Twitterは15位と低ランク、「SNS世界ランキング2022」に見るソーシャルメディアトレンド
イーロン・マスク氏の買収後、Twitter関連のニュースが世間を騒がせている。大規模な人員削減、認証マーク有料化の一時停止、凍結アカウントの復活など、「一体どうなるのだろう」と不安を抱えるユーザーは多いはずだ。離脱を検討する声も増えている。
とはいえ、世界視点で見ると、買収されるだいぶ以前からTwitter離れが起こっているようだ。世界の統計レポートを提供するDataReportalの「Digital 2022 Global Overview Report」によれば、Twitterは15位と低ランク。
日本では、LINE、YouTube、noteに続いてMAU(月間アクティブ ユーザー数)が4位と人気を維持するTwitterだが、他国では他社のSNSの勢いに圧倒されている。
世界のスタートアップが取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第36弾では、「SNSグローバルランキング2022」をもとに、世界におけるSNSのトレンドを考察する。
サムネイル写真:Photo by Piotr Cichosz on Unsplash
「SNSランキング2022」世界のトップ20は?
DataReportalの「Digital 2022 Global Overview Report」によれば、世界には46億2,000万人のSNSユーザーがおり(2022年1月時点)、これは世界の総人口の58.4%にあたる。2021年には、4億2,400万人もの新規ユーザーがSNSを開始した。
そして、以下が同レポートによる「もっとも使われたSNSの世界ランキング2022」だ。()内の数字は、最新のMAU(月間アクティブ ユーザー数)となる。
▲DataReportalが2022年1月に発表した「世界でもっとも使われているSNS」(Digital 2022 Global Overview Reportより)
1、Facebook(29億)
2、YouTube(25.6億)
3、WhatsApp(20億*)
4、Instagram(14.8億)
5、WeChat(12.6億)
6、Tik Tok(10億)
7、Facebook Messenger(9億8,800万*)
8、Douyin(6億**)
9、QQ(5億7,400万)
10、Weibo(5億7,300万)
10、Kuaishou(5億7,300万)
12、Snapchat(5億5,700万)
13、Telegram(5億5,000万)
14、Pinterest(4億4,400万)
15、Twitter(4億3,600万)
16、Reddit(4億3,000万*)
17、Quora(3億*)
*このSNSは過去12ヵ月間、更新された統計を未公開のため、数値が最新でない、または信頼性が低い可能性がある。
**このSNSは日次のアクティブユーザー数を報告しているため、月次のアクティブユーザー数はそれ以上である可能性がある。
中国のみで使用可能、あるいは中国での使用がメインのSNSも多く、5位「WeChat」、8位「Douyin」、9位「QQ」、10位「Weibo」「Kuaishou」がそれにあたる。
2004年にサービスを開始したFacebookのDAU(デイリーアクティブユーザー数)は、19億3,000万人で、これは世界人口の約36.9%がユーザーであることを意味する。2億を超える企業がビジネス促進ツールとして利用しており、アクティブな広告主は700万を超えるという。
2位のYou Tubeは、日本だけでなく世界的にユーザーが急増。今やユーザーが毎日10 億時間以上の動画を視聴する世界最大の動画プラットフォームとなった。2021年には、YouTubeの全世界の広告収入が 288億4000万ドル(約4兆120億円)という驚異的な数字に成長。Google に次いで、2番目に大きな検索エンジンといわれることも多いそうだ。
▲筆者が北欧に在住していた際、WhatsAppはもっとも現地で普及しているメッセージングアプリだった(Photo by Dimitri Karastelev on Unsplash)
3位のWhatsAppは、180ヵ国以上の人々が利用するメッセージングアプリ。同アプリのアプローチは、非常にLINEと似ている。当初は家族や恋人といった親しい人とのコミュニケーションツールとしての利用が多かったが、近年は企業のPR、販促ツールとしての利用が増えつつある。中小企業向けにはWhatsApp Business、大企業向けにはWhatsApp Business APIを提供している。
4位のInstagramも進化が目まぐるしい。現在では、写真、動画、ストーリー、リール、ライブ動画、長編動画のIGTVと幅広いコンテンツを投稿できる。ビジネスプロフィールを作成すれば、ユーザーが直接商品やサービスを購入できるショップの設定なども可能。2021年のInstagramの推定米国広告収入は、250億5000万ドル(約3兆5,000億円)にのぼった。
欧州でもFacebookがトップ。Z世代にはTik Tokも
続いて、欧州でのSNSの動向を紹介する。SNS向けのプラットフォームを提供する米国企業 Sprout Socialの2022年の統計*によれば、欧州のSNSの動向はアメリカとは大きく異なるという。
*この統計は、イギリスとアイルランドの 1,000 人を超える消費者、500人を超えるソーシャルマーケターを対象に実施した調査となる。その他の欧州のデータは含まれない。
まずは、本統計で示された人気のSNSに言及したい。以下の図は、消費者とマーケターに「次の12ヵ月でもっとも使用が予想されるSNSは?」と質問し、その答えを%で表示している。
▲米国企業 Sprout Socialが自社ホームページで公表した統計より
消費者は、Facebook(67%)、Instagram(54%)WhatsApp(41%)の順、マーケターは、Instagram(64%)、Facebook(57%)、Tik Tok(45%)の順だった。
消費者とマーケターの間でもっとも大きな差が開いたのがWhatsAppで、 Sprout Socialは「マーケターに見過ごされているWhatsAppは、欧州市場で差別化を図れるツールかもしれない」と提案。調査によれば、消費者はブランドとのコミュニケーションツールとしても積極的にWhatsAppを利用しているという。
