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『REGION JOIF』第2弾は鹿児島!――スタートアップや地元企業10社が登壇。地域への熱い思いを乗せたピッチをレポート

『REGION JOIF』第2弾は鹿児島!――スタートアップや地元企業10社が登壇。地域への熱い思いを乗せたピッチをレポート

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国内最大級のオープンイノベーションカンファレンス『Japan Open Innovation Fes』(以下、JOIF)が9月13日に開催される(主催:株式会社eiicon)。これに先立ち、国内各地域のイノベーションを活性化させるイベント、『REGION JOIF 2024 in KAGOSHIMA』(鹿児島県、鹿児島市、株式会社鹿児島銀行後援)が、7月26日に鹿児島市のクリエイティブ産業創出拠点施設「markMEIZAN」で行われた。

『REGION JOIF』は、今年2回目の開催となる。なお、第1回の『REGION JOIF 2024 in KANSAI』は、7月12日に大阪市で実施された(※)。

※関連記事:『REGION JOIF』初開催のステージは関西!――スタートアップ、大企業、自治体、支援団体が繰り広げた熱いピッチをレポート

九州の地にオープンイノベーションを根付かせる一つのきっかけに

『REGION JOIF 2024 in KAGOSHIMA』では、鹿児島県をはじめ九州を中心に活動を広げる10社がピッチに挑み、事業にかける熱い思いや理想の未来を語り、会場の興味を引き付けた。イベントの冒頭では、株式会社eiicon イノベーションコンダクター事業部 部長 新宮領宏太が挨拶し、開会を宣言した。

また、オープニングでは、鹿児島県出身の株式会社ビジョン 代表取締役会長 兼 CEO 佐野健一氏が登壇。同社は、グローバルWiFi事業、情報通信サービス事業、グランピング・ツーリズム事業などを展開し、スタートアップ支援も手掛けている東証プライム上場企業だ。

「今、多くのスタートアップが生まれ、新しい技術を携えて新しい挑戦をしている。そうしたスタートアップと力を合わせたいという大企業は増え続けており、オープンイノベーションを取り入れることで互いの成長につなげている。私自身、最後発でグローバルWi-Fiの領域に参入し、大企業と組むことで圧倒的なシェアを手にすることができた。オープンイノベーションはスタートアップ・大企業、双方の可能性を広げる。今日を、九州の地にオープンイノベーションを根付かせる一つのきっかけにしてほしい」とエールを送った。

――次に、10社によるピッチの模様をレポートする。

独自性の高い事業を展開する10社のピッチ内容とは?

●株式会社fab

同社は、代表の星原優氏が社労士事務所での勤務を通じ、マーケティングとブランディングに興味を持ったことがきっかけで設立された。現在、鹿児島県内で飲食店を営むほか、コンサルティング事業を展開している。

特に力を入れているのがDXだ。自社で店舗を運営しながら、その重要性に気づいたという。DXでマーケティングを行うと共に、省力化・省人化を試みる。「ホールをゼロ人で回す」ことが最終的な目標だ。このほか、鹿児島県の観光を盛り上げるため、新規事業にも着手している。

既に複数の大企業とコラボしており、日置市にテーマパークの創設を目指す。DXを活用して「街をまるごとブランディング」し、地域を活性化させる。同社はDXに知見を持つ企業との共創を呼び掛けた。

●株式会社厚石園

同社はお茶の生産・加工・販売と肥料の製造販売を手がけている。お茶は20年以上にわたり農薬を使わずに育ててきた。農薬の代わりに国産の酢にヨモギ、どくだみ、しょうが、トウガラシに漬けたエキスと、焼酎にニンニクとレモンを漬けたエキスを散布しているという。肥料は、カツオの抜き骨や身、豆腐カス、豚血、米糠など産業副産物を活用して生産される。

同社では今後、海外展開も含めたお茶の販路拡大、肥料を作るための新たな産業副産物の発見、農家への肥料販売を視野に入れている。このため、飲食品・嗜好品や国産オーガニックの商品を扱う企業、食品などの産業副産物を産廃処理している企業、産業副産物の取り扱いに苦慮している企業、安価で肥料を探している農家、有機栽培に関わる企業や農家などと繋がりを持ちたいとアピールした。

●小平株式会社

同社は創業112年の歴史を持つ老舗企業だ。現在はエネルギーやIT関連の事業などを展開している。IT(DX)部門ではデリバリー事業者向けのSaaSなどを提供、海外事業では農水産物の加工・輸入・輸出などを行っている。グループ会社が、地域の小水力発電、オフグリッド、間伐材循環事業などを手がけているのも特徴の一つ。

