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フランス発「スマート製造業イベント」が日本初開催。海外企業の最新事例を現地レポート

フランス発「スマート製造業イベント」が日本初開催。海外企業の最新事例を現地レポート

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2024年3月13日〜15日、Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)にて、欧州最大級のスマート製造業向け総合イベント「SMART MANUFACTURING SUMMIT BY GLOBAL INDUSTRIE(スマートマニュファクチュアリングサミットバイグローバルインダストリー、以下:SMS)」が実施された。

世界のスタートアップが取り組むイノベーションの"タネ"を紹介する連載企画【Global Innovation Seeds】第52弾では、日本初開催となった本イベントを取り上げる。日欧を含む40カ国から集まった246社のうち、海外企業の動向に絞って最新のテクノロジーや事例を届けたい。

「インダストリー5.0」の実現を目指す製造業イベント

日本初上陸となるSMSは、毎年フランスで開催されているヨーロッパ最大級の産業展示会「GLOBAL INDUSTRIE (グローバル・インダストリー)」の日本版となる。世界トップクラスの総合イベント運営会社「GL events Venues」が主催し、「Moving towards the future ~未来の移動~」をテーマに、世界40ヵ国から製造業にまつわる企業が集結した。

▲イベント会場の様子(GL eventsのプレスリリースより)

▲イベント初日のオープニングセレモニーに登場したGL events 会長 オリビエ・ジノン氏(写真中央)

同イベントは、2021年に欧州委員会が提唱した「インダストリー5.0(第5次産業革命)」の実現に向けた展示会とされている。インダストリー5.0とは、「持続可能性」「人間中心」「回復力」の3つがキーコンセプトとなる。

持続可能性においては脱炭素や循環型社会の実現、人間中心においてはテクノロジーを駆使しながら人間のニーズを満たし利益最大化を図ること、回復力においては自然災害やパンデミックに見舞われた際に人々の生活や産業を回復させる変化への対応力を指している。

会場では、このインダストリー5.0を牽引する企業、最新テクノロジーを研究開発するスタートアップなどが集まり、自社プロダクトやサービスを披露した。以下、海外企業11社のプロダクトやサービスを抜粋して紹介する。

【フランス】グローバルで水上太陽光発電を展開する先駆者

▲Laketricityの公式ホームページより

フランスで創業したLaketricityは、水上太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業を世界的に展開している。同社の水上太陽光発電は、利用されていない水面に太陽光パネルを設置し、農地への影響がなく、池の景観を崩さないように配慮されているという。

米国や台湾、イタリアなどにも事務所を持ち、2022年にはLaketricity Japanを設立。三重県の田野池や埼玉県の栢間沼、奈良県の疋田池など20箇所近くでプロジェクトを遂行している。

【フランス】タッチ操作が可能なプロジェクター

フランスで創業したadokは、自社開発したタッチ操作が可能なプロジェクターを販売している。同社のプロダクトは、壁などに映した画像をタッチ操作で拡大したり、画面上に文字や図を描いたりできる。フランスの東芝チームとの協業により、3年以上の開発期間を経て開発されてているという。価格は2,990ユーロ(約50万円)となる。

【フランス】ユニクロも導入する倉庫自動化ソリューション

▲EXOTECの倉庫自動化ソリューション「Skypodシステム」のイメージ(提供:EXOTEC)

フランスで創業したユニコーン企業のEXOTECは、倉庫自動化ソリューション「Skypod(スカイポッド)システム」を提供しており、独自設計のロボット・ラック・ピッキングステーションを組み合わせて、倉庫作業の効率化をかなえる。

自動運転技術が搭載されたロボットは広い倉庫を縦横無尽に走り回り、最大12メートルまで積み上げられるラックを上下左右に動かして、ビン(専用コンテナ)をピッキングステーションに運んでくる。システムは世界3カ所のオフィスで24時間体制でモニタリングされており、稼働率は98%以上を保証しているそうだ。

2019年には、ユニクロを展開するファーストリテイリングと戦略的グローバルパートナーシップを締結し、日本に進出。ヨドバシカメラや3COINS(スリーコインズ)などの日用雑貨や多数のアパレルを手がけるパルグループホールディングスなども同社のクライアントだ。

【フランス】製造現場向けのオールインワンソリューション

▲Fabriqが提供するソフトウェアのサンプル(Fabriqの公式ホームページより)

フランスで創業したFabriqは、製造現場向けのオールインワンソリューションとなるソフトウェアを提供する。同製品は、安全性、品質、機械のダウンタイムなど運用上の問題の履歴閲覧とアクションプランを一元管理し、継続的な改善を促進する。また、パフォーマンスを可視化し、ミーティングなどのコミュニケーションを円滑にする。同社のHPによれば、同製品の使用により業務効率が最大30%向上するそうだ。

【スイス】世界28ヵ国でメカトロニクスソリューションを提供

1892年に創業したStäubliは、電気コネクタ、流体コネクタ、ロボット工学、繊維の4つの専門部門を持つメカトロニクス(※)ソリューションプロバイダーだ。世界28ヵ国で事業を展開している。

