楽しめる食として、大和製罐の嚥下配慮食を提案したいと話す。また、嚥下配慮食は幼い子どもも安全に食べられることから、祖父母から孫への食育を絡めたギフトとしての展開も考える。差別化のため、地元産や健康に配慮した材料の使用も想定する。

はせがわの影山氏は、仏壇購入者層は「やるべきことに、きっちり取り組みたい」と考える人が多く、季節の食事や体に良い食品を孫に伝えたい高齢者も少なくないと説明。祖父母から孫へのギフトとしても活用する意義があるとの考えを示した。

<質疑応答>

祖父母から孫へのギフトとして嚥下配慮食を展開する際、「誰が誰の喜びをつくるのか」という問いが投げかけられた。これに対し大原氏は、子どもや高齢者が食品を喉に詰まらせて亡くなる事故がある現状を踏まえ、喉の機能に合わせた食事の取り方や、それに配慮した食品があることを伝える食育につなげられる、その結果として、送り主(祖父母)が受け手(孫)に安心しておいしく食べる喜びをつくることができると説明した。

メンターの常盤木氏は、「自分たちの手札を超えて、そもそもそのシーンは本当にあるのか」という市場性に関する議論が活発に行われていたことを高く評価した。

▲常盤木 龍治氏(パラレルキャリアエバンジェリスト/岡野バルブ製造株式会社 取締役 DX推進本部長/株式会社EBILAB 取締役ファウンダー CTO CSO)

【カヤバ × ホーン】 『キャンピングカー × 地域のハブ機能としての事業創造』

<ホスト企業>カヤバ株式会社

<募集テーマ>移動と感動が一体となった、新しいモビリティ体験を切り拓く

<採択企業>株式会社ホーン

最後の発表は、油圧機器の製造・販売を主に手がけ、昨今は高価格帯のキャンピングカー『VILLATOR(ヴィラトール)』も開発・展開するカヤバ株式会社と、ソロ(ひとり時間)に着目した事業を行う株式会社ホーンによるものだ。カヤバ・東口氏は、キャンピングカーという“モノ”に付加価値サービスを加え、「“モノ”を使った、“コト”と“意味”でサービス展開していくための実証を進めていきたい」と話す。

地域プロデュース事業も手がけるホーンとの議論のなかでは、大曲や長岡など集客力のある花火大会、あるいはF1レースなどのイベントにおいて、『VILLATOR』をVIP席として活用する案が挙がったという。また、こうした大規模イベント時には宿泊施設が不足することから、一時的な宿泊需要に対応する用途も検討。

想定する顧客はイベント主催者などで、高価格帯である点を踏まえ、レンタルや地域での共同所有といった提供方法も視野に入れる。さらにホーン・松本氏は、「一人旅だと地域に行っても良い宿がないこともある」とし、長期的にはソロ旅と『VILLATOR』の組み合わせについても描いていきたいと語った。

<質疑応答>

質疑応答では、ファーストステップとして何に取り組むのかという質問が出た。これに対し、イベントとキャンピングカーの空間の組み合わせは無数にあるため、「そのセグメンテーションから始めたい」と回答。想定顧客であるイベント主催者の解像度を高め、市場性の確認から着手したいと応じた。

メンターの岡氏は、「一般庶民でも高級なものに手が届く仕組みに工夫を凝らしてほしい」と述べ、共同所有モデルなどの可能性にも言及した。

▲岡 洋 氏(Spiral Innovation Partners株式会社 General Partner)

【閉会の挨拶】 「オープンイノベーションこそが、イノベーション戦略を実現するための中核」

すべての発表が終了した後、本プログラムの主催者である相模原市 環境経済局 経済部 創業支援・企業誘致推進課の課長 歌田氏が登壇し、閉会の挨拶を行った。

歌田氏は、共創チームのメンバーたちに対して「メンターから受けた矢継ぎ早の質問や意見、アドバイスに触れ、各プロジェクトが明確化されたのではないか」と述べた。また、来年3月に予定されている成果発表会については「どのような成果が生まれるのか、期待している。参加者全員が笑顔でゴールテープを切れることを願っている」と期待を込めて語った。

さらに、発表されたばかりの『リニア駅周辺まちづくりイノベーション戦略』に言及し、歌田氏は「このオープンイノベーション事業こそが、イノベーション戦略を実現するための中核だ」と強調。加えて、このプログラムの参加者が持つ素晴らしい技術やアイデアを社会に広めるため、行政も一丸となって支援していく方針を示した。

▲相模原市 環境経済局 経済部 創業支援・企業誘致推進課 課長 歌田平 氏

――この後、会場を移動して、過去の『Sagamihara Innovation Gate BUSINESS BUILD』参加者も含めた懇親会が開催され、相模原のオープンイノベーション・コミュニティを支える顔ぶれが一堂に会した。会場は熱気に包まれ、参加者同士の交流が弾む中、未来のプロジェクトへの期待がさらに高まるひとときとなった。

取材後記

今回のワークショップ(BUSINESS BUILD)では、参加各社がメンターからの鋭い質問や多彩な意見を受け、まさに「怒涛のメンタリング」が展開された。アイデアは次々と発散しつつも、各共創プランのおおまかな方向性は明確になり、今後の進め方のヒントも見えてきたようだ。参加者の表情からは視点の広がりや新たな可能性への手応えが感じられ、インキュベーションの次の段階への期待が高まる様子だった。来年3月には、この4チームによる成果発表会も予定されている。その具体的な成果がどのように示されるか注目したい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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