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「ギフティング」「ポイントプラットフォーム」をテーマにしたプランを披露! ――2期目を迎える東北電力グループの共創プログラムのDEMO DAYに密着

「ギフティング」「ポイントプラットフォーム」をテーマにしたプランを披露! ――2期目を迎える東北電力グループの共創プログラムのDEMO DAYに密着

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東北電力グループは70年にわたって東北6県と新潟県に電力を安定供給し、地域から確かな信頼を獲得している。一方で、電力業界は、小売全面自由化による競争激化、ウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の急激な高騰、カーボンニュートラルの推進に直面。これに加え、同グループの事業基盤、東北6県・新潟県では、人口減少・少子高齢化が他地域と比較して加速的に進行している状況だ。現状のままでは安定的な事業の成長は困難と考えられ、変革へのチャレンジが迫られている。多様化する社会の中で、地域とともに持続的に成長し続けるためには新たな収益源となるビジネスも生み出ねばならない。

これを受け同グループでは、基盤の電力供給事業と両輪で、社会課題解決を基軸とした「スマート社会」の実現に向けたビジネスモデルを構築すべく、昨年度に引き続き共創プログラム「TOHOKU EPCO OPEN INNOVATION PROGRAM 2022」を実施した。同グループ初の開催となった昨年度は3社を採択し、サービス提供・業務提携を進めるなど一定の成果を上げている。今年度のプログラムでは、以下3つのテーマで5月27日から7月18日までの日程で募集した。

【募集テーマ①】快適で安心な暮らしに役立つ生活サービスの提供

【募集テーマ②】企業向け環境負荷軽減につながるサービスの提供

【募集テーマ③】再エネ発電の拡大を支援するプラットフォーム事業の実現

これら3つのテーマに対して120件を超える応募があり、書類選考・面談を経て、テーマ①で2社、テーマ③で1社のパートナーを選定し、インキュベーションを進めてきた。(なお、テーマ②についても多数の応募があったが、東北電力の事業の方向性とマッチせず、今回は選定なしとなっている)

このうち、テーマ①「快適で安心な暮らしに役立つ生活サービスの提供」では、同グループにおけるスマート社会実現事業を牽引すべく昨年4月に設立された東北電力フロンティアが主担当となり、書類審査を通過したエンゲート株式会社および株式会社ADDIXと、8月下旬から共創アイデアをブラッシュアップして具体化への検討を進めた。

去る11月10日に東北電力本店ビルにて、DEMO DAY(発表・アドバイス会)を実施し、両社のこれまでの検討成果として共創プランを発表。東北電力フロンティア及び東北電力の経営層を中心とした出席者(アドバイザー)及び、プログラムの支援を手がけるeiicon company 代表・中村が共創の前進に向けた意⾒・助⾔を⾏った。


▲東北電力フロンティア 岡信社長<写真右>を中心に、同社の新田副社⻑・武山本部⻑に加え、東北電力 小山常務・和田部門⻑・菅坂部⻑も参加し、発表内容に対してアドバイスした。

――DEMO DAYでは、一体どのようなプランが披露され、事業化を前進させるためにどのようなアドバイスがなされたのだろうか。本記事ではその模様をレポートしていく。なお、記事の後半では、昨年度に続き共創プログラムにて新規サービス開発を果敢に牽引している東北電力フロンティア 取締役社長 岡信 愼一氏にDEMO DAY後の所感などを伺った。

【エンゲート×東北電力フロンティア】 ギフティングを活用し、ユーザーと東北・新潟の新たなコミュニケーションを創出


エンゲートはスポーツ特化型SNSギフティングを世界で初めて実現した。ギフティングを通じて、選手やチームは「新たな収益源」を確保でき、ファンは直接的なつながりを持つことができる。既にプロ野球、Jリーグ、Bリーグといったプロスポーツから、大学のスポーツチームまで幅広く利用されている。今回の共創ではこうした実績を活用。掲げたビジョンは、「地域の持続的な繁栄のために、『郷土愛で東北・新潟を盛り上げる!』プラットフォームの構築」だ。

