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医療・介護領域の困り事相談×見積りプラットフォームで「生前整理・不要品回収サービス」を提供――新たな市場の創出を狙う共創事例を深掘りする

医療・介護領域の困り事相談×見積りプラットフォームで「生前整理・不要品回収サービス」を提供――新たな市場の創出を狙う共創事例を深掘りする

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株式会社エランと株式会社ミツモアは、オープンイノベーションによって「生前整理/不用品回収サービス」を立ち上げた。本記事では、両社のリソース・アセットを掛け合わせて誕生した新規事業に迫る。

* * * *

医療・介護機関と提携し、患者・ご家族向けのサービスを提供している株式会社エラン。同社は、基幹事業として、入院患者向けの日用品・衣類の日額レンタルサービス「CSセット」を展開しており、月間の利用者数は42万人と、多くの患者とそのご家族に価値提供を行っている。さらに相談サービス「キクミミ(現サービス名:さぽくる)」をスタートさせるなど、新たな事業開発にも取り組んでいる。

株式会社ミツモアは日本唯一の自動相見積りプラットフォーム「ミツモア」を運営するスタートアップ。600種類以上のサービスを通じて、人々のくらしに関わるさまざまな課題解決を目指している。

この両社はオープンイノベーションによる新規事業開発に積極的で、「AUBA」を通じて出会いを果たした。その後、互いの思いが合致してスピーディーに共創事業を推進。2024年に入ってから、新たな生前整理/不要品回収サービスとそのマーケット創りに着手している。

両社の共創は何が決め手となって始まり、どのように進められているのだろうか。そして、今後のビジョンとは?――今回TOMORUBAでは、エラン×ミツモアによる共創事例を深掘りすべく、新規事業やオープンイノベーションを担当するエラン・小沢順二氏と、ミツモア・鷲尾健登氏、大熊大我氏の3名にインタビューを実施した。

【取材対象者】

・株式会社エラン 事業開発部 事業開発課 小沢順二 氏

※同社PRページ https://auba.eiicon.net/projects/22616 

・株式会社ミツモア CEO室 鷲尾健登 氏

・株式会社ミツモア CEO室 大熊大我 氏

※同社PRページ https://auba.eiicon.net/projects/37195

病院・介護施設の利用者向けサービスと見積りプラットフォームが出会いを果たす

――共創事例のお話に入る前段として、両社の事業内容をご紹介いただきたいと思います。まずはエランさんからお聞かせいただけますか?

エラン・小沢氏 : 当社は長野県松本市に本社を構え、来年でちょうど創業30年の節目を迎えます。2014年に東証プライムに上場し、社員数は現在約700人です。

創業当初は布団のリフォームを手がけていましたが、2004年から病院や介護施設の利用者様にタオルや着替えなどをレンタルする「CS(ケアサポート)セット」事業をスタートし、基幹事業として成長させてきました。

おかげさまで、事業は順調に成長し、全国2000を超える病院・介護施設と提携して、月間で約42万人に利用していただいています。「CSセット」は看護師や介護職員の方から患者様や入居様、あるいはそのご家族の方に手渡しされるため、とても信頼性が高くホスピタリティもあるサービスとして好評を博しています。

▲株式会社エラン 事業開発部 事業開発課 小沢順二 氏

――エランさんでは「キクミミ」というサービスにも取り組んでいるとお聞きしました。

エラン・小沢氏 : はい。当社ではさらなる成長、質の高いサービス提供を目指し「キクミミ」という無料相談サービスを開始しておりました。「CSセット」は利用者様と直接契約を結びます。このため、当社では「CSセット」を通じ、入院・入居時に限らずさまざまな困り事を聞く機会があるのです。実際、退院後や介護施設の入居前にはさまざまな困りごとに直面するものですから、そうした時に頼れる相談先になることを目指しました。

具体的な相談事として挙げられるのは、入院中の家の管理や相続などです。場合によっては、弁護士や司法書士と提携しながら利用者様の困りごとの解決を図ります。この「キクミミ」が今回、ミツモアさんと「生前整理・不要品回収サービス」の共創を進めるきっかけになっており、4月よりサービス名称を「さぽくる」に変更しておりますが継続的にアライアンスを組ませていただいております。

▲エランが運営する無料相談窓口「キクミミ(現サービス名:さぽくる)」。HPでは動画でサービスが紹介されている。(画像出典:「さぽくる」HPより) 