Tik Tokは、日本同様Z世代にアプローチしやすいSNSと認識されている。Tik Tok上で人気のある欧州ブランドは、ユーモアとポップカルチャーを融合させたコンテンツで支持を得ているという。
アメリカと比較して、欧州のほうが積極的にSNSを利用していることにも触れられている。1日2時間以上SNSに費やすと答えた人が、欧州が37%に対してアメリカでは31%だった。
アメリカのZ世代は、Instagramより「Snapchat」
次に、アメリカのSNSの動向を見てみたい。以下の図が示すのは、ドロップシッピングアプリを提供する企業 Oberloが公式ホームページで公表した統計だ。
▲アメリカでもっとも人気のSNS(2022年6月時点)Oberloが公式ホームページで公表した統計より
Facebook、Instagramがトップ3に入るのは欧州と同様だが、WhatsAppの使用率は、欧州より落ちている。また、欧州では明らかにTik Tok>Twitterだったが、アメリカでは両者がほぼ同じ数字となっている。
その他、アメリカのデータで参考になりそうだったのは、統計サイトのStatistaが示した10代に人気のSNSの移り変わりだ。
▲アメリカの10代に人気のSNSの移り変わり(2012年秋〜2021年秋まで)(Statistaより)
最新時点(2021年秋)で、もっとも人気があるのがSnapchatだ。ただ、2017年秋に47%だったところ、最新で35%まで落ちているのが気がかりだ。2019年頃から浸透してきたTik Tokにシェアを奪われているのは明らかで、わずか3年でSnapchatを追い越すほどの勢いになっている。Instagramもまた、Tik Tokに圧倒され苦戦しているような様子が見られる。
Twitterにいたっては、衰退が止まらない。2013年秋に31%だったのが最新では2%と、10代の間ではまったくメジャーではなくなっている。Facebookも同様だ。
2023年に注目したい4つのSNSは?
最後に、マーケティングビジネスを提供するイギリス企業 The Drumの記事を参照し、まもなく到来する2023年に注目したい4つのSNSを紹介する。
1、Tik Tok
▲ブラウザ版Tik Tokより
急成長中のTik Tokは、まだ初期段階であり、さまざまな可能性を秘めている。Z世代が好むSNSという印象が強いが、2023年以降は年齢層が広がるかもしれない。博報堂の調査では、日本のTik Tokユーザーの平均年齢は34歳で、どんどん年齢層が上昇している。
また、ドラマ、漫画、小説、音楽、スポーツといったコンテンツの支出金額が、その他SNSと比較して、もっとも高いという調査結果も。マーケターにとっては、引き続き注力すべきSNSといえる。
2、BeReal
▲アップルストア内のBeRealより
2019年にフランスで誕生したBeRealは、ユニークなコンセプトで支持を広げる。毎日ランダムな時間に、フロントカメラとバックカメラで一度に2枚の写真を撮るよう通知が届く。通知が届いてから2分間で、その瞬間の行動を何でもいいから写真に収めるというものだ。「アンチ・Instagram」とも呼ばれ、作り込まれた非日常ではなく、いまこの瞬間の率直な写真を共有する点に共感が集まっているとか。
アプリ業界の動向に強みを持つBusiness of Appsによれば、BeRealの月間アクティブユーザー数は7,350万人、毎日2,000万人がアプリにアクセスしている。発売以来6,700万回ダウンロードされ、その大半は2022年の数値だ。2022年7月には、米国のApp Storeランキングで1位になる快挙も達成。米国でもっとも人気があり、イギリス、フランスがそれに続いている。メインユーザーは大学生を中心としたZ世代だという。
BeRealにインスパイアされ、TikTokでも2022年9月に「TikTok Now」という類似機能を追加している。
3、Discord
▲Discordは日本でもテック業界から認知が広がっている印象だ(Photo by ELLA DON on Unsplash)
2015年から提供されているDiscordは、ゲーマーから人気が広まった音声、およびテキストチャットアプリだ。Slackの類似サービスで、テーマごとにチャンネルを作成してコミュニケーションができる。使いやすいインターフェイスで複数のデバイスをリンクできることから、ゲームコミュニティやテック業界で支持を獲得したようだ。
ブロックチェーン上に独自のコミュニティを構築するのも容易で、ブロックチェーン愛好家からも人気。日本でも「Slackより会話がはずみやすい」として、大学生から好まれるというSNS投稿が最近話題になっていた。
4、Shuffles(Pinterest)
▲Shufflesで作成できるコラージュのイメージ(公式ホームページより)
2022年7月、Pinterestは「Shuffles」という新しいアプリをソフトローンチした。現在はiOSのみの招待制で、アメリカ、カナダ、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランドでのみ使用可。
コラージュ作成ツールで、フォトライブラリから写真を選び、画像の切り抜きや回転、アニメーション効果を使って、自在にオリジナルのコラージュを作成できる。コラージュは友達に共有したり、公開グループに投稿したりして楽しむ。
ユーザーの創造性を刺激するようなSNSであり、インフルエンサーマーケティングにも活用しやすい。例えば、旅行会社が旅人インフルエンサーと提携してコラージュを作成すれば、特定の目的地や旅行商品への関心を高めることができる。現在までに50万件近くダウンロードされている。
編集後記
2022年のランキングからは、Facebookが未だアクティブユーザーを多く保持していることがわかった。ただし、Z世代はレガシー的なFacebookやTwitterではなく、より新しい発想のSNSを求めている様子。誕生してまもないBeRealはInstagramを嫌う(あるいは飽きた)若者を引きつけているようだが、特殊なコンセプトであり、企業側はより研究や工夫が求められそうだ。Pinterestは、独創的なクリエイターとのコラボに最適かもしれない。
(取材・文:小林香織)