
水力発電所導水路の点検を自動化へ ブルーイノベーション、九電ドローンサービス、東日本テクノサーベイの3社がAGVによる実証実験を実施
ブルーイノベーション株式会社、九電ドローンサービス株式会社、株式会社東日本テクノサーベイの3社は、2025年6月、宮城県仙台市にある東北電力・人来田発電所の導水路において、自動走行ロボット(AGV)を活用した内部点検の実証実験を実施した。
本取り組みは、水力発電所の導水路点検における「作業負担の軽減」「安全性向上」「効率化」を目的としたもので、インフラ点検の新たなスタンダードを目指す技術検証の一環として行われた。
人が入る危険な作業をロボットが代替
これまで導水路の点検は、作業員が狭く湿潤なトンネル内に立ち入り、懐中電灯などで目視確認を行う手法が主流だった。しかし、閉鎖空間での作業は落水や酸欠などのリスクを伴い、安全確保と効率化の両立が課題となっていた。
今回の実証では、全長約900メートルの導水路を対象に、AGVの自動走行性能・障害物検知機能・折り返し動作・撮影品質・可搬性などを検証。0.5m/sの走行速度で自己位置補正を行いながら、壁面への接触を回避して安定した走行を実現した。
AGVは防塵・防水性能「IP67」相当を備え、水位約10cmの環境下でも問題なく走行。FPVカメラや高感度撮影カメラによる映像取得も良好で、導水路内の状況を明瞭に把握できたという。また、本体重量は約20kgと軽量で、作業員2名での搬入・搬出が可能な高い可搬性も確認された。
継続する技術改良と社会実装への一歩
この取り組みは、ブルーイノベーションと九電ドローンサービスが2024年に発表した点検用AGV開発プロジェクトの延長線上に位置づけられるもの。これまで九州電力管内の複数発電所で検証を重ねており、運用課題の抽出と改良を積み重ねてきた。今回は東日本地域での実証となり、異なる環境下での有効性を検証することで、他電力会社や他業種への展開を見据えた重要なステップとなった。
ブルーイノベーションの熊田社長は、「地域インフラの現場ニーズに即した技術開発と社会実装を加速するうえで、非常に意義深い実証だった」とコメント。九電ドローンサービスの本田社長も、「他地域での有効性を確認できたことは技術の汎用性を示すものであり、実用化への大きな一歩」と語った。東日本テクノサーベイの石﨑社長は、「3社の連携を通じて技術力向上と課題解消を進めていく」と述べ、今後の連携強化に意欲を示した。
インフラ点検の未来へ――ドローン×ロボットの融合が加速
3社は今後も、現場ニーズを反映した機能開発を進め、実運用に向けた完成度を高める方針だ。ブルーイノベーションの統合制御技術「Blue Earth Platform(BEP)」を活用し、ドローンやロボットを組み合わせた点検ソリューションを進化させることで、インフラメンテナンスの安全性と効率性を両立させる狙いがある。
導水路やトンネルなどの閉鎖空間点検は、老朽化インフラが増加する日本において喫緊の課題だ。今回の実証で得られた成果は、水力発電所のみならず、上下水道・工場・道路トンネルなど、さまざまな現場での活用につながる可能性を秘めている。
人の安全を守りながら社会インフラを支える――ロボット技術による新たな点検のかたちが、いよいよ実用段階へと歩みを進めている。
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(TOMORUBA編集部)