【連載/4コマ漫画コラム(24)】新規事業のための外部リソースの獲得術② 新規事業超常現象
「新規事業」はリソースなし、金なし
新規事業は「自社にとって新しい事業」なので、どうしても社内リソースだけでは足りません。特に「人」は重要なので、前回は「外部人材獲得(出会い?)」について書きました。
今回は「人」以外のリソースの獲得です。新規事業には「人」だけでなく、場所、設備(製造・研究・開発)、販売網、IP(特許)など、何から何まで足りず、社内リソースだけでは賄えないのが普通です。
お金が無制限に潤沢にあれば「買っちゃえ~!」でいいかもしれませんが、そうはいきません。「本当に成功するのか?本当に儲かるようになるのか?」と疑念の目を向けられ続けている新規事業は、「いつも貧乏状態」です。
特殊な例外としては、たまにベンチャーなどですごい注目を浴びて、まだ実体が伴わないのにVC(ベンチャーキャピタル)から多額の投資を受けて、「金余り→勘違い→思いっきり無駄遣い→その結果、失敗」なんてこともありますが。「金はあればあるほどいい」というのではない、ということですね。
やったことがある人には「あるある!」の話
新規事業の立ち上げで一番重要なのは「なんとか立ち上げたい!」という気合です。(今回もちょっとスピリチュアルテーストです)
念じ続け、あれこれやり続け、社外でもウロウロし続けると、思いもしない出会いがあります。これは「本当にそうなの?」とか「統計的な確率は?」なんて問われると答えようがないのですが、実際にやったことがある人は、必ず「あるある!」と言います。(逆に、やったことがない人に限って、偉そうに「現実はそんなにあまくないよ」とかつぶやきます)。
「今、こういうことをやっている」という話を社外でウロウロしながら話していると、それが「撒き餌」になって、「だったら、ちょうどウチの会社がそれに近い事業を止めたところだから、設備も余ってどうしようと思っていたところなんだ。いる?」というウソみたいな話が舞い込むことがあります。私も「このタイミングでこの出会いか!」と何度も驚くことがありました。
もちろん、童謡「待ちぼうけ」のように、『じっと座っていたら、目の前の切り株にウサギがぶつかって死んで、それを獲物として持って帰れたという幸運に恵まれたので、その後、ずっと座っていた』……みたいに「運頼り」になってしまってはダメです。ポイントは「ウロウロして」「話をして(撒き餌を撒く)」、「運を呼び込む」ことです。
悩んだら、ど真ん中に直球を
また、撒き餌だけでは向こうが寄ってこないときには、こちらから「ダメ元」で話をすると、これも思わぬ展開につながったりします。先行特許を他社が持っていると分かって身動きが取れない、もうあきらめるしかない、なんて時は、「ダメ元で話してみる」と、道が開けるときもあります(が、知財関係の人は手練れが多いので、単にストレートに行くと玉砕して、かつ、藪蛇になって(気づかれて罠を仕掛けられたりして)余計に身動きが取れずにややこしいことにもなってしまうことも多々あるので、もちろん事前にできるだけ様々なケースを想定しておきましょう。ま、所詮「新規事業」です。失敗の原因になることは特許以外にもあれこれ山ほどありますので、「どうせダメだ」とやらずして諦めるよりは、ぶつかってみることをお勧めします。)
社外での本気探索が社内を揺らす
本稿のタイトルは「外部リソース」ですが、大企業の場合は、社内に使えるリソースが発見されて、それが活用できることもよくあります。そのきっかけになるのが、「社外からなんとか調達するしかない」という本気の社外での探索活動動です。
例えば、場所。新規事業拡大に向けて、広めの場所が必要になって、社外の場所を一生懸命探していると、総務から「場所を探しているって聞いたのだけど、XXにうちの会社の古い持ちビルがあって、耐震工事をするかどうか悩んでいたんだ。キミたちの新規事業で使うって言ってくれたら、耐震工事の予算申請もしやすいし、どうかな?」という話が舞い込んで、ビル1棟を新規事業として活用することができるようになったこともありました。
また、製造するために、社内ではあまり作ったことがない類の製品だったので、社外のEMS(電子機器の受託生産を行うサービス)を探しているときに、その話を会社のお偉いさんが聞きつけて、「うちは製造業だぞ。なんで社外なんか使おうとするんだ」と言ってきて、社内で製造することになったことがあります。社内だとどうしてもスピードが遅いなどの懸念がありましたが、「上」からの命令だったので、製造部門も社外のEMSに負けないように前向きに色々頑張って協力してくれ、うまくいきまいした。
もし、最初から「社内で製造しよう」として製造部門と交渉していたら、「そんなものは作ったことがない」「品質保証をやり切れない」「新規事業?売れるのか?」とかいろいろ言われて前に進まなかったと思います。
基本、「ウチらは新規だから、社内の皆さまに迷惑をかけたり、頼ったりしないぞー、社外でなんとか見つけるぞー」という気持ちで、外をウロウロしていれば、外でも内でも思わぬことが起こって、必要なリソースが気が付くとアナタの手の中に……という超常現象のお話しでした。
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。