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『REGION JOIF』第3弾は神奈川!約200名が”キングの塔”に集結――スタートアップピッチや共創事例ピッチなど熱量高いイベントの模様を徹底レポート

『REGION JOIF』第3弾は神奈川!約200名が”キングの塔”に集結――スタートアップピッチや共創事例ピッチなど熱量高いイベントの模様を徹底レポート

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国内最大級のオープンイノベーションカンファレンス『Japan Open Innovation Fes』(以下、JOIF(ジョイフ))が9月13日に開催される(主催:株式会社eiicon)。前年までは東京1カ所での開催だったが、今年よりオープンイノベーションを全国に波及させるべく、『JOIF』地域版とも言えるサブイベントを、全国3カ所(鹿児島、大阪、神奈川)で開催。7月の大阪、鹿児島に続く3カ所目が、今回の神奈川だ。

本イベント『REGION JOIF 2024 in KANAGAWA』は、オープンイノベーション支援事業、ビジネスアクセラレーターかながわ(以下、BAK(バク))に取り組む神奈川県と株式会社eiiconの共催で、8月9日の夜に盛大に開催された。舞台となったのは、神奈川県庁 本庁舎 3階大会議場。神奈川県庁 本庁舎といえば、『キングの塔』の愛称で親しまれている国指定重要文化財だ。イベントは格式ある大会議場で行われ、200人近いオープンイノベーション/新規事業の担当者、神奈川県職員らが参加した。

同イベントの目玉の一つが、神奈川県のベンチャー8社による「KANAGAWAベンチャーピッチ」。最優秀賞受賞者は、9月の『JOIF 2024』で開催される「JOIF STARTUP PITCH」決勝戦出場権を獲得する。

このほか、BAKから生まれた2つの共創事例や、行政支援を活用して事業を急速に伸ばす株式会社Agnaviの取組などが披露された。本記事では、真夏の夜の横浜を一段と熱くした『REGION JOIF 2024 in KANAGAWA』の様子を、写真とともにダイジェストでレポートする。

冒頭、神奈川県 産業労働局 産業部 ベンチャー支援担当課長 井上哲也氏が主催者を代表して挨拶。

今回の、ベンチャー企業の取組や大企業との連携事例の発表を契機として、今後様々なレベルでの連携が促進されることへの期待が寄せられるとともに、オール神奈川でのベンチャー支援について協力の呼び掛けがあった。

オール神奈川で起業家たちを応援する「HATSU-SHINかながわモデル」

まず、神奈川県 産業労働局 産業部 産業振興課 新産業振興グループ グループリーダー 上野哲也氏より、神奈川県のベンチャー支援施策である「HATSU-SHINかながわモデル」について説明。神奈川県では、学生も含めた起業家創出、ベンチャー企業の成長支援、大企業とベンチャー企業の連携促進、資金調達支援など、企業の成長段階に応じた多様な施策を展開しており、その支援のもとでベンチャー企業の創出・成長の事例が生まれているという。

この切れ目のない支援の中で、本イベントとも関わりが深い「ビジネスアクセラレーターかながわ(以下、BAK(バク))」は、「大企業とベンチャー企業の連携プロジェクトの創出を目的として立ち上げたコミュニティ」だという。現在、700社近い企業が参加しており、連携プロジェクトを生み出すためのマッチング、実証のためのフィールド探索の支援、広報活動支援、事業ブラッシュアップの支援などを行っている。

本日登壇するベンチャー企業の多くも、BAKで大企業等と実証実験やサービス化に取り組んできた。中には、連携をきっかけにM&Aにつながった事例もあるなど、施策の効果が着実に生まれていることが説明された。

▲神奈川県 産業労働局 産業部 産業振興課 新産業振興グループ グループリーダー 上野哲也氏

本庁舎“キングの塔”から王座を目指せ!――KANAGAWAベンチャーピッチ

オープニングトーク終了後、神奈川県のベンチャー企業8社による「KANAGAWAベンチャーピッチ」がスタート。本イベントでは、来場者の投票で決まる「オーディエンス賞」と、審査員による審査で決定する「最優秀賞」が用意された。「最優秀賞」獲得者が『JOIF 2024』の決勝戦に進出する。審査員は次の3名が担当し、質疑応答や審査を行った。

<審査員> ※写真手前 左→右

■エバーコネクト株式会社 代表取締役 篠原 豊 氏

■株式会社MTG Ventures 代表パートナー 伊藤 仁成 氏

■ライフタイムベンチャーズ 木村 亮介 氏

――ここからは、受賞企業から順に『KANAGAWAベンチャーピッチ』に登壇した8社の発表内容を紹介する。

●GUGEN Software株式会社

※「最優秀賞」に選ばれ、『JOIF』決勝戦参加権を獲得!

