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【ANNDレポートVol.3】 ”地域×スタートアップ”共創取り組みの全貌と成果とは?-地域3団体、スタートアップ10社の全13ピッチレポート!

【ANNDレポートVol.3】 ”地域×スタートアップ”共創取り組みの全貌と成果とは?-地域3団体、スタートアップ10社の全13ピッチレポート!

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愛知県は、3月11日と12日の2日間にわたり、今年度のスタートアップ支援活動の成果等を発表する大規模なイベント『AICHI INNOVATION DAYS 2024』(略称ANND:アンド)を開催した。会場はTKPガーデンシティPREMIUM名古屋ルーセントタワー。昨年度のANNDは、リアルとオンラインのハイブリッド開催だったが、今年度はリアル会場のみで開催された。「意図的なセレンディピティによる想像を超えた価値創出」をコンセプトに、50を超える国内外のスタートアップや企業、著名なスピーカーたちが登壇。革新的なビジネスモデルや最先端の技術に基づく取組を発表するとともに、オープンイノベーションや資金調達など愛知県のスタートアップを取り巻く環境・目指すべき姿についてトークセッションを行った。

本記事は『ANND 2024』で展開されたプログラムのレポートの第3弾として、スタートアップ・エコシステム形成プログラム『AICHI CO-CREATION ECOSYSTEM DEMODAY』と題した成果発表会に焦点をあてる。

愛知県では、10月開業予定のスタートアップ支援施設『STATION Ai』と県内各地域の『STATION Ai パートナー拠点』を相互に連携させ、協力関係を築くことで県内全域にわたるスタートアップ・エコシステムの形成を目指している。この取組の一環で昨年度より開催しているのが、スタートアップと地域パートナーによる、地域課題の解決を目指す事業共創プログラム『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』だ。

今年度のプログラムには、10社のスタートアップが参加。仮説構築・プロジェクト計画フェーズを経て、11月30日に中間DEMODAY(中間成果発表会)で途中経過を発表した(※)。その後、地域パートナーの協力を得ながら愛知県内で検証を行った。その成果を発表する場が、今回のDEMODAYである。今年度のプログラムからは、どのような成果が生まれたのか。それが地域に与えるインパクトとは。

※関連記事:愛知県を舞台にしたビジネス共創プログラムの中間DEMODAYをレポート!採択スタートアップ10社が挑む、地域の課題を解決するビジネスアイデアとは?

参画団体数は「20地域・44団体」へと急拡大!愛知県で形成されつつある広域エコシステム

冒頭、『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』の運営を手がける株式会社eiiconの寺田氏から、昨年度より始まった本プログラムの概要が説明された。この取組は、愛知県全体におけるスタートアップ・エコシステムの構築を目指す事業の一環で実施されている。今年10月、名古屋市内にスタートアップ支援拠点『STATION Ai』が開業するが、愛知県の中心部だけではなく県全域で、スタートアップを支援する体制を整えることが目的だ。昨年度、この活動に賛同する地域パートナー数は11地域・11団体だったが、今年度は20地域・44団体にまで急拡大した。

地域パートナーには、自治体やスタートアップ支援機関、商工会議所、商工会、金融機関などが含まれている。『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM』は、こうした地域パートナーの支援を受けながら、スタートアップが地域課題の解決を目指すプログラムだ。今回の成果発表会では、今年度のプログラムに参画したスタートアップ10社と、地域パートナーのうち3団体が、活動の成果を報告するという。

▲株式会社eiicon 公共セクター事業本部 東海支援事業部 Account Executive 寺田圭孝 氏

【地域ピッチ】 東三河・ウェルネスバレー・日進市の3つの地域パートナーが、独自性のある支援内容を発表!

