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【ANNDレポートVol.2】 愛知県企業×スタートアップによる共創の成果に迫る――「AICHIMATCHING 2023 DEMODAY」に密着。4組の共創プロジェクトの中身とは?

【ANNDレポートVol.2】 愛知県企業×スタートアップによる共創の成果に迫る――「AICHIMATCHING 2023 DEMODAY」に密着。4組の共創プロジェクトの中身とは?

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愛知県は、3月11日と12日の2日間にわたり、今年度のスタートアップ支援活動の成果等を発表する大規模なイベント『AICHI INNOVATION DAYS 2024』(略称ANND:アンド)を開催した。会場はTKPガーデンシティPREMIUM名古屋ルーセントタワー。昨年度のANNDは、リアルとオンラインのハイブリッド開催だったが、今年度はリアル会場のみで開催された。「意図的なセレンディピティによる想像を超えた価値創出」をコンセプトに、50を超える国内外のスタートアップや企業、著名なスピーカーたちが登壇。革新的なビジネスモデルや最先端の技術に基づく取組を発表するとともに、オープンイノベーションや資金調達など愛知県のスタートアップを取り巻く環境・目指すべき姿についてトークセッションを行った。

本記事は『ANND 2024』で展開されたプログラムのレポートの第2弾として、「AICHI MATCHING 2023 DEMODAY」の模様をお届けする。「AICHI MATCHING」(あいちマッチング)は、愛知県企業の高い技術力・ノウハウと、全国のスタートアップの新しい技術・サービスを掛け合わせて、新規事業創出を目指したプログラムで、2019年から継続して行われている。本年もホスト企業が抱える課題の解決や新たなプロダクト・サービス開発、価値の創出を目的に全国のスタートアップからエントリーを募った。

今回、マッチングを果たした「東海旅客鉄道株式会社×株式会社NewOrdinary」、「株式会社UACJ×株式会社WizWe」、「新日本法規出版株式会社×株式会社フローワークス」、「株式会社FUJI×Industry Alpha株式会社」の4チームが登壇し、観光、ヘルスケア、建築、小売分野での取り組みについてプレゼンテーションを行った。4チームはどのような革新をもたらそうとしているのだろうか。以下に発表内容を紹介していく。

【01】東海旅客鉄道(JR東海)×NewOrdinary――移動の価値を高め、人々の豊かな時間を実現

<登壇者>

・東海旅客鉄道株式会社 事業推進本部 担当課長  大橋 麻衣 氏 =写真右=

・株式会社NewOrdinary Chief Project Officer 植草 誠 氏 =写真左=

JR東海は愛知など東海圏を中心に東京・大阪に事業を展開する鉄道会社だ。「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」を経営理念に掲げ、新幹線・在来線事業のほか、流通や不動産、観光などに関連する事業を幅広く手がける。コロナ禍の影響で業績は一時的に落ち込んだが、現在は回復の兆しを見せている。

一方で、「人々の生活様式に変化が見られ、それに合わせた新規事業の創出が求められている」と大橋氏は話す。目指している世界観は「新たな価値を提供し、人々の豊かな暮らしを実現する」だ。具体的には「乗車マエ・ナカ・アトのシームレスな移動体験が提供されている場」「地域ならではの便利サービス・情報があり、良い生活が送れる場」などの形成を志向する。現在は独自の「EXアプリ」を活用し、新たな試みも積極的に推進。こうした状況を受け、募集テーマを「新幹線の駅や車内を起点としたコンテンツ・サービスの開発」と設定した。

この募集テーマの呼びかけに応じたのがNewOrdinaryだ。同社は本社を名古屋市のスタートアップ支援拠点「PRE-STATION Ai」に置き、AIデジタルマップを中心に事業展開している。ビジョンは「『新しい日常』を探しに行ける世界を実現」。2023年10月には、名古屋市の観光デジタルマップを公式マップとしてローンチした実績を持つ。観光デジタルマップの特徴はAIのパーソナライズ機能にある。自分の興味関心をはじめ、家族などの同行者がいるのか、空き時間があるのかなどの状況や気分を入力。すると、その時々にあった観光スポットやルートがリコメンドされる。また、観光・グルメなどカテゴリ別のスポット検索も可能で、モデルコースの表示もある。