GUGEN Softwareは、離婚などで離れて暮らす父母の子育て支援アプリ『raeru』を開発・展開している。同社が着目する課題は、離婚後の子育ての難しさだ。日本では年間約20万人の子どもが両親の離婚を経験する。しかし、養育費の受給率は28%、親子交流の実施率は30%と低く、これは離婚後の父母が「相手と関わりたくない」と思っていることに起因しているという。そこで、同社が開発したのが『raeru』だ。

このアプリを使えば、離婚した相手と連絡先を交換せず、養育費や親子交流に関するやりとりが行える。定型文が用意されているため、コミュニケーションの負担も軽減される。子どもの写真や動画など、子育てに大切な記録も保存できるそうだ。

すでにユーザー数は5000人を突破。ユーザーアンケート結果によると、ユーザーの養育費支給率と親子交流実施率は80%以上であることが判明した。最近、大手企業との事業連携も決定したと話す。同社は今後、離婚後の子育てを支える社会インフラにすることを目指し、事業拡大を進めていきたいと力を込めた。

●株式会社AiCAN

※「オーディエンス賞」を獲得!

AiCANの着目する社会課題は児童虐待だ。日本では年間で推計約500人もの子どもが虐待で亡くなっているという。これらの問題に対処するにあたり、2つの課題が存在する。一つは、虐待に対応する児童相談所等の職員に高度な専門性が求められること。もう一つは、対応すべき件数の増加により、職員の業務量が膨らみ続けていることだ。

そこで同社は、虐待に対応する職員向けの一連のサービスを開発した。同サービスには、判断の質とスピードを向上させるICTアプリ、エビデンスに基づくレポート、研修サービスなどが含まれる。AiCANのサービスを導入した自治体からは、「業務時間が6割削減でき、今まで会えなかった子どもに会えるようになった」という声も届いている。

最近、川崎市児童相談所のプロポも受託するなど、自治体での採用が広がりつつある。同社代表の髙岡氏は「未来の虐待対応のスタンダードを作っていきたい」と語り、ピッチを締めくくった。

●株式会社きゃりこん.com

きゃりこん.comは、介護医療現場の従業員体験(EX)向上プラットフォーム『toHANAS(とはなす)』を開発・展開している。導入企業の従業員に対して、コンディション診断、キャリアコンサルタントによるオンライン面談、組織の満足構造を測るサーベイを定期的に実施し、経営層へ組織の全体傾向をフィードバックするサービスだ。2023年度のBAKを通じて、介護業界大手のニチイケアパレス社と実証実験に取り組み、離職率の大幅な抑制と採用費の削減に成功した。シード資金調達も行い、導入企業のさらなる拡大を目指している。

●株式会社StockBase

StockBaseは、「もったいない」という言葉をなくすことに取り組んでいる。同社が最初に着目したのは、企業が保有する災害備蓄食。賞味期限が近い備蓄食を、必要とする団体に簡単に寄付できるマッチングプラットフォームを開発した。大企業を中心に導入が進んでおり、マッチング率は100%と高い。備蓄食を皮切りに、他カテゴリーへの展開も目指しており、すでに実証実験を行っているそうだ。「モノと想いを循環させ、豊かさを分かち合う社会へ」をミッションに、今後も活動を拡大させていく方針だという。

●Iqilu株式会社

Iqiluは、リアルとデジタル一体型のアパレル販促サービス『FuKuMikke』を開発・提供している。サイズ・似合う色(パーソナルカラー)・骨格タイプの3つの要素をもとに、機械学習の力で服の似合う度を可視化するサービスだ。すでにアパレルブランドや百貨店と実証実験を行い、販売促進に貢献できているという。ビジネスモデルもニーズに合わせて見直していると話す。「“好きな服”をもっと増やし、アパレル業界の当たり前を進化させていきたい」と熱意を見せた。

●株式会社Lively

Livelyは、聴く力で人を支援するサービスを提供している。聴くプロにオンラインで話を聴いてもらえるサービス『LivelyTalk』を、個人向けに展開し、多くの個人顧客のストレス軽減に貢献してきた。2023年度のBAKでは、同サービスを企業で働く従業員向けに展開するべく、タクシー業界大手とともに従業員支援プログラム(EAP)サービスの開発に着手。実証実験では確かな効果を得られたそうだ。働く人たちのメンタルヘルスの課題は、昨今、深刻さを増している。同社の聴くサービスを通じて、メンタルヘルスの未病ケアにつなげていきたいと語った。