スタートアップの発表に先立ち、地域パートナーを代表して3つの団体が活動内容を報告した。

●東三河スタートアップ推進協議会 <STATION Ai パートナー拠点>

東三河エリアでは、8つの市町村(※)が連携し、スタートアップの育成と支援に注力している。その中心的存在が、2021年10月に発足した東三河スタートアップ推進協議会だ。この協議会には、行政、経済団体、事業会社、大学などが参加しており、スタートアップだけに限らず、地域課題に取り組む起業家や第二創業者も含めてサポートしている。

活動内容は大きく3つで、「起業や新規事業創出を促進するための機運醸成」「各地域・各支援団体の連携体制、共創体制の構築」「地域全体としての情報発信やPR強化」などを行っているという。

この他、『Higashi Mikawa UPPERS』というコミュニティ活動を通じた取組や実証実験のフィールド探しをサポートする具体的な支援内容が紹介された。今後も「地域内外のスタートアップ・事業会社・支援機関等と連携を強化し、東三河におけるスタートアップ・エコシステムの拡充を目指していきたい」との考えを示した。

※東三河8市町村:豊橋市、豊川市、蒲郡市、新城市、田原市、設楽町、東栄町、豊根村

●ウェルネスバレー推進協議会 <STATION Ai パートナー拠点>

ウェルネスバレーとは、愛知県大府市と東浦町にまたがる健康・長寿に関する研究機関や施設が集積した地域のことをいう。「幸齢社会」の実現を目指すウェルネスバレー構想を推進するため、2011年に発足したのがウェルネスバレー推進協議会だ。医療・介護関係機関、教育研究機関、支援機関、行政機関で構成されている。

スタートアップに対しては、協議会の構成員との連携支援や、ウェルネスバレーブランド認定を通じた販路開拓支援などを提供。今年度は『STATION Ai』との連携を強化するため、共同でイベントを開催したり、定期的に『STATION Ai』の活動拠点に出向いて相談に乗る出張相談会などを実施した。

また、医療・介護やヘルスケア分野に加えて、カーボンニュートラルなどの分野でもスタートアップとの連携を進めてきたそうだ。今後もさまざまなプレイヤーとの連携を通じて、地域課題の解決に取り組んでいく意向だという。

●日進市・日進市商工会

日進市は、名古屋市と豊田市の間に位置し、住宅都市として人口が増加している自治体だ。特に子育て世代の人口は愛知県内で上位に位置していることが特徴だという。一方、日進市商工会は、市内事業所の支援や地域イベントなどを市役所とともに担っている。

今年度は、両者で『あいちスタートアップ・エコシステム共創ワークショップ』と『AICHI CO-CREATION STARTUP PROGRAM2023』に参加した。STARTUPプログラムでは、セラピア・スタジオフィルス・はんぽさきの3社と実証実験などに取り組み、一定の効果を確認できたという。

来年度からは、より効果的な支援を提供するために、情報共有やセミナーの開催などを行う予定だ。相談しやすく、情報にアクセスしやすい、そして事業展開しやすい、“『しやすい』まち 日進”を目指して、今後も活動に力を入れていく方針だという。

【スタートアップピッチ】プログラムに参加した10社が、地域パートナーとともに歩んだ活動の成果を語る!

続いて、採択された10社のスタートアップが、地域パートナーと連携した共創事業の概要や実証による成果を発表した。

●株式会社はんぽさき 「チームで使う共有地図 LivMap (リブマップ) と、地図のデジタル化サービス」

はんぽさきは、チームで使う共有地図アプリ『LivMap』を開発している。これは、設備管理や点検、調査・検査、災害対応など、既存のマップアプリが役に立ちづらい業界向けに開発されたもので、チーム内でさまざまな情報を地図上で共有できることが特徴だ。

本プログラムでは、自治体との連携の下、さまざまな現場での活用を試みた。例えば、管理者不明橋の調査等を含む道路・河川の管理業務(愛知県 一宮建設事務所)、森林の管理・調査業務(豊川市 農務課)、税務における全棟調査(大府市・刈谷市・日進市・東海市)などだ。

このほか、山岳救助事案を想定した現場状況の共有化(豊川市 消防署)、貸し出し希望農地の管理の効率化(豊橋市 農業企画課)、マラソン等広域イベント開催時の設置物回収管理やコース図の共有化(豊橋市 スポーツのまちづくり課)などにも使われ、有用性が確認できたと話す。今後「より広範囲に実証実験に取り組んでいきたい」とし、引き続き『LivMap』の導入先を増やしていく考えを示した。