ギフティングに着目した背景には「推し活」の流行がある。かつてはネガティブに捉えられた「オタク文化」も2020年ごろに「推し活」と称されるようになり、イメージは大きく変わった。2030年ごろには「応援文化」が幅広い世代に浸透し、3人に1人が「オタク」になるとも言われている。ギフティング市場は過去5年間で5倍に成長し、さらに10 倍の潜在市場規模があるとの推計もある。加えて、「芸能・スポーツ以外の領域はブルーオーシャン」であり、魅力の大きいことが強調された。


一方、東北・新潟には、豊かな自然環境や、地域それぞれで特色のある食文化、お祭り、伝統工芸、アートなど、さまざまな魅力がある。ギフティングの仕組みを活用しながら、このような魅力への「応援文化」を創るプラットフォームの構築を提案した。東北・新潟を応援する人、応援される人、双方の気持ちがつながり、新たな時代の交流人口拡大を目指したいと力説した。

ビジネスモデルとしては「応援するユーザーと応援されるコンテンツをつなぐことで収益が生まれるエコシステムの構築」「東北・新潟に関心がある特定ユーザーとの顧客接点を活用した企業向けの広告提案」が提示された。東北電力グループの顧客基盤や地域との繋がりを活かしながら、エンゲートがプラットフォームの構築、運用を進める。ギフティングの対価としては、NFTを活用したコンテンツや他にはない「体験」の提供を思案している。展開のロードマップとしてはまずは「ギフティングの認知拡大」と「ニーズ調査」を進めつつ、東北・新潟の応援プラットフォームの確立を目指す。


「地域の持続的な繁栄のために共創し、郷土愛で東北・新潟を盛り上げるプラットフォームを創る」と今後の展開を見据え、意気込んだ。

<アドバイザーからのコメント>

「今風の仕組みで拡張性の可能性がある」「どのようなユーザーが地域のファンとなるのか、興味深い」「地域をキーワードにギフティングを行うのは新しい試みで、今後の展開が注目だ」などの声が聞かれた。「想像だにしない分野にファンが付くことも多いと聞く。東北電力の強みを活かして東北の地域団体などとも連携しながら、ぜひ地域を盛り上げる応援コンテンツを見つけていってほしい」などの期待も寄せられた。


【ADDIX×東北電力フロンティア】 「ポイ活」「おトク」をテーマにWIN-WIN-WINの関係を構築


ADDIXは顧客体験(CX/UX)を基軸にテクノロジーとデータを活かしてサービス・事業構想の実⾏からグロース支援まで⼀気通貫で提供。DX実⾏支援などでも多様なソリューションを手がけており、提案⼒、運営・遂⾏能⼒に高い評価を獲得している。

今回、これまで実績をもとに共創を提案し、掲げたビジョンは「お客さま・地域企業・東北電⼒グループが“WIN-WIN-WIN”になれる仕組みでもっとトキメキのある東北・新潟のくらしを」だ。「ポイ活」「おトク」をテーマにしたサービスプラットフォームの構築・運用を目指しており、スマート社会実現事業の顧客接点の基盤構築に寄与したいとの考えだ。


東北電力グループでは、「よりそうeポイント」「フロンティアeポイント」という自社ポイントを顧客に提供している。その自社ポイントをベースに、このサービスプラットフォームでは、例えば、「ポイントの貯蓄」「東北・新潟産品のプレゼント」「ふるさと納税との連携」などのアイデアを視野に入れている。東北電力グループの顧客にとって、電気料金以外でもポイントが貯まりやすくなる。また、地域企業にとっては普段接点のない層にもタッチポイントが増えるなどの効果が期待できる。将来的には「再エネ・グリーンコンシューマのコミュニティ形成」や「⾦融関連ビジネスへの拡張」も視野に入れている。

今後、顧客のニーズを把握しながらサービス提供に向けた検討を進めていく。まずは顧客接点を増やすために「アンケート」や「プレゼント」、「ネットショッピング」などで、ポイント活用いただけるサービスを提供する。その上で、最終的には、会員拡大と収益化を目的に「体験・イベント」や「ふるさと納税」等のコンテンツを拡充し、日常的に顧客がアクティブに利用いただくことを目指す。