1世紀以上の実績を持つ同社だが、近年はパーパス経営に切り替え、6つのビジョンを制定。その上で、1年で50以上のアクションを遂行した。ビジョンのうち一つは「地域だからこその可能性が花開く、ワクワクあふれる街を生み出す」というもの。同社では、2021年に無料で使えるテイクアウト専門シェアカフェを開設。

2024年には湯之元に本社を移転した。空き家をリノベーションするなどし、「街全体のオフィス化」を試みる。「Place based innovation=地域に根差したイノベーション」を起こすのが狙いだ。「地域と企業の新しい関係性を作り、街をウェルビーイングタウンに魔改造する」と意気込んでいる。

●株式会社OneSmallStep

同社は「ゲーム×○○」で新しい体験を生み出すことを目指している。福岡県に本社、東京に拠点を置き、設立当初から社内ではVRを活用してコミュニケーションを取っていた。その利便性や可能性に魅力を感じてVR開発に乗り出したという。

現在はWebとVirtual Realityを掛け合わせた「WEV(ウェブ)」を推進。目標はWebサイトのゲームへの置き換えだ。同社によれば、Webサイトは登場して30年が経つものの、目立った変化はない。今後は、Webサイトを開いてゲームを楽しみながら会社や商品、サービスを知ることができるようにしたいと話す。ゲーム体験を通じて、商品の開発ストーリーなどに理解を深めてもらうのが狙いだ。

具体的には観光や商品プロモーション分野での活用を視野に入れる。将来的には同社の「WEV」をスタンダードにして、誰もが自分のゲームサイトを構築できるようにしたいという。「ゲームで日本発の未来を作りたい」と意気込みを見せた。

●東シナ海の小さな島ブランド株式会社

同社は鹿児島県の離島の上甑島(かみこしきしま)に本社を置き、「暮らしたくなるシマ」を創り上げようとしている。上甑島には1777人が住んでおり、高齢化率は58%。同社によれば日本全体でもこれから80年以上にわたり少子高齢化が続き、2210年ごろには高齢化率は50%を超えるという。このことから、同社は80年先の日本の縮図が上甑島にあると主張する。

一方、同社は島を「人が互いに支え合う地域共生の集落自治」と捉え、「限界の先をデザイン」することを目指す。同社は創業から12年間で空き家を買取るなどしながら多くの拠点を再生し、17事業を展開。「集落丸ごと再構築」を企画している。離島×企業の実践型プラットフォームとして離島ファンドを立ち上げ、既に124社の加盟が実現している。

近い将来は日本、鹿児島県で初となる28島22自治体を越境するローカルコミュニティ財団が設立される予定だ。「あらゆる前提条件が変わり続けても、できない言い訳を未来になくす。そのための仲間を探している」と熱弁を振るった。

●株式会社Another works

同社は令和の新しい働き方を確立したいとの思いから、年号が変わった令和元(2019)年5月7日に設立された。6期目を迎え、社員60人に加えて、業務委託・副業人材120人のパートナーと共に事業を推進している。目指しているのは「複業の社会実装を実現する」ことだ。

同社によれば、高齢化・人口減少などの影響で人材不足に陥り、黒字倒産するケースが増えている。これを受け、同社は人材を副業で獲得することを支援する。他方、人材にとっては複数社で自身のスキルや経験を活かすことができる。

Another worksは「挑戦する全ての人の機会を最大化する」をビジョンに掲げ、「人も企業(社長)も応援したい」と意気込む。複業人材を成約手数料無料で何件でも求人の掲載ができ、さらにスカウトで採用できる(スカウト送付には制限あり)総合型プラットフォームを開発。既に8万人以上が登録し、約1900社(自治体・スポーツチームも含む)が使っている実績があるとのことだ。同社は複業者のデータや取引のある企業・団体、複業活用のノウハウなどを活かして積極的に共創を行っていきたいと話している。

●株式会社クエイル

同社は鹿児島と東京に拠点を置き、アプリケーション開発を行っている。企画から設計・デザイン・クラウドサービス構築、アプリケーション開発までをワンストップで手がけ、スピーディなサービス提供を実現している。

鹿児島・東京に限らず、関東・関西・中部・九州など幅広い地域で開発実績を持つ。アパレル、ヘルスケア、自動車修理などの分野でスマホ・Webのアプリケーション開発を行うほか、Webサイトやデジタルサイネージにも強みがある。特に、AWSの公式認定パートナーとなり、AWSを主軸にインフラ・クラウドサービスの構築・運用を手がけているのが大きな特徴と言える。また、近年は生成AIを使った発展的な実証実験も推進しているとのことだ。

同社の理念は「おもしろい!」を創ること。今後、クラウドやDXアプリケーションで培った経験を活かし、互いに成長していけるパートナーと共創を行うことを視野に入れている。同社は踏み込んだ開発を実践し、社会に価値を発揮したいと強調した。