――続いてミツモアさんについても、事業のご紹介いただければと思います。

ミツモア・鷲尾氏 : 当社は2017年に設立したスタートアップです。主な事業は社名にもある「ミツモア」で、ハウスクリーニングや引っ越しなど600種類以上のサービスでプロ・事業者を発見できる日本で唯一の自動相見積りプラットフォームです。特徴は独自のアルゴリズムにより、自動的に地域のプロから相見積りが届く仕組みになっています。

▲オンライン見積り比較サービス「ミツモア」(画像出典:ミツモアHPより) 

また、並行して「プロワン」というサービスも行っています。これはミツモアのサービス経験から生まれたもので、主として現場業務の生産性向上のためのSaaSと捉えていただければと思います。

▲株式会社ミツモア CEO室 鷲尾健登 氏

――2023年12月に「プロモア」という事業も立ち上げられたと伺いました。

ミツモア・鷲尾氏 : そうですね。新規事業として「プロモア」を開始しました。ミツモアで活躍している日本全国のプロの中で、法人取引に対応できるプロとタッグを組んでサービスを提供しています。「プロモア」がエランさまと共創するきっかけになったサービスで、そもそもオープンイノベーションを前提に拡張していこうという事業設計になっています。その意味で、「キクミミ(現さぽくる)」との相性はとても良いと感じており、共創でスタートさせた「生前整理・不要品回収サービス」も順調に拡大していけるのではないかと考えています。

現状を打破するために、オープンイノベーションに注目

――エランさんはなぜオープンイノベーションに取り組まれたのでしょうか。 オープンイノベーションプラットフォーム「AUBA」を利用することになった理由をぜひ教えてください。

エラン・小沢氏 : 新規事業を開発するには常にインプットが必要で、世の中にアンテナを張っていないといけません。正直、個人だと限界があります。社内のリソースを活用してみても、偏りが出てきてしまいます。

現状をどのように打破しようかと思案していた時に、見つけたのがオープンイノベーションであり「AUBA」です。オープンイノベーションに取り組むことで自社にはない視点をもらえますし、「AUBA」を通じてこれまで縁のなかった業種・業界の方々とつながりを持つことができます。

それも、登録している方々は新規事業や共創を目的としており、共創先を見つけてさらに共創を志向しているかどうか問い合わせをするという工程がカットできます。世の中のこういう課題を解決したいと、最初から互いの思いや熱意をぶつけ合うことができる。とても良いプラットフォームでぜひ活用しようとなりました。

――ミツモアさんはいかがでしょうか。

ミツモア・鷲尾氏 : 先ほども言及しましたが、「プロモア」という事業はオープンイノベーションを前提としているところがありますので、共創相手を探す必要がありました。企業間マッチングのイベントなどにも参加したことはあったのですが、互いに何を目指しているか不明な部分もあり、マッチングが実現する確率は高いとは言えません。

その点、「AUBA」ですと、登録した時点で共創の方向性がある程度、明確になっています。プロフィール欄で提供できるリソースが一覧化されているなど、使い勝手はとても良かったです。当社としてもコンタクトする時に、事前準備がしやすいメリットもありました。

ミツモア・大熊氏 : 実現したいことやアセットが可視化されているのが「AUBA」の良いところで、スピーディーに共創を推進できると感じています。

▲株式会社ミツモア CEO室 大熊大我 氏

両社で、新たなサービス・市場の創造に着手

――エランさんとミツモアさんによる共創プロジェクトはどのように進捗していったのでしょうか。

ミツモア・鷲尾氏 : 昨年の10月に、当社のほうから「AUBA」を通じてエランさまにコンタクトを取りました。エランさまは「CSセット」や「キクミミ(現さぽくる)」といった医療・介護に関わるサービスを展開しており、ネットワークやノウハウも十分にお持ちです。一方、当社はこれまで医療・介護領域には進出できていなかったため、エランさまはまさに理想とする共創パートナーだと考えました。

ミツモア・大熊氏 : 当社はIT系のスタートアップで、ITに慣れていない方にサービスを届けるのが難しいという課題がありました。エランさまと共創することで、そうした課題の解決も目指せることも、コンタクトを取った理由といえます。

――小沢さんはミツモアさんからアプローチを受け、どのような印象をお持ちになったでしょうか。

エラン・小沢氏 : スタートアップならではのエネルギーを感じたのが、最初の印象です。サービス内容を拝見し、これから実現していきたいことをお聞きすると、当社の方向性とも合致します。お互いに強みと課題を共有しながら、前に進めていけると考えました。

また、当社は医療・介護領域の事業を展開しているので、利用者様はご高齢の方が多い。安心してわかりやすいサービスを使ってほしいという思いを強く持っていました。ミツモアさんはユーザーファーストで質の高いサービスを提供しており、信頼も置けました。

――そこで今回、介護施設に入居する前の方を対象とした「新たな生前整理/不要品回収サービス」の共創に取り組んでいらっしゃいます。「キクミミ(現さぽくる)」で得た生前整理/不要品回収のニーズに、「プロモア」で応えていくというスキームで連携をされていく形ですが、この共創の合意形成が取れたのはいつごろでしょうか?