ADDIX×東北電力フロンティアチームは「東北・新潟のお客さま、地域の企業、東北電力グループが抱える課題を解決しながら、三方よしを実現し、エリアを盛り上げていきたい」と意気込みを見せた。

<アドバイザーからのコメント>

「東北電力グループの顧客基盤を活かしたビジネスモデルと考えられる」「電力を契約いただいているお客さまにとって、おトクになる話」「初期のプラットフォームを作り込むよりは、リーンスタートアップ型を取り入れたほうが良いのではないか」との意見が出された。一方で、「お客さまに多くご利用いただけるよう、集客の新しい鉱脈を掘り当ててほしい」とのエールも送られた。


【東北電力フロンティア 岡信氏インタビュー】 「昨年度のプログラムよりも応募数が多く、スピーディーに進行している」

DEMO DAY (発表・アドバイス会)終了後、共創プログラムで新サービス開発に果敢に挑戦する東北電力フロンティア 取締役社長 岡信 愼一氏にインタビューを実施。昨年度の共創プログラムの成果、今年度のDEMO DAYの所感、そして今後のオープンイノベーションに至るまで話を伺った。

――貴社は昨年度、今年度と共創プログラムを開催しています。継続開催とした理由を教えてください。

岡信氏 : 昨年度は東北電力株式会社の創立70周年の記念として「TOHOKU EPCO BUSINESS BULID」に取り組みました。オープンイノベーションの試みを大々的に行うのは東北電力グループで初のことです。

私たち東北電力フロンティアは昨年に設立されたばかりでしたが、「でんきにもっと、トキメキを。」というスローガンのもと、新サービス・新規事業の創出に大きな期待を寄せられています。昨年、とても強い思いを持ち開催したところ、採択した企業とともに新たなビジネスを生み出すことができました。非常に良い実績を上げることができたので、今年度も続けて開催することにしたものです。また、熱量のあるスタートアップの方たちとともにビジネスプランを考えることで、参加した社員に著しい成長が見られました。社員の成長を促す場としても有効と捉えています。


▲東北電力フロンティア株式会社 取締役社長 岡信 愼一氏

――昨年度は株式会社ワンデイワーク、Mysurance株式会社、株式会社ウィメンズ漢方の3社を採択。その中で、東北電力フロンティアが共創を進めた、ワンデイワークさん、Mysuranceさんとは既に新たなサービスを提供されています。

岡信氏 : ワンデイワークさんとは、今年7月に単日・短時間雇用マッチングサービス「東北電力フロンティアのスマートDAYWORK!」の提供を開始しました。東北・新潟は全国に先駆けて少子高齢化、人口減少が進む地域という側面があり、働く人材の確保は社会課題になっています。「東北電力フロンティアのスマートDAYWORK!」は、解決策の一つの手段として新たな働き方を提案するサービスです。興味・関心を持つ企業も増えています。

Mysuranceさんとは、Web完結型保険商品「東北電力フロンティア くらしのシンプル保険」を昨年11月にリリースしました。また、今年5月には「自転車プラン」を追加し、11月には賃貸住宅向け保険をリニューアルしています。地域のお客さまのニーズに合っており、かつ東北電力グループへの信頼もあり、加入件数の伸びは順調です。いずれも事業規模としてはまだまだなところもありますが、お客さまからの高い評価と感謝の声を多数いただいており、手応えを感じています。


▲2022年7月に提供を開始した「東北電力フロンティアのスマートDAYWORK!」(画像出典:プレスリリース

――昨年度と今年度で、共創プログラムの変更点などはあるでしょうか。

岡信氏 : テーマは昨年度とほぼ同じです。当社のサービス開発の重点領域に沿った募集を行っています。一方で、昨年度は当社が設立直後ということもあり、既にプロダクトが完成している企業との共創を目指しましたが、今年度は当社と採択企業の実績を活かしながら、新たな市場や領域を創るという点を意識して検討を進めています。結果として、昨年度と比べ2倍を超える応募をいただきました。非常に嬉しく思っており、応募いただいた皆様には、この場を借りて厚く感謝申し上げます。

