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【2022年保存版】共創に活用できる補助金制度とは?<2> 「事業再構築補助金」

【2022年保存版】共創に活用できる補助金制度とは?<2> 「事業再構築補助金」

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オープンイノベーション/共創を進める上で必要となる「資金」。実は、その資金を得るために活用できる補助金制度がさまざまあります。ーーそこで、補助金や助成金のエキスパートであるEssencimo・杉田龍惟氏による連載「共創に活用できる補助金制度」をスタート。第2回は『事業再構築補助金』について詳しく解説していきます。

挨拶

2回目の寄稿となりました。株式会社Essencimoの代表取締役を務めております杉田龍惟と申します。弊社では補助金・助成金等の活用を進めるプラットフォーム「補助金オフィス」を運営しています。

こうした制度の活用に当たり、

・補助金を活用したいけど自社がどれを使えるのかがわからない

・申請したいが人手の余力がない

・そもそも補助金・助成金って何?

など、使うことに興味はあってもなかなか知識や理解が無く、上手く活用することができないケースが良く見受けられます。そうした課題をお持ちの事業者様に対して、弊社では申請対象となる補助金の選定・活用情報の発信・ご案内から申請に係る支援まで全体を通じたサポートを提供させていただいております。

補助金、助成金とは

補助金と助成金はそれぞれ、大まかに下記のように定義されます。

補助金:事業計画を審査し、より優秀だと判断された計画が採択され、事業計画を実施した上で補助金を受け取ることができる

助成金:いくつかの要件が課され、要件を満たした事業者に支給される

弊社を含め、事業計画の策定支援という点で民間のコンサルティング企業が成果を発揮しやすいのは前者である「補助金」です。助成金は事業計画策定の要素は薄く、手続き的な面倒さが先行する上、法的に行政書士/社労士以外が取り扱うことを認められていません。

また、新規事業やサービス開発といった文脈においては、こちらの二択では「補助金」になります。第2回の今回の記事では、新規事業や共創をはじめとしたものにお使いいただける「事業再構築補助金」をご紹介します。

事業再構築補助金について

事業再構築補助金とは

事業再構築補助金は、中小企業庁が開催する「コロナ禍で被害を受けた事業者が、新たな事業分野・業種等にチャレンジすることでV字回復を目指す」ことをテーマにした補助制度です。

計画に対して多角的な視点から評価されますが、その中でも特に重要となるのが「事業の必要性・事業インパクト・実現可能性」の3点です。この点につきましては、下記記事で具体的な説明をしておりますのでご参照ください。

事業再構築補助金の特色

事業再構築補助金はその名の通り「事業を再構築する」計画に補助が出る制度ですが、大きな特色が三点あります。

①コロナ前後で売上が減少している月がある(詳細要件アリ)

②既存事業ではなく新しい事業に取り組む

③補助金採択前に既に着手した事業も補助対象経費とすることができる

①・②は申請において求められる要件ですが、③は補助金制度の中では珍しい要件であり利便性を高める要素となっています。

この3点は事業再構築補助金を利用可能かどうかの判断をする上でも重要なポイントとなりますので、それぞれを詳しく説明していきます。

①コロナ前後での売上の減少

コロナにより、多くの事業者様が営業停止や顧客減少等何かしらの形で被害を受けました。その被害を乗り越えることがテーマとなっているため、コロナ前後で売上が減少した月があることが求められています。

具体的には、「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月間の合計売上高が、コロナ以前(2019年または、2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること。」と定められています。

これは、2019年1月~2020年3月をコロナ前・2020年4月~現在をコロナ後とした時に、コロナ後で連続する6か月間をまず抽出し、その中から特に減少が大きい3か月の合計売上高を計算します。その合計売上高がコロナ前の期間における同月の合計売上高と比較した際に、10%減少していればOKです。

わかりにくいため例を示します。


手順として

(1)まずは減少している区間を含みそうな連続するコロナ後の6か月を抽出(ここでは21年月~21年11月)

(2)その期間の中でも特に減少している3か月をピックアップ(7,8,11月)

