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アシックスがなぜ「農業」なのか――農作業×スポーツで変えたい日本の未来

アシックスがなぜ「農業」なのか――農作業×スポーツで変えたい日本の未来

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神戸市主催のオープンイノベーション・マッチング事業「Flag(フラッグ)」では、ホスト企業として地元に拠点を構える10社が参画。各社がどのようなテーマを提示しているのかを取材していく。――今回取り上げるのは、神戸市に本社を置くスポーツメーカー・アシックスだ。

ストレスの多い現代社会において、健康を維持するために欠かせないのが運動。フィットネスジムやオンライン等を活用したトレーニングプログラムを活用する方も多いが、運動をするのに必ずしも特別な場所や器具は必要ではない。日々の生活の中にも身体を健康に保つに足る運動の機会はいくらでもある。

そうした中で、アシックスが目をつけた施策の1つが”農業”だ。一度でも農業を経験したことがある方なら、いかに農業が身体への負担が大きく、十分なトレーニングになるかは理解できるだろう。アシックスは「アグリスポーツ」として農業×運動の取り組みにも可能性を感じており、「Flag」では募集テーマとして『心と身体の健康に繋がる、農業でのアグリスポーツワーケーションビジネスの創出』を提示している。

では具体的に、パートナー企業とどのような共創を実現させたいと考えているのか? また、共創を進める上で提供できるリソースやアセットとは? 事業推進統括部 インキュベーション部 部長 勝真理氏に話を聞いた。

※「Flag」インタビューシリーズの記事一覧はこちらをご覧ください。

「農業×スポーツ」で二つの課題を同時に解決

――まずは「Flag」に参画した背景をお聞かせください。

勝氏 : 当社では2030年に向けた長期ビジョン(VISION2030)の中で、従来のプロダクトに加えて場所やコミュニティ、データ分析などを活用した事業領域への拡大を掲げています。これまでのスポーツメーカーとしてのビジネスから、サービスを提供するビジネスにも事業を広げていこうと計画しているのです。

どのようなサービスを展開していくかというと、これまでの私たちのノウハウを活かせる健康領域へ進みたいと考えています。今の働く世代は生活スタイルが大きく変わり、心身ともに大きなストレスを抱えています。そのような問題を、農業が抱える課題と同時に解決したいと思ったのです。


▲株式会社アシックス 事業推進統括部 インキュベーション部 部長 勝真理(かつ まこと)氏

――農業が抱える課題とは何でしょうか?

勝氏 : 少子高齢化で労働不足が減少しており、農業の担い手も減少しているという課題です。加えて、気候変動などのリスクにより、農業を経営している事業者の利益が不安定となり、一次産業を中心とした地域経済にも影響を及ぼしています。

そのような課題を、農作業を運動と捉えスポーツ化することで解決したいと考え、『心と身体の健康に繋がる、農業でのアグリスポーツワーケーションビジネスの創出』という募集テーマを策定しました。運動の機会を提供すると同時に、農業に携わる人々も増やすことで、二つの課題を同時に解決したいと思います。

*参考資料:https://www.maff.go.jp/primaff/kanko/review/attach/pdf/220131_pr105_02.pdf

――農業をスポーツにするというのは斬新な発想ですが、それを実現するにはどのような課題があるのか教えてください。

勝氏 : 二つ課題があります。一つ目は農作業の運動としての効率性です。例えばフィットネスに行けば「今日は脚を鍛えたいからこのメニュー」といったように、目的に合わせてメニューや強度を選べますよね。農作業も運動に適しているとはいえ、どの作業でどの筋肉を鍛えられるのか紐付けられていません。まずはそこをトレーニングとして体系化するのが重要かと思います。

二つ目はファッション性。スポーツは健康にいいというだけでなく、見た目も重要です。(例えば競技スポーツでも)周囲から見てかっこいいと思うから、競技人口も増えていきますよね。農業に適した機能性をもたせながら、いかに若い層の方々も惹きつけるデザインを仕立てられるかが鍵になると思っています。