――昨年度の共創プログラムと比べて、事業化に向けたビジネスアイデアの精度や進捗、スピードに違いはあるでしょうか。

岡信氏 : 今年度は7~8月に書類審査を行い、約3カ月弱という非常に短い期間で、DEMO DAY (発表・アドバイス会)を実施しました。昨年度に比べると、スピーディーに進行しており、参加している当社社員の経験値が高まっている結果だと感じています。

両チームとも可能性のあるビジネスプラン、実現を全社的に支援する

――DEMO DAYの所感をお聞かせください。まずエンゲートさんとの共創についてはいかがでしたか。

岡信氏 : 東北・新潟を盛り上げるギフティングプラットフォームはチャレンジングで面白い内容と受け止めています。東北・新潟を盛り上げる視点は「東北発の新たな時代のスマート社会の実現」に加え、東北電力創立以来の基本的な考え「東北の繁栄なくして当社の発展なし」にも合致します。

また、海外のスポーツ選手の中には、受けたギフトで寄付を行っている例もあると聞き、社会的価値にもつながると感じました。ギフティングは成長市場であり、応援者と被応援者を持続的かつ長期的に結び付け、良質な関係を育む受け皿として大きな可能性があるのではないでしょうか。一方で、ビジネスモデルとしては、ハードルが高い面はあるため、今後のPoCで検討を深めてほしいと思っています。


――ADDIXさんとの共創についてはいかがでしたか。

岡信氏 : 「三方よし」を実現するプラットフォームは当社の課題感にも合致した意義のある内容と受け止めています。新しいビジネスの共創というよりは、まずは東北電力グループに対するお客さまのロイヤルティを高める施策として捉えるのが、足下では適切かもしれません。

当社は「お客さまとの関係性づくり」や「サービスの売り方」について、改良の余地があるとの課題意識を持っています。ADDIXさんの知見をお借りしながら、お客さまと当社の関係性を育む「場」をWeb上で創っていけるのではないでしょうか。また、データ蓄積や活用の面でも将来的な可能性を感じています。

一方、こうしたプラットフォームは毎日のように継続して利用していただくことが非常に重要です。コンテンツを更新して充実させていくことも欠かせません。PoCで検討を深め、当社の基盤に資する取り組みにしていただければと思っています。

――共創の実現に向けてどのような後押しをしていきたいと考えていますか。

岡信氏 : 両チームとも可能性のある共創内容です。当社としては、意思決定のスピードを上げるとともに、チームメンバーにはプロジェクトに十分な時間をかけられる体制を築いています。今年8月には、社員の声を受けて社内会議運営ルールを見直し、効率的に意思決定、業務推進できるよう整備しました。

――それでは最後に、オープンイノベーションへの思い、今後の戦略やビジョンについてお聞かせください。

岡信氏 : 外部の方の知見や経験を借りて新たなサービスや事業を創り出すのは、非常に重要で有効だと考えています。特にエネルギー業界は、従来の延長線上ではさらなる成長は困難になると予想されます。先の見えない時代となり、従来以上にお客さまに耳を傾け続けるとともに、外部の知見も取り入れながら、相乗効果で良い化学反応を生み出していくことが欠かせません。

昨年度の共創プログラムは良い成果を上げることができました。一方で、たとえ短期的には成果が出なかったとしても、長期的な視野を持ち継続的に取り組んでいかねばならないでしょう。歩みを止めることなく、今後も意欲的に取り組んでいきます。


編集後記

東北電力フロンティアは昨年度の共創プログラムで2社とビジネスプランを検討し、新サービスとして世に送り出している。新サービスはお客さまからの反応があり、手応えを感じはじめているとのことだ。そうしたこともあり、今年度も共創プログラムを開催。DEMO DAYを通じ、今年度のビジネスプランについても可能性を感じている様子だった。一方で、同社は必ずしも短期的な成果ばかりを求めているのではない。東北発のスマート社会実現という長期的な視野でオープンイノベーションの必要性を捉えていると強調した。今、各地域でオープンイノベーションの注目度が高まっている。東北電力グループという地域を代表するグループが意欲的に共創プログラムに乗り出したことで、地方から大きな成果が生み出される可能性も高まったのではないか。今後の動きに注目したい。なお、テーマ③の共創アイデアの進捗については、別途レポートする。

(編集・取材:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)