新幹線に乗る前から降りた後までより豊かな時間を提供し、移動の価値を高めたいJR東海、地域の最新情報やAIによる最適なリコメンドで名所・グルメを効率的に提案、移動によって人々の生活を豊かにしたいNewOrdinary――こうした思いを持つ両社が実現を目指したのは、「限られた隙間時間や不慣れな場所でも自分の好みにあった楽しみ方が見つけられること、新しい価値や感性を育み、豊かな時間が過ごせること」だ。

具体的にはEXアプリ内に観光デジタルマップを組み込む。これにより、出張した際の隙間時間や、家族旅行で名古屋を訪れた際の新幹線乗車までの待ち時間などを有効に使うことができるようになる。さらに植草氏は「観光デジタルマップはこれまで入手が困難だった趣味や志向性、属性、気分などのデータを取得することができる」と説明する。取得したデータをもとに、出張や旅行などで訪れた人たちがどういうスポットに興味を持つか、どこに向かったのかなどを解析し、マーケティングなどに活用。より良いスポットの提案や旅行商品の販促や開発につなげたい考えだ。

大橋氏は「地域の資源とNewOrdinaryが開発した技術を掛け合わせることで、お客様の体験価値を最大限に高めていきたい」と共創のさらなる発展に意気込みを見せた。なお、プレゼンテーションで提示された「名古屋観光デジタルマップ」は3月28日からEXアプリ内で連携が開始される。

【02】UACJ×WizWe――開封検知箔と習慣化プログラムによるヘルスケア領域の共創

<登壇者>

・株式会社UACJ マーケティング・技術本部 R&Dセンター 第三開発部 主査 日高 洋 氏 =写真右=

・株式会社WizWe 執行役員 オープンイノベーション 石津 敦弘 氏 =写真左=

UACJはアルミニウムの総合メーカーで、2013年に古河スカイと住友軽金属工業が統合して設立された。世界トップクラスのアルミ板生産量を有し、日高氏によれば「国内ではおよそ半分のシェア」を持つ。具体的に手がけている製品は、アルミ缶、自動車、ロケットなどの素材となるアルミ材。このうち、今回の共創で扱われるのがアルミ箔。その中でも、PTP(Press Through Pack)と呼ばれる医薬品包装用アルミ箔で、錠剤やカプセル剤を包装している板状のものだ。同社では、新規事業の一つとして「開封検知箔サービス」を行っている。PTPの開封を感知する、IoTを応用した服薬管理サービスで、患者が指示通り服薬しているかを確かめることができ、UACJではePTPと呼んでいる。同社はePTPの価値をさらに高めるため、募集テーマを「アルミニウムの可能性を引き出す新たな価値創出」と設定した。

WizWeはビジョンに「習慣化プラットフォームで100億人をありたい姿へ」を掲げ、「三日坊主問題を解決している」という石津氏。携わっている領域は語学、フィットネス、資格取得など幅広い。ありたい姿を実現するために「ヒューマンタッチ」と「テックタッチ」の両面でサポートしている。

前者では「習慣化サポーター」と呼ばれるスタッフが顧客を一対一の双方向コミュニケーションでサポート。これまで3万人のユーザーをサポートしてきた。後者では、蓄積されている豊富な行動・会話データを分析して、習慣化の仕組みを体系化。いつどのようなタイミングで声がけをすると行動が継続するのかについて理解が深まっているという。「ヒューマンタッチ」と「テックタッチ」を組み合わせることで、より多くのユーザーのサポートを実現していると紹介された。

そうした両社が目指したのは「薬やサプリを飲み忘れない世の中」だ。ePTP は現状、開けたことがわかるだけで、飲み忘れの回避や習慣化にはつながらない。一方、WizWeは習慣化のノウハウを持っており、共創することで「新しい未来が作れる」と日高氏は意気込む。さらに開封検知と習慣化を組み合わせて、成人病の薬、禁煙ガム、パーソナルサプリの服薬の習慣化も行っていきたい考えだ。今後は、ペインを抱えている生活者や自治体あるいは開封&ユーザーの声をモニタリングしたいプロダクトを持っている事業者と協業し、さらに実証実験を進めたいという。石津氏は「今日は出会いの場。こちらから声がけをさせていただくし、ぜひ遠慮なく声をかけてほしい」と会場に呼びかけた。