エラン・小沢氏 : 昨年10月にコンタクトを取り始めてスピーディーに話が進み、2024年に入ってすぐ合意形成が取れました。

――共創はスタートしたばかりですが、どのような展開を見据えていますか。

エラン・小沢氏 : 生前整理・不要品回収サービスというと、家を処分するなど簡単には解決できない根深い問題も絡んでくると想定されますが、その他の困り事も含めて、ミツモアさんと当社ですべてを解決できるようにするのが理想です。利便性が高く、奥行きを感じられるサービスに育てることを目指しています。現状はまだPoCの段階ですが、1年を通じて運用することで、新たな課題やニーズも見えてくると考えられます。

ミツモア・大熊氏 : 既に何件か成約に至っていますので、出だしとしては順調です。とはいえ、まだまだユーザーのニーズや課題を把握しきれてはいません。小沢さまもおっしゃっているように1年運用することで見えてきたニーズや課題に合わせて、サービスを拡張していきます。

――両社でまさに、新たなサービス・市場の創造に着手されているわけですが、すでに成約も出てきているんですね。事業化/社会実装に向けて順調な滑り出しのように思いますが、事業の成長に向けて課題点はありますか。

ミツモア・鷲尾氏 : 新サービスはまだ十分には認知されていないので、どう広げていくかが課題になると思います。うまくマーケティング施策を打ち、多くの方にサービスを届けながら、困り事の解決を図っていければと考えています。

アジャイル型で共創事業を推進し、ユーザーの声に応える

――とてもスムーズに共創を進められているような印象ですが、その理由について教えてください。

ミツモア・鷲尾氏 : 小沢さまを含め、会社全体が共創を前向きに進めようという意欲とマインドであふれていることだと捉えています。スタートアップ側としては、スピード感を持って物事を進めるのはある意味で当たり前なのですが、一定以上の規模を持つ企業となるとどうしても動きは遅くなるものです。それは仕方のないところもあるのですが、エランさまには本当にスピーディーに話を進めてもらいました。

ミツモア・大熊氏 : 事前の準備などで最初の話し合いが行われるのが半年先ということも珍しくありません。しかし、エランさまは異なっており、共創に大きな手応えを感じています。

エラン・小沢氏 : サービスを提供するに当たり、ウォーターフォール型で最初から完璧を求めても、少し進めてみて結局、作り直さなければいけないという話をよく聞きます。それなら、アジャイルに進めようと考えました。生前整理/不要品回収に関する課題は大きく、一刻も早くサービスを提供してほしいというお客様は多くいますので、その要望に応えたいという思いもありました。

――最後に、今回の共創を通じ、オープンイノベーションを進めるに当たって重要だと感じたことを、ぜひ一言いただければと思います。

ミツモア・鷲尾氏 : 担当者との相性が一番大きいのではないでしょうか。会社としてオープンイノベーションを推進していこうと考えていても、担当者に熱意がなかったら、そこで止まります。オープンイノベーションが進まないとしたら、そうしたところにも原因が潜んでいるのではないでしょうか。

ミツモア・大熊氏 : スピード感は大事です。担当者が「この課題を一刻も早く解決しないとまずい」と感じていれば、スピーディに共創が進められるのではないでしょうか。上から言われたから仕方なく、みたいな感じでは何も生まれません。オープンイノベーションは会社間の取引ですが、動かしているのは人と人です。熱意を持った担当者とつながれればとても嬉しいです。

取材後記

エランとミツモアは身の回りサービスを提供するという観点では、同じ方向を向いている。一方で、顧客層も顧客へのアプローチ方法は大きく異なると言えるだろう。エランは病院や介護施設を対象に事業展開していったのに対し、ミツモアはテクノロジーを駆使してWeb上で顧客を広げているからだ。そうした2社が出会い、新たなサービス・市場創出の実現を目指せるのが、オープンイノベーションに取り組むメリットのひとつだ。

高齢化が進む日本において、両社による「生前整理/不要品回収サービス」のニーズはますます高くなるだろう。今後、どのように事業がスケールし、社会課題を解決していくのか、引き続き注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士)

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オープンイノベーション共創事例

AUBAを活用し、事業共創へ至っている企業へインタビュー。オープンイノベーションで重要なポイントなどをヒアリングいたしました。