【連載/4コマ漫画コラム(64)】 OI/新規事業におけるフリーランスや副業者の活用術
個人とつながる
大企業でオープンイノベーション(OI)を活用して新規事業を推進していこうということはとても当たり前になってきました。自社だけで新しい事業を生み出そうとするのはとても難しいからです。
一般的にはOIは会社と会社や、会社と大学など、「団体同士」のつながりでイノベーションを推進することを指します。今回は「個人」であるフリーランスや副業の方とのつながりについてです。
自社のリソースを考えたときに、新規事業に足りない人材を新たに雇う必要にかられる場合はよくあります。
当たり前です。なぜなら、「新規事業」とは「自社にとって新しい事業」だからです。
(時々、「今まで世の中になかった事業が新規事業」という人もいますが、それはとても狭い定義だと思います。その狭い定義でも「自社にとって新しい事業」であることに変わりはありませんが)
「自社にとって新しい」≒「自社に知見や経験が足りない」となるので、新たな人材が必要となります。もちろん、これまでも行われてきた「新規採用」として、必要な知見・経験を持った人材を雇うことも必要ですが、このコラムでも何度か書いてきた「プロジェクティブな働き方(例: *1)」の広がりによって、いくつものプロジェクト単位でメンバーが集まって、期間限定で活動することが増え、そういうときには「社員として採用する」よりも、むしろ「フリーランスを活用する」ことの方がいい場合が多々あります。
*1 https://eiicon.net/articles/1706
流行りの「ジョブ型」とは言えないかも
今回のCOVID-19の影響を受けて、テレワークの普及が大きな理由となって「ジョブ型」と呼ばれる働き方が増えていこうとしています。「ジョブディスクリプション」という「職務記述書」を作成し、その仕事を行う働き方です。つまり、「あれもこれも色々なことをやる」という従来の「社員として雇用されている働き方(メンバーシップ型)」ではなくて、「これをやってね」「はい、やります」という働き方です。
このタイプの仕事は社外のメンバーにも明確な契約を作って委託しやすい。
そう考えると「フリーランスの活用」は一見、「ジョブ型の業務」に向いているように思えます。先ほど述べたように「新規事業は自社にとって新しい事業」であるので、よくあるのは「社内に人材はいるのだけれど、既存事業で忙しくて回してくれない」というような状況です。この場合は、その「担当してもらいたい業務」を明確にして、社外のその分野が得意なフリーランスに頼むのもいいでしょう(経理業務やソフトウエアの限定された開発業務など)。
「揺らぐ、壊れる」期待と覚悟
ただ、(何度も書いてしまいますが)「自社にとって新しい事業」が新規事業なので、実はその領域についての十分な知見・経験がないことを認識しておかなければなりません。
①「新規事業として乗り込もうとしている業界についての知見」だけでなく、
②「既存事業とは違う『不確実性が高い仕事の進め方』についての知見・経験」の不足も大きなファクターです。
そういう知見・経験が足りないのに、「こういう計画で行こう」と自分達だけで絵を書いて、それに不足する(きっちりはまる)人材だけを外部から求めるのは、新規事業の創出のアプローチとして適切ではありません。
もちろん、外部に丸投げすること(高いコンサルティング会社とかに)は最低ですので、まずは自分たちで「こういうのがいいのではないか」「こうやるといいのではないか」というラフデッサンを描くことは必ず必要です。
しかし、「その初期デッサンは素人の自分達が描いたものだ」と認識して、上記の①②のフリーランスの方と契約して、「しっかり決められたことをやってもらう」というよりは「(気が付かなかった)揺らぎを起こしてもらう、壊してもらう」というくらいの期待・覚悟が必要です。
見極め方に秘策なし
フリーランスとは「特定の企業や組織に属せずに独立した個人事業主」です。
つまり「個」が立っている。
このコラムでも何度も書いてきましたが、新規事業の立ち上げには「個」の力が必要です。個人パワーこそが様々な荒波や逆風を乗り越える源泉です。
フリーランスは一人一人が違う経験や能力を持ち、提供できる内容も異なってきます。それぞれの人がフリーランスになるまでに培ってきた経験などがモロに前面にでるものです。だから「ジョブディスクリプション」なんていう型だけで判断することはとても難しいのが現実です。
普段から色々なフリーランスの方に会って、小さな仕事を一緒にやって、「この人なら」と思えるフリーランスの知り合いを増やしておくことが大事です。
最近は、市場調査や業界情報を得るために、ビザスク(*2)などの活用も一般的になりました。ビザスクなどで知り合うのも「いいフリーランスのとの出会い」になる可能性があります。
フリーランスと同じように副業活動の方と一緒に仕事をすることもいいでしょう。ただ、その時に、その副業をやる人が「腰かけで副業でもやってみようかな」という方はオススメしません。いいフリーランスと同じように「個」が立っていて、現在の組織での立場とか関係なく「自分と自分の知見・経験」をしっかりと発揮できる方であれば(つまり人間として「フリー」であれば)いいパートナーになるでしょう。
私も新規事業系のフリーランスです。「ゆらぎ」と「壊し」が必要な時はお声がけください。得意です♡。
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。
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