 この時の注意点として、6か月の中から選ぶ3か月は、連続していなくてもOKです

(3)減少率を計算

 上記例においては、コロナ前合計売上高⇒17,700千円

 コロナ後合計売上高⇒13,600千円

 減少率⇒-23.2%

(4)減少率が10%を超えていたため、要件を満たします。

上記のように判断する必要があります。

②既存事業ではなく新しい事業に取り組む

「新しい事業」としつつも、求められている内容は幅が広いため、順に細かい違いについて説明していきます。ここで言及する「事業・業種」は日本標準産業分類に従った分類を一つの基準として説明しています。

(1)新分野展開

業種、もしくは事業は変えず、新しい製品・サービスを提供できるようになることで、新規顧客層・新規市場を獲得するというものです。

(2)事業転換

業種を変えずに、事業を変更するものです。製造業という枠組みの中で、部品製造から機械装置製造等さらなる上流に進出する、といったものが当てはまります。

(3)業種転換

業種自体を変えてしまうものが適用されます。コロナ前まで店舗での小売を営んでいた事業者が、店舗を改装し飲食店や宿泊業に切り替えるといった例が挙げられます。

(4)業態転換

製品・サービスの製造方法、提供方法を変更・改善するものが当てはまります。事業やサービス自体を変更する必要はありません。

(5)事業再編

組織再編行為(合併、株式交換、事業譲渡等)を行い、その上で上記の(1)-(4)いずれかを実施するものです。

事業再構築補助金に申請する際は、(1)-(5)どれかの枠を満たしていることが必要要件となります。

③補助金採択前に既に着手した事業も補助対象経費とすることができる

22年度の公募では、21年12月20日以降であれば既に着手した事業においても「事前着手申請」を通じて補助対象経費を計上することができます。

事業実施期間は本来採択後14か月 or 交付決定後12か月が上限となるため、その期間を超えて事業実施期間を最大化できることは本補助金の大きなメリットの一つです。

ただし、事前着手したものだとしても取引の記録(見積書・相見積書・発注書・請求書等)はすべて揃えて提出することが求められます。そのため、細かい過去の取引等をすべて対象にしてしまうと、採択後の手続きの煩雑さは上昇します。

誰が使えるのか

次に大前提となる事業再構築補助金の申請に必要な要件について説明します。

①:中小企業・中堅企業であること

②:売上高減少要件を満たすこと

③:認定経営革新等支援機関と計画を策定すること

①中小企業・中堅企業であること

「中小企業」とは、次の資本金・従業員数の数をどちらも上回っていないかどうかが基準となります。


資本金だけ・従業員数だけなど、どちらかのみが上回っている場合は問題無く中小企業と定義されます。株式会社や合同会社などに加えて、組合や収益事業を行っているNPOは申請要件を満たします。

「中堅企業」については、上記表の線引きは上回ってしまうが、

・資本金額10億円未満

・資本金額が定まっていない場合は従業員数が2000人以下

を満たす事業者が該当します。

②売上高減少要件を満たすこと

こちらは前述した通り、コロナ前後で連続する6か月内の3か月の合計売上高が、10%以上減少しているかどうかで判断されます。

③認定経営革新等支援機関と計画を策定すること

事業再構築補助金の特殊な要件として、経済産業省の認定を受けた「認定経営革新等支援機関」と共に事業計画を策定することが求められています。士業や民間コンサル等、全国に多く存在しているため、どこかと共同で計画を策定し「確認書」を発行する必要があります。

Essencimoも取得しているため、申請をご希望で認定経営革新等支援機関のアテが無い事業者の方はお気軽にご相談ください。

どういった経費に使えるのか

補助対象経費は下記のものが該当します。


事業再構築補助金における最大のポイントは、建物費と機械装置・システム構築費になります。建物費はなかなか認められる補助金が少ない中で、店舗移転や改装等を含めて申請することができるため、非常に使い勝手の良いポイントとなっています。

機械装置・システム構築費については、ものづくり補助金(記事はこちら)と同様の活用ができますが、後述の通り事業再構築補助金の方が補助上限額が高いなどの優位性もあるため、さらに使いやすくなっているとも見てとることができます。

どれぐらいもらえるのか

ものづくり補助金の補助上限額は、下記のように定められています。


一般型の中では、枠によって補助率が変わり、デジタル技術を活用した新サービス創出などにおいてはより高い補助率で補助を受けることが可能です。(通常1/2の所が2/3になります)

