経産省が「ディープテックスタートアップとの連携手引き」を公開!――連携を考える事業会社が認識すべき36のポイントとは?
2023年6月、経済産業省は『ディープテックスタートアップの評価・連携の手引き』(※1)を公表した。この手引きは主に、ディープテックスタートアップとの連携を考える事業会社の経営層やミドルマネジメントに向けて、連携に当たっての考え方や実務を進める上でのポイントを確認するために活用できる資料となっている。――そこで本記事では『ディープテックスタートアップの評価・連携の手引き』の概要について紹介していきたい。
※1)経済産業省:ディープテックスタートアップの評価・連携の手引き
https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230602006/20230602006-1.pdf
『ディープテックスタートアップの評価・連携の手引き』の背景とねらい
経済産業省は、革新的な技術に裏打ちされた新たな企業・産業の創出やそれによる多様な社会課題の解決を目指し、助成事業などを通じてディープテックスタートアップの事業成長やそれらが有する革新的な技術の社会実装を支援している。
ディープテックスタートアップが自社の事業の成長や技術の事業化を実現するには、大きな経営資源を有する事業会社と適切に連携することも重要となる。この観点から、経済産業省ではこれまで、『事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き』(※2)や、特許庁と連携して『オープンイノベーション促進のためのモデル契約書』(※3)などを策定してきた。
しかし、これまでの取り組みの中では事業会社がディープテックスタートアップとの連携を進める上での課題や対応策は整理されたものの、連携の実施に当たってトップマネジメント(経営層)が持つべき考え方やミドルマネジメント(管理職層)が認識すべき実務上のポイントを、網羅的かつ具体的には整理できていなかった。
※2)経済産業省:事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(第三版)
https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190422006/20190422006.html
※3)特許庁:オープンイノベーション促進のためのモデル契約書
https://www.jpo.go.jp/support/general/open-innovation-portal/index.html
36項目の設問で構成される『スタートアップ連携の「実践度合い」チェックリスト』
このような背景から、経済産業省では、ワーキンググループを立ち上げて上記の課題を検討し、その成果を踏まえて『ディープテックスタートアップの評価・連携の手引き』をとりまとめた。『手引き』では、事業会社とディープテックスタートアップとの連携において事業会社側のあるべき姿と現状の課題を、次の6項目に分けて、それぞれ整理。
【A】事業戦略
【A´】トップからミドルへの権限移譲
【B】体制
【C】スタートアップの評価/見極め
【D】スタートアップとの連携/協業プロセス
【E】コミットメント/マインドセット
上記A〜Eの項目において、連携において持つべき考え方や実務的に重要なポイントを明らかにしている。具体的には以下の通りだ。
また、それらに基づき、『ディープテックスタートアップとの連携の「実践度合い」チェックリスト』が作成されている(※『手引き』の23ページ目から28ページ目)。
チェックリストは、上記のA〜Eの5項目を計36個の設問に落とし込んでおり、チェックリストを活用することで、ディープテックスタートアップとの連携における事業会社の取り組みの状況を点検することが可能だ。
<A:事業戦略>
<B:体制>
<C:スタートアップの評価/見極め>
<D:スタートアップとの連携/協業プロセス>
<E:コミットメント/マインドセット>
事業会社とスタートアップの連携における具体事例
また『手引き』の「事業会社とディープテックスタートアップの連携を通じた価値創造」という章では、「A:事業戦略」、「B:体制」、「C:スタートアップの評価/見極め」、「D:スタートアップとの連携/協業プロセス」、「E:コミットメント/マインドセット」という5項目に紐付く具体事例も紹介されている。
<A:事業戦略> ※連携に向けトップマネジメントが意識すべきポイント
<B:体制> ※連携に向けミドルマネジメントが意識すべきポイント
<C:スタートアップの評価/見極め> ※連携に向けミドルマネジメントが意識すべきポイント
<D:スタートアップとの連携/協業プロセス> ※連携に向けミドルマネジメントが意識すべきポイント
<E:コミットメント/マインドセット> ※トップマネジメント・ミドルマネジメント共通で意識すべきポイント
編集後記
事業会社とスタートアップの連携には、様々な壁やハードルがある。特に事業会社側は、意思決定プロセスに時間を要するケースがあるなど、スタートアップのスピード感やカルチャーにフィットしないことも大きな課題だ。そうした課題についての対策なども、『手引き』では事例などを通して解説されている。これからスタートアップとの連携を考える事業会社の経営層や担当者には、ぜひ活用していただきたい資料だ。
(TOMORUBA編集部)