【03】新日本法規出版×フローワークス――設計における法的確認作業の効率化を支援し、良質で丈夫な建築設計に貢献

<登壇者>

・新日本法規出版株式会社 テック事業開発局 プロダクト開発部 プロダクト開発課 マネー

ジャー 久保 慶和 氏 =写真左=

・株式会社フローワークス 代表取締役 横関 浩 氏 =写真右=

フローワークスは「BIM」導入に役立つテンプレートやサービスを提供しているほか、BIMが簡単に始められるスターターパックや実務に役立つ商品、事務所へのBIM導入支援などのサービスを手がけている。ビジョンは「BIMによる建築設計を誰もが簡単にできるようにする。質の高い建物が設計されることで、より住み良い建物や地域が形成されることを目指す」だ。

横関氏によれば、BIMとは「3次元データに建築情報を付加することで、コンピューターが建築を理解できるようにする技術」で、設計図、見積もり、パースなどが従来は専門家が行っていたことが、自動生成されるという。「この結果、設計が効率化されて、デザインをする時間を十分に持つことが出来るようになる。3Dなのでクライアントともコミュニケーションがとりやすく、質の高い設計につながる」と横関氏は説く。BIMは国も普及を推進しているが、難しい設計手法ということもあり、なかなか広まらない。

現在、国やUR都市再生機構のテンプレートを受注しており年内に無料で配布予定。また、フローワークスがより便利な機能や情報を付加して有償のBIMスターターパックを提供すると共に、BIM導入支援を実施している。それら全てのテンプレートは一つプラットフォームの上に構築されている。BIMを設計インフラにすることで最終的には教育・研究、施工、保守・メンテナンスを一貫して行うことが可能になると説明された。

新日本法規出版は、法律関連書籍の出版と、法律に関するさまざまなWebサービスを展開している。ビジョンは「情報産業を通じ、社会公共への寄与と、健全な文化の発展に貢献する」だ。これを実現するために長年、信頼できる法律情報を提供し続けてきた。現在は、革新的なアイデアやテクノロジーを持つ企業と協業し、新たな情報提供環境の創出を試みている。

目指しているのは、法律実務・法律業界に携わる人々のパフォーマンスの向上である。同社の手がける書籍はあらゆる法律分野を網羅しており、ページを入れ替える加除式書籍で常に内容を更新している。建築分野では、設計の法適合性の確認時において利用が定番化している単行本「建築申請memo」を40年以上、毎年更新・発行している。

同社では今回、募集テーマに「法規制や法改正を解析し、法律に携わる方がパーソナライズされた情報を簡便に活用できる世界を実現する」を設定し、アイデア例として「建築確認における必要情報の収集を効率化」を提示した。BIM設計の認知と実用の拡大を狙うフローワークスがこれに呼応し、マッチングとなった。フローワークスは「建築設計の現場では必要な情報が集積されておらず、現場は非効率な情報収集作業を行っている」と課題を提示。同社は解決の土台はあるがコンテンツがない。一方、新日本法規はコンテンツを所有しているが届ける手段がない。久保氏は「フローワークスの提供するサービス上で、必要な資料が見られるようにすれば効率化が実現できる。新日本法規のコンテンツを加工して共有できないか」と考えたという。

共創で行ったのは、BIM設計データを通じ、必要な情報が自動的に提供される仕組みの構築だ。つまり、現状では設計者が自ら情報を探しにいくが、この流れを逆転させ、設計者のもとにデータが集まるようにする。これにより、設計者の負担が大きく軽減される。例えば、屋根の設計を行う場合、必要な情報がプラットフォーム上に自動的に表示されるようにする。この時、活用されるのが、設計者のほとんどが持っているコンテンツ「建築申請memo」である。「建築申請memo」をフローワークスのサービスに「HELPシステム」として組み込むことで、設計画面から必要な情報にリンク一つで飛んでいけるようにする。HELPシステムは本年5月にはリリース予定とのことだ。

さらに新日本法規出版では、「建築申請memo」以外にも情報を1つのBIMプラットフォーム上でスムーズに確認できることを目指す。横関氏は「究極の目標は設計を簡単にすること。より良い設計、より良い建物、ひいてはより良い地域につなげたい」と熱弁を振るった。