●株式会社Herazika

Herazika は、やるしかない環境を作るオンライン自習システムを、小学生向けと社会人向けに展開している。自動的に5人1組のチームを編成、自身の出欠席が他メンバーの獲得報酬に影響するので机に向かわざるを得ない。また、スマホのインカメラで他ユーザーと勉強の様子を映し合いながら集中時間を共有、かつ、自身の学習映像がLINEで知人に自動送付される仕組みによって、集中せざるを得ない環境を設計する。2023 年度のBAK では、資格試験大手のTAC 社とともに実証実験に取り組み、学習継続率の向上に貢献した。引き続き、良質な学習コンテンツを持つ企業と提携を進め、事業拡大を狙いたいとした。

●株式会社AsMama

AsMamaは、子育てや日々の暮らしを、近隣で支え合う「共助コミュニティ」の形成に取り組む企業だ。全国の自治体や企業と連携をしながら、地域ごとに地域人材を育成し、さまざまな交流イベントを開催。目的別のローカルシェアアプリを広げ、人と人とをつないでいる。すでに全国約50自治体でプロジェクトが進められており、神奈川県内においても鉄道会社や不動産会社と共助コミュニティづくりに取り組んでいる。小さな町では出生率が向上した事例も生まれているそうだ。

神奈川をフィールドに農業や観光のアップデートに挑戦――BAKで生まれたオープンイノベーション事例

ベンチャーピッチ終了後は、BAKから生まれた大企業とベンチャーによる2つの共創事例が紹介された。

●株式会社アクポニ × 富士工業株式会社

発表タイトル:『水産養殖と水耕栽培を組み合わせた循環型栽培システム「アクアポニックス」×気流制御による生産性向上及び資源循環の促進』

1つ目の事例は、水耕栽培と養殖を掛け合わせた循環型農業(アクアポニックス)に取り組むアクポニと、レンジフードの主要メーカーで気流制御に強みを持つ富士工業による共創だ。2023年度のBAKで出会った両社は、相模原市内にある神奈川県のさがみロボット産業特区「プレ実証フィールド」(元県立新磯高等学校)にアクアポニックスを設置し、葉物野菜と淡水魚を育てた。

空気を変えることで生じる効果を検証した結果、気流制御により、葉物野菜の収量を向上させられることや、エアコンの電力使用量を削減できることが確認できた。今年度はイチゴの栽培に取り組んでおり、継続して実証を進めているという。

●YADOKARI株式会社 × 株式会社鈴廣蒲鉾本店

発表タイトル:『タイニーハウス等の「可動産」を活用した地域一体型の小田原観光事業の創出~小田原を「めぐる」ナラティブツーリズム~』

▲本事例の発表はオンライン形式で行われた。

2つ目の事例は、トレーラーハウスなどの可動産を使った空間づくりに取り組むYADOKARIと、小田原の老舗である鈴廣蒲鉾本店の共創だ。鈴廣蒲鉾本店は、かまぼこの製造・販売だけではなく、小田原周辺の観光事業にも注力中だが、箱根に隣接する小田原は、観光客の滞在時間が短く、消費額も少ないことが課題だ。

そこで、YADOKARIとともに新しいスタイルのツアー旅行を企画。海の見える店舗駐車場にトレーラーハウスを設置し、そこを宿泊拠点に小田原エリアを巡ってもらう内容だ。実証実験では2組の参加者を募集したところ、330組からの応募があり、大きな反響を得られた。今後は、ブランディングプロモーションの一環として、このツアーをスポットで継続する方針だという。

行政支援を駆使して成長する「Agnavi」の軌跡――行政とベンチャーの協業の取組事例

次に登壇したのは、日本酒の流通構造の改革に挑んでいる株式会社Agnavi 代表取締役の玄成秀氏。同社は全国100以上の蔵元と提携し、日本酒を1合180mLの缶に充填して、『ICHI-GO-CAN(R)』というブランドで、日本のみならず世界10カ国へ輸出している。これまで178アイテムを販売しており、年間250%の成長率を継続するなど、輝かしい成長曲線を描いている。