どういうスケジュールなのか

全体のスケジュールを見ていきます。ここでは22年9月30日に締切がある、7次締切を例にとります。

①申請準備~申請

申請締切に向けて準備を行います。コンサルを利用する場合は大まかに1か月ほど前までにはご相談いただくと間に合わすことができるかと思います。大まかにですが、決算書等の準備+事業計画の策定さえできれば、申請ができる状態となります。

②採択の発表

申請締切日の約2か月後に採択発表となります。採択は通知+一覧で公開されます。この後も細かい審査等はありますが、実質的な合否はこの段階で決まる形となります。

③採択後、価格を確定させる交付申請手続き&交付決定

採択された後、見積書・相見積書を揃え価格の正当性を証明した上で「何にいくらで事業投資をするか」を確定させる交付申請を行います。交付申請時に確定した内容に基づき事業を実施していく形となります。

④補助事業の実施開始(経過報告や取組の実績報告まで。最大12か月間)

交付決定通知が出たタイミングから、事業に着手することが可能となります。前述の通り、事前着手申請の承認を取っていれば21年12月末以降を含む期間が対象となります。

ここでは計画通りに、事業を実施し適宜報告作業等を行う必要があります。

報告時に主には、注文書・注文請書・納品書・請求書等を提出します。

⑤確定検査(実地での事務局の担当者によるチェック)

事業実施場所に担当者が来訪し、きちんと事業の実体があるか・計画や報告通りに事業が実施されているか、のチェックが入ります。

⑥補助金の請求、入金

確定検査で問題がなければ補助金の精算払請求を行い、最短で3日~1週間程度で入金されます。

事業再構築補助金の活用例

葬祭業者の介護業界参入の例

コロナ禍で葬祭業全体が打撃を受ける中で、新たに介護業界への参入を進める計画を策定しました。それまでの高齢者の抱えるニーズの理解を強みとして、本業界への参入を決定、新たにシステム開発会社の能力を借りつつ、介護事業用管理プラットフォームを導入することで効率的な運用ができる優位性を抱えて参入することにしました。

建物費+システム開発費+研修費で総額1億円ほど投資し、6000万円の補助金を受け取りました。利益率自体が高いわけではありませんが、システムを活かした効率的な運営を行い、他社より事務周りでの効率性等を高めることで運営体制における優位性を確立し、2年半での投資回収を見込んでいます。

小売業者のEC向け倉庫ビジネス参入の例

オフラインでの来店客の大幅な減少により、固定費の圧迫を受けた小売業者が、新たにEC関連需要を見込んだ新規ビジネス参入を行いました。具体的には、それまで所有していた土地に倉庫機能を構築するとともに倉庫管理システムを導入し、倉庫ビジネスを開始しました。

総投資額は7000万円ほどで、約4000万円の補助金を受け取りました。着工時点から既に顧客獲得が進み、地域物流の一つのネットワークとしてのポジションを獲得しました。投資回収は2年ほどを見込んでいます。

共創への活用

事業再構築補助金は、要件を満たせれば建物費やシステム構築費を補助対象経費とすることができるだけでなく、1億円を超える事業投資にも活用できる制度です。また、事業会社とシステム開発会社の間での共創や、新たに生産体制を構築する際の共同申請なども可能な制度となっています。

・どんな姿を目指すか

・その実現のために何が足りていないか

を事業再構築によって解決していく、というのが全体のシナリオです。

その手段として、共創の中で自社では足りないものを外部企業と連携しながら実現していく、というのは非常にテーマとして合致しやすいモデルであると言えます。

ぜひご活用をご検討ください。


<執筆者プロフィール>


株式会社Essencimo 代表取締役 杉田 龍惟

東京大学経済学部出身。2年生より補助金の申請支援を始めとした経営コンサルティング・資金調達支援業務に携わる。リクルートを始め数社におけるマーケティング業務での経験を基に、より実現可能性にこだわった事業計画策定に強みを持って支援を行う。2019年4月に株式会社Essencimo創業。

<シリーズ記事>

第1回:【2022年保存版】共創に活用できる補助金制度とは?<1> 「ものづくり補助金」

(編集:TOMORUBA編集部)

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