【04】FUJI×Industry Alpha――既存設備をそのまま自動化、店舗内物流に革新的な効率化をもたらす

<登壇者>

・株式会社FUJI イノベーション推進部 第2課 課長 神谷 一光 氏 =写真左=

・Industry Alpha株式会社 事業開発部マネージャー兼 戦略室室長 杉浦 聡一郎 氏 =写真右=

FUJIは愛知県知立市に本社を構え、創業65年の実績を重ねている。電子部品実装ロボットなどのロボットソリューション事業や、工作機械などのマシンツール事業を展開するほか、新規事業にも積極的に取り組み、小型多関節ロボットや大気圧プラズマユニットなどを世に送り出してきた。さらに力を入れるため、4年前には社長直轄でイノベーション推進部を創設。神谷氏は「スタートアップ企業や社外の事業会社と連携して日々新しい事業の種を見つけている」と自社の取り組みを紹介した。同社は昨年度もあいちマッチングに参画し、「がれきリサイクルロボット」を手がけた。現在は小売事業者向け自動搬送ロボット(AMR/Autonomous Mobile Robot)に注力している。

AMRは今回の共創のテーマであり、目指しているのは「既存の設備をそのままロボットで搬送」することだ。小売店舗の多くは、荷物が店舗のバックヤードに運び込まれ、それをかご台車に載せて商品棚の前まで持っていく。荷物を載せた台車は400キログラムになることもあり、運搬作業は重労働で危険が伴う場合もある。また、商品運搬に使用するためのかご台車は既に多くの店舗で運用されており、それらを今更AMR専用の台車に置き換えることは現実的ではない。それらの課題を解決するためには、既存のかご台車をそのまま運ぶAMRが求められた。AMRは国内の大手小売店での実運用が進められており、追加5店舗の導入も決定している。一方で、複数の課題も残ったままだ。そのうち、Industry Alphaとの共創で解決を目指したのが「店舗内の自動搬送ロボットの複数台制御」である。

Industry Alphaは工場や倉庫の自動化を手がけている。主な事業はFMS(Flexible Manufacturing System)とAMRだ。AMRの領域では、ハード、ソフトウェア、制御ソフトを自社で開発。最薄185mmで最大1トンの荷物を運べ、さらにルートが外れても自らルートに復帰できる能力を有する。これまでに半導体機器メーカーや自動車部品メーカー、計測機器メーカー、洋菓子メーカーの工場などに導入の実績を持つ。一方で、小売店への導入実績はまだなく、今回が新たな挑戦となった。同社によれば、小売店は、店舗ごとに固有の特徴があり、作業が複雑で、柔軟な対応が求められるケースが多いなどの理由で自動化が困難。取り組むべき課題は複数ある中で、共創は「荷出し作業の自動化」に焦点を当てて進められた。

具体的には、ロボットを使い商品をかごに入れて棚の前に運ぶ作業の自動化だ。役割分担として、FUJIがロボットを、Industry Alphaは自動搬送ロボットの複数台制御システムを提供。将来的には日本国内の小売店でエレベーターなどを使いながらフロアをまたいでの実証実験も検討しているとのことだ。最後に神谷氏は「FA領域に強みを持つ両社が店舗内物流に革新をもたらし、小売業界をより盛り上げていきたい」と力強く語り、プレゼンテーションを締めくくった。

事業の種を作るきっかけにしてほしい

「AICHI MATCHING 2023 DEMODAY」のクロージングには、本イベントの司会を務めた株式会社eiicon 東海支援事業本部 本部長 伊藤達彰氏が登壇し、挨拶。「あいちマッチングに携わってきた。年々、興味を持つ方が増えており、問い合わせも増えている。プレゼンテーションした4チーム以外にも、実は事業の種になることが多く生まれており、愛知県内のオープンイノベーションの機運の高まりは肌で感じている。あいちマッチングは今後も継続する予定。ぜひ参加いただき、事業の種を作るきっかけにしてほしい」と伝えた。

取材後記

4チームのプレゼンテーションはいずれも革新性が高く、かつ有用性を感じさせるものばかりだった。愛知県を舞台にしたオープンイノベーションの質の高さが感じ取れた。いち早くスタートアップとの共創の重要性を理解し、県を挙げて取り組んできたことの成果が生まれているのではないか。発表をしたのは4チームだが、eiiconの伊藤氏によれば、あいちマッチングではさらに多くの新規事業が生まれようとしているという。――あいちマッチングはこれからも継続予定とのことだ。今後の動きから目が離せない。

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:齊木恵太)

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