※メカトロニクスとは、機械工学、電気・電子工学、情報工学の知識を融合させた技術分野を指す

会場では、同社の産業用途向けのロボットが展示されており、柔軟かつスピーディーな動きで来場者を引き付けていた。このロボットは、自動車や金属、半導体、製薬、医療、食品などさまざまな分野での活躍が可能だという。

【シンガポール】完全自動運転のドローン

▲Space Monkeyが販売する自動運転するドローン

シンガポールで創業したSpace Monkeyは、24時間365日自動で稼働するドローンとドローンの充電や一時滞在ができるドッキング・ステーションを含めた一連のソリューションを提供する。同社のドローンはAIを活用したソフトウェアにより、最適なルートを自動運転により移動する。

▲ドローンの充電などが可能なドッキング・ステーション

同社のソリューションを活用することで、危険性が高く点検が困難な場所、検査などのコストがかかる場所などの監視、検査、点検を自動化できる。自動運転のためドローンの操縦方法を学ぶ必要がないのもメリットだ。シンガポールでは23社の電力業界のクライアントを持ち、この市場での全自動検査プロバイダーのリーダー的存在となっているそうだ。

日本ではまだクライアントを持っていないが、担当者は「シンガポールでの実績を武器にスマートシティプロジェクトなどに関わりたい」と話した。

【シンガポール】安全な現場のためのAI主導のビデオ分析ソフトウェア

▲Invigiloが提供するソフトウェアのイメージ

シンガポールで創業したInvigiloは、製造業や建設現場、倉庫などで現場の安全性を高めるためのソリューションを提供する。主要製品の「Invigilo Safekey™」は、AIを活用したビデオ分析ソフトウェアで、事故につながる出来事をリアルタイムで監視できる。

導入にあたっては、現場にカメラを設置し、検出する安全違反を選択。すると、違反があった際にメッセージでアラートを出すほか、ダッシュボードで現在の状態を観察できる。

【シンガポール】ピッキングのためのグリッパー

シンガポールで創業したRoPlusは、ピッキングのためのグリッパー(ロボットアームの先端に取り付ける物体を掴んだり保持したりするためのデバイス)を製造している。商品のピッキングや仕分けを自動化するために役立つ製品で、食品やガラス製品などを扱えるものもある。3Dプリンターを活用したカスタマイズの製品も提供する。

【台湾】さまざまな産業で使えるノーコードAIプラットフォーム

▲Profet AIのAIプラットフォームは、業務効率化やリスク回避に活用できる(Profet AIの公式ホームページより)

台湾で創業したProfet AIは、製造業でのAI活用を容易にするノーコードAIプラットフォームを提供する。12種類の製造業における100以上のAI応用実例を蓄積しており、AIの知識がなくとも、すぐに利用開始できるという。

例えば、「不良予測」「原材料の価格の予測」「電力消費の予測と最適化」「社員の離職可能性予測」などが可能で、業務効率化やリスク回避に役立つとしている。

【米国】自動車の盗難や車上荒らしを防止するデバイス

▲Keep Technologiesが販売する自動車の盗難や車上荒らしを防止するデバイス(Keep Technologiesの公式ホームページより)

米国で創業したKeep Technologiesは、自動車の盗難や車上荒らしを防止するデバイスを販売する。同デバイスを車中に設置すると、誰かが車の中に入ってきた際に光が点滅して、アラームが作動する。また、カメラ機能も備えられており、状況に応じて証拠となる映像を撮影したり、それをもとに警察に通報したりもできる。これまでに21件の実用特許を取得している。同製品は299ドルで販売されているほか、月額10ドルでのサブスクリプションも利用できる。

【米国】水と混ぜると水素を製造できるアルミニウム粉末

米国で創業したH2 Powerは、水と混ぜるだけで純粋な水素を発生させることができるアルミニウム粉末を製造している。事業の目的は、輸送および発電産業分野への水素供給のための世界的なインフラを開発し、関係者の気候変動対策をサポートすることだ。同社は、米陸軍研究所が開発した技術の世界独占ライセンスを取得しているという。

2025年6月に愛知で第2回の開催が決定

▲会場では、ホンダが開発した自動走行しながら広告や案内を映し出すロボットが走っていた

同イベントの主催者・GL events Venuesのプレスリリースによれば、第1回のSMSは10072名が来場して閉幕した。そして、2025年6月に第2回のSMSが同じく愛知で開催されるという。アップデートした第2回が開催されることを期待したい。

編集後記

筆者は初日に取材を実施。海外企業を中心に見ていた印象としては、製造業とはいえソフトウェアのみを販売している会社も多く、特にAIの活用事例が目立っていた。個人的に気になったのは、完全自動運転のドローンを展開するシンガポール発のSpace Monkeyだった。担当者は日本進出にかなりの意欲を見せており、シンガポールでの実績を武器に日本市場でも活躍の場を広げていくかもしれない。

(取材・文:小林香織

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世界のスタートアップが取り組むイノベーションのシーズを紹介する連載企画。