●株式会社SHINSEKAI Technologies

同社は「コミュニティの力でビジネスを加速させる」をミッションに掲げ、鹿児島の未来をみんなで創造するため、鹿児島県公認コミュニティを立ち上げることを目指している。現状、鹿児島県の転出者は転入者を上回り、2752人が超過。県内の有名レストラングループは負債360億円を抱える一方で、スポーツ・コンベンションセンターの年間維持管理・運営費を公費で9800万円もかけている。さらに過疎地域に指定された市町村が、43のうち42。明るい未来があるとは安易には言えない状況だ。

しかし、県民の愛着度は高く、ある調査では全国で2位となった。こうした背景を受け、「県民共通の大きな問題提起は結束を強める大きな力になる」と捉えて、同社は関係人口を増やすためにコミュニティの立ち上げを図っている。コミュニティが形成されることで、双方向のコミュニケーションが生まれ、メンバー同士の共創も生まれると同社は説く。創業間もないながらも既に20以上の企業や自治体から支援を受け、滑り出しは好調とのことだ。同社ではさらに多くの人を巻き込み、鹿児島を盛り上げたい考えだ。

●大石酒造株式会社

同社は1899(明治32)年創業した、125年の歴史を持つ酒造メーカーである。手がけているのは、鹿児島の特産品の焼酎と、本年からリキュール(梅酒)も製造・販売も始めている。現在は5代目で、6代目はがん研究を国内・デンマークで行ったという異色の経歴を持つ。

同社では新たな試みとして、海外展開、有機(オーガニック)、VR蔵ツーリズムなどを展開。現在までにデンマークへの輸出、有機JAS認証(同社によれば県内酒造第一号)、YouTubeチャンネルの開設などを実現した。

今後、さらに上記3領域を共創で活性化させていきたいと意気込む。Sustainable(再生可能)にとどまらずRegenerative(より良いもの)を生み出すために、有機農家や焼酎粕処理業者と提携しながら規格外有機原料、焼酎粕、有機肥料の利用を推進すると共に、酵母、麹、有機作物、化粧品などを生み出す。同時にVRツーリズムを活用した宣伝PRを行いながら、海外販路の拡大などを試みる考えだ。

●holos株式会社

同社は「ホテルの新しいブランドを作る」ことを目的に設立された。VC2社、エンジェル投資家2人から投資を受け、準備を進めているのが2025年に新しい宿泊施設「holos Eco lodge 桜島」を開業することだ。同社は、桜島は活火山と人が共生する唯一無二の島で、エコロッジ(※環境や地域に配慮しながら、そこでしか出来ない宿泊体験を提供する宿泊施設)に適していると強調する。

これまで2年の歳月をかけ、「360度人工物が見えない土地」を入手。圧巻の桜島ビューと錦江湾ビューを楽しめるという。建築設計は5つ星ラグジュアリーホテルを中心に建築デザインを行うイギリス人建築デザイナーが手がける。

同社は「一度きりの人生、得難い経験に価値を感じる、新たなラグジュアリー層に、ここでしかできない宿泊体験を提供したい」と意気込む。現在、スポンサー(不動産オーナー)を募集しており、「鹿児島の新しい観光の形を共に作り上げよう」と呼びかけた。

新たな事業を鹿児島の地から生み出していく

10社のピッチの後、eiicon COO/CDO取締役副社長 富田直が総評した。「2017年にJOIFを開催して以来ずっと『REGION JOIF』を構想していた。本日は鹿児島の地から新しい事業を作ろうとする熱量をひしひしと感じた。共に新しい事業を鹿児島から創造することができれば嬉しい」と力強く語った。

引き続き、交流会が開かれ、参加者同士の親交を深めると共に、活発な議論もあちこちで起こった。いつまでも参加者の興奮冷めやらぬ姿が印象に残る、2回目の『REGION JOIF』となった。

編集後記

『REGION JOIF 2024』の第二弾が鹿児島県、鹿児島市、株式会社鹿児島銀行の協力のもと、鹿児島県で開催された。前回(KANSAI)の時と同様、感じられるのが「地域の力」だ。地域には多くの課題があると言われる一方で、独自の魅力や特徴、強みがある。何より、そこに住む人たちの熱い思いがあった。そうした熱量が、eiicon・富田が言うように、新規事業のきっかけ・糧となるのではないか。熱量のある鹿児島からどんな事業やイノベーションが生まれるか。今後の動きに注目したい。

●9月13日に開催される『Japan Open Innovation Fes2024』(JOIF2024)の詳細は以下よりご覧ください。

https://auba.eiicon.net/joif/ 

(編集:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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