――勝さん自身も、農業の経験があるのでしょうか。

勝氏 : はい。父の実家が農業をしていて、私も手伝うことが何度かありました。その当時から、ジムでのトレーニングに匹敵する負荷がかかっていると思っていたのです。

ジムに行くことで、お金を払い、電気代がかかるなら、そのエネルギーを農作業で代替できるのでは?と考えていました。また、農作物を育てることで心の健康も促進されるのではないかと思います。

農業法人、システム会社、福利厚生。様々なパートナーの可能性

――今回の共創で、どのようなパートナーを求めているのか教えてください。

勝氏 : まずは、農作業をするための場所を提供していただけるような農業法人などです。また、今回の共創は、ジムなどでの運動を農作業に置き換えるもの。ジムには更衣室もありますし、シャワーも浴びられます。田畑に加えて、そのような機能を作れる場所を持っている企業とも組めればと思っています。

また、トレーニングである以上、どのような効果があるのか把握したいですよね。農作業による身体的負荷と農作物を育てることによる心の健康状態を可視化できるようにしたいです。同時に、農作物の育成状況の管理をできるシステムも作りたいと思っています。わかりやすさはもちろん、このような内容を楽しんで使えるシステムを作れる企業とも組みたいですね。

――アグリスポーツはどのようにして市場に提供していくつもりなのでしょうか?

勝氏 : 個人の参加はもちろんですが、福利厚生やワーケーションの一環として、パッケージ化したものを法人に提供していきたいと思っています。健康経営に注力している企業に対して提供したいと思っているので、福利厚生サービスのパッケージを提供している企業とも組めると嬉しいです。

――これまでに共創を実現した事例もあれば聞かせてください。

勝氏 : 例えば栄養素やストレス改善に関するサービスを提供している企業との共創実績があります。私たちは企業向けに健康度を可視化して、その健康度を向上させるための運動コンテンツを提供する取り組みをしていますが、健康には身体だけでなく心へのアプローチも必要です。そこで外部のサービスと提携することで、トータルヘルスケアを実現できるような取り組みをしてきました。


「ノウハウ」と「アイテム」。スポーツメーカーとして提供できるリソースとは

――共創を実現していく上で、提供できるリソースについて教えてください。

勝氏 : 一つは、スポーツ工学に基づいたサービスに関するノウハウです。農業をトレーニングにしていくということは、どの作業がどのような効果があるのか、どのようなプログラムを組めばいいのか分析しなければなりません。私たちはこれまで人間の運動動作に着目・分析してきた企業なので、身体のデータを踏まえた分析を行い、農作業を体系化することができると考えます。また、自社でトレーニングジムや施設の運営も行っているため、コンテンツ作りや指導ノウハウも提供できると思います。

もう一つはアイテムです。ジムでトレーニングするときは簡単に負荷を調整できますよね。しかし、農業はそうはいきません。そこでアシックスのスポーツウエアの知見を応用し、農業でも負荷を調整できるようにしていければと思います。

また、農作業をかっこよく見せる取り組みも重要だと思います。昔ながらのファッションだと若い人はなかなか来ないと思うため、見た目の見直しにも貢献できると考えています。


――最後に応募を考えている企業の方にメッセージをお願いします。

勝氏 : 私たちが「Flag」を通して解決したい課題は「健康増進によるQOLの向上」や「一次産業の再興」といった日本が抱える課題をスポーツと農業の力で解決することです。とはいえ、それにより本当に事業として成り立つかどうかは、これからパートナー企業の方たちと一緒に検討していきたいと思っています。一緒に事業化に向けて走っていきたいと思える方は、ぜひお声がけください。

KOBE OPEN INNOVATION「Flag」 10/13(木)応募締切

神戸市内企業と市内・全国のパートナー企業とのオープンイノベーションプログラム


(編集・取材:眞田幸剛、文:鈴木光平、撮影:加藤武俊)

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コメント8件

  • 蒋艶園

    蒋艶園

    • 愛信貿易株式会社
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  • 萩広史

    萩広史

    • Belle fleur
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    根崎優樹

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