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中国発スマホが躍進。中国でトップを争う「HONOR」、世界ランキング4位「トランシオン」に見るスマホトレンド

中国発スマホが躍進。中国でトップを争う「HONOR」、世界ランキング4位「トランシオン」に見るスマホトレンド

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近年、中国発のスマートフォンブランドが躍進している。中でも中国国内でシェアトップを争う「HONOR(オナー)」と、発展途上国で普及拡大し世界のスマートフォン出荷ランキングで4位にランクインした「伝音控股(トランシオン)」の勢いは目を見張る。

世界のスタートアップが取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第55弾では、中国発のスマホブランド2社にフォーカス。レッドオーシャンの同市場で勝ち筋を見出したビジネス戦略とはーー。

(サムネイル写真:HONORのプレスリリースより)

先端技術とデザイン性で勝負する「HONOR」

HONORは、中国の通信機器最大手ファーウェイから2020年11月に独立したブランドだ。歴史をたどるとファーウェイ内の一ブランドとして2013年に誕生しており、10年以上前からノウハウを積み上げてきた技術力の高いブランドなのだ。

独立後、2021年から本格的に普及を進めてきたHONORは、中国国内で支持を拡大してスマホのトップブランドに仲間入り。中国では「カメラ性能のいいスマホブランド」として認知が広がっているという。

調査会社Canalysの発表によれば、2024年Q1(第1四半期)の中国のスマートフォンマーケットシェアは、1位がファーウェイ、2位がOPPO、そして3位にHONORがランクイン。トップ5は僅差であり、5社がトップの座を競っている。

▲2021年〜2024年までの中国のスマホマーケットシェア(調査会社Canalysのプレスリリースより)

▲2024Q1の中国でのスマホマーケットシェアは上位5社が僅差だった(調査会社Canalysのプレスリリースより)

HONORには「Magic Series」「N Series」「X Series」の3カテゴリーがあり、優れたデザイン性と機能性を併せ持つ。特に「カメラ性能」や「折りたたみデザイン」に国内外で定評がある。

Magic Seriesの最新製品「HONOR Magic6 Pro」(イギリスでの販売価格899.99ポンド:約183,000円、2024年7月時点)は、背面に超高画素の180MP望遠カメラを搭載し、最大100倍の静止画デジタルズーム、10倍のビデオズームに対応。公式ホームページでは、「どれだけ拡大しても細部まで鮮明に記録できる」とうたっている。

スマホを含むカメラ性能の評価指標として世界的に知られるDXOmarkによると、「HONOR Magic6 Pro」のカメラ性能スコアは「158」をマークし、世界ランキング2位にランクイン(2024年7月時点)。同評価では、バッテリーやディスプレイ、オーディオにおいても高いスコアを得ている。

▲2024年2月から欧州などで発売されている「HONOR Magic6 Pro」(HONORの公式ホームページより)

▲カメラ性能の世界ランキングでは2位にランクイン(DXOmarkのホームページより)

さらに、折りたたみデザインの製品にも高い注目が寄せられている。例えば、「HONOR Magic V2」(イギリスでの販売価格1199.99ポンド:約244,000円、2024年7月時点)は、世界最大級の携帯電話関連の展示会であるGSMA(Mobile World Congress)2024で、「アジア最高のスマートフォン賞」を受賞している。

▲世界最大級の展示会で「アジア最高のスマートフォン賞」を受賞した「HONOR Magic V2」(HONORの公式ホームページより)

7月12日に中国で発売された最新製品「HONOR Magic V3」シリーズ(6,999元:約151,000円〜)も見逃せない。折りたたみ時の幅9.2mm、重さ226gと折りたたみシリーズで最薄を実現。AIを活用した業界初の新技術として「ピント調整機能」も搭載し、スクリーンには目の疲労を軽減させる効果があるという。

▲中国で発売された最新製品「HONOR Magic V3」(HONORの公式ホームページより)

▲ピント調整レンズの使用により画像を部分的にズームアウトし、一過性の近視を軽減するという(HONORの公式ホームページより:写真は日本語翻訳機能を活用)

発展途上国で普及、世界ランキング4位の「トランシオン」

中国国内ではなくアフリカなどの新興国市場にフォーカスして、グローバルで出荷台数が急伸しているのが、2013年に中国で創業したトランシオンだ。

グローバルの調査・分析を提供するIDCの発表によれば、2024年Q1のスマートフォンの世界マーケットシェアランキングで、トランシオンは4位にランクイン。2023年Q1で4位だった中国発・OPPOを抜いて順位を上げた。

▲世界のスマホマーケットシェアランキングで、トランシオンが4位に(IDCのプレスリリースより)

同社は、TECNO(テクノ)、Infinix(インフィニックス)、itel(イテル)の3つのスマホブランドを展開し、2023年には世界で1億9,400万台の携帯電話を販売した。

国別のマーケットシェアランキングでは、アフリカ、パキスタン、バングラデシュ、フィリピンで首位を獲得、インドで6位にランクインしている。国内シェアはアフリカやパキスタンで4割、バングラデシュで3割と高い数字を誇る。

▲トランシオンが展開するスマホブランド「Infinix」の新製品。専用のゲーミングディスプレイチップを採用し、スポーツを楽しみたい人に最適(Infinixのプレスリリースより)

では、なぜトランシオンのスマホが新興国市場で人気を得ているのか。調べてみると、「低価格」「販路開拓」「ローカライズ」の3つがポイントになっているようだ。

まず、新興国に向けてローエンドからミドルクラスまでを多く展開し、販売価格は競合他社よりも低価格としている。さらに、各国の販売代理店と密な協力関係を築いてすみずみまで販路を開拓。現地に暮らす人々が使いやすいよう、機能のローカライズにも注力している。

例えば、多様な言語を話すアフリカ地域向けにさまざまな言語で音声操作を可能にしたり、黒人の肌がキレイに撮影できるようカメラ機能を黒人仕様に最適化したり、暑さ対策として汗に強い素材を採用したり。こうした新興国市場に特化したビジネス戦略で、世界のマーケットシェアランキング4位に上り詰めたわけだ。

トランシオンが展開する3ブランドは、デザインと機能性の融合を追求し、70以上の国と地域で広く展開する「TECNO」、若年層向けに特化してトレンドのテクノロジーを取り入れた「Infinix」、より手頃な価格でテクノロジーの民主化を目指す「itel」と、それぞれに異なるコンセプトがある。

▲幅広くグローバルで展開する「TECNO」(TECNOのプレスリリースより)

▲若年層をターゲットにした「Infinix」(Infinixのプレスリリースより)

▲大衆向けに低価格で展開する「itel」(itelのプレスリリースより)

本記事で紹介したHONORとトランシオンは、過去の一部商品を除き日本では発売されておらず、まだ聞き慣れない人が多いだろう。日本進出している中国発のスマホブランドにはOPPOやXiaomiがあり、高性能のカメラや長寿命バッテリーなどの機能性を魅力に感じる人は多いかもしれない。

日本ではAppleが約50%のスマートフォンシェアを占めており、iPhoneを持つ人を見かけることが多い。一方で、世界を見渡すと勢いのある中国ブランドが世界トップのSamsung、Appleに着々と近づいている。引き続き、スマートフォン市場の動きを注視する必要がありそうだ。

編集後記

本記事の執筆前、個人的にはライカとカメラを共同開発しているXiaomiの製品が気になっていたが、執筆を経てよりカメラ性能の良いHONORにも惹かれるようになった。現時点では日本市場への進出予定はないようだが、登場すればHONORが話題をさらう可能性は十分にあるのではないか。

(取材・文:小林香織)  

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