●株式会社アシスト 「外国籍社員の雇用管理DXサービス」

アシストは、2019年に特定技能ビザが創設されたことを背景に、今後も国内の外国人人材が増加することを見越し、外国籍社員の雇用管理を支援するSaaS『irohana』を開発した。『irohana』を導入すれば、外部に委託することなく、社内で外国籍社員の行政手続きが、行政書士や通訳のサポートを受けながら簡単にできるという。

すでに『irohana』を導入している企業のなかには、従来のコストを50%以上削減できた飲食店もあるそうだ。本プログラムでは、地域パートナーと連携しながら、3社の受注を獲得できたという。『irohana』と相性のよい業界の絞り込みもできたそうだ。今後も引き続き、特定技能ビザの取得数が全国でもっとも多い愛知県で実績をつくり、このサービスを全国に広げていきたいと展望を語った。

●エーテンラボ株式会社 「習慣化アプリで実現する 高齢者フレイル予防・デジタルデバイド解消」

エーテンラボは、5人1組で励ましあいながら楽しく続ける習慣化アプリ『みんチャレ』を開発・提供している。本プログラムでは、尾張旭市の行政と連携して65歳以上の高齢者を対象に実証実験を行った。具体的には『みんチャレ』をスマートフォンにダウンロードしてもらい、12月~2月の期間で『みんチャレ』を実践してもらったという。その結果、参加者の歩数が伸びたことが確認できた。

また、チャレンジの継続率は100%と高く、「通勤で歩くようになった」「スマホを毎日使うようになった」などの声も寄せられたという。自治体職員からも「継続させる仕組みがよい」「健康事業に活用できそう」といったコメントが得られたと話す。こうした習慣化を促進する取組を、高齢者のフレイル予防やデジタルデバイド解消につなげていきたいとした。

●株式会社キャリアサバイバル 「製造業で働く職人のための人事ソリューション『職人クラウド』」

キャリアサバイバルは、製造業で働く職人の後継者不足に着目し、職人の評価・教育・キャリアを可視化する『職人クラウド』というサービスを開発した。これは、職人の日々の成長や知識の共有を促進し、職人のスキルアップと定着を支援するものだという。

本プログラムでは、安城市・西尾市・刈谷市の協力のもと3社への導入を図っている。現状、業務日報をデジタル化し、正確な評価を行うためのベースを整備するために使用されているケースが多いという。開発着手から間もないサービスだが、約22社の製造業と協力しながら開発していくことに合意しているそうだ。実績豊富な国内外のメンバーとともに、この『職人クラウド』を具体化していきたいと語った。

●codeless technology株式会社 「運用書類をそのままデジタルフォームにして日本中の現場のDX推進」

codeless technologyが開発した『Photolize』は、現場で使用している紙の書類を撮影して送るだけで、入力フォームを自動生成してくれるサービス。最短1時間で完成するスピードの速さが特徴だ。完成したデジタルフォームは従来の見た目で利用でき、タッチペン・音声・キーボードなどで入力ができる。入力内容はデータベースとして管理でき、APIやCSVなどで外部ソフトとの連携も可能だ。

本プログラムでは、地域パートナーらとの議論のもと期間を定めない無料プランを新設した。また、尾張旭市の「児童館申込書」や大府市の「商工会議所 入会申込書」をデジタルフォーム化。刈谷市では民間企業の「支払依頼書」をデジタル化したという。「非常に皆さんが協力的で、最高の成果を残すことができた」と喜びを伝えた。

●株式会社スタジオフィルス 「誰でも使える新しいデジタルサイネージ『パッチサイン』」

スタジオフィルスは、デジタルサイネージを誰でも簡単に使えるシステム『パッチサイン』を開発・提供している。スマホを使ってSNSに投稿するような操作感で使える点が特徴だ。Canvaでデザインしたコンテンツを使うことも可能だという。

本プログラムでは、北名古屋市・豊川市・豊橋市・西尾市・日進市の5つの自治体と連携。豊橋市では、道の駅の60代の駅長がサイネージのコンテンツ作りを担当したが、問題なくスムーズに作成できたという。また、日進市では地元企業の就職フェアで使用。短期間でサイネージ用の広告を作成できたそうだ。ユーザーからは「簡単すぎて驚いた」という驚きの声も寄せられたと話す。この結果を踏まえ、愛知県内での設置台数を増やす方針だという。