そんな同社と神奈川県との関係は、コロナ禍中にAgnaviが神奈川県のベンチャー成長促進拠点「SHINみなとみらい」に採択されたことから始まったという。その後、BAKへの参加を通じて、クックパッドや京王電鉄、小田急グループ、トヨタ自動車などと協業を進めてきた。このほか、神奈川ベンチャー限定クラウドファンディング「かなエール」を活用した資金調達、県のふるさと納税返礼品への採択など、神奈川県の支援を受けて事業を加速させてきたという。

神奈川県での実績をもとに、他県への横展開も図っており、長野、埼玉、富山、福島などで事業を広げている。また神奈川県の企業誘致・国際ビジネス課の協力を得ながらベトナムやシンガポールに進出。さらに、日本政府との連携も深めており、今年5月にフランス・パリで開催された『VIVA TECHNOLOGY』にも出展した。海外では日本酒の引き合いが非常に強く、手応えが得られていると話す。このように、2020年に創業したばかりの同社だが、行政の支援をフルに活用し、国内のみならず海外へと事業を拡大させている様子が共有された。

「東京にはない新しいモデルを、神奈川から生み出し発信できる可能性を感じた」――審査員らによるクロージング

すべての発表終了後、審査員らが登壇。次のように講評を行った。

ライフタイムベンチャーズ・木村氏は、「この3年間で、神奈川県のエコシステム全体が大きく盛り上がり、起業家の皆さんが活躍する場面が増えたことが印象的だ」と話す。また、「受賞した2社が、どちらも子供や家庭をテーマとしていたのは、偶然ではないと思う。首都圏で住みたい街ランキングに選ばれ続ける横浜・神奈川だからこそ、こうした必要とされる事業が生まれている。東京にはない新しいモデルを、神奈川から生み出し、発信できる可能性を感じた」と、神奈川の持つ可能性について言及した。

▲ライフタイムベンチャーズ 木村 亮介 氏

エバーコネクト株式会社 代表取締役 篠原 豊 氏は、「受賞した2社は、社会の深いところにある深刻な課題、大きな課題に、骨太に真正面から真摯に取り組まれている様子が強く感じられた。素晴らしいアントレプレナーだと思う」と称える。また、「他のチームも、一次情報に向き合い、お客様の声を吸い上げて、サービスの改善や事業拡大に活かしている点が、ピッチの中にあらわれていて良かった」とコメントした。

▲エバーコネクト株式会社 代表取締役 篠原 豊 氏

株式会社MTG Ventures 代表パートナー 伊藤 仁成 氏は、「BAKが盛り上がっていると聞き、今回初めて参加した。まず、200人もの来場者が集まったことに、熱量の高さを感じた」と語る。さらに「自治体、事業会社、支援機関など、色々な方々が混じり合い、よってたかって起業家を応援する土壌があるからこそ、今の状況ができていると思う。この素晴らしい取り組みを、参加型で育て、さらに良い価値を生み出してほしい」と期待を寄せた。

▲株式会社MTG Ventures 代表パートナー 伊藤 仁成 氏

最後に、株式会社eiicon 取締役副社長 COO・CDO 富田直が登壇し、閉会の挨拶を行った。「これまで神奈川県が取り組んできた施策の蓄積の成果が、あらわれてきていると思う。シーズ段階から育て、それをさらに成長させる支援を一気通貫で行っているからこそ、こうした実力のある企業が登壇し、成果を発表している。ここまで出来ている地域は、全国でもなかなかない。この素晴らしいコミュニティやエコシステムを、全国に発信していくことが重要だと思う」と語り、『REGION JOIF 2024 in KANAGAWA』を締めくくった。

▲株式会社eiicon 取締役副社長 COO・CDO 富田直

取材後記

今回の『REGION JOIF 2024 in KANAGAWA』には200人近い来場者が集まり、席が不足するほどの盛況ぶりを見せた。このことからも、BAKへの関心の高さがうかがえる。また、ベンチャー8社から起業家が登壇したが、その半数が女性であり、誰もが挑戦しやすい環境が育まれていると感じられた。BAKなど、県の支援を受けたAgnavi社が、海外へと販路を広げ、事業を着々と成長させている様子も頼もしい。周囲に良い影響をもたらしているに違いない。ますます盛り上がりを見せるBAKの今後に期待したい。

また、『JOIF2024』では、GUGEN Softwareが参加権を獲得したスタートアップピッチに加え、共創ピッチや様々なトークセッションも実施される。ぜひ注目していただきたい。

●9月13日に開催される『Japan Open Innovation Fes2024』(JOIF2024)の詳細は以下よりご覧ください。 

https://auba.eiicon.net/joif/ 

※関連記事:

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(編集:眞田幸剛、文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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  • 川島大倫

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