●株式会社セラピア 「ノーコードで実現、中小企業が自分で作るDX」

セラピアは、中小企業向けにノーコードでシステム開発が可能となる教育プログラムを提供している。約2カ月という短期間で、自らシステムが開発できるよう社員を育成するという。ノーコードと掲げている通り、従来のようにコードは書かず、ブロックを動かすような操作感で簡単にアプリを制作できる。

本プログラムでは、セラピアがメンターとなる企業を育成し、メンター企業を核に地域全体へとノーコードでのシステム開発を普及させていく構想を描く。現在、日進市・豊川市・豊田市と連携し、各自治体のなかで1社目となるメンター企業に対してセラピアの教育プログラムを提供している。そのメンター企業を起点として、各地域内でDXのエコシステム形成を狙っていく考えだという。

●株式会社テックシンカー 「CO2排出量可視化とカーボンオフセット」

テックシンカーは、CO2排出量の可視化とカーボンオフセット対応が可能なSaaSを開発・展開中だ。SaaSだけでは完結できない部分はコンサルティングを通じて支援しているという。

本プログラムでは、大府市と大府商工会議所を通じて、アルメック株式会社を紹介してもらい、排出量の算出とカーボンオフセット支援を提供した。さらに、その活動内容を社内外へと発信するブランディング支援も行った。これにより、アルメック社の取引先からの脱炭素要望に応じるとともに、同社の認知度向上に貢献できたと話す。今後もワンストップでサービスを提供し、企業の事業成長をサポートしていきたいとした。

●株式会社ホーン 「ひとり旅をもっと気軽に。​ひとり旅からゆるいつながりを。」

ホーンは「ひとり旅」をテーマにプロダクト開発を行う企業だ。「ひとり旅」愛好者を対象としたメディアの立ち上げから事業をスタートした。Instagramのアカウント『ソロトリ』は立ち上げから1年間で3.7万人のフォロワーを達成するほど、「ひとり旅」のニーズはあると語る。

本プログラムでは、ひとりでも楽しめる​ミッションクリア型周遊体験『ソロトリクエスト』企画の実現に向け、豊川市・新城市​・蒲郡市​・一宮商工会議所​と連携。新城有教館高校では、コンテンツを作るための授業を実施​。また、豊川稲荷および鳳来寺山で学生らとフィールドワークなどを行った。現在、LINEを活用した『ソロトリクエスト』体験を開発中で、夏頃には専用システムをリリースする予定だという。

●me株式会社 「フォロワーを自動でファンに SNS顧客管理ツール『Repeats』」

滋賀県から来たというmeは、情報発信に苦労している行政・企業・店舗などを対象としたSNS顧客管理ツール『Repeats』を開発している。本プログラムでは、豊川市・蒲郡市などと連携し、Instagramのフォロワー分析を実施。フォロワーの投稿内容をもとに属性や興味関心をAIで分析。さらに、アカウントに対するファン度合いを可視化した。

それをもとに投稿内容を見直した結果、豊川市と蒲郡市の公式アカウントでは、従来と比較して10倍以上のリーチ・フォロワー数の獲得に成功したという。今後もAIを活用し、地域や企業の情報発信に貢献していきたいとした。

取材後記

地域パートナーの参加数が急速に増加し、広域エコシステムの形成が進む愛知県。今回の成果発表会からは、愛知県で事業展開を目指すスタートアップが、地域パートナーの力強いサポートを受けながら、自社サービスの改善や企業・自治体への導入を進めていることが伝わってきた。自治体や経済団体、金融機関などが一体となってスタートアップを支援するとともに、地域に存在するさまざまな課題に取り組むこの活動は、他の地域にも適用可能なモデルなのではないだろうか。都市の中心部だけではなく、周辺地域も積極的に巻き込みながら、ひとつのスタートアップ・エコシステムを構築しようとする愛知県の活動を、今後も追っていきたい。

(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:齊木恵太)

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